たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!" -4ページ目

たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!"

主にオペラの感想等を亡備録として書き連ねていこうかなと思ってます。
その時感じたことをそのまま書くようにしてますので、文筆がおかしいことは多々ありますが、良ければご覧下さい。

第25回藤沢市民オペラの『魔笛』に12月14・15日の2公演行ってきました。両日とも素晴らしく丁寧に作りこまれた素晴らしい公演でした。1973年にモーツアルトの『フィガロの結婚』で産声を上げた藤沢市民オペラは今回でなんと25回目だそうです。さすがは市民オペラの祖。歴史があります。また、50年を超える歴史の中で会館の老朽化も進んでおり、藤沢市民会館は2026年3月31日で休館、その後建て替えとなるようです。近代的な感じではない地方の会館みたいな雰囲気は好きだったけどこればかりは仕方がない。前の席との距離が0で膝が死ぬ感じや一生懸命階段を上る感じは恐らく今後は見られないのかな(笑)既存の会館でのオペラ公演は最後らしいので、見納めることができて良かったなと思っています
観賞の内容に入っていこうと思いますが、今回忙しくて今更ブログを書いているので記憶に新鮮味がないのと、記憶違いしている部分があるかもしれませんがご了承ください。
全体的なことを申しますと大満足。『魔笛』は特に解釈も多くやりたい放題な舞台にさせられることもしばしば。おかげで耳に入ってくる音楽と、目に飛び込んでくる映像が相違して集中できないみたいなことが本当に多いのですが、今回はメルヘン的というのか古典的というのか、そういう保守的な演出に完全に舵を切ったというわけではないけれど、結果的には大分そちらに寄っていたので観易くて、色々な仕掛けも全てがハマっていたと思います。正直極上の演出だと思いました。衣装も素晴らしくて色合いが絶妙にマッチしていて品があり格調高い仕上がりになっていたと思います。品の良さが香りで感じられるような感じ。タミーノとパミーナは白や金、パパゲーノとパパゲーナは緑と黄、夜の女王は青、ザラストロは茶、あとは黒みたいな感じでした。ポネルとエヴァ―ディングの様に統一感があってセンスが良い。これまた品がない衣装をあえて設定していたりするものも多いので、観ながら感謝すらしておりました。おかげで、初めてプロのオペラを観る子とオペラが初という20歳の子達もえらく楽しめたみたいで分かりやすくて良かったですーと大感動。声掛けて良かったですー。
自分の中で演出の解釈のポイントとなった部分をメインに記憶してることを書いていきますと、序曲が始まり幕が開くと、中央に幅広な大きな階段が据えられており、その最上階中央奥に切り株があります。3人の子供たちが出てくるとその周りやその上に乗って飛び跳ねます。その後雨が降ってきて子供達は家に帰ります。恐らく濡れた体を温めるためにお風呂に入ってきたのでしょう。全員パジャマ姿。下手の奥にある大きなベッドに移動して布団をめくると絵本のようなものが。3人はベッドに入り絵本を開きます。眠くなったのか徐々に眠っていく子供達。こうして序曲が終わります。ベッドのすぐ上にある窓からタミーノが大蛇に襲われて部屋に入ってきます。というように『魔笛』の物語が始まるのですが、以後ほとんどはその子供達の部屋の中で物語が進行していきます。下手のベッドの中で次々に入ってくる登場人物を見つめる子供達。タミーノアリア「なんと美しい絵姿」は子供達に向かって歌っていたり、フムフムフムの5重唱では「噓をつかず互いを愛し合うことが大切」と歌う部分になるとセンターから上手側にいた5人のソリスト達は子供達の方に向かって「肝に銘じなさいよ」といわんばかりに歌います。その曲の終盤、3人の童子が登場するシーンではバトンが下りてきて3人分の服が掛かっておりそれらを子供たちが各々が着始めます。そしてタミーノを案内するように下手側の扉から意気揚々と出ていきました。2幕の鎧武者とタミーノ、パミーナの4重唱、つまり火と水の試練の前では、パミーナが舞台裏からタミーノを呼び、意気揚々とタミーノが歌い始める所で、鎧武者が明らかに動揺して本(恐らく教典か法律書の類)を何度も何度もめくっては互いに目を見合わせていました。要はパミーナがタミーノを共に試練に向かうということは想定されていなかったということだと思います。しかし、ザラストロがそれを赦したわけです。そして、ついに2幕のフィナーレではザラストロが着ていた上着を脱いでタミーノにそれを渡します。その後パミーナがザラストロに向かって、彼が大事にしていただろう本(恐らく教典か法律書の類)のあるページを見せます。ザラスロトは好きにしろという様子。喜ぶパミーナ。フィナーレの後半清きものを称える音楽になる所でそのページを破り捨てます。すると階段の上が男性、下が女性という具合で綺麗に列を成していた合唱の位置(これは1幕のフィナーレでもその様な配置になっていた)が男女入り乱れてばらばらになります。非常に活き活きとした合唱。そこで階段の中央奥一番上に生えていた木(恐らく魔笛を作る為に枝を折った樫の木の原木)が切られた、ということでいいと思いますが、木を釣っていたバトンが上に上って見えなくなります。そして序曲で子供たちが遊んでいた切り株が残ります。最後の最後は3人の子供たちが同じように戻ってきて終幕となりました。
