『にゃんころがり新聞』 -9ページ目

『にゃんころがり新聞』

「にゃんころがりmagazine」https://nyankorogari.net/
に不具合が発生しました。修正するのに時間がかかるため、「にゃんころがり新聞」に一時的に記事をアップロードすることとしました。
ご迷惑をおかけして申し訳ございません。

 

writer/にゃんく

 

STORY

 サンちゃんは専業主婦。バツイチの旦那と、ネコと一緒に暮らしています。
 ある日、サンちゃんは、自分の顔が、旦那の顔とそっくりになっていることに気づきます。
 夫婦の顔がだんだん似てくることに、薄気味悪さを感じるサンちゃん。
「自宅では何も考えたくない」
 という旦那は、単調でつまらないスマホのゲームに一日中ハマっています。でも、覇気がないのかと言えば、そういうわけでもなさそう。というのは、外国旅行に行ったとき、旦那はとつぜん生き生きとしはじめ、ひとり活発に行動しはじめたことがあったからです。
 旦那の嫌な面ばかりが目に付くサンちゃんですが、自分も旦那に依存していることに内心気づかされてきます。
 旦那が自分に似てきているのか、自分が旦那に似てきているのか……。
 しだいに顔がくずれはじめた旦那に、サンちゃんはついに戦いに打ってでます。

 

 「結婚」を経験した作者が、「夫婦」をテーマに挑んだ作品です。
 

 

REVIEW

 

 本作は、2016年の芥川賞受賞作です。
 本谷有希子といえば、自意識過剰な女主人公のハチャメチャ人生ぶりがおもしろく、ぼくも昔は好きでよく読んでいました。
 本谷 有希子は1979年生まれ、肩書きは、小説家だけにとどまらず、演出家、女優、声優など、多才です。
 もとはといえば、「劇団 本谷 有希子」を立ちあげ(2000年)、劇団のホームページに掲載していた小説が、雑誌「群像」の編集者の目にとまり、「群像」に小説を書くようになったことが、小説家としてのデビューでした。
 なので、本谷 有希子は新人賞などを受賞してデビューしたわけではありません。
 しかし、初期の作品は、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』、『生きてるだけで、愛。』『江利子と絶対』、『幸せ最高ありがとうマジで!』、『あの子の考えることは変』など、タイトルだけを読んでも、「いったい何がはじまるのか?」と期待させられます。それまでの文学作品にはないタイトルであることは確か。
 『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』は映画化もされています。おもしろい作品なので、見てみることをオススメします。
 さて、本谷 有希子の受賞歴ですが、今となっては、多数におよんでいます。

 

鶴屋南北戯曲賞(2007年)
岸田國士戯曲賞(2009年)
野間文芸新人賞(2011年)
大江健三郎賞(2013年)
三島由紀夫賞(2014年)
芥川龍之介賞(2016年)

 

 芥川賞は新人が受賞する賞とされていますが、なぜか一番最後に受賞しています。芥川賞に関しては、なんども候補になっていて、そのたびに落とされています(4度めで受賞)。今回のレビューでとりあげた『異類婚姻譚』より、もっと早くに受賞していてもよかったと思います。
 

 

 途中、登場する、「サンショ」という名前の飼い猫。
 おしっこを家のなかであたりかまわずしてしまうので、キタエさんというおばさんが、山にサンショを捨てに行きます。
 そして、主人公の名前は、サンちゃん。
 この名前の類似は、偶然ではありますまい。
 旦那に捨てられようとしていることを暗示している名前なのか……。
 たぶん、そうでしょう。

 

 また、『異類婚姻譚』では、おとぎ話ふうの結末となっています。
 ある日、サンちゃんが、自分の顔が、旦那の顔とそっくりになっていることに気づく、という出だしからして、カフカの「変身」を思いだされた方もいるかと思います。
 そして、『異類婚姻譚』の結末では、旦那の身に「変身」が起こります。
 カフカの『変身』では、主人公のグレゴール・ザムザが巨大なゴキブリのような虫に変身しています。そして、『変身』のテーマのひとつに、「家族」があります。
 『異類婚姻譚』でも「変身」のモチーフが出現します。そして、本作のテーマは「夫婦」です。
 『異類婚姻譚』は、カフカやおとぎ話や、作者本人の経験など、いろんな要素がつまった作品なのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

