たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!" -5ページ目

たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!"

主にオペラの感想等を亡備録として書き連ねていこうかなと思ってます。
その時感じたことをそのまま書くようにしてますので、文筆がおかしいことは多々ありますが、良ければご覧下さい。

【ネタバレだらけ注意】


今日は二期会によるモーツァルト作曲『コジ・ファン・トゥッテ』を聴きに新国立劇場へ行ってきましたー。

なんと、前回ブログを書いたのが4月だそうです。それから書いてないらしいんだけど、観賞には出かけてるんです。多分ずっと忙しかったんだなと思う。お疲れ俺。そんなことを思いつつ、今日は高速バスで帰るので3時間も書く時間があるので書いちゃうぜということで放屁録を。まてまてまてーい。誰がおならの記録をつけてんねん。忘備録や!!

ということで、本日早くも満塁ホームランが出たところで本編のお話へ。


今回の演出はロラン・ペリーが演出するということで、教師びんびん…ではなく興味津々(トシちゃん世代でもねぇだろ)。ペリーと言えばフローレスの地位を確立した公演と言っても過言はないだろう、ドニゼッティ作曲『連隊の娘』を演出したことで有名。2021年に二期会ではヴェルディ作曲『ファルスタッフ』の演出で招聘したのも記憶に新しい。彼の演出は一見奇抜そうな感じがするけど、よく見てみると全くそんなことはなくて、音楽と動きが緻密に計算されていて、静と動が見ていて気持ちいい。とにもかくにも音楽を活かし切る演出という印象があります。そういう意味では、私の尊敬するジャン・ピエール=ポネルに通じる様な感じもしています。そんな彼が『コジ・ファン・トゥッテ』を演出する。そりゃ楽しみになっちゃいますよね。どんな舞台になるんだろうとワクワクしながら観賞しました。もちろん今回もパンフレットは買いましたが、これを書き上げてから読みます。自分の感覚だけの記録をしておきたいので。


幕が開くと、フィオルディリージとドラベッラがレコーディング室の外から部屋中の様子を覗いている。真っ暗な中、部屋に入ってくると、電気が点く。そこから序曲の演奏が始まる。見たところ今からレコーディングをする様だ。フィオルディリージとドラベッラは舞台後方の長ソファーに座り多分ベーレンの楽譜らしきものを読んで歌うところの確認。部屋の中にはソリストとスタッフ達。フェランド(下手)は口の体操をしたり体の体操をしたり。途中で後方にいるドラベッラにお前もやれよばりに体操をやってみせる。それに応えるドラベッラ。グリエルモ(上手)は途中でトイレに出かけて、出番ギリギリに戻って来る。アルフォンゾは最初は下手側の奥のソファーで新聞を読んでいたけど、センターのマイクにスタンバイ。そこから『コジ・ファン・トゥッテ』のレコーディングが始まる。そんな始まり。


ちなみに、フェランドとドラベッラは緑色、グリエルモとフィオルディリージは薄い青っぽい色?服の色を着ているので、関係性がパッと見で分かりやすい。


お客さんは私も含め最初の頃は見方が分からないのとマイクに向かって録音を続ける風景が続くので何となく退屈。ただし、これがどこかのタイミングでペリーの魔法がかかるんだよななんて思って観てたのでワクワク。冒頭の男3人のレコーディングは無事終わり、後ろにスタンバイをしていた女性2人の出番。舞台下手側にハの字の1画目のようになるようにフィオルディリージとドラベッラがマイクと楽譜と一緒に並ぶ。逆にアルフォンゾは上手隅の手前で同様にスタンバイ。

2重唱が終るとアルフォンゾが仕掛けてくるわけですが、そこから急に照明が絞られて、上手にいたスタッフも居なくなり、舞台には3人だけに。アルフォンゾが現実の話のように、彼氏が旅立たなければならないということを2人に伝えます。そして、男2人が肩を落として彼女の前にやってくる。5重唱が終ると、合唱がレコーディングとして(だと思うんだけど)集合して歌う。そこからはレコーディング中の演技ではなくてガチの話として物語が進んでいくようでした。恐らくアルフォンゾによって心理的に不安にさせられたフィオルディリージとドラベッラがレコーディングを進めていく中で、自分の本音の気持ちの部分が登場人物に寄ってしまったということではないのかなと思いました。そしてそれが派生していき、登場人物が本来の自分を見失い、キャラクターと同化していったということです。だだし、1幕の終わりや2幕の終盤で楽譜をめくったりマイクが降りてきたりしていたのでそこが本来の自分とキャラクターとの境を分かりやすく表現してくれていたように感じます。という完全に私見ですので違ってたら笑ってね(笑)


