思ひ出すこと③
注目アーティスト・ヌルマユ「函館本線」 ↓続き
正しくは、ヌルマユ 「函館本線」という楽曲でした。
メジャーなのかインディーズなのかもよくわかりません。
楽曲はかなり格好良かったっす。
ナンバーガールのメロディに、エレカシのソウルが入ってるって感じでした。
この表現が正しいかどうか、一度しか聞いていないのでわかりませんが・・・
個人的には断然、追っていきます。
もう一ッ度聴きてぇ~~~
祖母へのインタビュー①
Little Boy.全長3.12m、最大直径0.75m、総重量約5t。その丸みを帯び、つるつると黒光りした肢体と、愛くるしい幼子を思わせるネーミングからは想像しがたいが彼は、広島で普通に暮らす生活者を、昭和20年の12月までに14万人を焼き殺した。
そこに、19歳の美江も居合わせていた。彼女は大正14年8月7日生まれで、翌日は20歳の誕生日である。証券会社の集まる銀山町(爆心地から約800M~1kmに位置する)で彼女は陸上小運搬業統制組合で経理をしていた。サマータイムのあった当時、夏は8時が始業時間だったらしい。暑い夏の、普段と変わらないはずの朝の1日である。美江は8時を前に扇子を扇ぎ、始業に備えていた。同年代の女友達である中山さんと、始業を前に、女子に特有の、あの他愛のない会話に耽っていた。いつもと同じ光景である。地鳴りのように蝉が、うわんうわん鳴いている。
「B(B29)がまた来てるねぇ」。扇子を扇ぎつつ、窓越しに空を見上げ彼女は、中山さんに同意を求めた。
8時が過ぎ、彼女はたまたま、実に偶然、書類を金庫に取りに行った。金庫は彼女の身長が154cmであることを考慮すると、縦1m、横1mと、彼女にとってはかなり大きなものである。その金庫が彼女に比して巨大であったことが、深刻なダメージを彼女が被らなかった大きな要因なんだろう。彼女が書類を取る為、金庫の中へ体を預けたその瞬間、閃った。金庫の大きさが彼女の体を覆い、大きく開かれた扉が彼女を隈なく影とした。
蝉の鳴き声が一瞬止む。シャ―――――。静寂と耳鳴り。仄白んだ眩しい空気は奇妙に歪んでいる。圧倒的に眩しい、青白い光が目の端から否応なく侵入してくる。彼女は異変に体を収縮させる。生温い熱風が鉄筋2階建ての陸上小運搬業統制組合の建物をゆっくりとなでた。ゆっくり天井が落ちてくる。
「美江さん、下に来なさい」
彼女は突如、強い力で引っ張られた。常任理事の近藤さんが机の下に彼女を引っ張りこんでくれたのである。とほぼ同時に頑強なはずの建物は、すっかり倒壊した。美江の倒壊した建物から5,6人ほどで這い出た。(そのあたりの記憶は曖昧なようである)中山さんに目をやると、半袖の白いシャツの、肌が露出したすべての皮膚が爛れ落ち、爪で引っかかっていた。中山さんは光った瞬間、窓際にいたらしい。美江自身も腕から血を流していた。暑い日なのに、なぜか来ていた2枚のシャツの1枚を脱いで、中山さんの爛れた朱色の背中に掛けてあげた。
「戦争についてどう思う?」と俺は祖母に尋ねた。
「戦争はいけないことなんだろうけど、もう忘れたわ。」
祖母は快活に笑った。
祖母の手は、緑色の血管が浮き出ていて、皺だらけだった。