半径3メートルから宇宙の果てまで -14ページ目

ハイキング三頭山

このところの週末毎の登山。今週はヨメが一切経山を希望し、面白そうだとは思ったのだがちょっと現地までが遠すぎるので今回はやめ。それに先週の乾徳山がヘビーだったので、今週はもっと気軽な短いコースにしようと思ったのと、以前自転車で武蔵五日市近辺の秋川渓谷を走っていたので身近に感じた理由という理由から、奥多摩の三頭山に決定。

7時半頃家を出て、立川から青梅線に乗り換え。拝島で武蔵五日市に行く前半分と奥多摩に向かう後ろ半分に車両が切り離されるのだが、それを途中で知った乗客が前に後ろにあわててホームを疾走する姿がちょっと面白い。登山の格好をした小さなおばさんがものすごい勢いで走っていく姿は、よそではそうそう見られない。もう一つ面白かったのは、拝島を過ぎると電車のドアが自動開閉じゃなくなること。みんな地元の人たちはさりげなく扉脇の「開」ボタンを押して自分で扉を開けていた。ドアを全部開閉する電力をセーブしているってことなんだろうか。

8時48分、武蔵五日市駅に到着。数馬行きのバスにだけ、あっという間に列が出来る。1時間のバス旅、座れるのか? と不安がよぎる。

武蔵五日市駅バス停

悲しいことにちょうどオレら夫婦だけ吊革がお友達。やっぱり電車を下りて悠長に便座に座っていたのが敗因だな。
とにかくバス出発。くねくねの山道は吊革に捕まってないと危ない。おまけに運転もあまり上手じゃないようで、シフトチェンジのショックがでかい。

途中で浅間嶺あたりに行くらしい登山客が数名が下車。道のり半分くらいで乗客全員座れる形になった。

こういう席取り合戦って我ながらちょっと浅ましい感じがしてしまう。50代くらいのおじさんがたちが、座れているにもかかわらず、空いた席のほうが足が伸ばせそうとかちょっとでも快適そうだと思ってか、わざわざ移動してしまう。

ペアシートが空いたときに、オレら夫婦が座ろうとしたら、優先席にいたおっさんと後ろにいた別々のおっさんが、ささっとそこに座ってしまったことがあった。明らかに立ってるオレたちが座ろうと動いているのにだ。とりあえず優先席が空いたので、ヨメがそこに座り、また席が空けばオレが座ろうと思っていたら、移動してきたおっさんたちの後ろのペアシートがまたひとつ空いた。
結局ペアシートにオレが一人で悠々と座れてしまった。面白いのは、その空いたペアシートはさっきあわてて席を移動したおじさんの一人が座っていたシートなのだ。おじさん、さっき移動せずに座ってれば隣の若者が先に降りて行ったのにね。
おじさん2人は、結局窮屈に男二人で膝をそろえたまま、終点数馬に到着した。

電車で端の席が空くと、わざわざ真ん中からそこに移動してくるってのはどういう心理なのか。なんだか見ていてちょっとイラっとするのはオレだけ?

数馬からは都民の森まで無料のシャトルバスに乗り換える。早速乗り換えた先でも席を確保しようとおばちゃんたちが、バスの運転手に「どこで並んでたらいいの?」と焦っている。15分くらいなんだから別にいいだろと思ってたけれど、やっぱり老人には少しでも登山前に足を使いたくないっていう気持ちがあるんだろう。
こういうところは若い人たちほどお行儀がいいと思う。オレもそうありたい。そもそも1時間バスで立ってたからって登山にはそんなに影響ないだろう。もっと激しい上り下りをするんだから。

数馬のバス停からぐいっと峠道を上がっていくが、その間の自転車の量がすごかった。どんなのに乗ってるんだろうとバスから覗くのが楽しい。オレもいつか自転車できてみたいが、武蔵五日市の駅からだと標高で800mほどを登る一方なんだから、かなりきつそう。

都民の森に到着すると、まず靴を縛ったりして準備開始。その間もあちこちで止まってる自転車に目がいって仕方ない。
(あ、BMCのPro Machineだ! 初めて見た! かっこいい!!)
(アンカーって意外に多いな! あ! これRHM9SLじゃん! すげ~!!)
(クロモリって多いんだな。このコルナゴのクロモリ、エレガントだなあ)
などと気を散らせてると、なんと登山靴の紐のフックがブツっと取れてしまった。
「え~~~! まだ4回目なのに!!」
不良品じゃねえのか、石○スポーツめ!と悪態をつきながらもなんとか靴を縛り終えた。

