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中国政府が「官官接待」撲滅に乗り出した

以前、新華社系の週刊誌「瞭望」が、腐敗告発の陳情のため北京を訪れた地方住民を人権無視で収容する「ヤミ監獄」の実情を暴く記事を掲載したことについて書いたが、国務院弁公庁が1月19日付けで「地方政府の北京事務所の管理強化及び適正化に関する意見」という通達を出した。北京にある地方政府のヤミ監獄とヤミ接待所を半年以内に閉鎖せよ、という内容だ。

新華社の記事を転電したBBC中文網によると、06年末で各地方政府が北京に抱える「事務所」は927にもなる。省・経済特区レベルが50、市レベルが295、県レベルが436、その他の地方行政機関が146。記事によれば、今回の通達の狙いはヤミ監獄の摘発より、「官官接待(懐かしい!)」の温床となっている接待所の取り締まりにあるようだ。

■□ヤミ監獄と接待所は「同根」■□

日本で90年代半ばに官官接待が騒がれたのは、バブル崩壊による不景気で中央・地方とも税収が減り、地方間の予算獲得競争が激しくなったこと◇冷戦崩壊に起因する政界再編をきっかけに、地方と国の調整役を担っていた自民党国会議員の力が落ち始めたこと…が背景にあった。

明治以来、中央政府が地方を厳しく管理してきた日本と異なり、中国は歴史的にも地方の力がかなり強い。ただ分権が認められている反面、予算の再分配システムが未発達で、そのため放っておくと豊かな地域と貧しい地域の格差がどんどん開いてしまう。

で、各地方政府の役人はそのギャップを自力で埋めようと、一方では地元で開発のための地上げに励み(その結果強制退去された人が北京に陳情に行く)、一方では北京に事務所を開いて連日連夜にわたって中央人士に狙いを定めた接待攻勢を繰り広げることになる。ヤミ監獄と接待所はいわば表裏一体の関係にある。

中国が経済成長するうえで、地方同士を競わせるのはそれなりに合理的な手法だった。だが無秩序もそろそろ限界、ということなのだろう。日本と違って国家・地方財政のベースとなる経済本体は好調なのだから、きちんとしたルールをつくれば予算の再配分は機能するはずだ。

日本の官官接待では、接待攻勢をかける地方役人の側はかなりの部分それを「仕事」として生真面目にやっていた。おそらく中国もそうだろう。まともなシステムをつくることで、好きでもない一気飲みをしなくてよくなるならそれに超したことはない。

副市長、張芸謀にかみつく

中国を代表する映画監督といえば張芸謀だろう。監督のイメージが強いがもともとカメラマン出身で、陳凱歌の「黄色い大地」「大閲兵」で撮影を担当。「古井戸」(懐かしい!)では俳優もやった。初監督作品「赤いコーリャン」で世界にその名を知らしめ、その後は「秋菊の物語」「あの子を探して」「初恋の来た道」という怒涛の名作ラッシュで中国と世界を席巻した。

以前、「いかに『あの子を探して』に日本人が感動したか」を中国人に熱っぽく語ったところ、「ふ~ん…」と実に冷めた眼で見られたことがある。

感動大作を撮ることで知られている張芸謀だが、実は「国策映画監督」である。農村女性の訴訟での奮闘振りを描いた「秋菊の物語」は法治の重要性を、「あの子を探して」は農村の教育への寄付を呼びかける政府の「希望工程」を、「単騎、千里を走る」では反日デモでぼろぼろになった日中関係の回復を呼びかけた。そんな彼が北京五輪の演出をしたのは、ごく当然のこと。決して人権や民主化などはテーマにしない。

中国人が張芸謀を冷めた眼で見るのは、それだけが理由ではない。彼は副業にも熱心で、最近弟子を使って中国各地の観光地をテーマにした映像作品「印象」シリーズを次々と撮影している。

その張芸謀の「印象」シリーズに、湖南省臨湘市の副市長が噛み付いた。観光を研究する姜宗福副市長が1月22日、「張芸謀は救世主にあらず、盲目的に『印象』を作るべからず」という文章をネットにアップしたのだ。

姜副市長の言い分は「『印象』シリーズは、巨額の投資にまかせてやたらとたくさん人を並べただけで、視覚的な刺激はあるが見たあと何も残らず、旅行ガイドとタクシー運転手を潤すためにチケット代は高額。全国各地に似たような『印象』的印象があふれ、もはや以前ほどの投資効果が望めなくなっている」というものだ。

■□地方政府の盲目的投資の「背任度」□■

姜副市長が怒っているのは、同じ湖南省の岳陽市がどうやら「印象」シリーズへの投資を考えていることが背景にあるらしい。岳陽市観光がほかの地域と差別化するためには、張芸謀を総監督の座からたたき出せ!と、姜副市長は息巻いている。各地域の「印象」シリーズへの投資額はうなぎのぼりで、「印象・麗江」は2億5000万元(35億円)も払った。

ところが、張芸謀の弟子でシリーズのプロデューサーを務める梅帥元は「投資できるかどうかは観光客数次第。多額の投資をしたからといって、必ず大きな見返りがあるわけではない」とメディアに嘯いていたらしい。これじゃあ、まるで詐欺だ。

姜副市長の怒りももっともだが、そもそも「国策監督」に盲目的にカネをつぎ込む中国の自治体の財政運営も乱脈気味(もしくは背任気味)なのではないだろうか。地方トップの「成績表」を少しでもよくしようと、中国の地方政府は互いに激しい競争を続けている。それでもたかが映画に35億円も払うなんて、ちょっと過熱しすぎな感じがする。35億円もあれば中級の商業映画が1本取れる。

ともあれ、張芸謀を聖人視しているのはもはや何も知らない外国人だけである。

爆発する中国の科学論文数

FT紙がトムソンロイターのまとめた2008年のBRICsの科学論文数に関する記事を書いている。昨年11月に「中国が論文数で日本を抜く」というニュースがあったが、その詳細版らしい。改めてグラフを見てもらえば分かるが(↓)、中国がスゴイことになっている(アメリカの10倍!?ではないので念のため。グラフの見た目だけで実数はアメリカの3分の1)。

$Observing China

論文審査のある学術研究誌に引用された数が1981年の64倍。特に化学と材料科学の分野の進展が著しいとFTは報じている。文革が終わってまだ5年しか経っていない81年に中国で引用するに値する研究がなされていたことも驚きだが、何よりすごいのは00年以降の伸び。ほとんど2次曲線化してライバルのインドを大きく引き離している(ブラジルも頑張っている)。

このままだと記事が言うとおり、2020年には中国がアメリカを抜いて世界最大の科学大国になる。記事の中で専門家は

1:政府の巨額の投資
2:基礎研究分野から商業応用分野への計画的な移行がうまくいっている
3:北米の研究者に中国と北米を行き来しながらの研究を認めている

を成功の秘訣としてあげている。だが、問題は実質的な論文のクオリティを示す引用数/論文数。トムソンロイターが実施した99~09年の各国論文数調査によれば、引用数/論文数は日中ともベスト20圏外にとどまっている。

「日出国」の中国はこれから自然とクオリティも上がっていくだろう。だが人口減少と高齢化率を考えれば、日本が今の段階で「圏外」なのは極めてまずい。

事業仕分けでスパコンが問題になったが、予算はこういった人目につく部分より、もっと基礎的な部分に費やすべきではないのか。「最先端研究への投資がめぐりめぐって科学の基礎力を引き上げる」という主張は、なんだかトリックルダウン理論が金融危機で破綻した新自由主義経済学みたいだ。