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writer/にゃんく

 

 やって来ました。今回も、舞台はラーメン激戦の地、川口です。
 口コミラーメン情報も、記事作成者は、にゃんくとAちゃんで、かなりの回数をかぞえてまいりました。有名店から、地元の人しか知らない店まで、データの蓄積も、相当なものになっているはずです。
 記事作成にあたっては、作成者の主観のみで書いております。Aちゃんにも、他の人の評価などは無視して書いてくれるように言っております。
 にゃんくは、ギラギラこってりしたラーメンは苦手です。あっさり、ヘルシーなものを好みます。
 すこしでも、皆様のラーメン選びのご参考になれば!

 

 そういうわけで、今日は、12月13日に新オープンしたばかりの「RAMEN NAGI」のレポをお届けします。

 

店名  ラーメン凪
場所 川口市栄町3-9-16
      JR川口駅から徒歩4分
   他、福岡空港店や西池袋店などがあるようです。

 

 店舗の写真を撮ってくるのを忘れてしまいましたが、
「煮干しが嫌いな方、ご遠慮ください」
 の看板キャッチが挑発的です。お味には、かなり自信があるとお見受けしました。

 

 今回、注文したのは、すごい煮干しラーメン(大盛り)

 

 

830円です。

 

 大盛りは無料でつけてくれます。
 また、味は醤油や塩をまぜたり、どちらかにしたり、油の量を調節したり、辛さを20辛まで選べたりなど、いろいろバリエーションを選ぶことができます。ぼくは全て「オススメ」にしてもらいました。

 

 

 

 まさに煮干しです。
 これは、相当うまいです。
 煮干しがちょい辛なのも、イイ。

 

 店長(らしき人)が、食べ終わって帰っていく人に、
「味、どうでした?」
 と聞いているのが印象にのこりました。
 ぼくにも聞いてくれたら、
「うまいです!」
 と答えようとしていたのですが、残念ながら、聞いてもらえず。
 

 でも、そんなことは気にならないくらい、うまいです。

 

 赤羽にも煮干しの店がありますが、こちらの方が、クサミがなくて、ぼくは好きですね。お店も、オープンしたばかりで、新しくて清潔です。
 これは女性にも○だと思います。
 また来ると思います。

 

 文句なしの

 

にゃんくのこのラーメンの評価5

 

 

 

(本ブログでの、レーティング評価の定義)

☆☆☆☆☆(星5) 93点~100点
☆☆☆☆★(星4,5) 92点
☆☆☆☆(星4) 83点~91点
☆☆☆(星3) 69点~82点)

 

 

 

 

writer/にゃんく

 

 

 

おすすめラーメン情報、スイーツ情報、こんごも続々更新予定です。

過去の記事は↓こちらです。

 

 

 

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writer/にゃんく
 

STORY 
 アマの舌はスプリットタン。スプリットタンとは、ヘビの舌のように、先端が、2つに分かれている舌のことです。
 アマは18歳の、ファンキーな男です。「アマデウス」のアマ。本人はそう言っています。この作品の主人公(ルイ)の彼氏が、アマです。アマは、顔中にピアスをしたり、体にイレズミを入れたりしています。
 一方のルイは、19歳の日本人の女の子です。いつも周りからは、両親がいないと見られがちなのですが、実際はそんなことはありません。家族とのつながりはある、とルイ本人が作中でも語っています。フランスの王族「ルイ」一族を彷彿とさせる名前ですが、実は本名。中沢ルイといいます。
 ルイは、アマと同棲をはじめてから、身体改造に魅せられてゆきます。まずは、スプリットタン。アマの手引きにより、彫り師のシバさんという男のもとに通い、舌に穴を開けたり、背中にキリンと龍のイレズミを入れてもらったりします。
(シバさんは、アマの友人です。アマのバイト先は、シバさんが紹介したものです。)