売店の入り口に山バッジ発見! 谷川岳でも乾徳山でもバッジを買えなかったので買えるうちに買っておこうと早速購入。480円也。

10時半、登山開始。今回のコースは一番楽な、都民の森~大滝~三頭山山頂~鞘口峠~都民の森のピクニックコース。森林館の脇を左に回って大滝方面に登り始めた。

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登山道は木片が敷き詰められていてフカフカでとても歩きやすい。昼前の明るい太陽でほんとピクニック気分。
しかしちぎれたフックのせいで靴の固定が悪いのか、新しい靴下が悪いのか、今までなかった痛みが出てきた。なんども縛り方を工夫し、道がいいうちに安定させねばとプチイライラ。

すぐに滝に出る。滝近辺にはお弁当を広げる(もう!?)家族がありました。

夢ノ滝

滝へ流れ込む沢づたいの道は、ブナ林の明るさも相まって涼しくて快適。『気持ちいい山』のひとつの姿。

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乾徳山にいったとき、やたらと足下をジブリのアニメに出てくるような、毛玉にながーい脚のある虫がゆらゆらと歩いていて、なんて言う蜘蛛なんだろうとあとで調べてみて、ザトウムシというダニの一種だと知った。そのザトウムシがこの山でも登山道をユラユラと歩いていた。ただし乾徳山で見たのは、体がオレンジで脚が黒いデザインだったのが、三頭山にはいくつかのデザインがいた。脚の関節ごとが白くなっているやつ、ひたすら真っ黒なやつなど。蜘蛛だと思ってるうちはそうでもなかったのに、ダニだと思うとちょっと気色悪い。生き物差別はイカンです。

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どんどん沢伝いに登っていく。涼しい。

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沢から離れると次第に道も狭くなり、登山道らしくなっていくが、三頭山全体に言えるのは、かなり登山道が整備されていること。

あとこの山はトレイルランナーがとても多い気がした。高尾山はゆるすぎるのか、ここはやけに熊鈴を提げて走りまわるグループが多かった。

富士山遠望

そうしているうちに三頭山山頂(西峰)に到着。山頂からの眺めの写真です。うーっすらと富士山の山頂が写ってます。うちのベランダから見える富士山よりは大きい・・・気がする。

山頂はひらけてはいないけど弁当拡げる程度のスペースは豊富で、あちこちでおにぎりにかじり付くカップルや家族がいた。オレたちも常備しているウレタンマットを敷いて昼食。唐揚げとかこういう弁当には最高にうまいね。

三頭山には西、中央、東の3つの山頂がある。山頂って一番高いものを言うんじゃないのかと思うのだが、双耳峰とかいう言葉があるように、二つや三つの山頂が地学的にあるんだろう。よくしらんけど。

で、ルート上にある中央、東を踏んで下山コースに入る。

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登りで使った大滝コースは比較的乾燥した歩きやすい道だったが、鞘口峠と山頂を結ぶルートは道がぬかるんでいるところが多く滑りやすい。急降下する岩場も少なくないが、短距離で同じ標高を移動するわけだから当然か。

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鞘口峠を越えると急に里山っぽい感じになり、明るさ倍増。

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登山道が終わるところに炭焼き小屋。

でもって14時ころ、都民の森に到着。ソフトクリームを舐めるヨメ、キリンレモンをのみながら自転車をじろじろと眺めるオレ。
(あ! オルベアのオルカだ! 白いヤツなんて初めて見た! うわー触ってみてえ~)
(チームジャージか。なんかかっこいいなあ)

14時18分、数馬へ向けてバス発車。降りたらすぐに奥多摩の秘湯・蛇の目温泉たから荘まで徒歩3分。茅葺きの古民家を温泉宿にしている歴史あるところ。
入湯料1,000円は安くないけど、続けてほしいってことで心付けの意味でも気持ちよくお支払い。

蛇の目温泉

蛇の目温泉(女湯)

男湯は客がいたので、ヨメが撮った女湯です。窓の下は秋川の渓流。
ぬるめの湯でとても気持ちよかったです。

数馬のバス停から武蔵五日市駅まで渋滞で予定の電車には乗れず、自宅についたのは18時半。まあ明るいうちに帰れたってことでOKです。
しかし奥多摩、足がないと異様に時間がかかるので、なかなか大変です。でも少ない道が渋滞したら逃げ場もないし、電車で寝られると思うと一長一短だな。うちからだとちょっと時間がかかるけど、いい山でした。