つまり、3人の子供たちは何気なく切り株で遊んでいたけど、その切り株にまつわる絵本(恐らく歴史物語)を読んでいるうちに眠ってしまい、夢か現実か、「むかーしむかーしある所に…」という具合に絵本の内容をリアルに追体験をし始めるわけです。登場人物が子供達に語るように歌っていたのはそのためです。そしてついに自分達も物語の一員となります。3人の童子に自分たちを投影したのでしょう。その後は魔笛の世界が絵本に書かれるように進んでいきますが、2幕フィナーレである種の分断の象徴としての木(恐らく樫の木)が無くなり(独裁者の銅像が倒されるようなメタファ)、統治者であるザラストロも引退し、タミーノを中心とする新しい世代による新しい考えによる世界が構築されていくんだというあたりが見えます。ここでうまいなと思ったのは、試練の前の3重唱で「パミーナと会うことが許されている」とは言ったものの、鎧武者が本を何度も読み返しながら「え?これマジ?」みたいに慌てている様から、ザラストロはもう実は社会が新しい段階にきているということを理解し、本来ならば彼の求めている男性優位な社会は難しく、女性と同権で2組が力を合わせて築いていく社会を実現しようとしていたのではないかということが伺えることです。パミーナとタミーノを合わせていいと許可するのはザラストロだろうと予想するからです。しかし、黒い顔をしたモノスタトスには非常に厳しい。そういう差別的な感覚はやはり抜けない。そういうことも鑑みて、引退して次の世代に託すのが一番だと考えたのではないかなと思います。大事にしていた本(恐らく教典か法律書の類)のあるページ、恐らく男女の不平等さが書かれていた部分をパミーナがザラストロの前で破るところはそこだけ見ても意味がわかるような作りでしたね。最後は「こうして木は切られ、現在の平等な世界が作られていったのでした。めでたしめでたし」的な終わり方をしたんだと思います。ちなみに、3人の子供達が生きている時代は、タミーノが新しく光の国を統治してからもっと長い時間が経過しているように思えます。これは感覚的なものですが。ということで、違う視点を設けたけど、内容はスタンダードな『魔笛』を楽しめるし、分かりやすいという最高な演出でした。マジで素晴らしいと思う。
…と勝手に私が解釈してるだけで、全然違うわ!と言われたたら、まぁ、なんていうの?土下座?しかないよね。
ソリストで良かったのは、
14日組は、ザラストロの伊藤貴之さん、夜の女王の小川栞奈さん、パパゲーナの七澤結さん、モノスタトスの谷口耕平さん。
15日組は、タミーノの渡辺康さん、夜の女王の梅津碧さん、パミーナ役の盛田麻央さん、パパゲーノの大西宇宙さん、3人の侍女の山田知加さん、林眞暎さん、山川真奈さん、童子の本間柚李さん、金子和花奈さん、中澤晴子さん。
伊藤さんは、2つ目のアリアの諭しながら歌う様が実に温かみがあって良かったけど、その前に物凄くモノスタトスにカチキレる所の迫真の演技と言っても声による表現というか威嚇というかが凄かった。あんな伊藤さん見たことない。だからこそ彼の人となりを感じることが出来た。あの部分は一言だけ「行け」で済まされることも多いけど、改めてしっかり全部やるのは必要だなと感じましたね。あと、伊藤さんいつもベルカントで素敵。声とっても明るい。
栞奈さんは、1つ目のアリアは繊細に歌い、2つ目のアリアはよりベルカント的に歌ってたのが印象的でした。両方めっちゃベルカントを感じましたが、なんだろ、1曲目の方がそれを感じやすそうなのにむしろ2曲目でそれを強く感じました。ルチア―ナ・セッラの歌う夜の女王みたいでした。テンションとか勢いで持ってく感じじゃなくて技術力でねじ伏せるって感じ。むしろ怖い。その方が。素晴らしくて久々に夜女でBrava出しちゃいました。あ、1曲目も言ってます。そっちは俺くらいしか言ってなかったかも。何でやねん良かったやんけってなったのを記憶してるので。昔ロッシーニのデズデモナやノリ―ナを歌ってた時にこれはベルカントでこの先活躍されるのだなと確信しましたが、やはりそちらでしっかりと成長されたようでうれしい限り。
七澤結さんは、圧倒的な空間の支配力というか、出てきた瞬間に魅了される感じで圧倒されました。例えばパパパの2重唱はかわいらしいパパゲーナのイメージだったのですが、いや、かわいかったんですけど、竜巻のような勢いとキラキラ感で全部もってっちゃったっすよ。釘付けになりまたもん。声もキンキンした感じでなく温かみのある厚みのある声だったので同オペラならパミーナも良さそうです。