 けれど、ルイが、彫り師のシバさんとも肉体関係をむすぶようになってから、三人の関係は微妙に変化をはじめます。

 ある夜、さかり場で、ルイがアマとふたりで歩いていると、ヤクザのようなチンピラ2人に、ルイがちょっかいを出されます。
 逆上したアマが、チンピラを半殺しにします。
 後日、ルイは、そのさかり場で、男が殺されたニュースを耳にします。そして、犯人の風貌が、赤毛のアマに酷似していることを知ってから、ルイの人生は狂いはじめます……。

 

 

 

REVIEW

 

 言わずと知れた、すばる文学賞と芥川賞のダブル受賞作です。映画化もされました。
 集英社文庫の巻末の解説は、村上龍。
 村上龍も言っているように、これは若いときにしか書けない作品かもしれないと思いました(作者のすばる文学賞への応募時の年齢は、20歳。)。
 読んだ人はわかると思いますが、これが20歳の作者が書いた作品なのかとびっくりします。
 アマが殺されたときに登場する線香があります。この線香がひじょうにいい働きをしています。

 ストーリー性もバツグンです。とても面白いです。

 もうすぐお正月ですね。

 お正月休みに、ピリっと刺激の強い物語はいかがでしょう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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▽『レニの光芒 ①』を読んでいない方はこちらから

 

 

 

 

 

レニの光芒  

 

 

 

 

 

 

瀬川深

 

 

 

 

 

 涼しい風が吹くようになっていた夕暮れだった。少々早めに着いたのに、会場はすでに人の熱で温まっている。こぢんまりとした店の入口で会費を払い、お祝いの花束を託し、あたりを見回しておれは感嘆した。目を細めて眺めていると、不意に声をかけられた。
  ――ひさしぶり! 来てくれてどうもありがとう!
 レニだった。言うまでもない、なにも変わってはいない。おたがい、経た時のぶんだけのさまざまを身に刻みつけていただけのことだ。
  ――続けてたんだ。
  ――お遊びよ、お遊び。まあ、ちょっとはね……。
 そう言いながら、レニはあたりを見まわす。ベルリンの街角なのだろうか。たたずむ老人。大きく引き延ばされた若い娘の目元とスカーフ。これは日本らしい、時代離れした服に身を包み、アスファルトの上に寝そべる幼児。荒涼とした郊外の風景に、遠景のように映り込むカップル。沈黙するような街角の光り、歌うような荒野の光り。どの写真も、世界に向けるレニのまなざしがそのまま感光したかのような鋭さに満ちていた。見ていると、息をするのを忘れそうになるほどだった。
  ――すごい。すごいな。
 そう言うのが精一杯だった。ありがとう、そう言ってレニは微笑んだ。
  ――あ、日高さん! わざわざありがとうございます。紹介しますね、こちら、わたしの高校のときのクラスメートで……。
 ほかの来客に紹介され、挨拶を交わしながら、おれは幸福な気分に浸る。レニは、レニだ。どんなふうに歩いていても、おれとは歩く道がわかれても。レニのことだ、この写真でも、いつか世間を驚かせるにちがいない。
 さて、そうとなると。家を出る直前まで迷ってはいたが、持ってきて正解だと思ったな。レニが離れていったすきに、壁の一隅を選んでテープで留めた。どれもこれもひどいできばえだったなかで、ほんのちょっとだけマシだったやつだ。ワインを飲みながら、この場で知り合った同業者と話が盛り上がっていると、戻ってきたレニはすぐに気付いた。おれのへたくそな写真を見て笑い出したのだ。
  ――あらら、こりゃ大変だ。ひょっとすると、わたし? よく取っておいてたわねえ、こんなの……。
 おもしろがるようにあきれたように、レニはつぶやく。一度だってまともに写真を撮らせてくれなかった、あのころのレニだ。ぶれた輪郭、長い髪、露光している最中にぼやけてしまったまなざし。ねえ、見てよみんな! わたしたち、高校のころにこんなことやってたのよ、ピンホールカメラって言ってねえ……。飛び去ってしまった時代の光りが焼き付けられた印画紙を覗き込みながら、酔客たちは笑ったり感心したりする。懐かしいわねえ、わたしもなんか持ってくりゃよかった。レニはそんなことを言った。
  ――あるよ。
 おれは言う。レニは怪訝な顔をする。かばんから取り出した紙製のピンホールカメラ。片すみにLeni.のサイン。
 そのときのことだ。気がついたのはおれだけだっただろう。あの、いつだって悠揚迫らざる態度だったレニの、長い髪から覗いたかたちのよい耳介がさっと朱に染まったのだ。ほんの一瞬のことだった。笑みのなかにかすかな怒りと含羞とが複雑に入り交じった表情で、レニはおれのほうに向き直る。
  ――ちょっと。現像したんでしょ。出しなさいよ。
 隠し立てなんかできるはずもなかった。鋭いくちばしを持った猛禽と相対したときの生物の気持ち……、そんなふうに言ったことがあったっけか? おれは叱られた子供みたいにはにかみながら、箱の蓋を開ける。ほんの数日前に現像したばかりだ。印画紙の上に奇跡的に息づいていた、遠いむかしの光り。
 レニの写真に並べてテープで留める。眺めていた一同はざわつき、笑い、口笛を吹く。高校時代のおれだ。授業中にちがいない、前を見つめてノートを取っている横顔である。いつのまに撮ったものやら。半袖を着ているところからすると、夏の始まるころだろう。
 レニと出会って、間もないころの写真にちがいない。