三頭山 西峰(1,527m)・中央峰(1,531m)・東峰(1,528m)
交通費 一人往復2,820円

東京観光

6ヶ月目の検診を受けに、朝一番でお茶の水へ。
大学病院の受付をして、そのまま朝飯を食いに出る。
戻ってきたらちょうど検診が始まるころで、ほとんど待つことなく順番が回ってくる。
いつもならそれで終わりだが、今回はその後でドクターと出産計画についての面談があった。子宮筋腫核出手術後の出産として、自然分娩と帝王切開の選択のメリット・デメリットについての話だった。この病院で手術していたので、自然分娩の選択肢があるのだが、やっぱり子宮破裂なんて話が出ると(帝王切開でもいいんじゃん?)という気になってくるが、できれば自然分娩で生みたいというヨメの希望を、できるだけ優先させてやりたい。
でも今まで子宮破裂の例はないですという言葉にちょっと安心して病院を出た。

さて、そのままの足で水天宮に到着。

「・・・こんな小さいの?・・・」

ほんの街の一区画に表参道が直角にくっついた水天宮があった。見るようなものも特になく、お参りしてすぐ六本木へ。

六本木の駅を降りて、美術館まで行く途中で昼食。特に感想なし。
初めて新国立美術館来た。お目当てはルネ・ラリック展。
デザイン画(デッサン)は別にたいしたことなかったが、ガラス工芸としての緻密さは楽しめた。やっぱり代表作的な扱いを受けている宝石を咥えた鶏の頭のティアラは凄かったです。
しかしなんで美術館や博物館ってこんなに疲れるんだろうか。

なんとなく気持ちまで疲れてしまい、帰ろうかななんて思いつつも、せっかくなので品川へ。
エプソンのアクアスタジアム。都内にあるのに行ってないのは水族館好きとして失格。
1800円を支払い、入場。
イルカショー直後でものすごい人の移動。水槽のトンネルの先には、ポニョに便乗して、小さな魚の展示をしているのだが、水槽にたくさんのポニョの人形が入ってて、「なんじゃこりゃ」な感じ満載。
・・・あれ・? これだけ? あとはアシカショーとイルカショー。

そうか、ここってそういうところだったんだ。とても小さな水族館だったんだね。
イルカショーを待つ間の約90分間、とてもいい休憩になった。居眠りしたりポップコーン食ったり、イルカのちょっとした調教(ジャンプ)見たり。

水族館を出て、新宿へ。
次の山登りでザックに入れて使うハイドレーションパックを買うつもりで、初めて新宿の好日山荘へ行ってみた。ワンフロアで見やすい! でも品揃えはL-Breathのほうが豊富な気がする。
結局L-Breathへ移動し、プラティパスの2Lのパックを購入。
この秋はマムートの長袖シャツ買ってやる!

好日山荘

父親になる

そういえばここで子供が生まれる話を書いていなかった。
年末、オレもついに父親になります。でもってなんとなくこのブログでの一人称が僕からオレになってます。やっぱオレの方が自然に書ける。

妊娠が分かったのは5月の初頭。できたかもしれないというヨメの言葉で薬局に走り、妊娠検査キットを買ってきて、早速テスト。ああ、これ以上ないほどくっきりとした陽性反応。
しかしドラマで見るような、流しに走ってゲロゲロという悪阻らしい悪阻がまったくないので、オレもヨメもちょっとキョトンとしていた。

後日、去年子宮筋腫と卵巣膿腫の摘出手術をしてもらったお茶の水にある大学病院で診てもらったところ、しっかり(正常に)妊娠していると判明。妊娠って、まず胎児が宿る部屋が出来るのだってこともこのとき初めて知った。

早速その、ただ丸い部屋の映ったエコー写真を持って、すぐ近所に住む義父たちの家に報告に行った。不思議なもんで、電話で「今夜ちょっといくけど」と言われた時点で、もしかして懐妊?と思っていたらしい。
祖母はそのペラペラのエコー写真を手にして、泪を流していた。
「この娘も母になるのねえ」と。
義父はソファに座って両手を組み、
「そうかそうか」と
これもうれしそうにしていた。
義理の両親にとっては初孫になる。以前は近くに住んでるけど面倒みないわよといっていたのに、
いざ妊娠がわかると、オレたちが共働きだから自分たちも面倒みなきゃみたいに盛り上がってしまっている。
家に戻ってオレの両親に電話をし、「安定期までは大事に育てなさいよ、おめでとう」と祝福を受けた。

2つ下の妹の息子たちからハガキが届く。
へたくそな覚え立ての字で「あかちゃんはおんなのこだよ」とあった。
確率50%の予言だが、なんだか不思議な気分になって、女の子を前提に考えてみることにした。

