『果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語ー⑰ー』にゃんく | 『にゃんころがり新聞』

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果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語

ー⑰ー

 

 

 

 

 

にゃんく

 

 

 

 朝になると、リーベリは男の子に体力を回復させる魔法をかけてから、お仕事に出掛けました。念のため、部屋の外に出てから、魔法をかけて部屋の内側から戸につっかい棒となる箒をかませておきました。これで誰も部屋の中に入ることは出来ない筈でした。
 しかし、何日経っても男の子は目を覚ましませんでした。血色が良くなったと思われた顔色は、ともすれば土気色に変わります。真夜中に男の子が咳き込んで、苦しそうに何もない胃から黒い胃液を戻したりすることもあるのでした。リーベリは夜も寝ずに男の子のそばに付きっきりで見守りました。リーベリは体力を回復させる魔法を何度も使いました。病気を治す魔法より体にかかる負担は少なくて済みますけれど、それでも使った後は後頭部にのしかかるような重みを感じるのでした。そんなことがあった後は、以前にも増してリーベリは男の子の寝顔を飽きずに愛しそうに眺めているのでした。この子は今、生きるか死ぬかの瀬戸際で戦っている。負けないで。あたしがそばにいるからね。

 

 リーベリは手拭いを水で濡らし、男の子の身体を隅から隅まできれいに拭きました。髪の汚れも取りました。かなり臭いが酷くなっていたので、着ていた衣服は脱がせて、洗濯が終わるまでの間、リーベリの衣を着せておきました。
 リーベリは男の子の裸の胸に耳をそっと当ててみました。心臓の鼓動がゆっくりと打っているのが聞こえて来ました。
 汚れをきれいにすると、やはり男の子は美しい顔立ちをしていました。リーベリは、男の子の世話をするうちに、この子が自分の人生を変えてくれるかもしれないと思いはじめていました。この子はミーシャを失ったかわいそうなあたしのために神様が特別に遣わして下さった宝物なのかもしれない。
 不意に、ケイの声がつい薄い戸の向こうから聞こえて来ました。しかし、ケイの跫音はそのままリーベリの部屋の中には入っては来ずに、遠ざかって行きました。リーベリはほっと胸を撫で下ろしました。ケイにだけはこの男の子を見つけられてはならないと思いました。ケイに知れると、何もかもが良くない方向に進んでしまうのでした。今までだってそうでした。ケイはリーベリから色んなものを取り上げてきました。この男の子だってケイが知ればきっと取り上げてしまうに決まっているのです。

 

 

 

 

 

 

ー⑱ーにつづく

 

 

 

 

 

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