『果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語ー㊷ー』にゃんく | 『にゃんころがり新聞』

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果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語

ー㊷ー

 

 

 

 

 

にゃんく

 

 

 

 

 陽が暮れると、ミミとリュシエルは昨日と同じように柔らかい叢の上にぺたんと座り込み、パンを分け合って食べました。家から持って来たパンは全てなくなってしまいました。
 ふたりともこれっぽっちの食べ物ではとてもお腹いっぱいにはなりませんでした。ひもじさにお腹がきゅるきゅると鳴りました。
 今夜はミミが人形のメメに魔法をかける予定でした。
 リュシエルはポケットの中を見てみますと、今日道々集めてきた七種類の植物は欠けることなく全種類揃っていました。
 リュシエルは七種類の植物を小川できれいに洗って来て、それを満月の光が充分に当たる場所に敷き詰め燃やしました。人形を人間にする魔法を有効にするためには、満月のきれいな夜でなければならないのです。
 焔はミミが魔法の力を使い熾しました。そしてリュシエルがブロンド髪の人形を献げ持つようにして、燃やした煙で人形を燻しました。
 ミミが魔法の教科書に記載されているとおりの呪文を唱えはじめました。
 五分ほど経ち、植物を燃やしていた焔は消えて、あとには黒い灰が燻っているだけでした。
 ミミは呪文を唱え終わりました。
「失敗だったかしら?」
 リュシエルが人形を見ると、魔法をかける前と後とで、何も変わったところが見受けられませんでした。何かの間違いで、魔法は成功しなかったのだろうとリュシエルが思った時、手に持っていた人形が空気のように軽くなっていることに気付きました。
 人形の身体が重力に逆らうように仰向けに寝たままの姿勢で宙に浮かんでいます。人形はゆっくりと空高く上がって行き、月の光を浴びてこの世のものとは思えない光景でした。しばらく人形は空中で水平に静止していましたが、あっけに取られて上空を見ているリュシエルの目の前に、先程と同じ緩やかさで足を下にしてふわりと地面に降り立ちました。羽の生えた妖精が舞い降りて来たようでした。
 ブロンド髪の人形は何度か瞬きをしました。そして長い眠りから覚めたというふうに、顎が外れてもおかしくないくらいおおきなおおきな欠伸をひとつした後、
「お腹空いたわ」
 と云いました。それがメメが人間になってはじめて口にした言葉でした。
「何か食べるものない?」

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

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