検診も回を重ねるごとに、エコー写真に写る胎児はどんどん人間のかたちになっていった。
手足を丸めている小さな我が子の影を見ていると、自分の中に何かザワザワとした感情がわき起こってくる。たまらない愛情のようなもの。
それはオレと出会って、恋人になって、奥さんになって、いよいよ母になろうとしてる彼女に対しても感じている。

安定期に入るかどうかという頃、まず、子供のいる友人たちに報告した。自分もそうだったように、子供のいない、ましてや独身の時に、子供が出来たという報告を受けても、「あ、そう、おめでとう」くらいにしか思わなかったのだが、自分に実際起きてみると、子供のいる友人たちを見る目が少しかわったからだ。みんなこの感動を知ってるんだなという連帯感みたいなもの。
不思議なもので、結婚も子供も、別に特別なことではないのに、自分の身に起きるととんでもない変化だということがわかる。逆に経験してみないとちっとも実感できないことだった。
家族もちの友人たちは100%、「おめでとう」という言葉ではなく、自分のときもどれだけ嬉しかったかという話をして祝福してくれた。
中でも同業者の友人の言葉が印象に残っている。
「子供ができるってさ、結婚なんかよりずっと大きいことなんだよね。なんというか、自分のためだけに生きてるわけじゃないっていう気持ちになるって、でかいよ」
そうかもしれない。

5ヶ月の終わりごろ、ヨメがおなかが動いてる気がすると言うようになった。ネットでいろいろ見ても胎動がある頃だとある。ついに来たかとベッドでヨメの腹に掌を当ててみた。
・・ぐにゅ・・・
「!! 今動いた!!」
ついに胎動を感じた。細い棒で腹の中からスっと撫でられるような、かすかな感触だった。
自分の子供が生きてるんだという事実に、いまさらながらハッとした。
ナショナルジオグラフィックでしか見たことないような、胎児が自発的にぴくぴくと動いている世界が、このヨメの腹の中で展開されている事実を感じた瞬間だった。

昨日から6ヶ月目に入った。

こわいよ乾徳山

谷川岳に続いて、今回は奥秩父の乾徳山(けんとくさん)。三国志に出てくるような名前です。
最寄り駅のJR塩山は、「ワイナリー」というエントリーでも書いた駅。
http://lifetag.blog123.fc2.com/blog-entry-125.html

塩山の駅前のバスターミナルについたのが8時50分。バス停では沢登りに行く学生や登山姿の人たちばかりで、結局乾徳山登山口を通るバスはそういった人たちだけで満員になっていた。
そもそもバスの始発が9時05分。乾徳山登山口(徳和)につくまで約40分。沢登り組以外はそこで降りるのかと思っていたら、降りたのは5名のみ。え、こんだけ!?

徳田バス停から乾徳山登山口へ

のこのこと登山口まで向かって歩いていくと、乾徳神社があり、そこから未舗装路が始まる。斜面を巻くと登山口にたどり着いた。この時点で10時を過ぎていて、もう汗が流れてる。

乾徳神社

また準備体操もなんもせず、おもむろに登り始めてしまい、すぐに息が上がってしまった。このときでまだ標高1,000m程度。2,031mの頂上まで行けるのか、先が思いやられる。
貧脚を自認する故、なるべく疲労のないような歩き方を模索しつつ、一歩一歩上がっていく。こういう探求は楽しい。ステッキの最適な長さを探しつつも、なるべくステッキに頼らないように、バランスが取りやすい所ではステッキを横にして、熊鈴が適度に鳴るように振ってみるとか、いろいろ試す。
神社で靴紐を結んでいる間に追い抜いていった青年二人はもう100mくらい上を行っていた。やっぱ速いな。若人は。

まもなく最初の水場、銀晶水に到着。本によっては涸れているとあったけど、チョロチョロと水は出ていた。まだ登り始めて1時間程度だったので、手持ちの水で十分。3分ほど休憩して先を急ぐ。
写真は銀晶水のプレート。水はこのちょい奥から出ていた。

銀晶水

銀晶水を過ぎるとだんだん岩が増えて、足場が荒れてくる。天気は曇ったり晴れたりを繰り返していた。途中廃道になった林道を2本越えて標高を上げていく。

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山登りをしていて面白いのは、標高が上がると、突然線でも引いたように植生が変わることだ。この山もある一線を境に、鬱蒼とした広葉樹の森から、白樺の林立する、笹の絨毯が広がる景色に変わった。そうなるとまもなく二つ目の水場、錦晶水に到着。明るくて平坦で開放的な場所だ。水場ってやっぱりなんか安心するよ。

錦晶水

水は冷たくて美味い。が、ここ、わき水ではなくて流れてる水なんだな。最近じゃ登山者が増えて高地での野糞で山の水が汚染されてるなんて話を聞いてるけど、大丈夫だろうかとちょっと不安になる。胃腸のあまり強くない上に便所もないところでさし込みなんて来た日にゃ・・・
と、心配になりつつも「まあいいや」と喉の渇きには勝てず、水筒の水も錦晶水に詰め替えた。なるようになるわ!