あ、あと、デスピーナをスタッフに設定したのは良かったですね。とても自然に観れました。ホットココア的なものを淹れてくる辺りそれっぽいもんね。


演者もみんな適材適所で素晴らしかったです。

特に素晴らしかったのは、フェランドの糸賀修平さんと、フィオルディリージの種谷典子さん、ドラベッラの藤井麻美さん。

糸賀さんは、ツヤッツヤよ。お声がね、ツヤッツヤ。ツヤッツヤのピカッピカ。甘くて光り輝いていて遊び心満載という感じのすんばらすぃ声。どうもーイタリアでーす。ってずっと言ってるのよ声が。もう嬉しくなっちゃったよね。糸賀さんは生では端役みたいのでしか聴いたことなかったけど、今回聴いてみてマジで拍手。冒頭のあと5重唱から歌はもちろん演技も冴えまくりで所作もオペラっぽいし、最高でした。納得いかないのは1幕の「愛の息吹は」はあの5倍くらいの拍手の量があって良かった。ほんとに。クッソ良かった。マジで。Bravoとか言いたかったけど恥ずかしくなっちゃって言えなかった私の不甲斐なさというとこは申し訳ないけど、マジでめちゃめちゃ良かったもん。拍手は惜しみなくしました。フィオルディリージを口説こうとするけど、ヒドラが!バジリスクが!とか言って避けられる辺りのシリアスな所からの、グリエルモの「女たちよ」からの「裏切られ」のアリア、このあたりの一連が超絶良かった。「裏切られ」のアリアとかそれまでと全然表現変えてきてて、本気のフェランド120%って感じでマッジで良かった。鳥肌もんでしたよ。だからわたしゃBravo叫んだわよ。これをリベンジBravoという(うるせぇよ)。あと「あぁ、私にはわかる」のアリアのカットはもったいなかった。聴きたかったー!!世界レベルの素晴らしいフェランドでした。良いもの聴かせていただけました。ありがとうございます。


そして、種谷さんも良かったわー。フィオルディリージって自分のイメージだと声種ではなくて、声質的には少し重めなイメージだったんだけど、種谷さんの若々しい軽々とした声により、どこぞのオバサンの悶えというか、苦しみみたいな感じ聴こえずに、純粋に自分の心の中に芽生えてしまう愛に戸惑う若い女性という感じが新鮮でぴったりでした。「岩のように動かず」では他の相手を好きになるなんてことは微塵も見せない毅然とした女性を表現していました。演出的にもマイクが降りてきていたので、まだまだ抵抗出来るというか、純粋なフィオルディリージのままで歌いきってくれたという感じだったのかなと思います。その後の、「行ってしまうわ…」のロンドはさらにさらに絶品でした。フィオルディリージを録音しに来たソプラノ歌手とフィオルディリージが完全に一体化してましたね。種谷さん、おキャンな役からもうこんなにも苦しみを表現するような役をやれちゃうようになったんですね。成長が嬉しいわよ。愛に苦しむフィオ。その愛の重圧が視覚的にも分かりやすく、部屋の壁が迫ってきて自分の動ける範囲が気付いたらとても狭くなっていたというものが非常に良い効果を出していたと思います。もう動けないんですね。ただ、迫ってくる壁がギーギー音出てたのは微妙でしたが。あれ、まさかあれも計算?フィオルディリージの心の軋む音だったり?(笑)種谷さんのヴィオレッタ聴けなかったので今回聴けて本当に良かった!!次も期待して待とう。


藤井さんは、イタリア語がとても明瞭で声量があって、とてもはっきりとした声。ですから、イタリア物は何でも合うと思いますけど、ドラベッラはこれまた合ってましたね。ドラベッラはイタリア物なのかはさておき。この役って偏見で言いますが、ほんとに偏見ですが、どんなに上手い人が歌ってもそれなりってイメージなんですよね。でも藤井さんはそこを覆すべく、大胆な演技と歌で素晴らしいドラベッラを演じてくれました。最初のアリアで聴衆の空気感を変えましたよね。そこから拍手が出始めた。そういう空気感とかオーラを持ってる人はやっぱオペラ歌手には必要ですよね。声も良いけど演技派ですね。見とれました。


他にも宮下さんのベルカントで上も良く鳴るグリエルモや九嶋さんの舞台狭しと走り回りながら、声色変えながら歌いつつも、しっかり聴かせてくれるデスピーナとか、どれもかなり高水準だったと思います。素晴らしい『コジ』を体験できたんだなと改めて思います。良かったなー。


指揮者のクリスティアン・アルミンクは手堅いといった感じでしょうか。ややオールディーズな雰囲気。テンポてきにはなんだか遅いなーとまでは言わないにせよ、早くはないねというくらいで、ほんとにややゆったりめみたいな感じ(わかりにくっ)。

個人的にはオケがグイグイ推進力強めで盛り上げていくのが好きですが、今回の演出にはちょうどいいテンポだったかもしれません。


先輩のブログなんて1人しか読んでませんよという後輩に告ぐ。今回の二期会の『コジ・ファン・トゥッテ』めちゃめちゃ良かったです。やっぱり人間模様ですよね。演出の魅せ方や歌い手の表現力の凄さはもちろんですが、やっぱモーツァルトの音楽が素晴らしい。明日他の組でまだあるみたいなので、行ってみるのも良いと思います。てか、行け(笑)今日こんな素晴らしい公演だったのに集客がイマイチだったのは悔しい。ではでは。


新国の入口のとこ


座ったあたり(U39席)

タイムテーブル

出演者

パンフレット


今日はテアトロ・ジーリオ・ショウワまで、私の大好物のオペラを聴きに行ってきました。

まぁこの時点で「お前の言うことだからどうせロッシーニだろ」とか、「お前はロッシーニのカリカチュアにどんどん似てきてんだよコノヤロウ」とか、「シンプルに太り過ぎなんだよ」とかそういう声が飛んできそうですが(最後のただの悪口)、そうです。あたすが聴きに行ったのは寸分の違いもなくロッシーニのオペラです。演目はこれまた大好きな『チェネレントラ』。英語で言うと『シンデレラ』、フランス語だと『サンドリオン』というあれでごわす。


今回のプログラムは2018年4月28日、29日の藤原歌劇団公演が初演となったフランチェスコ・ベッロット演出の再演。ちなみに同年5月12日の第58回大阪国際フェスティバルでも上演された演出です。筆者は4月28日の公演と大阪で実演に触れています。


2018年藤原歌劇団公演のチラシ


2018年大阪国際フェスティバルのチラシ

今年は藤原歌劇団は90周年だそうで、この『チェネレントラ』はその記念公演だそうです。


2024年(今回)のチラシ(表)


2024年(今回)のチラシ(裏)


誰をお目当てに行ったのかは言わずもがな。小堀勇介さんです。小堀さんでロッシーニはマストで行きますと、まぁこういうことになるわけですが、今回も素晴らしかったです!!