 

(了)
                                                                              

 

 

 

作者紹介

 

瀬川深(せがわ しん)

 

1974年生まれ。岩手県生まれ。東京医科歯科大学卒業。同大学院博士課程修了。医学博士。

2007年『mit Tuba』(『チューバはうたう』に改題)で第23回太宰治賞を受賞。

作品に、『ゲノムの国の恋人』、『ミサキラジオ』などがある。

イェール大学で遺伝学・神経生物学研究にたずさわりながら、執筆活動を続けている。

 

 

 

 

 

 

 

『レニの光芒』①

『レニの光芒』②

『レニの光芒』③

『レニの光芒 ④』

『レニの光芒 ⑤』

『レニの光芒 ⑥』

『レニの光芒 ⑦』

『レニの光芒 ⑧』

 

 

 

 

*『レニの光芒』の無断転載を禁じます。作品の著作権は、瀬川深さんに属しています。ネットでの公開権は、『にゃんころがり新聞』のみが有しています。

 

 

 

 

 

 

 

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▽『レニの光芒 ①』を読んでいない方はこちらから

 

 

 

 

 

レニの光芒  

 

 

 

 

 

 

瀬川深

 

 

 

 

 

5.

 

 

 自分の手で気まずくしてしまった思い出など、忘れてしまうに限る。そう考えていた。二度とレニに連絡を取ることもないだろう、そんなことが許されるはずもない。そう思いこんでいたんだ。それは少々突っ張りすぎた、かたくなな態度だったかもしれないけれどね。
 またも何年かが過ぎた。五年、六年、もうちょっとだったか。三十路の坂を越えるころ、おれはアウトドアスポーツ誌の編集部に潜り込んでいた。ウェブ担当者の求人が出ていたところに名乗りを上げたのだ。ちょっぴり給料は下がるけれど、いずれそんな仕事をしてみたいと思っていたんだ。相も変わらず自転車は好きだったしね。なにより、自分の仕事に誇りが持てるってのはすばらしいことじゃないか。最初は前任者の作ったサイトを手直しするていどの仕事だったけれど、しだいに記事の作成をまかされるようになってきた。自転車のパーツをレビューする。国内ツアーに参加し、有名どころの選手にインタビューする。はじめて自分の署名記事が誌面に載ったときには感激したねえ……。
 そんな折のことだった。おれは、意外なところでレニの名前に出くわす。自分が編集している雑誌の広告記事でだ。Morphixっておぼえてるか? スマートフォンのシリーズだよ。数名の若手デザイナーにコンセプトデザインを任せたってのが売りで、ちょっと話題になっただろ。そのなかの一人が、レニだったんだ。あのシリーズのなかでもいちばん奇抜なやつだ、左右対称を拒むような、不思議な曲線に彩られたフォルム。ためらったが、メールを出してみた。祝福すべき偉業だと思われたからだ。
 意外にも、すぐに返信がきた。中身もかなり意外なことを告げていた。なんと、レニはいまドイツで働いているのだという。たしかに件のスマートフォンのメーカーは外資系だ。開発拠点がベルリンにあるとまでは想像していなかったけれど。来月に一時帰国するのよ、ちょっとした飲み会をやるからさ、おいでよ。ビュッフェスタイルだから、気兼ねなく……。おれは苦笑した。おれの屈託を笑い飛ばすような、さっぱりとした態度だった。メールにはチラシが一枚添付されていた。時は十月の半ば、ところは隅田川沿いのビストロ。

