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大陸メディア初の政局記事

共に46歳の「第六世代」政治家、胡春華と孫政才の省・自治区トップ就任で、新しい風が中国メディアにも吹いているようだ。人民日報系の環球時報の英語版Global Timesが2日、“Reshuffle hints at future leadership”という記事をアップしているのだが、内容が政治局人事にかかわるいわゆる「政局もの」なのだ。台湾でも香港でもない大陸メディアが、英語媒体とはいえ中共中央の権力闘争に関わることをダイレクトに書いたのはおそらく初めてだと思う。

記事は識者のコメントを隠れ蓑に使いながら、巧みに政局を活字にしていく。

"The reshuffle could be seen as a preparation for the rejuvenation of the party's leadership in the run-up to the 18th Party Congress in 2012,"Zhang Liangui, professor at the Party School of the Central Committee of the CPC, told the Global Times Tuesday.(「人事は2012年の18回党大会での(政治局)若返りへ向けた準備だ」と中央党校の張璉瑰教授は本誌にコメントした)

これ(↑)は大陸の誰もが知っているのに、大陸メディアは誰も書かなかった話。これ(↓)は少なくともObservingChinaにとっては初耳である。

According to the Party's latest policy, leaders of provincial and ministry-level departments should have an average age of around 55, and at least one to four top officials should be younger than 48.(党の最新の方針によれば、省・自治区や国務院の部レベルのトップの平均年齢は55歳前後でなければならず、少なくとも1~4人は48歳以下である必要がある)

そして、記事は胡春華と胡錦濤がチベット→共青団と同じ経歴をたどっていることを根拠に、人民日報系新聞にあるまじき次のような「予想」を書いている。

Hu Chunhua is now on the fast track to being China's future leader, Bo Zhiyue, of the East Asian Institute in Singapore, told the Strait Times Tuesday.(胡春華は現在、未来の最高指導者を争うレースのトップに位置している、とシンガポールの東アジア研究所のボー・チーユエはストレートタイムズに語った)

中共トップの予想を中共の新聞(系列の新聞)がするという何とも倒錯したことになっている。チャイナ・デイリーもそうだが、中国の英字紙は最近なぜか政治的に敏感なテーマについてためらわずに書くようになっている。それが市場化のもたらした恩恵なのかどうかは分からないが(人民日報がダブル胡を支援する、というのも妙な気がする)。

筆者のGuo Qiang記者がエライ人に叱られなければいいのだけれど。

中国第6世代の戦い:胡春華vs.孫政才

中共中央は11月30日、河南、福建、遼寧、吉林、内モンゴルの5省・自治区の各省・自治区委員会書記人事を決めた。内モンゴル自治区の胡春華と吉林省の孫政才という「中国第6世代」の省トップ就任が最大のニュースとして扱われているのは、2人がポスト習近平(!)の一番手に位置する人材だから。胡春華はチベット→共青団第一書記と、「胡錦濤ルート」を通ってきた総書記様の子飼いでそれなりに報道もあるが、孫(↓)がいかなる人物かはあまり知られていない。

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新華社が公表する経歴などによれば、孫は1963年山東省生まれ。中国農業大学を卒業後、北京農業科学院で修士・博士課程を修め、同科学院の研究者から北京市順義県(現在は区)政府に入り、区トップまで務めた。02年に中共北京市委員会常務委員と市委員会秘書長となり、06年農業部長に一気に登りつめた。

農業という非常にジミな畑を歩いてきた経歴の持ち主が、急に表舞台に登場したのにはワケがあるはずだ。中央要人との経歴を重ねてみると、96年から02年まで北京市長、北京市委書記を務めた賈慶林およびその後を引き継いだ劉淇に重なる。この2人の後ろにいるのは、上海のご隠居サマである。

中文ウェブサイトにもあまり孫に関する情報はないのだが、博訊網に「任事幕」という筆者名?の07年1月の文章が残っている。友人の高という北京の元高官が香港にやってきて言うには――という語りで始まる一文は、