小堀さんのラミーロは何度も聴いているのですが、毎回何かしらの変化があります。今日は初めて聴くバリエーションがありました。小堀勇介薬籠中物のラミーロでしょうが、あぐらをかくことなく、真剣に役と向き合い、声の変化に合わせて進化し続ける彼の素晴らしさ。うむ、応援のしがいがあるぜ。

最初の2重唱でお客さんの心を鷲掴み。会場を小堀ワールドに変えちゃうんですよね。声出す前の前奏から、期待感が増々になっていくので、期待感のロッシーニクレッシェンドからの、「とぅっとえでぜーると、あみーち、ねっすんりすぽんでぃ」で、はいきたー、となるわけで。ちなみに、ねっすんりすぽんでぃの歌い方が個人的にはとても好き(しっかりアルファベットを使いなさい)。小堀さんが歌うとみんなその声を逃さず全部聴くぞって空気感になって、会場の集中力がガーン増すんですよ。これは前からそうで、そこがめちゃ強みだと思うんですよね。お客さん一人一人に小堀勇介から触手が伸びていって、思考から何から一体になっていく様な感覚。

アリアは2018年と同様にしっかりとハイDを出してくれました。それも嬉しいのですが、個人的には最初のハイCの鳴りが凄すぎて鳥肌たちました。最後もしっかりアクートきめて舞台から見えなくなるまで伸ばしてましたね。最高だぜ。そしてこれは何度もブログで言ってますが、小堀さんはしっとりと歌い上げるとこもうまいのよ。『連隊の娘』だったら「ああ、友よ」の方(も良いけど)「マリーのそばに」が素晴らしいみたいな。ラミーロも中盤のしっとりと歌うとことても良かった。明らかに小堀さんがオケの音を引っ張ってきてたもんね。


その次に良かったのはドン・マニィフィコ役の押川浩士さん。2018年の時はダンディーニを歌われていて、それも良かったのですが、今回のマニィフィコもそれを超えるくらい良かったです。 ロッシーニのキャラクターの中でも好きな役では上位にくるこの役。3曲もアリアがありますが、1度聴いたら何となく口ずさみたくなるような楽しい曲ばかり。押川さんそのどれも高水準で歌ってくれました。声を張ると全然違うのですが、そうでないところはどことなくコルベッリっぽかったりするなぁなんて思いながら聴いていました。声ももちろんですが、ロッシーニが好きなんだろうなという思いが溢れてました。所作が完全にブッフォ歌いのそれ。イタリアからブッフォ歌い連れてきたのかなと思ってしまいましたよ。その昔、それこそこれも藤原歌劇団だったと思いますが、オーチャードホールでブルーノ・デ・シモーネが同役をやった時に感じた、「これぞイタリアのブッフォの所作」みたいな感じを思い出しました。演技派です。お客さんも後半につれてどんどん反応良くなっていきましたが、個人的には1幕フィナーレでマニィフィコが登場した時の「け、こ、き…」のとこめちゃ面白かったです。そんなにウケてはなかったのが悔しい。すげーうまかったのよ。切り替えが。やっぱそういうとこからもどこがポイントなのかを熟知してらっしゃるなと思っちゃいますね。演出家はいるにせよですが。あとダンディーニとの2重唱も面白かったね!


そういえば、これは今に始まったことじゃないのでしょうがないけど、演者ではなく字幕でリアクションしちゃう聴衆たちの存在。難しい問題ですが笑うポイントがずれたりするんですよね。気になる。


最後はクロリンダ役の楠野麻衣さん。マジで良かった。楠野さんとはかなりお久しぶりでした。いつぶりだろう。『ランスへの旅』以来かな。しっかり声を聴いたのはかなり前。夜の女王を沢山歌われていた時代。そこから進化しまくっていた!!2018年に光岡さんのクロリンダを聴いてしまったので、この役はあれ以上のものはもうないと勝手に思っていたのですが、今回しっかりと自分のものにして舞台乗せてきたなという感じで、特にアリア(ロッシーニの作曲ではない)がガチで絶品!!思わずBravaを叫びました。歌っているとずっと妙技の嵐。難しいヴァリエーションをこれでもかときらびやかに転がしながら歌う姿に興奮しました。そもそも声が役にぴったりで、細かい芝居も゙色々やられていたので、クロリンダとして没入して観れました。


