ふー疲れた。

毎年夏は忙しいのですが、私の職場も遂に自宅待機者が連続で出てしまい、穴埋めでもー大変!おまけで法事まで重なってこりゃ倒れるかもしれないな状態でした。家に帰って寝るだけの生活も逆に健康的な気がするものの、ブログもろくに見れない毎日はやっぱり心の健康には悪いですよね。

 

さて、ようやく余裕が出来たので何か書かないとという事で、紹介が残っていたヘレニズムコインの最後としてアレクサンドロスタイプの銀貨の話をしたいと思います。

 

トラキア メセンブリア 紀元前175-125年

テトラドラクマ銀貨

AU Strike5/5 Surface3/5 lt.graffito

 

メセンブリアの都市があったトラキア地方と言うとリュシマコスの銀貨で触れたヘレニズム国家のトラキア王国があった地ですね。王国はリュシマコスの死によって短期間で崩壊してしまい、アンティゴノス朝マケドニアの影響を受ける事になりましたが、勢力を拡大してきた共和制ローマによりマケドニア王国が紀元前168年に滅亡すると、メセンブリアを含めたトラキアは都市連合の感じで独立していたようで、その頃に作られた物となります。

その後、紀元前71年にローマに組み込まれ都市国家としての独立は終わりを迎えます。

 

紀元前168年頃のトラキア周辺(マケドニアはローマに敗北後、4つの自治領に王国を分割されています。)

 

アレクサンドロスの金貨の話でこれもちょっと触れましたが、金貨と比較してアレクサンドロスタイプの銀貨の方は結構後の紀元前1世紀まで作れていたりします。マケドニアの影響範囲であったせいか同じトラキア地方のオデッソスや各都市と共に、メセンブリアはローマの支配になった後も紀元前60年前後くらいまで作られていたようです。

 

そして、トラキア地方では長くアレクサンドロスタイプが作られ続けていますので、連続して図柄の作りの変貌を追う事も出来ます。NGCだと3区切りくらいで時代毎にラベルがありますね。私の紀元前175~125年の物は真ん中辺りになります。近代貨の年号完収みたいに揃えてみると面白いかもしれませんね。えっ?私は予算無いので無理ですよ(笑)

 

裏面は…どうなんでしょうかねこれ。

表面も図柄のオリジナルであるマケドニアからはだいぶデザインが変わっていますが、裏面のゼウスの座像のこれは…。

 

ヘレニズムの後期に入るとコインが幅広になるせいか、打ち出しも浅打ちが多くなり不鮮明になってしまう物もありますが、これは図柄の出来自体のやる気がだんだん無くなってきていますね。ギリシア都市国家はローマに先立って銀貨の原材料不足に悩む事になりますので、材質が劣化したコインなんて作る気にならないよ!なのか単純に職人の腕が落ちてきてるのか。

このコインの後の紀元前1世紀のコインになるとさらに図柄の出来が落ちたり、プトレマイオス朝のような大国でも材質の劣化したビロン貨になってしまいますので、ヘレニズムとギリシア都市国家コインの終焉を見るような気持ちになってきますね。

 

プトレマイオス朝が滅亡し、ローマの中に島のように残されていたギリシア都市国家もコインを皇帝肖像の物に切り替えていき、帝政期には一時的に鋳造権を戻される事もあったようですが、多種多様な国家で発行されたギリシアコインは役割を終える事になります。

ギリシア・ローマ時代と呼ばれるように、ローマのコインもギリシアから引き継いだ神話の神々や、皇帝達の肖像も素晴らしいのですが、私はやはり大型のギリシアコインの素晴らしさも捨てがたいのですよね。

 

という事でヘレニズム時代のコインの話はここら辺で一旦終わりにして、次は少しだけ残っているギリシア都市国家のコインの話でもできればと思います。

 

ではこんな所で。