Observing China -6ページ目

ダライ・ラマとネルソン・マンデラ

サッカーのワールドカップが開幕した。今回の開催国は南アフリカなので、自然とネルソン・マンデラに再び注目が集まっている。しばらく前にNHKのBSで放送されたアパルトヘイト撤廃運動に関するドキュメンタリーを見ていて、ふと1つの命題が頭に浮かんだ。

ネルソン・マンデラとダライ・ラマはどこが違うのか?

ともに「人種(および文化)」という先天的な要素によって、法的に非支配民族にされた人々の権利回復運動のシンボルである。ともに国際政治的な影響力が大きく、ともにノーベル平和賞受賞者である。

ただ2人は違うところの方がむしろ多い。マンデラが南アフリカ国内で28年間収監され続けたのに対し、ダライ・ラマは59年にインドに亡命。以後51年間、一度も中国国内のチベット地域に足を踏み入れないまま、海外生活を送っている。

権利回復に対するアプローチも違う。マンデラは白人政権に対する武装闘争をためらわなかったが、ダライ・ラマが終始提唱しているのは「高度な自治」「中間路線」「非暴力」という穏健路線である。

2人の思想や抵抗運動へのアプローチだけでなく、当時の南アフリカの白人政権と現在の中国の経済状況も異なる。

当時の南アには欧米企業が工場進出していて、その意味で一定程度の影響力が白人政権にはあったが、まもなくGDPが世界第2位になる中国とは比べ物にならない。当時、ロンドン亡命中だったANCの中心人物オリバー・タンボに武器援助を申し出たのは、欧米政府ではなくソ連だった。今、チベットが武装闘争を始めても、ダライ・ラマに武器提供を申し出る国はどこにもないだろう。

■ダライ・ラマは身体を張ってきたか

一言で言うと「切迫感」が違うのである。当のチベットにとっては多いにあるのだろうが、少なくとも外にはそれはあまり伝わって来ない。それは、ダライ・ラマが選択している穏健路線ゆえであるようにも思える。

東西冷戦まっただ中だった20世紀後半に今のチベットがタイムスリップしたら、西側諸国はラマ僧たちにスティンガーミサイルを配るかもしれない。ただ仮に、国際情勢がチベットにめいっぱい有利な状況になっても、マンデラやタンボが南アフリカでなし得たような変化は起こらないだろう。

それは、ひとえにダライ・ラマが、チベット亡命政府が「安全地帯」に居続けていることと無縁ではない。言い換えれば、どれだけ「身体を張ってきたか」というところの差が、運動が実際に実を結ぶか結ばないか、というところで大きな差になって現れている気がする。

ダライ・ラマのいう「中間の道」も「高度な自治」も、現実の政治の世界ではありえない。政治とは突き詰めれば「殺すか、殺されるか」「支配するか、されるか」であり、気を抜いた方は負ける。

ダライ・ラマの「中間の道」に国防や外交権が含まれるなら、それはまぎれもなく独立である。譲歩する理由なく中共が譲歩することはありえない。中共とチベットの現在の「話し合い」は、双方にとってポーズ以外の何者でもない。

■西側諸国「漫遊」はやめるべき

そのダライ・ラマが今週末に来日する。亜洲週刊6月13日号のインタビューで「チベット人民が独立の道を選択するなら辞職・退位する」というニュアンスのことを答えているが、むしろなすべきことは逆だろう。

オリバー・タンボだけでは、南アのアパルトヘイト撤廃は実現しなかった。ダライ・ラマが本当にチベットの人々のことを考えているなら、西側の安全地帯を「漫遊」するのをやめ、それこそウルケシのように何としてでも中国に入国しようとすべきだ。

74歳のおじいちゃんに「身体を張れ」とはやや酷かもしれないが…。

老板、不錯!(Hey boss, good job!)