谷口耕平さんは、めちゃ丁寧に緻密にモノスタトスを歌われていました。変に歌い崩すこともなく、正攻法で役と一体化していたように思います。壊すのは簡単なんですよね。守るのが大変。そんなわけで安心して聴けましたし、とっても好感が持てました。性格的なテノールも良いけれど、もっとリリックな役柄でも全然勝負出来そう。
渡辺康さんはお久しぶりですという感じでしたが、イメージにぴったり。無理なく上の方が鳴るので高さを感じさせません。やはりロッシーニも歌える渡辺さんですが、タミーノはドイツ語圏のモーツアルトのイメージをしっかりと打ち出していて、特に歌唱部分ではドイツ語の美しさを感じることが出来ました。
梅津碧さんは小川栞奈さんとは全然違う表現の夜の女王でした。2幕のアリアのあとはその日1番の拍手の量だったと思いますが、高音が全く無理なく鳴るし、そこにしっかりと怒りや狂乱的な表現を入れ込んでるので凄い。最後歌い終わりに「どや!!」って感じで舞台後方へ下がっていった時めっちゃかっこよかったし、その勢いがお客さんの火をつけましたよね。Bravaとかじゃなくて、うごごごご~って会場唸ってましたもの。
盛田麻央さんはパミーナ最高にぴったりね。少なくとも自分としては盛田さんくらいのやや軽めな線の太い感じではない方が趣味。聴きたい部分全て美しかった。やはり、2幕の試練前の「タ㋯ーーーノ」の部分は否が応でも聞き耳立てちゃうんだけど(とっても個人的にはスザンナの4幕 La mia voce?的なポイント)、まっじで良かった。アリアも完璧だし、眠くさせない声の魅力と技術力を感じましたね。もっと売れてほしいな。素晴らしいんだもの。
大西宇宙さんは言うことなし(笑)最高のパパゲーノでした。生で見たパパゲーノでは過去1だと思う。単純に声が良い。大西さんの声はイメージ的には男前だけど、パパゲーノではしっかりかわいい。役としっかり一体化してるので、パパゲーノに感情移入してちょっと泣きました。自殺のシーンとかではなく、多分パミーナのアリア前だったかな。本当はとってもお喋りしたいし、優しいパパゲーノのことだからタミーノのことも心配してるだろうし、パミーナのことも心配してるだろうし。無理やりこんな状況に追い込まれてかわいそうって思ってしまいました。こんな風に思うこと過去なかったけど、大西ゲーノがそうさせました。不自然さがなかったからね。パパゲーノとして。そういや途中パンフルートで第9を演奏して「あとで偉い人達に怒られよ」みたいなことをさらっと言って会場大爆笑みたいなのもありました(笑)
3人の侍女の山田知加さん、林眞暎さん、山川真奈さんも素晴らしかったです。1幕冒頭で出てきてからのハモリが美しすぎ。海外の座付きの人達の侍女を聴いてるようでした。ここは1が強くほしいとか、3が印象付けてほしいとか期待した音楽が全部来ました。緩急、縦もしっかりと揃っていてマジで良かった。気持ちよかった。案外侍女って生で聴くと揃ってほしいとこが揃わなくて幸先良くないなみたいのが多いので、めっちゃテンション上がりました。楽譜の後ろに付いてる長いバージョンでも良かった。長く感じないから。ちなみに所作でいうと林さんが実に女性らしくて(死語かもしれませんが)素敵でした。
本間柚李さん、金子和花奈さん、中澤晴子さんは元気いっぱいに所狭しと童子をやっていて頑張れ~と応援したくなりました。本物の子供がやるとやっぱいいね。かわいかった。もっと拍手しなさいよ大人って思ってましたちなみに。
そして、園田隆一郎マエストロのご尽力あっての今回の『魔笛』でしたね。オケは全然ダレる所がなくて、ずっと前へ前へという推進していく音楽を作られていたのでよっこいしょとボーっとする瞬間もなくずっと楽しめました。特に序曲は素晴らしかったなぁ。合唱の人達もすごく楽しそうに演じられていて、良い環境でやれてるんだろうなぁなんて。毎回アマチュアの方々とは思えないなと感心してます。園田さんのお人柄と藤沢への強い思いがあるからこんなに素晴らしい『魔笛』を聴くことが出来たのだと思います。でなければ歌からも楽器からもあんなに角のない音楽は聴こえてこないと思います。次は何ですかね。ロッシーニですね。アルミーダですか。それともエルミオーネ?いずれにしても行くのでまたやってくださいね。藤沢市民オペラ。わが母校焼津中央高等学校合唱部のオペラ公演も今年50周年で、1月には記念コンサートも行われますが、伝統を背負ってずっとやっていくというのは努力だけではどうにもならないことも多いです。しかし、運営側に「好き」「やりたい」という気持ちが強ければ絶たれることはないと思っています。これからも素晴らしい伝統を持つ藤沢市民オペラが永遠に続きますようにとお祈り申し上げます。ありがとうございました。





