オケはモーツァルトのようなまとまり感はあって音的にも悪くはなかったのですが、いかんせん真面目過ぎていたかなという印象。その昔のライブではないアバドのかんじというのか。そしてゆったりめのテンポ感だったので、もっと疾走感みたいなものがあったら良かったなと思いました。ロッシーニはやっぱそういうとこで活力を見出していかないと面白みに欠ける。ソリストが早く行きたそうなとこもゆっくりめに振るので「うっ」と我慢するようなシーンもありました。あとは、序曲が分かりやすいですが、もっと休符とか厳し目にしっかり切ることでお客さんに「いっくぞおおお」みたいな振りがあると良いなと思いました。あとはボリューム感とかスケール感に余裕とブッフォならではの遊びがあると良かったなと思います。ロッシーニクレッシェンドもっともっとこだわれたかなぁって思います。

なんだろね、全然ダメーとかじゃなくて、惜しいって思っちゃった。


最後にひとつ苦言を呈するとすると、小堀さんです。サイン入りブロマイド売り切れてたんだけど。どう落とし前つけてくれんねん!(うるせぇよ。呈する相手がちげーよ)

ガチ苦言というか、残念なことがそういや1つあった。飴舐める為の袋の開封音と入口で配られたビニールの擦れる音がめちゃめちゃうるさかった。人生賭けてやってる演者に失礼過ぎる!!

少しも出すなとは言わないけど、限度があるのよ。かなりずっとうるさかった。


そんなわけで、眠すぎるのでここまで。

久々のオペラ楽しめました。ありがとう藤原歌劇団。ありがとうチェネレントラ。ありがとうロッシーニ!!






どのようなものにも、語り草と言われるものがある。例えばオペラで言うと、「イタリア歌劇団で来日したデル・モナコやベルゴンツィ、コッソットにシミオナートが歌ったあのオペラのあのシーンがこんなふうに凄くてね」といった具合いに、長くオペラファンの中で語り継がれているものになるのであろう。

私は今日それを体験してしまったようです。

本日紀尾井ホールで行われた、脇園彩さんのメゾソプラノリサイタルがそれにあたる。少なくとも私は語り継ぎたいと思っている。なんと素晴らしかったことか!!


今日は1階席の最前列のほぼセンターあたりのチケットを取りまして、目の前で脇園さんを、ピアノのミケーレさんをダイレクトに感じながら観賞しました。


脇園さんの声の調子は万全でとても安定しており、リサイタルあるあるの前半危なっかしいようなところは微塵もありませんでした。さすがでした。瑞々しい高音に、活力のみなぎる中声域、きれいに粒の揃ったアジリタを聴くと、脇園さんは実はロッシーニが創造したのではないかと思うほどの相性の良さ。そして、例えば内容がしっかりと分かっていなくても心をしっかりと掴んでくる表現力はまさに1人オペラといった感じで、曲ごとにそのシーンが見えてくるかのよう。そしてステージマナーの良さ。どれをとっても一流でした。
それに呼応するように伴奏を務めたミケーレ・デリーアも素晴らしかった。己がグイグイ主張をするタイプではない様に感じましたが、脇園さんの力を120%出し切れるようにサポートする寄り添う伴奏が良かったです。呼吸をするようにピアノの音を出していて、音にまとまりがあり、それぞれが非常に優しいんですね。先日聴いたばかりのジュリオ・ザッパとは全く違っていてそれも興味深く面白かったです。テノール相手とメゾソプラノ相手でそもそものアプローチも違うだろうし、曲自体が違うので一概に比較もできないけれど。

曲はこんな感じ。
オール巨人。そうそう、俺の弟子やったらな…もうパンパンやで…じゃねーよ。そろそろボケたくなってきたから一発いっちゃったわよ。オールロッシーニなんですよ。
で、分かります?このやばさ。
え?分からない?あなたね、よく見なさいよ。『セヴィリアの理髪師』も『チェネレントラ』も『アルジェのイタリア女』もないんですよ。セリアと歌曲で構成されてるんです今回のプログラム。ロッシーニのオペラで『湖上の美人』、『イングランドの女王エリザベッタ』、『ビアンカとファッリエーロ』、『オテロ』、『マホメット2世』…よく成り立ったな!!(笑)
いいね!!お客さんに媚びてない!!好きよあたしは!!!脇園さんが「今のあたしに最適かつロッシーニのセリアの素晴らしい曲達を選んだから、それを聴いて頂戴!!絶対に気に入ってもらえるわ!!」みたいな意気込みを感じます。このあたりはもはや大分妄想ですが。そういえば、1月に小堀さんと脇園さんとやったデュオリサイタルでも同様のことは感じたのを思い出しました。

で、これ脇園さんだったから可能だったかもです。プログラム作るのにあたって、流れの中でどこで盛り上げようとか、色々考えますけど、分かりやすく1部と2部の最後が難曲なんですね。で、曲的にも逃げられないんですよ。つまり、それらの曲で最高の成果を出さないと幕を下ろしづらい雰囲気で客席が満たされちゃうわけです。当然大拍手で終わったわけですが、やはり腕がないとやりきれないプログラムだったなぁと思います。「この曲脇園さん以外で歌える人いんのか?」くらいに思いながらもその完璧な仕上がりに畏怖の念すら感じでおりました。

演奏されたそれぞれの曲に関してはどれも誠に素晴らしく、非常に筆舌に尽くし難いものがありますが、私が好きだったのは、1部だとダントツは『イングランドの女王エリザベッタ』のアリア「私の心にどれだけ喜ばしいことか」ね。単純に凄かった(笑)もうそれで勘弁してねって感じ。だって凄かったんだもん。全曲聴きたい。こんなに歌える人世界でもいるのかしらと思うレベル。声をコントロールしてる感じじゃなくて音楽が勝手に溢れ出してる感じなんですよね。興奮したなぁ。歌曲では比較的有名な「約束」や「誘い」も良かったです。情景たっぷりにお届けしてくれました。