錦晶水

錦晶水を過ぎるとしばらくは小さな流れと平行して歩くことになる。国師ヶ原の一歩手前だ。

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あ、鹿だ。

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森を抜けて国師ヶ原に。背後に見えてるのが目指す乾徳山。

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国師ヶ原を抜けると扇平に向かう坂。坂といっても高原の坂道を上がっていく感じ。それもその通り、昔ここは牧場だったそうで、途中の使われなくなった2本の林道はたぶんこの牧場に行くためのものだったんだろうな。

そんなこんなで扇平で休憩。空気が急に高原ぽく乾いて心地よい。
本によっては「おおぎだいら」だったり「おおぎびら」だったりするけど、どっちなんでしょう。
ここで標高約1,800m。あと200mを残して急にまた森が始まり、岩登りが始まる。

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扇平を過ぎてからの森は、ほとんど岩で出来ているんだろう。木の根と岩をよじ登るように上がっていく。だんだんステッキも邪魔になるほど岩に捕まることが多くなる。

ここで、先行していた初老の男性が初心者のおばさんたちを率いる5,6名のグループに追いついてしまった。
男性が足をかける場所を指示しながら、おばちゃんたちは上っていく。彼らの休憩を見計らって追い越したが、麓からずっとついてくるアブとスズメバチに悩まされていたようだった。
アブはヘリコプターみたいな顔、スズメバチは戦闘機だな。

ついに岩場が始まった。もうね、2,000mの岩場でウロチョロとよじ登っていくって思ってたよりずっと怖い。玉がむずむずして仕方なく、「ここでパニクったら文字通り身がすくんで動けなくなるんだろうなあ」と完全に腰がひけてしまった。
(でも子供やおばさんも上ってるんだから、足下だけしっかり確保してれば大丈夫だ、言い忘れたけどオレスパイダーマン!)
と自己暗示をかけ、体がこわばらないように、深く考えないようにして上っていった。
そもそも乾徳山なんて5ヶ月の妊婦が上るような山じゃない・・・ すみません!

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この岩場の先は崖っぷちですよ。確実に死にますよ。完全に腰が引けてます。かっこわるい・・・

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この上で、中学生くらいの少年とその母親とすれ違いました。女子供が大丈夫なのに、すっかり「こえ~よ~」と腰が引けてる自分が恥ずかしい。

この後、有名な垂直の岩の鎖場ですが、妊婦に上らせるわけにはいかんということでオレも素直に巻き道を選択。
でも巻き道も梯子2本と大股でよじ登る岩場の連続で、けっこうな難所でしたよ。

でもってついに頂上。ピークハントであります。
最後の岩場を越えると、女性登山者が一人で写真を撮ってました。「撮りましょうか?」とシャッターを押してあげて、こっちも撮ってもらって、彼女は「バスの時間に間に合いたいので、お先に」と下山していきました。
オレらはもうバスに間に合わないことがわかっていたので、結局ゆっくりおにぎりとソーセージを食べ、写真をパチパチ撮って、下山開始。この頂上、本などで見るよりもずっと狭いです。平らなところはほとんどなくて、岩がゴツゴツ、なんとなく尻を填め込んでの休憩です。あと、ハエやアブがぶんぶんと五月蠅く、なんか小汚い感じが・・・。

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エネルギーと水分を補給し、さあ下山だとちょっと元気になって下り始めると、登りの岩場で追い越したじいさんリーダーとおばちゃんグループがコッフェルを火にかけて食事をしていた。
「いやあ、明るいうちに下山すればいいんでゆっくりとね」と、リーダーのじいさんは笑っている。
片道3時間はかかると思うけど、大丈夫か?と思いつつも、「お気を付けて」と別れた。
こちらはもう登山口から塩山までのバスの最終には間に合わないので、金に物言わせてタクシーで帰ればいいやと、それよりも急な下りでけがしないようにそればかり気にしていた。

