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ダライ・ラマが中国に歩み寄り始めた

$Observing China

インド亡命51周年の10日を前に、ダラムサラのチベット亡命政府が情報発信を強めている。毎年の恒例行事なのだが、今年はいつもと様相が違う。

ロイターが9日、ダラムサラのダライ・ラマを会見、ダライ・ラマは「チベット問題が解決されれば、私と亡命政府のメンバーはいかなる政治的立場も求めない」とコメントした。

続いて毎日新聞が10日朝刊で、亡命政府のリンポチェ首相の「(中国政府が認定したパンチェン・ラマ11世の)ノルブ氏を見いだした人物を信頼している」という発言を記事にした。

明らかにチベット亡命政府は中国に妥協の意思がある、という信号を送っている。なぜ今、ダライ・ラマは共産党に歩み寄らねばならないのだろうか。

今年1月、ダライ・ラマ側と中国当局が1年3カ月ぶりに非公式協議を行ったが、進展はなかった。その翌月、オバマとダライ・ラマが会見。しかしオバマのダライ・ラマ対応は決して「歓待」と言える内容ではなかった。

中国はチベットとの間に位置するネパールへのテコ入れを強めていて、ネパール警察も国境警備を強化している。ニューヨークタイムズによれば、08年以前は毎年2500人から3000人がネパールを通ってチベットとダラムサラの間を行き来していたが、それが09年は600人に激減した。

チベット仏教のナンバー2であるパンチェン・ラマはダライ・ラマ転生の認定に影響力をもつ。それにダライ・ラマが死去したあと、転生したダライ・ラマをダラムサラで見つけるわけにはいかない。もし亡命政府とチベットの間が断絶したままノルブが「勝手に」ダライ・ラマ15世を認定したら、ダライ・ラマ14世なき亡命政府の影響力は、一時的には国際世論の盛り上がりで維持できたとしても、遠くない未来に決定的に失われるだろう。

パンチェン・ラマとダライ・ラマの違いは「国王」としての政治的地位を有するかどうか――というくらい、パンチェン・ラマの宗教的地位は高いのだという。ダライ・ラマが「国王」の座を捨てるというのは、それなりの覚悟のはずだ。

伝えられている状況以外にも、ダライ・ラマ側に何か切迫した事情があるのかもしれない。

中国経済の「スケールメリット」

中国のGDPは今年2010年中に日本を抜く。日本の09年のGDPは5兆486億ドル、対する中国は4兆7547億ドル。グラフの2次曲線ぶりからして、おそらく5兆ドル半ば、下手すると6兆ドルに達するかもしれない。

[世] 名目GDP(US$)の推移(中国)

日本は1兆ドルを突破するまでに戦後33年かかったが、2兆ドルまでは7年間、2兆ドルから3兆ドルが5年間、3兆ドルから4兆ドルまでは2年間で達成する、という2次曲線な成長を達成してきた。中国も89年に1兆ドルを突破すると、05年に2兆ドル、07年に3兆ドル、08年に4兆ドル…と、その成長は日本以上の2次曲線を描いてきた。

[世] 名目GDP(US$)の推移(日本)

生産は豊さを生み、豊かさがさらなる生産を生むことで、一国の経済規模は加速度的に拡大する。ちなみに人口3億人のアメリカのGDPは14兆ドル。人口13億人の中国に単純に当てはめると、中国のGDPは将来60兆ドル(!)という大変な額になる(ちなみに現在の全世界のGDP総額が60兆ドル)。

企業の場合、コストが一定なら生産規模が大きくなるほど利益率が高くなる「規模の経済(スケールメリット)」が当てはまる。同時に、規模が大きくなるほど非効率性が高まる「規模の不経済」もある。中国はどちらに当てはまるのだろう。

「規模の経済」最大のメリットはコストの相対的減少。人口や領土が増えることで、当該国家の企業の規模が大きくなってコスト減少→利益率増大につながるケースはあるだろう。ただ特定企業の規模増大が国家全体に与える影響はそれほど大きくないはずだ。

むしろ人口や領土が増えることで、国ベースでみた人種間トラブルや貧富の差による「階級闘争」の数は増える。ただこういった事件がすべて「中国」一国で起きていることは、中国のイメージダウンにはつながっても、ランニングコストそのものは変わらない。

一国の経済に「規模の経済」があるなら、その最大のメリットは他国への影響力にほかならない。EUがユーロを使った統一経済圏づくりを目指しているのはそのためだ。ただEUの経済規模はアメリカを抜いて世界最大の18兆ドルもあるが、言語および国境という障壁があるため、「規模の経済」効果を十分発揮できていない。

そう考えると、中国がいかに条件のいい国かよく分かる。地域内に国境がなく、言語も基本的に統一され、国民が命令一下「右向け右」してくれる……政策さえ間違わなければ、これほどノーストレスで経済成長を享受できる国はない。

それこそ中共が専制政治を維持するわけなのだが。

朝日新聞主筆の中南海情報

最近、「相原真理」という日本人名で書かれた中国語の記事がネットでよく引っかかる。「元朝日新聞駐中国記者」という肩書きが多いが、ネットで調べる限り、実在の人物であるかどうかのウラは取れない。

その「相原真理」氏が博訊網に「船桥洋一:“胡温新政”一词是江泽民办公室透露出来的(船橋洋一が「『温胡新政』は江沢民弁公室が出所」と語る)」という記事を寄せている。記事によれば――

        *
「相原真理」氏は東京で開かれた酒席で「老同事(古い同僚)」である朝日新聞主筆の船橋主筆と会った。いま開かれている全人代の話になり、「相原」氏が「温家宝と胡錦涛による新政は終わったと思うか?」と船橋主筆に尋ねた。

「何? 温胡新政?」。船橋主筆はすぐ反応した。「『温胡新政』という言葉は、日本政府の情報によれば、江沢民弁公室が出所だ」

(中略)

船橋主筆の説明によれば、「江沢民は『温胡新政』を恐れて、『先んずれば制す』でこの言葉を世に出した。この言葉は一部の人々、特に天安門事件の名誉回復などを求める海外の民主化人士の関心と希望を集め、その結果温と胡のいかなる『新政』の考えも封じ込められた」

「相原」氏ははっきりと理解した。「これは我々日本人の言う『ほめ殺し』だ。竹下登が田中角栄に替わって自民党総裁と首相になったとき(注:正しくは田中派の乗っ取り)、不満な日本の右翼は「ほめあげてやっつける」策略に出た。その結果、温と胡は共産党統治集団の番犬に成り果ててしまった」
        *

この記事のクレジットによれば、「相原」氏は朝日新聞の初めての中国駐在記者となっている。確か日本メディアの北京支局が開設されたのが文革直前の60年代中頃だったはず。そのころ特派員として赴任する年齢だったとすれば、今はもう80歳近くになっているはずだ。ちなみにクレジットには居住地なのかどうか分からないが「大阪」とある。

それはそうと、ほめ殺しで江沢民が「温胡新政」をつぶしたという話だが、どうなのだろうか。ちょっと面白い話だが、出所が「日本政府」というのが気になる。外務省? 自民党? まさか民主党???

日本政府にそんなに中南海情報を取る力がある(あった)のだろうか。