2部だと最後の『ビアンカとファッリエーロ』のアリア「お前は知らぬ、どんなにひどい打撃を」はやばかったね。これはもう度肝を抜かれるという感じで、めちゃめちゃ難しい曲なのに技術的にもハート的にも満足させてくれました。あんな後半の畳み掛けよく歌えるよ。マシンガンみたいだった。 もうほぼほぼいじめに近い歌手の追い込み方。しかしそんなことは気にも留めず、完璧なアジリタをガツーン決めてくれました。それと、いつも少し眠くなる『オテロ』の「柳の歌〜祈」も良かったなぁ。はっきりと申し上げます。全く眠くならなかったです(笑)むしろその表現力に引きずり込まれて魅了されました。切なくなったもの。ウルッとした。 そういう意味では『マホメット2世』のアリア「神よこの危険なさなかに」も良かった。こちらもウルッとしました。このアリア好きなんだよなぁ。
てかてかてか、正直全部良かったんですよね(笑)なんかねー、脇園さん、個別に用意していたものを披露するというより、今まさに目の前で紡がれていく言葉が歌となっていくような雰囲気もあって、こちらも安心してどっぷりとその世界に浸かって堪能させていただけました。

アンコールはこちら。
マジで燃えた!!!!!!
2部最後の『ビアンカとファッリエーロ』のアリアのあとに1度袖にはけてから、すぐに出てきて、いきなり知名度抜群の「今の歌声は」の前奏が流れた時にゃ驚いた。「え?こんなすぐにキャラ変いけるの?喉的に無理じゃない?」なんてなことを思ったのですが、そんな心配は御無用で、優雅に軽々とアジリタを決めて歌い切りました。その後まさかの『イタリアのトルコ人』のフィオリッラまで聴けるなんて夢のよう。もしかすると生でこの曲聴いたの初かもしれない。で、これまた素晴らしい出来栄え。そのまま全曲やれるやんって感じ。脇園さんにめちゃくちゃ合ってた。メゾソプラノだけど、ややソプラノ寄りだから軽々いけちゃうんですね。華やかだったわぁ。

ちなみに、2/29はロッシーニのお誕生日で、その翌日にロッシーニだけのプログラムて、ロッシーニをお祝いするかのようなリサイタル。しかも最高級のリサイタル。もうほんと、最高でした。語り継ぎたいリサイタル。そんな感じ。
ちなみに、彼が生きていれば232歳だそうです。ただ、4年に1度のお誕生日なので4で割ると58歳。思ったより若い(笑)
会場ではそれこそ、ベルカントな人達と沢山出会い、このリサイタルの注目の高さを感じました。また、配信をしてたらしく、半年間配信のアーカイブをチケット購入で観れるらしいので、気になる方はそちらからどうぞ!!

さ、ヴェルディの『仮面舞踏会』内にて、リッカルドがウルリカの住処に出かけようと言ってる3時過ぎてしまったのでもう寝ます。
ありがとう脇園さん、ありがとうミケーレさん。そしてありがとう、ロッシーニさん。最高の体験になりました。

昨日は待ちに待ったこちらの日でございました。
ドドーン!!


はいみんな拍手ー。
あーた、脇園さんと小堀さんが歌ってさ、園田さんが伴奏してさ、そして曲目がまさにBelcanto!な内容だってんだから、おいらの心は弾んじゃうわけよ。弾みすぎて連動したお腹周りがちょっと痩せたという話もあるくらい(お前のハートはアブトロニックか)

Belcantoのリサイタルで、ロッシーニは『セヴィリアの理髪師』も『チェネレントラ』もないし、ドニゼッティは『愛の妙薬』も『連隊の娘』もないんですよ。すごないこれ。やばないまじで。それらのオペラも大好きなので全く否定するわけじゃないけど、それらをあえて入れてない所に、3人の本気を感じるというかね。感じずにはいられぬこの思いどうもフェドーラですというかね(というかねじゃないんすよ)。口を開けば『Traviata』な日本で、かなりコアな曲目にチャレンジしてくれた3人とそれを受け入れて実現してくれた運営に感謝しながら聴かせていただきました。ちなみにTraviataは素晴らしいオペラです。誤解の無いように。

ではプログラムについて感想を。
1曲目はロッシーニ作曲『アルミーダ』より「優美な鎖よ」(脇園・小堀)ということで、この曲久々に聴きましたが実に美しいですね。2人の声がとても甘美に優しく共鳴していく。『ラクメ』の「花の2重唱」のような趣き。最初に声を出すのにはもってこいな感じ。

2曲目は同じくロッシーニの『湖上の美人』より「おお、胸を熱くする優しい炎よ」(小堀)でした。やっぱさ、小堀さんはさ、ウベルトよ。うむ。ロドリーゴじゃなくてウベルトよ。ってなったよね。今はワンチャンロドリーゴもいいかもしれんけど、ウベルトだと確信したよね。歌はSoaveから始まるんだけど、言葉の通り甘い美声がなんとも合っている。こういう部分の表現は小堀さんの薬籠中物。眉毛が思わず上がっちゃう。あまーーーい!!そんな気分、あ、これは今やめた方が良いのか(タイムリーやねん)。ちなみに私はお腹いっぱいでウッベルトがキツイということがよくあるので、そういう意味では私もやはりウベルトなのかもしれない(今すぐ黙れよ?)

