Observing China -43ページ目

国慶節前夜:あの2人は同席できるのか

いよいよ建国60周年式典が明日に迫った。どうやら明日の天気は雨らしいが、中共政権は「環境保護促進剤」(なんじゃそりゃ)の空中散布による人口消雨によって、意地でも「北京秋天」を死守するつもりのようだ。

さて、注目すべきは電飾で死ぬほど飾られた山車でも人民のみなさんによるマスゲームでも、あるいは最近核兵器のパレードでもない。チャイナウォッチャー諸氏が目を見開いてしっかり見るべきなのは、天安門の楼台の要人たちの並び順である。

Observing China

博訊網が「胡錦濤が江沢民と『60周年展』を見ることを拒否」という記事をアップしている。先日触れたのと同じ内容だが、新浪網の動画がリンクとして貼り付けられていて、これが実に興味深い。胡錦濤と江沢民ら要人が「分かれて」見学した、とCCTVは伝えているが、2人の仲が悪いのは今に始まったことではないので、特に驚きはない。

■□はしゃぐ李克強、低姿勢の習近平□■

面白かったのは、李克強のはしゃぎぶりと、終始両手を前に組んで低姿勢を保つ習近平の対比。やはり、習の軍事委副主席昇格(あるいはその公表)が見送られたことで、憂さを晴らしたのだろうか。

写真ではやせ衰えた印象だったが、「動く江沢民」は結構元気そうだった。李瑞環、尉健行、呉官正、羅幹といった懐かしい顔ぶれも久々に姿を現していた(前政権の要のはずの朱鎔基は当然ながら欠席。そういうところが彼らしい)。

この人たちの大半は、1日の軍事パレードを天安門の楼台から眺めるはずだ。その並び具合を見れば、今の中南海の権力図もある程度推測できるだろう。果たして、胡錦濤と江沢民は仲良く肩を並べることができるのか。できないとして、中央弁公庁はどんな裏技を使うのか。楽しみだ。

中国共産党はどこへ行く

4中全会で採択された<新たな形勢下における党建設の強化・改善に関する重大問題に関する中共中央の若干の決定>が27日夜、正式に発表された。

「18日に決定したのに、9日も経って発表するのは何か重大な変更があったからでは?」と勘ぐりたくもなるが、5年前の16期4中全会の<決定>も「9月19日終了26日発表」だったから、だいたいこんなものらしい。

さてこの<決定>、読めば読むほど複雑な気分になってくる。党内民主化や腐敗根絶へかなり踏み込んだ表現をしているのだが、そういう表現を読んでも、ちっとも「感じない」のだ。

<決定>の位置づけは、胡錦涛政権2ターム目の中間決算であるだけでなく、建国60周年を迎えた中共の次の60年を意識した「道標」といっていいだろう。上でも述べたが、ポイントは「党内民主化の推進」と「腐敗根絶の徹底」。Observingchina的には以下が興味深かった。

a:党委員会スポークスマンの設置

b:党内選挙の候補者紹介方法の改善(選挙カーでも出すのか?)

c:引退幹部への全面的な手当て(現政権の老同志軽視をあてこすった「一位老同志」の紙爆弾が功を奏したのかもしれない)

d:党内の報復活動の禁止(日常的に報復が行われていることの裏返しだ。恐ろしい)

e:党幹部の住居、投資、配偶者および子女の就職などに関する報告制度の整備

f:配偶者および子女が全員国外移住している公務員の管理強化

g:引退幹部の企業、学会、各種協会、基金への就職のルール化

f:完全金融実名制の実施(韓国では金融実名制が軍事政権支配を終わらせるのに一役買ったが、中国ではどうだろう)


(e)はコミュニケに入らず、「折り合いがつかなかった」などと報じられた財産申告制度だろう。対象が「不動産、投資、子女の就職など」となっている。日本の国会議員の資産公開項目に入っている預金や自動車が「など」に含まれるのかどうか。胡錦涛サイドが押し戻したのはとりあえずここまでで、後は今後の綱引き次第ということなのかもしれない。

■□民主拡大や腐敗根絶のむなしさ□■

これだけでなく、党内基層レベルの民主制度の拡大や、腐敗取り締まり強化はそれこそ言葉を尽くして、という感じでこの<決定>に盛り込まれている。しかし、である。いくら民主化を進めようと腐敗分子を打倒しようと、それはあくまで共産党内のことでしかない。

