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オバマ、CCTVを蹴っ飛ばす

南方週末のオバマ単独会見騒動がまだ続いている。ニューヨークタイムズ紙が19日ウェブ版で報じたところでは、オバマはCCTV(中国中央電視台)の取材を蹴って、南方週末の単独インタビューを受けたのだという。

同紙によれば、オバマインタビューを掲載したページの印刷が締め切りに間に合わなかったので、北京に販売される分には当該ページが含まれていない。また、広東省で売られている新聞にもオバマインタビューが入っていないという情報がある(とすると、在北京特派員各位が見ている紙面はなんなのか)。

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また時事通信によれば、オバマインタビューが載ったページは下半分がほぼ真っ白。写真ではよく判別できないが、時事によれば年間購読を勧める自社広告で、「誰もが大人物になれるわけではないが、誰もがここ(南方週末)で中国を理解できる」というコピーが書かれている。

時事は「『国家指導者になれなくても誰もが白紙の意味が分かる』とも読み取れる意味深長なメッセージ」と分析しているが、それはちょっとひねって読み過ぎだろう(笑)。白紙仕立てにしたのは、単に「書くべきことがまだあるのに、誰かの邪魔で半分しか書けていませんよ」という中国人一流のメッセージだ。

それにしても、である。CCTVを袖にするとは、何と痛快なことをオバマはやってくれるのか。きっとイラク戦争報道で名を売った英語堪能記者の水均益がインタビュー準備を進めていただろうが、えせジャーナリストたちの上を向いた鼻をへし折ってくれたかと思うとホントに溜飲が下がる思いだ。

特に右派からは、オバマの弱腰(とお辞儀の角度)についてあれこれ言う声が絶えない。ただ今回の対応を見ているかぎり、オバマはかなり計算された行動をとる人物であることが分かる。キンキンの金切り声で「人権!人権!」「フリーメディア!フリーメディア!」と叫ぶより、CCTVを袖にして南方週末を会見相手に選ぶほうが、自由な報道を重視しているという態度をより強く、そして巧みに示すことができる。中国の内部事情に精通していることも印象づけられる。

しかし、CCTVのメンツが丸つぶれになったのは本当に近年の痛快事だ。国家と党の後ろ盾が効かない無力感を十分に味わったことだろう。

今回のアク禁は怒りで発狂したCCTVがねじ込んだのかもしれない。

南方週末のオバマ単独会見

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11月19日発売の南方週末がオバマ単独インタビューを掲載した。「さすがにメディアを選ぶねぇ!」と独り感心していたら、同紙ウェブ版に記事の載ったはずのA2版が存在しない。おかしいと思って調べていると、19日午後現在、記事がネット上でアクセスできなくなっていることが分かった。

中国の街頭で新聞が売られているのかどうか定かでないが、RFAによれば同紙記者は外交部と中央宣伝部の職員帯同のうえでオバマとのインタビューを行ったのに、なぜだかネットだけがアク禁になっているのだという。「氷点週刊」の李大同元編集長も「プリント版が出ているなら、いずれすべての人が記事を読むだろうに」と、その措置に首をかしげている。

China Digital Timesに載った紙面の写真を目を皿のようにして読む限り、話されている内容はハイテク製品を含む中米貿易摩擦のこと、およびアメリカが中国の台頭を封じ込めるべきかどうか、ということにとどまっている。外交部、中宣部がお目付け役として臨席したのなら、そう際どいやり取りにもならなかったとも想像できるが、中宣部(?)はなぜこの意味不明な措置を取っているのか。

一つには、中宣部内でプリントメディアを扱うセクションと、ウェブメディアを扱うセクションが違って、そのため対応が支離滅裂になっている可能性があると思う。だとしたら、いかにも中国的な話だ。