3曲目はドニゼッティの『マリア・ストゥアルダ』より「空を軽やかに流れる雲よ」(脇園)でした。ある種完璧に歌ってくれて拍手で悪くはないけど、個人的には技巧的過ぎるきらいがあって、もう少し感情的な表現が乗るといいなぁという感じ。
4曲目も同じオペラからで2重唱の「全てから見放され翻弄されて」(脇園・小堀)でした。こちらは前半かなり余裕のあるテンポ感でたっぷりめに聴かせてくれた後に、後半結構グイグイ攻めてたので気持ちがのれて良かった。さすがは園田さん。歌唱も申し分ないけれど、若干様子見感もあった気はするのでもっと精度を上げた状態で再度聴いてみたいなという気もしました。

さあ、1部のラスト5曲目は、ロッシーニの『ランスへの旅』より 「私にいったい何の罪が?~卑怯な疑いを持ったこと」(脇園・脇園)です。これはもう何度も歌ってるから安定感があったね。うむうむ。どちらかと言うと、リーベンスコフより強めなメリベーアがグイグイ出てくる感じでした
。この曲はヴァリエーションを嫌でも楽しみにしてしまうんだけど、バッチリ楽しませてくれました。これぞ声の歌合戦という感じで盛り上がっちゃったよね。ただ、すこーーしばかし小堀さんお疲れだったかもね。僕は喉がお疲れどころかほぼ死んでます。聴きながら声帯が歌っちゃってるからだと思うんだけど、咳を堪えるのが大変でした。あ、私今若干の副鼻腔炎なんですよ。興味ないでしょうけど(笑)

ここで休憩20分となりましたが、園田さんのピアノがまたいいんだわ。園田さんのピアノだからテンション的に上がって聴けてる部分も結構あると思う。バーンスタインが眉毛で指揮してる動画を見たことがあるんだけど、園田さんは、ニコニコしながらその表情で音を出してるような感じ。手が動いてないのではないかという(んなわけあるかい)。見てて和むし安らぐ。Pace e gioia…そんな感じ。めちゃめちゃ美味しいものを食べた時の顔で終始ピアノを弾かれてるので、幸せな気持ちになりますね。それが音として出てるのも凄いし、ピアノでオーケストラの音を出してるのも凄い。

さ、休憩を終えて2部の1曲目は、ロッシーニの
『湖上の美人』より「たくさんの想いが今この胸に溢れ」(脇園)つまりは、Tanti afettiでした。何となくこれって原語のほうが有名な気がしてて。まぁ難しい曲ですよね。ロッシーニのある種の集大成のようなそんな北極ではなく難曲。そんなこの曲を脇園さんは、きらびやかにコロラトゥーラを駆使しながら実に堂々と歌われていて、すんばらしかったです。言葉のつなぎ方とか切り方もやはり長くイタリアで活躍されてるだけあって上手いです。園田さんのピアノとのやり取りも気持ちいいくらい合ってましたし、ちょうどいいテンポ感でめちゃめちゃ良かった!!おいらがFelicitaやでって思ったもんなぁ。日本でエレナやる機会…ないよなぁ。やってくれよおおおおお。

2曲目は、『オテッロ』より「ああ、なぜ私の苦しみを憐れんでくれないのですか?」(小堀)でした。前半少し安定感を欠きましたが、中盤からはそれらを、全て払拭して、過去1良いのではないかというロドリーゴが聴けました。マジで震えるやつ。園田さんのピアノと小堀さんの歌の全てが完全に1つになってた。小堀さんはロドリーゴが憑依したかのよう。彼の燃え上がっていく気持ちがオーラとなって会場を満たしていました。ヴァリエーション行く前の園田さんのピアノがまた憎い。もうね、無敵だわ。無敵。マリオならスター。スターなら錦野。錦野なら(マジカルバナナやってんじゃないんだよ)。とにかくあれはやばかった。あの時間マジで至福だったわぁ。そして燃えたわぁ。マジの顔してたもん小堀さん。そらわしも抑えて抑えて言わないように頑張ってたBravo2回も言うわ。てかあんな素晴らしい演奏してくれて、言わないことが失礼やわ。それくらい良かった。光り輝いてたよ。会場から溢れんばかりの拍手きてたもんね。

3曲目は、ドニゼッティの《ロベルト・デヴリュー》より 「苦しむ者にとって涙は甘美なもの」(脇園)でしたが、その前の小堀さんで燃えまくったからなのか、喉がイガイガしまくっちゃって、正直しっかり聴けてなかった(笑)しっとりと歌っていたなというくらいなもので。ごめんなさい。咳を我慢しすぎて涙がボロボロでてしまい、涙は甘美どころの話じゃなくて、終わった瞬間にカンロの飴を口に入れましたよ。お口の中でコロコロコロラトゥーラ(いい加減にしとけ)

4曲目は《ラ・ファヴォリート》より 「王の妾だと?~夢の中の清らかな天使」(小堀)でしたが、こういう曲は本当に小堀さん向け。高音を鳴らすのも良いけど、こういうゆったりと丁寧に歌う系こそ良さが出ると思う。しかも、フランス語版を選んだのは正解な気がする。小堀さんのフランス語美しいんだよね。うっとりしちゃうわよね。