下り始めて30分ほどしたとき、後ろから女性が現れた。あれ、さっき頂上で会った人だ。どうしたんですかと聞くと、なんと頂上の岩場を下りてすぐにルートから外れて道に迷っていたというじゃないか。彼女は一人、「ああ、よかった~~~!」と心底ほっとしていた。彼女の急いで上り返してきて上気した顔と、真剣に不安だったろう、三角に引きつっていた目がその恐怖を表してました。
「バスもう間に合わないかも」
と泣きそうになっているので、
「これからじゃとてもじゃないけど間に合わないし、そんなに急いで歩いたらケガしますし、僕らタクシーで駅までいくので便乗してったらどうですか」
と誘うと、しばらくは迷っていたようだったが、結局「そうさせて下さい」と、3人で下山することに決定。自己紹介をしあって同道することに決定。彼女はNさんと名乗った。
みんなそうやって焦ってケガしたり、道に迷ったりして遭難していくんだなと思うとこっちも怖くなる。
だけど10年山をやっているという、オレなんかよりずっと経験豊富な人でさえ、こんなふうに道に迷うんだから山は怖い。でも迷ったまま下へ下りずに上り返してルートに戻れたのは、やっぱり経験者だったからだろう。
でも道に迷ったことが分かったときの恐怖は経験しないとわからないと言っていた。その通りだろう。ましてや単独登山だ。恐怖倍増だろう。

やがて扇平まで戻ったところで休憩。下山はコースタイムで約10分早い道満尾根で行こうかと思っていたのだが、扇平から道満尾根に抜けるルートが見つからない。
5分間、ルートを探してみてこれだとはっきり分からなかったら、往路を戻ることにしようと、しばし散策。
バンビが2頭走り回る扇平を徘徊するも、全く踏み跡が見つけられず断念。なんだったんだ、『道満尾根ルート⇒』という標識は。

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国師ヶ原でも道満尾根へのルートは取らなかった。疲れていたのと夕方になりつつあるので、知らないルートでまた道に迷ったら復帰できないと思い、知ってる道を行くことにした。
錦晶水まで戻ってくると、16時というのにけっこう暗くなってきた。一気に心細くなってくる。けっこう錦晶水の水を飲んでいるが、腹の調子は大丈夫だ。ああよかった。
錦晶水を過ぎて、林道を越え、駒止までさしかかるあたりでは雨までぱらついてきた。広葉樹林帯に入ってますます森は暗くなる。
カッパとザックカバーをセットして、下山続行。足下もだんだん濡れてきて、浮き石にずるっと滑る回数が増えてきた。(やばいなあ)と思いつつも、こういう時こそ暢気に構えるべしと3人で雑談しながら、ゆっくりでも止まることなく下り続ける。
標高が低くなり、まわりの樹が高くなってくると、景色も本来の明るさに戻ってきた。銀晶水を過ぎるともうあと少し。
「登山口で『無事生還』の記念写真撮りましょうか」と言うと、
「是非!!」と気分も盛り返してきたようで、そこからは気分的にもずいぶん楽になり、無事登山道へたどり着いた。
約束通り、3人で登山口で記念撮影。バス停まで歩く間、もう温泉のことしか考えてなかった。帽子のあごひもも、しごけば汗がしたたり落ちるし、Tシャツも全面はベタベタで、首のタオルはもう雑巾みたいなニオイになってきた。

徳和のバス停に戻り、タクシーを呼ぼうとすると、なんと僕ら夫婦の電話が圏外に。ああ、ここは山間部だった、ウイルコムなんて無理だった。するとケイタイを持つNさんはさすが圏内に。助け合いとはこのことだ。しかし電源を入れたNさんのケイタイには一気にメールや不在着信が。そりゃ予定時間になっても電話が繋がらないんだから関係者は心配したでしょう。
タクシーを待つ間、Nさんが登山仲間に無事を告げる電話をしまくっている間、僕ら夫婦は自販機でサイダーとコーラを飲んだ。山登りの最後に炭酸飲料って気持ちいいんだよな。

タクシーに乗り込むと、運転手が「温泉だったら塩山の駅にもあるよ、銭湯だから安いよ」と勧めてくれて、じゃあそっちにしようと3人で塩山の銭湯へ。
塩山駅から歩いて10分弱の宏池荘。朝湯の会とかあって、地元の人はよく利用しているそうです。年取って朝からこういうところに入って友達と会えるって最高に楽しいだろうな。
湯船に浸かって足を揉むと気持ちいい悲鳴が上がってしまう。
隣の水風呂の浴槽に入っている老人が話しかけてきた。
「お兄ちゃん、山登り?」「どこの山?」「ケントクさんか(山のサンじゃなくて、信仰対象の意味でのサン)」
「いい体してるね」「鍛えてるの」
どんどん話しかけてくる。ひとなつっこいなあ。脱衣所にもロッカーなんてないし、みんな顔見知りみたいなもんなんだな。いいねこういうの。

銭湯といってもしっかり温泉! 400円だしこりゃよかったと十分に堪能。もう最高に気持ちよかった!
乾いたシャツに着替えて最高。早く帰って寝転がりたい。帰りは塩山から八王子まで特急(自由席100%オーバー!)で一気に帰京。

