その【1】の続きです。

https://ameblo.jp/ny-teso-uranai/entry-12609137933.html

相変わらず貧乏生活が続き、バイト代約7万が入ります。家賃で半分消えるにも関わらず「家賃さえ払っていれば棚にあるパスタ茹でて生きて行ける。」という思考で占いに通っていました。


ロバートの部屋番号27Aを覚えてしまう程ほぼ毎日通っていました。部屋では何をするでもなく、ただ話をしていました。

私以外にも時々悲しそうな日本人女性を別の部屋で見かけました。別のクライアントでした。

私は暫く通っていると、誰にも話せなかった家族の問題や、フラれた元彼の事、突然仕事をクビになってバイトを始めた事、

2週間後には全部彼らに泣きながら話していました。


ロバートは考え込むように黙って聞いていました。そして、母親と何やら話しだしました。

「これは私達一族しか話せない言語なの。」

と前に言われた事があったので私は素直にそうなのかと理解していましたが、実際はサンスクリット語やアラビア語だったのかもしれません。これも詐欺の手口かと思うとやるせません。


「君と、君の家族はこの悪魔のせえでめちゃくちゃだ。だから君は今とても惨めなんだ。君を救う方法が1つだけある。」

私はその時には自分と家族が救われるならどんな事でもやる覚悟でした。

「悪魔祓いに必要なのは卵をパックで1つ、そして薔薇の花びらを1つ、そして…。


100ドル札を300枚。」

つまり3万ドル、約300万。
2024年の為替で450万


「人間の欲望は全てお金に埋まっているんだ。それを300枚の束にして僕達が祈りを込めて燃やせば君の身体はもう二度と悪魔がより付かなくなる。」

今考えると馬鹿げた話です。

でも私は自分の人生に絶望していました。何をしにアメリカに来たんだろう。家族と向き合わなかった自分のせえで結局みんなが不幸になったんだと泣きながら卵と薔薇を買いに行きました。


300万円は手術が必要だと嘘をついて親や友人から借金をして、全て100ドル冊で引き出し、彼らの指示通りアルミホイルに包みました。


お祓いの日、彼らはとっても機嫌が良かったです。リビングに私と親子。2人で何か呪文を唱えています。

テーブルに置かれた卵と薔薇の花びら。
私は終始目を閉じるように言われ、彼らの呪文を聞きながらただ黙って座っていました。

暫くして目を開けて良いと言われ、沢山ある卵の中から1つ指をさされた卵をパックから取り出しました。


どうやら中に悪魔がいるらしく、彼らはビクビクしながら卵を手にした途端、袋の中に投げつけました。

「悪魔め!」

見るなと言われたので一瞬しか見てませんが、ドス黒い「悪魔」が卵の中から出てきました。

一連の作業を終えて、私は心なしか気持ちがスーッとして、アルミホイルを渡し帰りました。

帰り際「2週間取り出した悪魔を退治したり、お金を燃やして浄化したりするので連絡が取れなくなるよ。ごめんね。」と言われました。

「(そうか、でも私と家族の為に命がけで悪魔を退治してくれるんだ。2週間私もゆっくりしよう。)」

もう洗脳の域で私は彼らの言葉を全て信じ切ってました。

しかし2週間経っても連絡が取れません。2度と連絡が取れなくなるのが恐くなり、私は27Aへと地下鉄に乗り急いで向かいました。

息を切らしてドアマンに「27A」と伝えると、

「そこ誰も住んでいないよ。」



部屋はもぬけの殻でした。


詐欺のトリックは簡単で、私が目を閉じている間に腐らせた卵を入れ替え、指定して割っただけです。ドス黒い卵が出るに決まってます。

2週間連絡を取れないと言ったのは、お金を持って雲隠れする為。

携帯も当然解約済みで全く知らない人に繋がりました。



私はタイムズスクエアの真ん中で泣き崩れました。人目も憚らず大声で泣きました。

それからも私は、この街で沢山騙されたり沢山意地悪されましたが、この時が1番泣きました。

1番辛かったのは騙された事より、結局家族を救うどころか家族に迷惑をかけてしまった事。

泣いてどうしようもない時、ふと1人の日本人女性の顔が浮かびました。あの時27Aの別の部屋にいた日本人女性でした。


彼女も同じ目にあったんだろうか。

詐欺に遭った後彼女はどうしたんだろう。

私と同じようにどこかで泣いてるんじゃないか。

私は家に帰り、暫く考えました。 

違う…。ここで絶望するのはきっと違う。」

私は助けたい…。この世界で自分と同じような目に遭っている人達を、まだ絶対助けられる!

それからすぐ、日系の掲示板に書き込みました。

「手相が見れます!」

助けるとは言っても私にできる事はこれしかありませんでした。

最初は1時間1000円、凄く安い値段で依頼を受けひたすら話を聞きました。バイトの時間が押しても、3時間しか寝てなくてもグランドセントラルの地下に毎日毎日通いました。

鬱病の人も大泣きする人も激怒する人も、よく身体がもったなと思います。

あれから16年。

私は今も誰かの手相を見てアドバイスを差し上げる事しか出来ないですが、それでも1人でも元気になるのであれば、ずっと誰かの手相を見続けると思います。

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