近畿日本鉄道(本社・大阪市)が、三重県名張市平尾の近鉄名張駅に隣接する名張列車区の社員食堂で、列車乗務員や職員などに長年にわたり提供しているカレーの味をレトルトの「近鉄カレー(名張編)」として再現し、発売している。鉄道ファンなどの間で大人気になり、約2500個を用意したが、在庫は残りわずかになっているという。【山中尚登】
社員食堂は、1968年に営業が始まった。名張市出身の山口進さん(82)が、20代のころ東京の料理店で修行して腕を磨いた。帰郷し、店主として50年以上、社員食堂を切り盛りしている。
カレー以外にも多くのメニューがあるが、素朴な家庭の味で、忙しい乗務員などには早く食べることができることから1番の人気メニューという。
カレーは毎週月曜にメニューとして提供している。時間をかけて煮込んだ牛肉、ジャガイモ、ニンジン、タマネギなどを材料にした少し辛口で何度食べても飽きない味という。
仕事で本社から名張列車区へ度々、訪れていた近鉄運輸部営業課課長補佐の福本章さん(53)は社員食堂を利用し、山口さんのカレーの大ファンのひとり。2021年春、福本さんは食堂は一般の人たちは利用できないため、「社員以外の人たちにも、ぜひ山口さんのカレーを味わってほしい」との思いから、レトルトとして商品化することを企画会議に提案し、了承された。
山口さんもレトルト化を快諾し、商品開発に協力。作り方を業者と話し合いながら、味を再現することができ、21年12月に完成した。食堂のカレーは、牛肉を使用しているが、レトルトでは豚肉を使用した。
カレーのパッケージは福本さんら社員らが考えた。箱の色は、近鉄列車のカラーに合わせたマルーンレッド。パッケージの表には「いつも運転士、車掌が食べている食堂カレー。誰が食べるねん! しかし俺は食う! 味は普通の美味(おい)しさ 近鉄カレー」と書かれている。
裏方に徹する山口さんは同社広報部を通じ、「乗務員に温かい食事を提供したい一心で続けてきた。発売はうれしいが、少し恥ずかしい」などと、コメントを寄せているという。
近鉄カレーは、1箱700円(送料別)。ネット通販や名張駅西口改札窓口などでも販売している。問い合わせは、近鉄運輸部営業課(06・6775・3514)。