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朱鎔基、光臨!(続)

4中全会の日程が9月15日から18日と決まった。各紙が報じているとおり、会議最大のテーマは党内民主でも腐敗根絶でもなく、習近平の中央軍事委員会副主席就任である。

9月2日に「朱鎔基本」が発売されたが、人民網にそれに合わせた朱鎔基写真集がアップされている。この中には、いままであまり見たことのない若かりし頃の結婚写真や、息子と娘の写真、すっかり昔の面影がなくなって何だかノーベル賞の益川敏英さんみたいになった現在の写真もある。興味深いが36ページもあってクリックするのがめんどくさいと思うので、おもしろそうなものだけここで紹介したい。

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結婚写真。男の顔には人生が現れるというのは本当だと思う

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二胡を引く引退後の朱鎔基。好々爺

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同じく引退後の朱鎔基夫妻。顔が変わった(小さくて見えにくいが…)

唯一の「生ける伝説」である朱鎔基が、建国60周年を前に表舞台に出る(本だけど)ことに何の違和感もない。ただ朱鎔基は「反腐敗」「改革」の人であると同時に、江沢民時代の人でもある。朱鎔基の登場は、構造改革の時代だった江政権の正当性を裏付ける意味もまたある、とも読める。人民日報もお墨付きを与えているところを見ると、要は「両派」にとって便利な存在だから、ここに来て引っ張りだされたということなのかもしれない。

両派の綱引きの結果がイーブンなら、習近平は軍事委副主席に就任するだろう。このままだと、本当に「李克強全人代委員長」が実現してしまいそうな雰囲気だ。団派はどう巻き返すのだろうか。

知られざる発展エリア、内モンゴル

Q:中国でいま一番発展の速いエリアはどこか。正解を次の中から選べ。

(1)北京(2)上海(3)広州(4)いずれも間違い

もちろん、正解は(4)。現在、直轄市・省別でGDP成長率が最大なのは内モンゴル自治区である。2002年以来、7年連続で成長率トップを維持しており、金融危機の直撃を受けた今年上半期も16・2%を維持している。羊と馬と草原しかないはずの内陸部の自治区が、どうして?

新華社の記事ははっきり書いていないその原因を、「南方週末」の9月3日付の記事「内モンゴル:7年連続経済成長率トップの栄光と苦悩」が明らかにしている。記事によれば、内モンゴルはカシミアと羊肉、乳製品頼みの経済からとっくに脱け出し、「黒金」(石炭)の生産を牽引車に、人民がそのおこぼれに預かるトリックルダウン経済へと移行したのだという。

その立役者が、01年に自治区党書記に就任した儲波である。儲波は湖南省長時代に長沙、株洲、相潭地区の一体化による経済発展モデルで名を馳せた経済通で、内モンゴル着任後も02年に起きた全国的な石炭不足、電力不足を奇貨として、手付かずの状態だった自治区内の石炭資源の大規模採掘に乗り出した。

「カシミアの都」だったオルドスは「石炭の都」へと姿を変え、かつてカシミア生産で世界的に知られていた企業、オルドス集団はエネルギー企業へと転身。08年の同社の売り上げはカシミア関連が31億元なのに対し、石炭や冶金関係は62億元に達しているという。

■□「独立」運動に火が着く?□■

記事は、2000年に北京(と中南海)を襲った黄砂によって、内モンゴルは羊だのみの経済からの構造転換を迫られた、とも書いている。何だか構造転換によって内モンゴルが地球環境の改善に寄与しているような書き方だが、ちょっと待って。確か石炭って、地球温暖化の不倶戴天の敵なんじゃなかったっけ?