今日はロッシーニの最後のオペラ、『ウイリアム・テル』を聴きに新国立劇場へ。

最近はこのオペラは『ギョーム・テル』というフランス語表記をよく見かけていたのですが、今回は英語表記の方を採用してました。そっちの方が有名だからチケットの売れ行き考えての採用かしらね。


今公演総じて良い公演でした。

演出・美術・衣裳を担当したヤニス・コックスにまず拍手。序曲の見せ方上手かった!!

「夜明け」「嵐」「静寂」「スイス軍行進」という4部構成で出来ているのですが、紗幕を使ってそれぞれの場面に合うように演出をつけていました。「嵐」の所では槍みたいな物が上からグッサグッサと刺さっていく様子とそれに慌てふためく人々の様子が描かれ、「静寂」では森の奥深くに佇む人々が薄っすら見えてくるのですが、音楽とのマッチ感がやばかった。マッチ感と言ってもギンギラギンにさりげなかったわけではないです。黒柳さーん…

舞台は基本的に八百屋スタイルで奥に行くと高くなっていくのと、段差がたくさんあったり、ルーフがあったりで、そこに所狭しと合唱が終始蠢いている感じ。で、その合唱を含めた人の動かし方が秀逸。音楽とマッチしていて、生き生きとしている。私の大好きなジャン・ピエール=ポネルにも通じるところがある。更に、こんなに合唱やバレエが配置されて動いていると、そっちに目がいってしまい、見にくかったり、本筋を邪魔したりということになりかねないのですが、それが全くない凄さ。これはほんとに凄いと思った。演出のみではなくて、美術も衣裳も自分でやっているから色彩的な部分の調和素晴らしくて、だからこそあっちゃこっちゃいかないまとまりのある舞台になっていたのではないでしょうか。

グレーを基調とした中で、赤が冴えてたなぁ。


ところで、序曲ですが、最後の「スイス軍行進」は特に有名ですよね。日本では『俺たちひょうきん族』で有名…だったのはもうかなり過去の話かな。まぁ運動会なんかで流れたりするんで聴けばすぐ分かるメロディで、オペラのメロディでは「カルメン序曲」や「ワルキューレの騎行」くらい有名ではないでしょうか。ちなみに、3部目の「静寂」はその昔東京ディズニーランドのショーベースでやっていた『ワンマンズ・ドリーム』の序盤で白黒の世界がミッキーのミニーへのキスでカラフルになる所で流れてました(マニアックですみません)。

