『果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語ー⑮ー』にゃんく | 『にゃんころがり新聞』

『にゃんころがり新聞』

にゃんころがり新聞は、新サイト「にゃんころがりmagazine」に移行しました。https://nyankorogari.net/
このブログ「にゃんころがり新聞」については整理が完了次第、削除予定です。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。

 

果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語

ー⑮ー

 

 

 

 

 

にゃんく

 

 

 

 季節は巡り、ひときわ暑い夏の日がやって来ました。
 時々、外の世界から入手した話をストレイ・シープとジョーニーが持ち帰るようになっていましたけれど、それらの話のほとんどは、いっときの退屈を紛らしてくれるものではあっても、単調な日常の世界を塗り替えてくれるほどの力を持っているわけではありませんでした。
 けれども、その日だけはいつもと様子が違っていました。
 夕焼けの空の彼方からストレイ・シープが飛んで来て、灯り取りを通り抜け、リーベリが差し出した腕に止まりました。ストレイ・シープの背中にはジョーニーが乗っていました。ひとりで遠出すると道に迷ってしまうので、いつもジョーニーがストレイ・シープの背中に乗って道先案内人をつとめていました。ストレイ・シープは小首を傾げながら話しました。「ここから北西の方角の海岸べりに、ひとりの若い男が倒れているそうです。渡り鳥が見つけたんです。何でも、腰に金ピカに光る剣を提げているそうです。そいつだけじゃなくて、他の渡り鳥たちに聞いてもみんな見たって云ってたから、これは確かな情報かと思います」
  リーベリは床の上で胡座をかいて、擂り鉢の中に薬草を何種類か入れて棒で混ぜ合わせていました。「ふうん。男の子ねえ」
「生きているのか死んでいるのかも定かではありません。この熱さですし、今から駆けつけたとしても、腐ってしまっているか、腐肉を食らう獣の餌食にでもなっているかもしれませんが」
 リーベリは薬草を混ぜる手を止めてしばらく考え込んでいました。「海岸と云うと、普通に飛んで行けば三十分もかからないで着く距離よね」
「……そうですね」
 リーベリは再び擂り鉢の中の薬草を棒で混ぜはじめました。「もう夕食は済ませているから、残りの家事を手っ取り早く終わらせてから、様子を見に行ってみようかしら。あたし達が辿り着いた時には、助け出されていて、いなくなっているかもしれないけれど」
 ジョーニーとストレイ・シープは目をくりくりさせていました。ストレイ・シープは云いました。「分かりました。それじゃ、待ってます。おいらだいたいの場所は分かりますんで」
 リーベリは頷くと、腕まくりをして、蜥蜴の尻尾を指でつまんで擂り鉢の中に入れました。

 

 

 

 

 

 

ー⑯ーにつづく

 

 

 

 

 

にゃんころがりmagazineTOPへ

 

にゃんころがり新聞TOPへ