 

 

 

 

 

レニの光芒  ⑩につづく

 

 

 

 

 

 

作者紹介

 

瀬川深(せがわ しん)

 

1974年生まれ。岩手県生まれ。東京医科歯科大学卒業。同大学院博士課程修了。医学博士。

2007年『mit Tuba』(『チューバはうたう』に改題)で第23回太宰治賞を受賞。

作品に、『ゲノムの国の恋人』、『ミサキラジオ』などがある。

イェール大学で遺伝学・神経生物学研究にたずさわりながら、執筆活動を続けている。

 

 

(瀬川深様のイラストは、hiroendaughnut様に描いていただきました。)

 

 

 

『レニの光芒』①

『レニの光芒』②

『レニの光芒』③

『レニの光芒 ④』

『レニの光芒 ⑤』

『レニの光芒 ⑥』

『レニの光芒 ⑦』

『レニの光芒 ⑧』

 

 

 

 

*『レニの光芒』の無断転載を禁じます。作品の著作権は、瀬川深さんに属しています。ネットでの公開権は、『にゃんころがり新聞』のみが有しています。

 

 

 

 

 

 

 

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 今回はドキュメント邦画「めぐみ-引き裂かれた家族の30年―」をご紹介したいと思います。

 

 

writer/K・Kaz

                        

STORY

 

 1977年11月15日、いつものように学校へ出かけた当時13歳の少女。それが横田めぐみさんでした。彼女は夕方、友達が学校から帰る姿を見かけたのを最後に忽然と姿を消してしまいます。その時から平和だった横田さん一家の日々が一変します。
 横田さんたちは、帰ってこない娘を探しつづけ、誘拐だろうか? 家出だろうか? とあらゆる事態を想像しながら、めぐみさんの無事を祈りつづけます。
 やがて、その実態が<北朝鮮拉致事件>だと分かり……そこからが途方もない戦いのはじまりでした・・・。

 

 この作品は、横田さん夫妻の存在を知って心打たれたアメリカ在住のジャーナリスト夫妻がフィルムを回して記録し、作り上げたものです。
 そこに描かれていたのは壮絶な日々の記録でした。
 警察や国にどれだけ娘の無事を訴えても取り合ってもらえません。
 何十年も怒りや悲しみに包まれながらも娘の生存を信じつづけ、ついにめぐみさんは拉致被害者であり、北朝鮮にいると分かります。
 しかし、国家間の話し合いは一向に進まず、横田さんたちは、ただ耐えることを強いられる日々が続きます。
 それでも、家族の凛々しくも懸命な姿は強い力で人々を巻きこみ、やがて当時の首相・小泉純一郎までも動かします。


  
REVIEW

 

 これが小説でも映画でもなく、現実に起こった事だと思うとゾッとするばかりです。 途中には、実際にめぐみさんの拉致を行い、その後に脱北した北朝鮮工作員の証言も出てきます。
 拉致が実行された時の状況や、北朝鮮までの船内で苦しみ暴れまわっためぐみさんが壁一面に爪でひっかき傷をつけていたことまで語られます。そして、ここまで分かっているのに拉致被害者を取り戻せないことに割り切れない思いを抱かずにはいられませんでした。
 この映画が公開されたのは2006年です。それから更に時間が流れ、2017年の11月15日でめぐみさんが拉致されてから40年が経ちました。
 まだ、めぐみさんは戻ってきておらず、生死さえ定かではありません。普通の誘拐事件であればとっくに解決しているはずが、国家間のこととなるとこんなにこじれてしまうことに只もう驚き呆れるばかりです。
 そして、これがアメリカやイギリスであれば武力に訴えてでも取り返しにいったかもしれないとも思いました。日本の立場や、簡単に実力行使にでられない事に付け込まれている気がしてなりませんでした。同じ日本人として、見ているあいだは悔しさで一杯でした。