乾徳山登山に関して、交通機関で行く場合は、塩山からタクシーがいいと思う。徳和までのバスの始発が9時って遅すぎると思う。しかも最終が16時台ってのは、ほぼコースタイム通りに下りてこないと間に合わない時間です。タクシーなら片道4000円ほどなので、登山開始を早めて帰りのバスに余裕を持たせるほうがいいと思う。次回行くならそうします。

以上が今回の旅でした。万歩計はドアtoドアで約35,700歩。
乾徳山ってのは樹林帯、高原、岩場とひとつの山にいろんな表情があって面白いんですが、ちょっと今の自分たちにはレベルの高すぎる山でした。次は妊婦が登っても怒られない程度の山にしよう。

乾徳山 2,031m
交通費 一人往復8,090円(帰りはタクシーと特急券)

霧の谷川岳

朝、5時半に起床、おにぎりを一個急いで食って、6時07分の電車に乗り込み、新宿~大宮と空いた埼京線に乗り、大宮から上越新幹線で上毛高原駅へ。
そこからバスで水上駅まで出て、天神平のロープウエイ行きのバスに乗り継ぎ、到着したのが9時半頃。
切符売り場のおばさんが、丁寧に山の状況を教えてくれる。
「どしゃぶりで濃霧ですよ」
今それを言われたところで何がどう変わるもんでもないですが、トイレ(清潔&ウォシュレット)を済ませていざ出発。
ハイシーズンは乗り場が大行列になるそうだけど、この日は全く客の姿がない。大きなゴンドラを二人で占領。
そして今回の旅で導入した新兵器その1が、このSONYのGPS。デジカメとに使ったSDカードをこいつのロケーションデータをリンクさせて、写真に位置情報を打ち込むためのガジェット。Google Earthなどに読みこむと、その場所に写真が貼られるってやつです。この手の携帯GPSは受信感度がボトルネックになりがちですが、濃霧でもしっかり受信し、ザックやカッパのポケットに入れておいても大丈夫でした。なので今回の写真には全てジオタグが埋め込まれているので、リンク先のFlickrでは地図上で場所まで確認できます。

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ロープウエイ天神平駅を降りると視界は10mちょっと。そこでカッパを着込み、靴紐を縛り上げて出発。なにしろ全く視界が効かないので、登山道がどっちなのかもよくわからない。リフトの脇にある案内看板で方向を定め、森に入っていった。まるでカルピスの中を歩いているよう。

濃霧の登山道

熊穴沢までの避難小屋までは木道も敷いてあったりのハイキング的な作り。足下をシャクトリムシがヒョコヒョコと横切る姿をムービーに撮ったりしてのんびり。
このあたりで標高が1,400m台。まだまだヤブ蚊やらいろいろ集まってくる。食虫植物のモウセンゴケが自生していた。美しい。

モウセンゴケ/Sundew

コースタイム通りに熊穴沢の避難小屋に到着。ここまでで出会った登山者は50~60代の10人ほどのパーティと、3歳くらいの子供をつれた家族と、手ぶらでカッパだけを着た二人組の青年の刑3組。
雨がやんだのでカッパを上だけ脱ぎ、地図でルートを再確認し、チョコレートと水を補給。この避難小屋、ちょうど体が慣れてくるあたりにあるので、いい休憩所になる。

熊穴沢避難小屋

避難小屋を過ぎると急に本格的な登山道になり、ロープや鎖場が頻出する。蛇紋岩の岩肌はぬれると滑るので、足場を吟味しながらけっこう緊張する。

谷川岳天神ルート

だんだん霧が濃くなり、完全に雲の中に入っている。
尾根道に出ると、谷から雲の塊が吹き上がってくる。本来なら絶景なんだろうけども、視界は全くなく、雲の湿度で首のタオルがどんどん重くなってくる。ゴアテックスの透湿力を超えた汗の量に、Tシャツもベッタベタ。
肌にあたる風は冷たいんだけど、湿度が半端じゃないので汗もなかなか蒸発せず、べたべたなままで乾燥しない。これが綿シャツだったらと思うとぞっとする・・・。


森林限界を超えたあたりはもう完全に雲の中ってことで、右に左に冷たく湿った風になぶられる。景色が見えて、この風じゃけっこう怖いんじゃないかと思ってみたりする。でも景色はカルピスなんですけどね。下生えが多いところは風も殺されるので比較的穏やかに歩けます。やっぱ植物のある所とない所じゃ風の強さが全く違うのを実感。