そしてプログラム最後は、ロッシーニの『エルミオーネ』より2重唱「何をしてしまったの? 私はどこに?~復讐は果たされました」(脇園・小堀)でした。プログラムの最後が『エルミオーネ』て。しかもさ、これが今リサイタルの白眉でした。もう得も言えぬ感動。脇園さんかなり勉強してますね。声と表現が限りなく1つになってる。そしてその表現がド直球で胸を打つ。隙間がない。私はあまりに凄くて身震いしてしまいました。そしたら隣のオジサマが驚いてました(笑)そらそうだよ。右肩から腰辺りまでがいきなりブルルルルって震えだしてんだもん。小堀さんもオレステに合ってるんだなということに気付かされたんだけど、2人が舞台に出てきて少し経ってからふと気づいた。オペラを観てるぞ俺はと。つまり、声の表現だけでオペラの世界に没入させられていたのよ。聴きながらどんどんのめり込んでいった。すんごいわ。この作品自体は当然知ってますけど、生では全曲観たことはないですし、映像だとROFのガナッシ、ピッツォラート、クンデ、シラグーザのものしか知らないであまり詳しくなかったので、もう1度観てみようと思いました。こんなに凄い音楽だったのか。こういうことがあるから生のリサイタルは良い。素晴らしい演者は新しい探究心を生ませてくれる。なんか頭を音楽でバチコーン殴られた感じよ。何でエルミオーネをもっと聴かないんだお前はって。あの2人くらいのソリストが揃えば日本でも人入ると思うんで、やるべきだ。うむ。そのだ!じゃなくて、そうだ!園田マエストロに頼もう。
次の次の藤沢お願いします!!
エルミオーネで!!!!!!!!!!!!!!

アンコールはこちら。
実は予想してたのが当たりました(笑)
日本ロッシーニ協会2019年の新春コンサートで2人がこの会場で歌ったので、もしかしてなんて思ってたらそうでした。しかも、全部やりました。しっかりと。サービス精神!!さすがにお疲れの様でしたが、やりきってくれました!!ありがとおおおおおおお!!!!

そんなわけで、年明け1発目最高の音楽体験となりました。終演後はサイン会やってましたが遠慮させていただき帰ることに。小堀さんのに俺並んでたら結構キモいよね(笑)会場では色々な方とも会えて新年のご挨拶も出来て良かったし、プロや業界人、よく見る好事家、多くの方が会場にいたので、それだけ注目度高かったんだなぁと。注目度高い証拠としてはこれがね。
朗報ですな!!!!!
多分抜粋だけど残ってくれて良かったー!!
多分朝の5時から放送だぜ!!
絶対起きれないやーつ!!!(笑)
録画や録画!!!!
あとは、FMでもやってくれると全曲聴ける可能性はありますね。楽しみだ。ありがとうNHK。
NHKにも拍手。もっと拍手。更に拍手。北原(白秋、もうええわ)

昨日は、藤沢市民オペラ50周年記念 G.ロッシーニ『オテッロ』に行ってきました。

大満足。なんだろう、こう、抜かりないというかね。大抵オペラを観に行くと、そこはさすが総合芸術という話にはなるんだけど、何かしらが良くないみたいな感情が芽生えちゃうのよ。あー演出が、あーオケが、あー合唱がなんて。あたいも色々観てるのもあって、邪念?わからんけど、何かがやはり欠けてるわーってなっちゃうことが多い。でもね、今回の藤沢市民オペラはうどんくらいはなまるでした。いや、大吉くらいはなまるか。要は星3つですの、満点でした。


昨日ですが、朝最寄り駅を出て、次の駅でいきなり立ち往生から始まり、各所交通機関で色々トラブルがあったので、危うく遅刻になるかという瀬戸際でしたが、何とか間に合ったのですが、本当に良かったなと思ってます。交通費が無駄にかかったけど、そんなことはどうでもいいぜと。最初からあの場にいれて良かったなと思いますね。まだ余韻を感じでむふふって思えます。


ちなみに、藤沢駅に着くと、もう肌寒いを超えて寒いというくらいの気温。静岡の方がやっぱ少し温かいのかななんて思ったりしてテクテク歩いて会場へ。結構すぐ着くんですよね。

今回は2階のセンター最前席を取ったので、階段を上る上る上る。そして、2階ついてもまた上る。デブにはきついぜと思いながらお席へ。よっこらせと座ると目の前見晴らし最高!!ただ足元が狭い(笑)こんなに狭かったかなと思うくらい狭くて、幕間ごとに立って瀕死の膝と足先を開放しないと次の幕で多分死ぬ状態。でも、なんか昔ながらの会館って感じがして私は好きなんですよね。


さぁ、いよいよ幕が開いて、(と言っても今回物理的な意味では幕は最初から上がってましたが)、合唱のオテッロ万歳でスタートするわけですが、その後の宮里さんの第一声目があまりにも最高過ぎて痺れましたね。正直僕は宮里さんはヴェリズモ系のイメージがあってロッシーニはイメージになかったのですが、あの声は求めてるオテッロの声だったし、そこ聴いただけでも終幕までがダーンっと想像できて、っしやぁああああああああこれはきたわ!!!ってなったんですね。で、実際最後までめっっっっっっっっっっっちゃ良かったです。宮里さん一気に好きになりました(笑)恐らくかなり勉強されたのではないでしょうか。試しにやってみた感じもなくて、ロッシーニを歌う声になっていたと思います。違和感なかったもの。違和感ないどころか、安心して聴いてられましたよ。高音とかアジリタとか欲しいところはしっかりと押さえてるし、時代遅れのロッシーニではなかったのも凄かったなと思います。