 

 本作品は星3.5とさせて頂きます。

 

 

K・Kazのこの映画の評価3.5

(本ブログでの、レーティング評価の定義)

☆☆☆☆☆(星5) 93点~100点
☆☆☆☆★(星4.5) 92点
☆☆☆☆(星4) 83点~91点
☆☆☆★(星3.5)80点~82点
☆☆☆(星3) 69点~79点

 
 

 

 楽しみながら見られる作品ではありませんが、日本人として是非見てほしいと思って紹介しました。ニュースなどで「拉致」について知っていた積りでも、その上を行く驚きの内容です。
   

 

 

 

執筆者紹介

 

writer/K・Kaz

 

石川県在住の男性です。

週末には、映画を5~7本ペースで観ていらっしゃるそうです。

 

 

 

おすすめの映画や、おもしろい映画、泣ける映画や、恋の映画など、続々更新予定です。過去記事はこちら↓

 

映画レビュー(あ行の作品) ( 5 )

映画レビュー(か行の作品) ( 6 )

映画レビュー(さ行の作品) ( 4 )

映画レビュー(た行の作品) ( 4 )

映画レビュー(な行の作品) ( 1 )

映画レビュー(は行の作品) ( 5 )

映画レビュー(ま行の作品) ( 1 )

映画レビュー(や・ら・わ行の作品) ( 6 )

 

 

 

 

 

 

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▽『レニの光芒 ①』を読んでいない方はこちらから

 

 

 

 

 

レニの光芒  

 

 

 

 

 

 

瀬川深

 

 

 

 

 しくじったのは、帰り道でのことだ。再会を懐かしみすぎて、席が温まりすぎて、気がついてみればあらゆる電車の運行が停まっていた。同じ方向の連中がタクシーに乗り合ったとき、一人が三宿で、一人が駒沢で降り、おれはレニと二人きりになった。奇蹟だ! そう思ったのは浅はかだった。断じてそんなことはなかったんだ。言っただろう、奇蹟なんてそう何度も起こるようなもんじゃない。暗闇のなかでそっと手を取り、膝をにじらせようとした、そのときのことだ。
  ――ダメよ。
  ――だってさあ、レニ……。
  ――だってわたし、いま、付き合ってる人がいるもん……。
 レニの肩が小さく震えていることに気付いた。その声には涙が混じっているようで、耳を覆いたくなった。やめてくれ、レニ、おれが愚かだった。こんなおれのために悲しむのはやめてくれ……。そうだ、あれは奇蹟なんかじゃなかった、タチの悪い偶然に過ぎなかった。時宜を逃してしまったおれの、間抜けな独りよがりでしかなかったんだ。
 逃げるようにタクシーを降り、おれは未練がましくレニを見送った。赤いテールランプが角を曲がって消えるまで。わかっていたはずじゃないか、おれにもレニにもすでに八年の年月が流れてしまっていて、それは二度と元には戻らないんだってことが。そんな苦い思いがこみ上げてきた。

 

 

 

 

 

レニの光芒  ⑨につづく

 

 

 

 

 

 

作者紹介

 

瀬川深(せがわ しん)

 

1974年生まれ。岩手県生まれ。東京医科歯科大学卒業。同大学院博士課程修了。医学博士。

2007年『mit Tuba』(『チューバはうたう』に改題)で第23回太宰治賞を受賞。

作品に、『ゲノムの国の恋人』、『ミサキラジオ』などがある。

イェール大学で遺伝学・神経生物学研究にたずさわりながら、執筆活動を続けている。

 

 

(瀬川深様のイラストは、hiroendaughnut様に描いていただきました。)

 

 

 

『レニの光芒』①

『レニの光芒』②

『レニの光芒』③

『レニの光芒 ④』

 

 

 

 

*『レニの光芒』の無断転載を禁じます。作品の著作権は、瀬川深さんに属しています。ネットでの公開権は、『にゃんころがり新聞』のみが有しています。

 

 

 

 

 

 

 

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▽『レニの光芒 ①』を読んでいない方はこちらから

 

 

 

 

 

レニの光芒  

 

 

 

 

 

 

瀬川深

 

 

 

 

4.