谷川岳

頂上手前にある肩の小屋奥の祠を超えると10分しないところが山頂トマノ耳。
景色、なし。

sony GPS




午後1時、登頂。愛用のPROTREKは標高1985mを指してるけど、ここの標高は1963mです。でもこの手のセンサーが計る標高って気圧からだと思うんですけど、天候で変わってしまう気圧に準じるってかなりアバウトだってことですよね。これくらいの誤差は仕方ないんでしょうか。まあ、びしっと正確なものを期待しているわけでもないんですけどね。

山頂で写真を数枚とるも、雲の風がすごくてデジカメのレンズにすぐ水滴が貯まってしまい、ろくな写真が撮れない。とりあえずウレタンマットを敷いて昼飯。とりあえずコッフェル類も持ってきたけどとても湯を沸かしてゆっくりなんて気になれず、おにぎり2個とゆでたまごに塩を振って水を飲む。なんのなんの全く問題なく美味い。10分じっと座ってくると、汗だくだったのが一気に冷えて寒くなってくる。山ってこういうのが怖いです。
何も見えないしコースタイムを30分以上超えての登頂だったので、オキノ耳登頂はせひ晴れた日に再挑戦しようということにして、下山。
真っ白な中で雲が飛び交う中を、左右に遮るものがない尾根を歩くのはちょっと怖い。ドキドキしながら濡れた岩場で滑らないように山を下りる。
と思っていたら、肩の小屋を過ぎた階段の途中で、着いた足を滑らせて階段の丸太の間にすっぽり嵌る。ヨメの悲鳴が聞こえたが、ザックがしっかりクッションになってくれて無傷。でもちょっとびびった。

一度派手に転んだせいで、もう大きな岩場が怖くって怖くって。手をついて、ステッキで体重を預けられる場所を慎重に確保しながら降りているので、時間が・・・・。ふと後ろを降りてくるヨメを見ると、手だけでそつなく降りてくる。なんだか自分だけ険しい山岳をかろうじて下山してる感が出てて、複雑な気分。まあでも5ヶ月の子供を宿した彼女に転ばれるのは空恐ろしいので、オレは余計ゆっくり降りてやることにした。息が上がって見えるのは気のせいです。

そうこうしているうちに熊穴沢の小屋まで戻ってきた。かなりタイムオーバーしていたのでコーヒーでも飲もうかと言っていたが石川県から来たという50代とおぼしき3人組と少し会話をしてすぐに出発。
さっきまで続いていた岩場下りが急に木道になったのでスピードややアップ。ここまで降りてくるとまた虫がぶんぶんと五月蠅い。

stand alone in the fog

登山道出口の一本の樹が霧に巻かれてなんとも幻想的だったので1カット撮影。森の中で道に迷ったときに出てきそうな雰囲気。

天神平駅からロープウエイで下りながら、カッパをしまい、ヨメなんてTシャツまで着替えて身支度。冷たいコーラが美味かった。

水上駅までバスで戻り、来た時と同じように上毛高原駅行きのバスを、上牧(かみもく)で途中下車。バスの扉が閉まった瞬間、帽子を置き忘れたことに気づき、「ああああ!」っと走り去るバスの後ろ姿を見送る。ヨメは呆れると同時に「もう!!」と怒り出す。やばし。帽子を忘れたショックよりもヨメの機嫌が戻るにはどうすればいいのかを考える。
バス停にあるバス会社にすぐ電話して、連絡を待つ。が、気づくと電話の電池が残り一目盛り!!
とりあえず温泉に入ろうとそそくさと入浴。その間にも折り返しがあるかもしれないと思い、10分ほどで風呂を出てかけ直してみると、「ありましたよお客さん!」とうれしい返事。しかし受け取りは難しく着払いで送ってもら得ることに決定。ああ、よかった! 買ったばかりで気に入ってた帽子だったので。
しかし最近こういう物忘れが多い。
「そのうち私のことも忘れちゃうんじゃないの!」
ヨメのかわいらしい嫌味にまたニヤニヤしてしまった。それを突っ込まれてまたニヤニヤの無限ループ。

最後に、今回新規導入アイテムその2。ゴールドウインが出しているC3 fitという加圧下着(っていうの?)。SKINSみたいなボディスーツのパーツ版で、今回買ったのはパフォーマンスゲイターという、いわゆる脚絆。
しかしこれがすごい。まじすごい。2000m近い山を登って降りて、電車で移動しても、脚の疲労度が段違いに軽い。歩く時は絶対いいよこれ! 江戸時代の飛脚が脚絆を巻いていたのはこういう意味もあったのだろう。いやすごい!

谷川岳、絶景を見にまた挑戦したい。