中国人が好きなスポーツといえば、何と言ってもサッカーとバスケ。現在NBAファイナル中だが、そのさなかに「世界杯(W杯)」が行われるという4年に1度のお祭り状態がまもなく始まる。

中国との時差はマイナス6時間。南アフリカの午後7時は北京の午前1時、ゲームが終わるのはたいてい夜中か明け方になる。

さぞかし寝不足の足球迷(サッカーファン)が増えて生産効率が落ちるのでは……という中南海の心配を汲み取ったのかどうか、ある会社の老板(社長)がなんとも気の利いた「通知」を社員に出した。「遠古的刀」ブログが紹介している

       *

$Observing China

会社のW杯期間に関する最新通知

1 W杯期間中、出社時間は午前9時から午前10時半に遅らせる。

2 社員の疲労回復のため、休憩スペースにレッドブルを新たに置く。ただし数に限りがあるので、1人2本までとする。各自自覚して飲むこと。

3 W杯期間中、会社は優勝チームの予想を的中させた社員の中から1名にXboxをプレゼントする(詳しくはメールで通知する)。

4 W杯期間中、ブラジル戦のあるすべての日に会社はG&Dバーで集団観戦イベントを行う。飲み物の料金は会社が負担する(参加希望者は6月11日以前に総務課まで申し込みをすること)。

5 ブラジルが優勝したら、会社は祝い金を出す!(時間は7月12日夜)

以上は会社の業務に差し支えない前提で行われる。

ここに通知する。


       *

思いっきり業務に差し支えると思うが、ノリでこれをやれてしまうところが中国経済の好調さ、なのだろう。それにしても、ブラジル以外でこれだけブラジルで盛り上がれる国も珍しい。

ネチズン的「高考」考

毎年6月7~9日に行われる中国の大学入試統一試験「高考」が今年も終わった。毎年、韓国の「修能(大学修学能力試験)」とともに、試験時間に間に合わない学生をパトカーで運んだことが美談になる高考だが、今年は北京市海淀区の裁判所が、試験終了まで受験生を抱えた夫婦の離婚裁判の判決言い渡しを延期する、という過剰反応としかいえない措置がまた話題になっている

高考といえば作文、というぐらい毎年面白問題を出してくれるのだが、今年はネチズンが面白問題を面白解釈してくれた。ネチズン的「演繹」を東南西北ブログが紹介している。

$Observing China

<全国統一問題>
Q:えさの魚があるのになぜネズミを追いかける?
A:ただでカネがフトコロに入るのに、なぜ金持ちの子供が働く必要がある?

<北京>
Q:地面に足をつけ星空を仰ぎ見る
A:有名なナイトクラブ「パッション」の中国名(「天上人間」)。中に入れない人間だけが馬鹿面を下げて外から見ている

<上海>
Q:都市と私
A:上海万博のタダ券をもっとくれ

<重慶>
Q:難題
A:地震予知

<天津>
Q:私が生きる世界
A:山ほどの地震とそこらじゅうに開いた穴

<広東>
Q:あなたと隣人になる
A:非誠無憂(うっとおしい奴は話しかけてくるな、馮小剛の映画名)

<浙江>
Q:役割の転換
A:小三(浮気相手)から二奶(愛人)へ

<遼寧>
Q:幸せとは?
A:蝸居(カタツムリの家のように狭い家)に住まないこと

<湖北>
Q:幻想と現実
A:不動産価格のコントロール

<四川>
Q:最も美しい青春
A:富士康から飛び降り自殺した若者

<江西>
Q:子供時代を取り戻す
A:メラミン入り粉乳


最後の江西省がちょっと分かりにくいが、メラミン入り粉乳を飲まなければ子供たちは死なずにすんだ、ということなのだろう。四川の富士康と浙江の「役割の転換」は笑える。地震と不動産ネタが多いのは、さすがに時勢を反映している。

文革当時には「白紙答案」で合格した張鉄生という農民もいたが、もちろん今の中国でこんな答えを書いたら「零分!(0点!)」である。