Observing China -22ページ目

彭麗媛は「紅白」に出るのか

2月14日の春節まであと8日。大陸はもう「年末」モードに入ってるのだろう、心なしか中国ニュースも枯渇気味である。

と思っていたら、胡錦涛の「上海制圧作戦」から約20日後の5日午後、習近平が人民大会堂で2000人の老幹部を集めて「在京老同志迎春茶話会」を開いた。

毎年この時期開いている他愛もないイベントで、主催者は党中央組織部、解放軍総政治部と党北京市委員会。対象はあくまで北京在住の老同志だが、今年の「主賓」はこの場にはいなかった江沢民かもしれない。

「引退した老幹部を政治的に尊重し、その思想に注意を払い、生活の面倒を見、精神的にいたわらねばならない」という趣旨で開かれた今年の茶話会は、胡錦涛の上海上陸で傷ついた江沢民をいたわる周の気配りのように見える。汚職情報(↓下のエントリー参照)が流れて以降、表に出る姿が見られない張徳江副首相の一件を慰める意味もあるのかも。ちょっとうがち過ぎか?

■□CCTV春節聯歓晩会の影響力□■

それにしても、問題は習が2012年の禅譲へ向け着実に階段を上っているのかどうか。中央軍事委副主席のポストが「しばらく遠慮する」という状態になった今、それを計る最良のバロメーターが夫人の彭麗媛だと思う。

一般の政治家夫人と違い、彭はもともと夫より有名人である。その彼女の露出がどれくらい認められるかは、夫である習の存在感がどれくらい中南海で大きくなっているかを最も的確に示してくれる。

中国のネチズンは今、中国版「紅白歌合戦」である今年のCCTV春節聯歓晩会に彭が出るかどうかで盛り上がっている。彭が昨年の建国60周年式典で歌った「陽光路上」が演目の中に入っているという情報が飛び交っているようだ。

リークが習近平弁公室によるものかどうか分からない。ただ次期国家主席が有力視されている国家副主席の夫人が春晩会に出て歌えば、その衝撃と影響力は計り知れない。習にとってこれ以上ない後ろ盾となるだろう。

さて、国家主席サマがこれを認めるかどうか。

胡錦涛の上海制圧作戦(+副首相の汚職情報)

しばらく前の話になるが、胡錦涛が先月15日に上海万博会場の建設現場を視察した。その時オーストラリア館も訪問したのだが、その訪問はわずか4時間前に同国側に伝えられた「電撃訪問」だった。シドニー・モーニングヘラルド紙が伝えている。

同紙が書いているように、胡の訪問は昨年のリオ・ティント事件以降冷戦状態にあったオーストラリアとの手打ちを意味する。電撃的に訪問したのは、事前に情報が漏れて邪魔が入るのを嫌ったからだろう。何せ場所は上海である。

「驚くべきことに、胡はこの2年間上海を訪れていない。オバマがニューヨーク抜きでアメリカを、超管理型政治家(そうなんだ)のケビン・ラッドがシドニーなしでオーストラリアを統治するようなもの」と同紙は書いている。

胡が上海を避けていたのはもちろんご隠居様のせい。今回の上海上陸がもつ意味を、同紙は「李克強の復活」と読み解いている。

確かに、リオ・ティント事件はご隠居のお膝元で起きたし、逮捕直線まで豪州訪問の準備を進めていた李克強に対する嫌がらせ的な色合いがあった。胡が上海に光臨し、オーストラリアと手打ちするのは「上海閥制圧宣言」以外の何ものでもない。同紙は次期首相レースで李が一歩先んじたと分析している。

また同紙は、李がダボス世界経済フォーラムで過去の中国の政治家にみられない「融和的な」演説をしたこと、昨年12月にこれまで中国石油と解放軍が仕切っていたエネルギー領域に切り込む形で国家エネルギー委員会が発足し、そのトップに温家宝ら胡系の人物が就いたこと…を「上海制圧」の根拠に挙げている。

■□「深圳航空腐敗事件」の驚愕情報□■

そしてちょっとびっくりなのだが、ジョン・ガーノート記者は驚くべき情報をサラリを記事の中に潜ませている。深圳航空にからむ腐敗問題で、副首相で金日成総合大学留学の(北)朝鮮通、張徳江が「傷ついた」というのだ。

一般的には上海閥と言われている張が失脚したのなら、上海制圧作戦の一環だろう。党規律検査委員会がニュースソースということだが、果たして真実なのか。

ダボスでの動きをみると、一時は全人代委員長にまで落ちると見られていた李克強が首相レースで巻き返しつつあるのは間違いないようだ。ただ18回党大会まであと2年半以上。まだまだ一悶着あると思う。

馮正虎が帰国する意味

去年の11月以来、成田空港の入国審査エリアで籠城生活を続けている中国公民の馮正虎氏が2日、空港内で籠城生活終結の記者会見を開く。31日に本人がツイッターで宣言した。2日に日本に「入国」すれば、空港での生活は計91日で終わることになる。

本人がツイッターに書いたところでは、1月30日に中国大使館員が来て話し合ったらしい。以下、本人の書き込みの訳。

「…(中国)公民が帰国する権利は公民自身の権利であり、議論の余地はない。違法な障害が取り除かれた状況下においてはなお議論の余地はない。中国大使館員が何度も私を訪れ自国民保護に対する熱意を見せたのは、彼らの誠実さの現れであり、私はこれに誠実な対応で応じる」

要は中国政府が鉾を収めたので馮氏も鉾を収めた、ということなのだろう。

■□「鳩山南京訪問」への布石?■□

馮氏が成田空港に籠城するという奇策に出たので外交レベルの問題になったが、入国拒否されたのは天安門事件20周年で当局の入国拒否センサーの感度が上がって、それほど有名でない民主人士の馮氏まで引っかかってしまった、ということなのだと思う。

もし中国政府が馮氏に何らかの譲歩をしたのだとしたら、それは天安門20周年から半年以上たって「センサー」の感度が元に戻ったことが最大の理由のはずだ。

「センサー」の感度には中南海の政治情勢だけでなく、それこそ世界経済や国際情勢、国内世論が影響する。妥協しても国内に波風は立たず、むしろ対日関係上のトゲを抜くほうが得策と判断したのだろう。中国政府(と中国大使館)の今年最大の目標である鳩山首相の南京訪問(と謝罪)実現へ向けた布石ではないか。

■□保守派が馮氏を嫌うわけ■□

それにしても、である。3カ月空港に住むなんて通常の精神力ではとてもできないことだと思うが、果たして「帰国実現」以上の成果があったのか。残念ながら、今回の騒動で中国国内の全体的な人権状況が改善するとは思えない。

興味深かったのは、日本の保守ブログの中に馮氏の籠城を「日本に迷惑をかけるな」と、否定的に捉えるものが結構あったことだ。

これまで日本の保守勢力は中国の民主化運動を、「敵の敵は味方」理論でほぼ盲目的に支持していた。反共イコール人権・民主だったわけだが、それが必ずしもそうでなくなったのは、中国の民主・人権活動が中国経済の成長とともに相対的に価値下落していること、それに国際社会が「民族(もしくは文明)衝突」の色合いを濃くしていることが原因だと思う。「民主活動家といっても、基本的に中国Loveなんでしょ」というわけだ。

保守派のホンネを白日の下にさらした、という意味でなら、馮氏の籠城生活にも意味はあったのかもしれない。