コーヒーシャープについて
コーヒーシャープのことは本土のかたがたはほとんどご存知ないのではないでしょうか。
ここ沖縄ですら、今の若い人たちの多くは知らない。
コーヒーシャープとはかつて沖縄じゅうにあった食事処。
特徴は24時間営業。従業員が女性のみ。若い人が多い。中年の方はお年を召した方という感じ。
テーブル席もあるが、カウンター席が主体。
楕円形の円弧のような形をしたカウンターに客が座り、中がオープンキッチンになっていて、そこで若いお姉さまたちが調理をしている。
客はタクシーの運転手が多かった。24時間営業ですからね。自然そうなるのでしょう。
さらに特徴を言えば、中のお姉さまたちが暇なときに世間話ができる。テレビの番組の話とか、音楽の話とか。いろいろ。
コーヒーシャープは1960年代から1980年代に沖縄のいたるところで見られた。今でも名残のある店はわずかながらある。
コーヒーシャープは私が学生の頃もあったけれど、その頃は大分少なくなっていたのだと思います。
私は学生の頃、那覇市の久米というところに住んでいて久米通りの先には「千日」というかき氷、ぜんざいの老舗の店があって、今も観光客でにぎわっている。
その通りにコーヒーシャープがあったのだけれど、そこに私は学生の分際でよく行ったものです。オムライスがおいしかったし、沖縄そばもあった。
コーヒーシャープの定番メニューと言われるのが、チャンポン。これもよく食べました。長崎チャンポンとは違います。
簡単に言えばライスとおかずがありますが、それを合体させた丼みたいなもの。
ニンジン、キャベツなどの野菜とランチョンミート(もしくはコンビーフ、ひき肉)の炒めものを卵でとじた具がご飯の上にのっているものです。沖縄の喫茶店や食堂では定番のメニュー。ただし、どんぶり茶碗を用いるのではなく、深皿を使う。
ところでコーヒーシャープの名の由来ですが、ほぼ間違いないと思われるのは coffee shop のことだと思います。shop はショップ。イギリス英語だとショップでいい。
ただ、発音がアメリカ式の発音となるとショップではなく、シャップ。我々日本人はローマ字に慣らされているので shop の 「o」を「ア」と発音するのは不自然な気がするに違いない。
でも、実際にはアメリカ英語では ア と発音する場合が多い。body はボディではなくバディ。doctor はダクター。cocoon はカクーン。もちろんイギリス英語では オ の発音。
沖縄には基地があって、アメリカ軍人、その家族も居るので当然、アメリカ式の発音が地元の人間の耳に入る。
まあ、そういうことから coffee shop は コーヒーシャップ 。 さらにシャップはなじみのあるシャープ電気のシャープに置き換えられたと見られる。
厳密に言うと coffee shop は カフィシャップ というべきでしょうが、日本語的な コーヒーは変えるべきではないし、結局はコーヒーシャープで落ち着いたと言っていいでしょう。
話が前後して恐縮ですが、私が学生の頃、通ったと言うコーヒーシャープ。その店に小柄で色が白く小作りの顔で手足の長いバランスの取れた体形の若いお姉さんがいた。
当時、大学でダンスパーティーがよく開かれていて、ダンスが踊れない私は友達に誘われ、ダンス教習所に行くことになっていた。そして、すごい偶然だけれど、 夜、ダンス教習所に行ったら、そこに、なんとびっくり、あのお姉さんがいるではありませんか。
「どうしたの」と言われたから「ダンスパーティーがあるんだけど踊れないので習いに来た。」と答えたら「ああそう、じゃあ」と言ってそのお姉さんから指導を受けることになった。
このお姉さんは教習所の指導員だったのです。時折、男子の指導員とペアで踊りを披露していました。キューバンルンバがたまらなくよかった。
あれからもう何十年も経っている。あのお姉さんは現在、どうしているだろうか。
もう、いい年齢になっているだろうが、ダンスは今も続けているのだろうか。