 

 

 惨めったらしい遁走からほどなくして、おれはダメ親父を見限る覚悟を決めた。がむしゃらにバイトしてカネを貯め、東京に逃げたのだ。専門学校に潜り込んで最低限のコンピューター技術を身につけ、渡り歩いたバイトのさなかにコネをつかんでウェブコンテンツ製作会社に潜り込み……。時代にも助けられたんだとは思う。インターネットというものが猛然とこの社会に根を張りはじめたころだった。とにかくそういったものを扱えるやつならば黒猫だって白猫だってかまいはしない、そんな雑駁な空気があればこそ、おれみたいな後ろ盾のない若造もメシを食っていくことができたんだろう。
 そんな折りのことだ。古い時代からの手紙が舞い込んできた。沖浦の高校の同級生が東京で結婚式を挙げるという。失踪したにも等しいおれを捜し出してくれたのも、インターネットのたまものということになる。ありがたいことだ。さんざん迷い、最後には出席にマルをつけて返信した。唯一無二のチャンスになるかもしれなかったからだ。
 乏しい蓄えから絞り出してスーツを新調した。知る限りでいちばんいい美容院に行った。祈るような気分で電車に乗った、その努力はたしかに報いられたのだろう。ざわつくカフェレストランの奥まった一隅に、レニが座っていた。ロングヘアに黒く輝くまなざし。なにも変わっていなかった。
 八年だ。長かったが、これほどの時間があればこそ、むだに感極まることもなく失われた時間を埋めあわせていくことができたんじゃないかと思う。最初はいささかぎこちなく、やがてゆったりと。
 おどろいたことには、いまではレニは工業デザイナーなのだそうだ。大学で建築を学ぶうちに、感化されたものであるらしい。理屈と合理性が最優先される工業製品と、非合理の権化のような人間生理の仲立ちをするもの。翻訳家であり仲介者であり調停者であり、芸術家でもなければならないもの……。あいかわらず、レニは熱を込めて話した。いま自分が挑みかかっていることについて繰り広げられる奔放な言葉は、まぎれもなくレニのものだった。たとえおれの両目が塞がっていたって、レニだと確信が持てたことだろう。
  ――すごいね。すばらしいな。
  ――まだまだ駆け出しなのよ、ぜんぜん。
 レニは謙遜していたけど、まぎれもなく本心だったよ。同時に、気後れしたことも告白しておく。あのころのおれが身を投じていたことといえば、スポンサーの提灯持ちになって善男善女をだまくらかす記事をウェブサイトに書き飛ばし、嘘八百の星占いや恋愛相談をでっちあげるような、危なっかしい商売でしかなかったからだ。実にひどいありさまではあったことはわかっている。でも、おれは、手を口につなげることで精一杯だったんだ。
 そんなことにレニは頓着しなかった。インターネットという新興の技術を面白がってみせた。
  ――奔流ね。すごい。濁流かもしれないけれど、がんばって泳いでね。
 そんな言い方をした。そして、付けくわえた。
  ――そのうち、わたしだって泳ぎに行くかもしれないから。
  ――え? それはどういうこと?
 おれは問い返したが、レニは謎めいた微笑みを浮かべたきり、それきり口をつぐんでしまった。
 さて、そうとなると、むしろ写真の話はしにくかったな。ごく若いころの情熱なんて、いまさらほじくり返すようなものじゃないのかもしれない。なにかしらの挫折や紆余曲折があったのかもしれない。あの汽水湖のほとりでの思い出は酔いのなかにまぎらせてしまい、おれたちは他愛のないことばかりを話していたように思う。

 

 

 

 

 

 

レニの光芒  ⑧につづく

 

 

 

 

 

 

作者紹介

 

瀬川深(せがわ しん)

 

1974年生まれ。岩手県生まれ。東京医科歯科大学卒業。同大学院博士課程修了。医学博士。

2007年『mit Tuba』(『チューバはうたう』に改題)で第23回太宰治賞を受賞。

作品に、『ゲノムの国の恋人』、『ミサキラジオ』などがある。

イェール大学で遺伝学・神経生物学研究にたずさわりながら、執筆活動を続けている。

 

 

(瀬川深様のイラストは、hiroendaughnut様に描いていただきました。)

 

 

 

『レニの光芒』①

『レニの光芒』②

『レニの光芒』③

『レニの光芒 ④』

 

 

 

 

*『レニの光芒』の無断転載を禁じます。作品の著作権は、瀬川深さんに属しています。ネットでの公開権は、『にゃんころがり新聞』のみが有しています。

 

 

 

 

 

 

 

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11月のPV数順のランキング発表をおこないます!

