『果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語ー⑫ー』にゃんく | 『にゃんころがり新聞』

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果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語

ー⑫ー

 

 

 

 

 

にゃんく

 

 

 

 

 

 しつこく狙ってくる獣達に、リーベリは自分の髪の毛を一本ずつ抜いて投げつけました。髪の毛は空中で黒い光の槍に変わり、羽を持った悪魔たちの身体を貫きました。キュッと小さな悲鳴をあげて、悪魔たちはばらばらと地面に落ちました。そのようにして五、六匹をやっつけると、生き残った悪魔たちは尻尾を巻いて逃げ散りはじめました。けれどもリーベリはそれを見逃そうとせず、黒い光を次々に放って悪魔たちを串刺しにしていきました。リーベリの周囲には、黒い鼠のような死骸が幾つも転がっていました。
 黒い光の矢は、涎を垂らしていた獣にも向けられました。獣をあっけなくやっつけると、リーベリはそれだけでは満足せず、気が違ったみたいに駈け出して行って、黄色い目を持った獣たちを次々と殺していきました。その獣たちは、最初にやって来た獣が呼び寄せた仲間に違いありませんでした。何しろ、自分を食べようとしていた獣たちなのです。復讐の報いを受けて当然だとリーベリは思いました。
 あたしに楯突くと皆こうなるのよ。覚えておきなさい!
 リーベリは溢れ出すような自分の力に夢中になり、箒にまたがって風のように空を飛び回ったり、空中から無差別に光の矢を投げつけたりしました。
 黒い光の矢(元はリーベリの髪の毛一本ですが)は大人しく灌木に寄り添うように身を休めていた動物にも命中しました。それは草食系のノロジカの親子でした。ノロジカの子供は突然降って来た光に親を殺されて、いつまでもかわいそうな鳴き声をあげていました。
 リーベリは空中に浮かんでいて、その様子を見ていましたが、ふと自分の心臓が痛むのを感じました。ジュリアのおかげで、無限の力を与えられたと錯覚していましたが、それは間違いかもしれませんでした。病んだ身体に無理を重ね、相当な負担が蓄積されているように思われました。
 リーベリは家路を急ぐことにしました。
「ジュリアがくれた力が残っているうちに家に帰らないと。この力が消えてしまうと、あたし、きっと飛べなくなるわ。すこし調子に乗りすぎたかもしれないわ……」
 道のりはまだ半分近くありました。眼下には同じような景色が蜿蜒と何時果てるとも知れず続いていました。先程リーベリに殺された獣たちの仲間が虎視眈々とリーベリの力が尽きるのを待っているような気がしました。
 時間が経つごとに、全身に漲っていた無限の力がすこしずつ弱まっていきました。
 何回か、空を飛ぶ鳥とぶつかりました。
 鳥は粉々に砕けて、ぶつかった衝撃と鈍い痛みをリーベリの体に残しました。リーベリの布の服には鳥の足や羽毛がびったりこびりつきました。
 時々、左胸に激痛が走りました。そのせいでリーベリはまったく飛ぶことを中断されました。リーベリは胸の痛みが和らぐまでしばらく空中で静止して気分が落ち着くのを待たなければなりませんでした。
 目に見えて空を飛ぶ速度は遅くなっています。
 時々浮力を失って、地面に落ちそうになりました。
 ようやく村が近付いて来ました。これ以上空に浮かんでいることが苦しくなって、地面に降り立ちました。
 神々しい力はすっかり消え失せてしまいました。リーベリは痛む胸を手で押さえながら歩きました。強く打つ心臓の鼓動が、自分の耳にも聞こえてきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー⑬ーにつづく

 

 

 

 

 

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