もちろん中国憲法は共産党と公権力が一体であることを保障しているから、共産党の改善が98%ぐらい政府の改善と同義であるというのは理屈では分かる。しかし、どうしても「結局、エリート層の中だけであれこれやっているだけじゃないか」と冷めた目で見てしまうのだ。

数年前までは、軟禁される前の趙紫陽が盛んに唱えていた「党政分開」(党と政府の分離)が中国国内でもそれなりにオープンな議論の対象になっていた。本気で党と政府の分離を考えていたらしい趙の狙いとは異なり、最近の議論はもっぱら「党と政府の役割分担をクリアにする」という程度に止まっている。それでも、そういう議論が出るということは、党政の分離が中国にとって避けられないテーマであり、かつその必要性が高まっていることを表していると思う。

もちろん、共産党にとって「党政分開」は自己否定でしかない。しかし、合理的な政府運営のため「党政分開」は不可欠である。党と政府が一体化するということは、すなわち権力が集中するということであり、権力の集中は腐敗と切っても切り放せない関係にあるからだ。

党と政の一体化を解消できなければ、これからも共産党は腐敗とのいたちごっこを続けなければならないだろう。<決定>には基層幹部の収入の拡充も盛り込まれているが、2033年をピークに人口減少に向かうという中国で、「大きな政府」をどこまで維持できるのか。

■□「中国共産党下野」のプロセス■□

システムとして党政分開が実現し、国務院や省庁から党支部がなくなれば、おそらく共産党は全人代で多数を占めることで政府を「支配」しようするだろう。

もし人民代表の普通直接選挙が実現するとして(現在は大半が間接選挙だ)、当面は共産党候補しかいない翼賛選挙的状況が続くだろうが、そのうち「非推薦候補」が現れるはずだ。

現在の民主諸党派が受け皿になるのかどうか分からない。だが、非推薦候補が集まってできた党が何年か経てば、共産党に対抗しうる政党に成長するかもしれない。

総選挙直後に来日した武大偉は、政権党になった民主党を偵察しに来たともっぱら言われていた。だがそうではなくて、彼はむしろ自民党の凋落のプロセスを仔細に検証して帰ったのではないだろうか。

毛新宇少将昇格は誤報

中国メディアが最近大騒ぎしていた毛沢東の孫、毛新宇の「最年少少将昇進」は誤報だった。BBC中文網によれば、人民網、新華網が「まだ大校(大佐)である」と伝え、「信息報」のインタビューでは本人が否定した。26日から中文メディアが一斉に報じ始めている。

Observing China

毛の現在のポストは人民解放軍軍事科学院戦争理論・戦略研究部副部長。毛は9月10日に長沙市で開かれた「毛沢東思想とその生涯研究会」に参加したのだが、まずこの会議に列席した湖南省内の「副」ポスト軍幹部がすべて少将だったことから「少将昇格?」という誤解が生まれた。

その後、親中国政府の香港・文淮報が報じたことで、「裏取りされた」と判断した海外メディアが全世界にニュースを流した……という経緯らしい。

誤報が生まれたのは、各メディアがロクに裏取りしなかったのが最大の原因だが、「最年少人民解放軍少将誕生、それも毛沢東の孫!」というニュースを大衆が欲していたことが、そもそもの素地にある。そういうニュース需要が生まれたのは、国慶節が近づいていることと無縁ではなかろう(中共あるいは解放軍の「いたずら」だったのかもしれないが)。

これまで香港・文淮報のような「官製メディア」は、党の意向から外れた報道をする、というリスクを決して侵さなかった。それが平気で行われるということは、とりも直さず市場化の波が中国メディアを根底から変えつつあるということの証左に他ならない。

□■「売れる>叱られる」■□

一連のチャイナ・デイリーの「独走」も同じだが、つまりは「売れる>叱られる」ということである。背に腹は代えられない、と言ってもいいかもしれない。官製メディアにも補助金カットの恐怖が迫っている。官製メディアでもつぶれる。それが当たり前の時代になったということだ。

先日、DanweiはCCTVがあの有名番組の「実話実説」を打ち切る、と伝えた。理由は「数字がとれないから」だ。CCTVは近くその番組編成の3分の1を見直すのだという。

今回の毛新宇事件は、メディアの生殺与奪を握る共産党中央宣伝部の統制が効かない範囲が官製メディアにまで広がっていることを示している。市場化が進めばこうなることは当然予測されていたが、意外にそのスピードが早い気がする。中宣部はどうするのだろうか。