ちなみに、内モンゴルは石炭生産量では全国一ではない(3億トン超、07年)。トップは5億トン超の山西省である(炭鉱事故やあの児童奴隷事件を思い出して欲しい)。内モンゴルがGDP成長率で突出しているのは、その経済効率がいいからだろうが(石炭増産にあわせて交通網を整備したらしい)、とはいえ排出されるNOxが減るわけではない。

自治区政府は7月1日から、1トンあたり15元の石炭税を生産企業に課している。地域内の貧富の格差是正という名目だが、過熱する生産を抑制する狙いもあるだろう。ただ、石炭への国際的な風当たりは今後、強りこそすれ、弱まることはない。いったんついた炭火を消すのはなかなか難しい。まして、場所は最近「独立」が話題になっている内モンゴルである。うまく「火消し」できないと、少々やっかいなことになるかもしれない。

朱鎔基、光臨!

現代中国の指導者を歴史上の人物になぞらえると結構面白い。毛沢東は国の始祖である点とその残虐性から文句なしに秦始皇だし、前政権の混乱に乗じて王座を乗っ取った江沢民はさしずめ董卓といったところだろう(精力が董卓ほどかどうかはさておいて)。

難しいのは鄧小平。孫権という感じではないし、「股くぐり」の韓信はイメージこそ近いがしょせん軍師止まり(!)で鄧小平に及ばない。温家宝は頭こそいいがひ弱なところが諸葛亮に似ている。

個人的に、前首相の朱鎔基は関羽にぴったりだと思う。倫理観の固まりであり、青龍偃月刀ならぬ三大改革を振り回して「抵抗勢力」をばったばったと叩き切るその姿は、三国志、そして中国最大の英雄に例えてもなんら遜色はない。

2002年で引退したはずのその「現代の関羽」が再び老百姓の前に姿を現した。総理在任中の内外記者とのやりとりをまとめた「朱鎔基答記者問」が9月2日、人民出版社から出版された。

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上司の江沢民と違って、朱鎔基は引退後、要人の葬儀以外の公的な場にあまり出てこなかった。なぜ、4中全会の直前に朱鎔基なのか。本人はこの本に何の文章も寄せていないということなので、朱鎔基本人が望んだ出版でないことは明らかだ。ただ朱鎔基の登場を願う誰かがいて、本人が出版にお墨付きを与えたこともまた間違いない。

□■朱鎔基のレゾンデートル■□

今回の出版を報じる中国メディアの記事で、それぞれ引用している問答が違うのが興味深い。新華社が引用しているのが2000年の筑紫哲也のニュース23のインタビューなど当たり障りのない内容なのに対し、上海の東方早報はいきなり99年のCNNの6・4事件に関する質問を記事の冒頭にもってきている(中国メディアが「‘六四’事件」と書いているのを久しぶりに見た。センサーに引っかからないのか?)。ちなみにあの強国論壇もこの上海早報の記事を最初に貼り付けている。

「反腐敗」という名目で朱鎔基を表に出すことに誰も文句はつけられない。老百姓にいまだ人気があるのも、彼がひたすら清廉潔白の人だったから(今も昔と同じアパートみたいな宿舎に住んでいると聞いたことがある)。ただ、朱鎔基その人の政治的コンテクストでとらえるなら、そのレゾンデートルはいまだに「改革」にある。「既得権益にしがみつく抵抗勢力」を真っ二つにする関羽のイメージだ。

□■胡錦濤=劉備を関羽が救う?■□

正義感は強いが儀礼を重んじるばかりに押しが弱く、いいところで大魚を取り逃がす――胡錦濤は劉備に瓜二つだ。性善説か性悪説かでいうと、胡錦濤は性善的な人物だろうと思う。最近出版された「株式会社中華人民共和国」という本に、筆者が写真撮影しようとするのにあわせて胡錦濤が何度もポーズを取り直す姿が描写されている。

朱鎔基の登場でイメージアップするのは、比較論でいえば「清官」「改革派」に位置する胡錦濤サイドだろう。「関羽」が突然登場したのは、最近息子が関係する会社の不祥事やら、一番の側近のオーストラリア外遊へのイヤガラセやらで弱り気味の「劉備」を助けるためなのではないだろうか(「軍師」も実に不甲斐ない)。

いったい誰のチエかは分からないが……。