11月1日~30日までのPV数の集計になります。

それでは、発表です!!

 

 

 

 

10位

 

やりたくないことは、やらない。人生一度きり。好きなことだけやって、楽しみましょう!

 

writer/にゃんく

 

 

 

 

 

 

9位

 

初めてのひとり暮らし~夢と希望をかなえるためには?!

 

writer/にゃんく

 

 

 

 

 

8位 

 

『修行の旅に出るにゃ!』<4コマ漫画>~にゃん五郎の物語 第5話

 

 

4コマ漫画/狐塚,R

原案/にゃん子

 

 

 

 

 

 

7位 

 

『神ネコでは?!』4コマ漫画

 

4コマ漫画/あみあきひこ、にゃんく

 

 

 

 

 

6位 

 

 

『ナラタージュ』映画レビュー~「孤独だった私に、居場所をくれた人は、愛してはいけない人だった。」

 
 

 

writer/K・Kaz

 

 

 

 

 

 

 

 

5位

 

『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』映画レビュー~「世界中の人が驚くような料理を作りたい。」

 

 

 

writer/K・Kaz

 

 

 

 

 

4位

 

 

牟尼庵(むにあん) 京都カカオ亭のキューブシュー~口コミスイーツ情報

writer/にゃん子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3位

 

『北海道能取岬にて』4コマ漫画

 

 

 

4コマ漫画/イラスト本舗

原案/にゃんく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2位

『魔法使いのうららちゃんと、旅する剣士のナイトくん』4コマ漫画

 

 

 


 

 

 

冒頭の4コマ漫画/ササハラ

writer/にゃんく

 

 

 

1位

 

『レニの光芒』瀬川深~太宰賞作家の、新作「恋愛小説」!

 

 
 

 

 

 

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 hiroendaughnut様には、にゃんころがり新聞に原稿を書いていただいた、小説家の方の似顔絵を描いていただきました。

 

 

 

hiroendaughnut様

唄って踊れるアーティスト、Hiroさんです。

 

 

hiroendaughnut様作の、瀬川深様のイラスト↑です。

 

 

 

 さらに、映画「世界の中心で、愛をさけぶ」でお馴染みの、ベストセラー小説家の片山恭一様には、新作「あなたが触れた」を、にゃんころがり新聞にご提供いただきました。

 片山恭一様の似顔絵も、hiroendaughnut様に描いていただきました。
 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは、芥川賞作家の又吉直樹さんのイラストです。

又吉直樹さんのイラストも、hiroendaughnut様に描いていただきました。

「火花」が映画化されることでも話題です。

 

 

 

シリン・ネザマフィ

 

 

 シリン・ネザマフィさんのイラストも、hiroendaughnut様に描いていただきました。

 シリン・ネザマフィさんは、文学界新人賞受賞作『白い紙』の作者です。

 

 

 

 

 

 

小林。様

そして、小林。様には、「占いをするにゃん五郎」のイラストを描いていただきました。

 

 

 

 

小林。様作。

 

 

将来、お魚が釣れるメッセージ?

 

かわいいイラストをありがとうございました。

 

 

 

そして、すみません。

業務連絡です。

現在、外部サイトを通して、にゃんくとやり取りをしていただいているアーティストやライターの方は、

mtkm2008☆gmail.com

↑こちらにゃんくのアドレスへ、メッセージいただきますよう、お願い申し上げます。お伝えしたき議がございます。

☆を@に打ちかえて送信してください。

すでににゃんくのメールアドレスなどをご存知の方は、ご連絡いただかなくてもけっこうです。
どうぞよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

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