こんにちは、粟津サヤカですクリスマスベル
京都を旅するコミュニティツアーのガイドをしています。
(コロナ禍の現在、ツアーはお休みしています。)
 
眺めているだけでワクワクしていた
とあるレトロ建築の解体がきっかけで、
レトロ建築がさらされているどうしようもない現実を知り、
ならばせめてその姿を記録にとどめようと
ブログを書いています。

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公開されていないレトロ、

というのが世の中には

たくさんあります。

 

貴重な文化財ですから

保存や活用のためにも

入場料をとって

公開してくれたらいいのに・・・

などと私などは思ってしまいますが、

 

大勢の人が

一歩なかへ入るとなると

それだけで建物が傷んでしまったり

本来の機能、役割を

果たせなくなってしまったりと

様々な事情があるようです。

 

今回記録するレトロは、

京都盆地のすみっこで

山裾に埋もれるように、

しかしその格の高さは一級品、

それゆえか、

長らく公開・活用されることのなかった

皇室ゆかりのインフラレトロ、

 

旧御所水道ポンプ室です。

 

咲き誇る桜の花にも

引けを取らない

華やかさと風格を備えた

レンガ造りの建築物は

旧御所水道ポンプ室。

 

(季節外れではありますが、

桜とのマッチングが美しいので

桜の頃の写真を使います)

 

明治45年、

京都御所へ

防火用水を送るための

インフラ施設として、

 

ここ、

九条山のふもとに

建てられました。

 

目の前を流れるのは

琵琶湖疏水(びわこそすい)。

 

明治23年に完成した

おとなりの滋賀県琵琶湖から

京都市内へ水を供給する

水路です。

 

その琵琶湖疏水が

京都盆地にたどり着き、

ようやくその姿を現すのが

ここ九条山、蹴上付近なのです。

 

御所までは

ここから北西に4キロほど。

 

このポンプ室で

くみあげられた水は

いったん

30メートルほど上部にある

大日山貯水池に送られてから、

御所までの高低差

約41メートルを利用して

圧送されるシステム。

 

昭和29(1954)年の

京都御所内、

小御所で火災が起きた際には

実際に送水されたそうです。

 

御所水道は

平成4(1992)年まで

使用されていましたが、

送水管の劣化のため廃止、

管路はモルタルで重鎮され、

琵琶湖疏水からの取水は

停止されました。

 

レンガの壁体に

隅石を配した

重厚な装飾性のある造り。

 

ネオルネッサンス風

というのだそうです。

 

屋根にはドーマー窓。

ロマンチックです。

 

小公女セーラが

ままははに追いやられて

住んでいた屋根裏部屋って

私の中ではこんなイメージ。

 

正面はもちろん、疏水側。

中央部分には

2本1組の柱が左右に配され

明治建築らしい

正しく華やかな雰囲気があります。

両側に階段を備えて

威風堂々。

 

その上のひさし部分には

誰もがそこに立って

手を広げたくなるような

バルコニーまで

設置されています。

 

それほど大きな建物ではありませんが、

その存在感は

遠目にも十分です。

 

それもそのはず、

旧御所水道ポンプ室は、

宮内庁内匠寮の

片山東熊、山本直三郎が

設計を担当しているのです。

 

片山東熊といえば

東京、赤坂離宮迎賓館(旧東宮御所)を設計した

宮廷建築家。

赤坂離宮は国宝に指定されています。

そんな彼の作品の中で、

現存する最晩年の作品が

旧御所水道ポンプ室なのです。

 

京都では他にも

重要文化財の京都国立博物館も

彼の作品として有名です。

 

京都盆地のすみっこの、

人の目にふれにくいインフラ施設を

なんでそんなに豪華にしたのか・・・

それにはこんな事情が

あったのだそうです。

 

当時、まだ皇太子だった大正天皇が、

琵琶湖疏水の舟に乗って

京都へ来る予定があり、

高官がこのポンプ室で

出迎える計画があったから。

 

時代を感じるエピソードですね。

 

そう、

インフラレトロには

このような特別な事情がない限り、

豪華な装飾は必要とされていません。

 

あまりに豪華な外観に、

屋根裏部屋の小公女セーラだとか、

誰もが手を広げたくなるバルコニーだとか

テンションがあがってしまいましたが、

 

実際はポンプ室ですからね。

それに、平屋(一階)建てですし笑い泣き

 

しかし、

宮廷建築ばかりを手がけた

宮内庁内匠寮やその建築家が

インフラ設備を手がけたのは

まれなことで、

その存在自体が

貴重なものなのだそうです。

 

今回は

旧御所水道ポンプ室を記録しました。

 

数年前から

琵琶湖疏水の大津・蹴上間で

遊覧船が運航を開始しました。

 

旧御所水道ポンプ室は

その起、終点にもなっていますので、

利用される方は

もっと近くで見られると思います。

 

他にも、

現在、保存・活用が

積極的に検討されているようなので

これからどのよう変化していくか、

楽しみです。

 

また、旧御所水道ポンプ室からは、

同じく琵琶湖疏水関連の

インクラインや、

南禅寺の水路閣など

観光名所にも近いので、

近くにこられた際は、

ちょっと遠望にはなりますが、

ぜひ、この旧御所水道ポンプ室も

忘れず、見てやってくださいませ。

 

それでは、今回はここまで。

次はどこを記録しようかな~ランニング

 

琵琶湖疏水関連のレトロは他にもいくつか記録しました。

ぜひ、併せてご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の記録は下記を参考に作成しました。