「胡春華は勤務地が僻地だったので腐敗問題とのかかわりが少ないが、北京が長い孫政才は早くから腐敗に染まり、その悪名で知られている。江派と交際、契りを結び、賈慶林の娘婿である李某との関係が普通ではない。ゴマすり以外に見るべき能力はなく、学歴も『注水博士』(水増し博士)である」

と、まあボロクソである。

■□タスキがけのタスキがけ■□

この文書を額面どおり受け取るべきではないと思うが、経歴だけを見ていると、やはり江沢民の影響下にあると見るのが正しそうだ。2012年の18回党大会で胡錦濤は自らの後継者(李克強)を最高指導者に就かせることができず、江沢民-習近平ラインに押し切られそうだが、その次の次の20回党大会で胡がリベンジするための「玉」が胡春華、そしてその対抗馬が孫政才――という何ともこんがらがったことになっているように見える。タスキがけのタスキがけ、というわけだ。

「20大」が開かれるのは2022年(!)だから、なんとも気の長い話ではある。確実に上海のご隠居は違う世界に行っているだろうに、もし彼が後ろで糸を引いているとしたら、その執念には本当に畏れ入る。

この人事に併せて各ニューリーダーたちの写真も大量にウェブに流れたが、1枚胡春華の異様な写真を発見した。ほかの写真と違い、頭髪が真っ白なのである(↓)。

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黒→白はあっても、白→黒はないと思うので、この白髪写真が最新のものだろう。ずいぶんと気苦労しているようだ。これをあと13年も続けると思うと、本当に気の毒な話である。

成田空港に1カ月住むことの是非

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11月3日、8回目の中国帰国を試みて失敗した日本在住の民主活動家、馮正虎氏がそれ以来ずっと、帰国を認めない中国政府に抗議して日本への入国を拒否し続け、成田空港の入国審査前エリアで生活を続けている。明日でちょうど4週間になる。

ボストン・グローブ紙が先日、アメリカメディアとしておそらく初めて報じた。今月中旬には英ガーディアン紙が報じていて、馮氏の存在はそこそこ世界に知られつつあるようだ。ニュースで知ったドイツ人スチュワーデスにリンゴをもらったりしているらしい。

Youtubeを見る限り、ベンチにインスタントラーメンを積み上げる馮氏は「まんま中国人」だ。それでも空港に1カ月住み続けるというのはいかにも異常と思うが、日本の新聞やテレビの食指はほとんど動かない。なぜか。

ここで「媚中!」と激高するのはあまり正しくない。中国政府が「虫けら」扱いしている馮氏の記事を書いたところで、せいぜい外交部スポークスマンが皮肉を言うくらい。記事を押さえても、中国政府に対するポイントアップにはならない。

■□「中国の民主化」的なものの価値■□

大状況としては、もちろん「中国の民主化」的なものの価値が日本で徐々に下がっていることがある(だからこそ、中国政府も馮氏ら民主活動家を逮捕せず追い返している。逮捕する価値もない、というわけだ)。

日本人記者諸氏が取材をためらっているのは、彼らが馮氏を「ちょっと変わった人」と捉えている部分もあると思う。なにせ、馮氏は抗議シャツに「拉致」と書いてしまう人である。

中国の民主化活動は、一義的には中国本体の経済的台頭に伴う相対的価値下落を余儀なくされている。ただ、確実に「経年劣化」もしている。馮氏の「拉致」シャツを見るとそう思う。ここで「拉致」を持ち出すのはピントがずれている。

日本人記者が取材せずムーブメントが広がらないのは、彼らが単にさぼっているわけでなく、大衆のニュース需要がないことを反映している。民主活動家たちはそのことを理解すべきだ。

そろそろ、いろいろな「臭い」もきつくなってくる。本人は「快楽維権(楽しい人権)」と言っているようだが、同情が広まらないまま無理して続けると、民主化運動そのものに対する印象が悪くなる恐れがある。