カヴァティーナのAh si, per voi gia sento、二重唱のNon m'inganno: al mio rivale、同じく二重唱のAh! vieni, nel tuo sangueからのストレッタのTra tante smanie, e tante、最後のL'error d'un infeliceに至るまでどれも本当に素晴らしくて、こんなにオテッロをしっかりと聴かせられる人がいたのかと喜びに満ちちゃいましたよあたしゃ。声は違うけど、もう日本のクンデやんか。キャスティングした運営にもBravoですよ。これからもロッシーニ作品歌って欲しいなぁ。


ロドリーゴはヴェルディ版ではチョイ役で悪役ですが、ロッシーニ版ではとても大事な役。でも悪役という感じはしてなくて、デスデモーナを真に愛しているかららオテッロと対峙するだけで、最後にオテッロにデスデモーナとの結婚を認めたりするあたりに彼の優しい人間性が出てると思っているのですが、この役と言えばもう日本では小堀勇介なわけで今回しっかり彼がキャスティングされていて良かった。

1幕の2幕唱No, non temer, serenaでは、共にペーザロで学んだロッシーニ仲間?山本さんと技巧的にも楽しい二重唱を披露してくれました。バリエーションの対決的な。何度もアリアだけは聴いている、Che ascolto? ahimè!は今回も絶品でした。しかもバリエーションが新しく更に難しくなっていたように思います。さらに、いつもよりスピードは少し落とし気味でした。ほんの少しですけど。園田さんと話をしてそうしたのかは分かりませんが、この役にもう少し深みを持たせたかったのではないかなぁ。後半を一気にばーっと歌ってしまわないことでそうしたのかななんて。まぁこれは妄想の域です。ちなみに、Bisを2回ほど発したのはわたくしでございます。その願いは叶いませんでしたが、思いは届いていたようで良かったです(笑)

また、二重唱のAh! vieni, nel tuo sangueからのストレッタのTra tante smanie, e tanteも良かったなぁ。宮里さんも良かっただけにペーザロで以前にやってたクンデとフローレスを聴いてるのと同じくらいの満足感を味わえました。プロとプロの業の出し合いというか、プロによる至高の遊びみたいなそういう感じもあって、ニターっとしながら聴いてました。静岡の方言で言うと、ばっかよかったっけやぁ、です。何故静岡の方言で言ったのかはよくわかりません。二重唱終わりですぐにデズデモナが入ってくるので、拍手が出来ないのが残念(笑)その分ストレッタの後にBraviと共に大拍手を贈りましたが。小堀さんの声はやはり唯一無二だなぁ。代わりがいない声。一緒に連れてった大学生も感動してましたよ。どうやったらあんな声が出せるんだって。


デズデモナの砂川さんも良かったわぁ。いつ聴いても声が可愛らしいくて、オテッロもそら惚れるわってなりましたね。二重唱のVorrei, che il tuo pensieroの美しさ、2幕アリアのChe smania! ahime!での激しさを増していく表現力と超絶技巧的な部分が合唱も相まってめちゃめちゃ感動しました。ロッシーニこういうシーンすごくうまいよなぁって思います。柳の歌Assisa a' pie d'un saliceではホール全体が固唾を呑むというのか吸い寄せられるようにして観客が聴き入っていました。以前コリンナを聴いたことがあるのですがあの時よりもお客さんが吸い寄せられてました。素晴らしかった。最後の二重唱Non arrestare il colpoからのNotte per me funesta! で殺されるまでは圧巻でした。今回初演版の楽譜を使ってるということでそこのシーンで『セヴィリアの理髪師』の「陰口はそよかぜのように」の音楽が出てくるということを園田さんが仰っていて、確かにその通りで、めちゃめちゃラカル〜ニアでしたが、讒言により狂っていった結果妻を殺すという流れ的にもその音楽が流れるというのはロッシーニ的には当然ということだったのかもしれないなと思いました。要するに喜劇だろうが悲劇だろうが、ロッシーニとしてはあの音楽は普遍的な陰謀の音楽だったのかなと。他にもセヴィリアはかなり出てきますね。


詳細は割愛しますが、他の皆様も豪華で適材適所ということもあって、ただただ拍手です。 

また、合唱も素晴らしかったですね。色んなアマチュアの方々の集まりとは思えない。気迫が違う。これにかけてる感じがビシビシ伝わってくる。オケも全体的に良かったですし、序曲ではいきなりBravi言おうか悩みました。こいつうるせぇなって思わたらやだなとか思ってやめましたが、ほんとそれくらい素晴らしくて、ノリノリで聴いてました。あと、個別にはクラリネット吹いてた方がめちゃめちゃうまかった。


園田さんと藤沢市民オペラの運営の方々そしてそれを応援する方々、それに賛同する方々のおかげで今回も素晴らしいオペラ体験ができました。感謝感謝です。

私は私でやってる団体の公演が2月にあるので良い刺激にもなりました。

あと、藤沢市民オペラ50周年なんですね。我が母校焼津中央高校のオペラ公演も50周年になるので何か不思議な縁も感じてとても嬉しくなりました。

これからも藤沢市民オペラが永劫続きますように!!


最初から追伸。

主演後はコロナ以来に楽屋口にて小堀さんや園田さんにも会えて良かった。手土産買う時間がなさすぎて新幹線乗り場で発見した、地元の有名なとこで作ってる鰹節的なものを発見したのでそれを買って持って行きましたが食べてくれたかしら(笑)