オバマに上海で「情報が自由になればそれだけ社会は強くなる」と皮肉を言われたばかりなのに、まったく「耳辺風」(馬耳東風、馬の耳に念仏)とはこのことだ。

多維新聞網の墓標

在米中文メディアの「多維新聞網」が世界にその名を知られたのは、06年2月の「氷点週刊」停刊事件だった。多維網がアップした(大げさでなく)世紀の名文といっていい李大同編集長の公開抗議文は瞬く間にコピペされ、旧態依然とした中央宣伝部のメディア管理ぶりと、中国の良心的メディア人の反撃の始まりを世界に知らしめた。

「中立公正」「客観無私」、かつ中共中央にパイプを持ちながら公然と批判をする中国語メディアとして、世界のチャイナウォッチャーの関心と尊敬を集めていた多維網の様子が変わり始めたのは今年の夏から秋にかけてだった。アメリカ在住中国人向けの米国内ニュースの比重が次第に増え、その代わりに中共批判が鳴りを潜める。4中全会報道でも、令計劃の政治局候補委員昇格の可能性を伝えただけで、ほかに華々しいものはなかった。

奇妙に思っていたら、案の定8月(!)に「中国数碼」という香港系企業に買収されていた。ただ、「中国共産党の息がかりの香港系企業が多維網を支配下に置いた」という単純な話でもないらしい。

中国数碼理事会主席の於品海(52)は1991年、33歳で香港の「明報」社主になり、94年に当時は誰も見向きもしなかった週刊誌「亜州週刊」を200万ドルで買収。同誌を経営、報道の質の両面で世界にその名を知られた中国語メディア界に育て上げた人物である。中共批判をいとわない亜州週刊を育てた男が多維網の息の根を止める――という、ちょっと込み入った展開になっているのだ。

□■ビジネス話か、中南海の権力闘争か■□

博訊網が16日、「多維問題の処理で党中央宣伝部に生じた意見の分裂」という記事をアップしている。同ネットの記者が伝えるところでは――。

「今回の事態は複雑である。今回於が多維を『殺した』のは、北京政府に献上して自分の大陸での仕事をやりやすくするためである、という説もあれば、今回の買収で多維は国内メディアより保守的な報道に変わったが、それはいつでも元に戻すことが可能であり、於が中国政府と交渉する際の『保険』になりうる、という説もある。また現在、中国政府は450億元(ドル?)を使った海外メディア買収を進めているが、於はまさに博訊網と多維網に対する買収が準備されていることを知って、高値で売るつもりで買収した、という情報もある」

記事によればだが、中宣部は今回の買収劇には一切関与しておらず、だからこそ「北京政府が買った」という噂に対してどう対処するべきか、部内で喧々諤々の議論が起きているのだという。

また記事は「一名高層人」「あるニュース管理部門の指導者」の話として、「北京某派勢力と関係の深い企業家である於の今回の買収が、次期十八回党大会の権力闘争の準備であることを排除しない」「胡・温政府は海外メディアの絶滅指令は決して出していない。しかしよく既得権益を侵害されるある利益集団は中央に比べて、より『起勁(力が入っている)』だ」と書いている。

表面的には高値売り抜けを目指したビジネス話なのか、中南海の権力闘争なのかということだが、コトの本質は中国(政府)が「カネの力で批判的な海外メディアを封じ込める」ことが可能、と世界に知らしめたことにある。

とはいえ、いくらカネが有り余っていたとしても、中国政府がニューヨークタイムズや産経新聞を買収することに現実味はない(企業としての魅力もない)。多維のほかには当の博訊網ぐらいしか有力な海外中国語反政府メディアはないわけだから、コトの半分はもう目的を達していることになるが。

もともと国内のネチズンは博訊網も多維網もアクセス不能だったのだから、そういう意味で影響をもろに受けるのは在外華人と外国人チャイナウォッチャーだけかもしれない。ただ、豊かになることで言論の多様性が逆に失われるのは、何とも皮肉なことである。

氷点事件以来ブックマークバーに「多維網」を入れてきたが、削除するしかないだろう。