ちなみにちなみに、1935年公開のディズニー映画『ミッキーの大演奏会』で演奏されているのが「ウイリアム・テル序曲」です。お暇な方ぜひ(お前はディズニーの回しもんか)


今回ソリストみんな良かったですけど、特筆すべきはギョーム・テル役のゲジム・ミシュケタと、アルノルド役のルネ・バルベラが素晴らしかったです。

ミシュケタは開演前に「体調不良ですが歌うのであたたかい声援を」的なアナウンスが入って会場がどよめいていたんですけど、どこが不調やねんとめちゃツッコミたい気分。確かに上の方の音になると辛そうな感じが無かったわけではないですけど、全然許容範囲内ですし、何よりわたしゃね、3幕のジェミーで泣いたわよ。テルのアリア「動いてはいけない」です。1幕の冒頭下手側で、テルが息子のジェミに弓の撃ち方を教えてる所が描かれていて、そこがフラッシュバックしたり、アリア前のジェミが「僕は自由だ、縛られない。お父さんが僕を撃つわけない」と兵士に意気込む所で、なんて良い親子関係なんだと思い、何故こんな辛いことをさせられなければならないのかとテルの気持ちを考えたら落涙でしたね。東名バスに乗ってる今思い出しても泣きそう。いや、ほんとどこが不調なんだよ(笑)逆に他の日もっと良かったんかい。


バルベラはほんとに悪いとこなかった。まず、私の好きな2重唱。1幕のテルとの2重唱では「マティルド〜」と入ってくるメロディが好きで、そこが来る度に「キター」ってなってましたが、テルのミシュケタと声の相性が良いんでしょうね。後半の圧政者やってやんよーと気持ちを1つにする所のハーモニーが心地良すぎでした。そしてもうこれは待ってましたってやつですけど、4幕のアリア、「先祖伝来の住処」からの「武器を取れ!」はガチ絶品でした!!長いこのアリアを変に調整することもなく、迫真の演技と声、4幕の冒頭は幕が開いておらず、序曲の1つ目「夜明け」の時と同じ状況。そこから前奏が始まり幕が開くとそこにはアルノルド。そして歌ということになっていくのですが、彼(等スイス)の新しい夜明けということなのかななんて思いつつ見てました。カバレッタ部分の「武器を取れ!」では、思ったよりはすこーしばかりゆっくりでずっしりとしたテンポで始まりました。急に高くなったり、にじり寄っていくかのように音程が上がっていったり、ほんとに難しいし、歌いきる喉と体力ないとキツイ曲だと思いますが、バルベラ余裕でした。最後の最後ほんとに少しお休みして、アクートをガツンと伸ばしてました。素晴らしかった!!これぞ世界を見せつけられたという感じ!!


ロッシーニの音楽って他にない凄さだと思うのは、歌詞変えれば悲劇的な部分も喜劇になれるってとこだと思っていて、この作品中にもそう感じる部分はいくつもあるけど、4幕フィナーレを聴いてしまうとそういうことも吹っ飛んで、なんと言って良いのか、状況とか感情を抜きにした、宇宙から大量の星が音楽になって降り注いでいるものを浴びているような気になる。人間を超越して宇宙の音楽にまで到達したのかロッシーニはという気になる。テルが「この場所ではすべてが変わり、成長する」と歌い、全員で「自由よ、天から降り来たれ」と唱和する。ただ只管美しい。涙が出てくる。

それはまるで、『ばらの騎士』の「マリー・テレーズ」の3重唱を聴いている時と似ているものを感じるが決してイコールではない。ロッシーニはもっと観念的で、人間讃歌のように感じる。このフィナーレはずるい(笑)そして毎回思ってしまうのが、ロッシーニがもっとオペラを書いていたらどうなってたんだろうということ。歴史にifは無いけれど、妄想は膨らむ。


他には、リュオディ役の山本康寛さんの冒頭のミニアリア的なやーつは山本さんにぴったり過ぎて、キャスティングした人天才と思いました(笑)山本さん上どんだけ出るのよ毎度思うけど。

エドヴイージュ役の齊藤純子さんも良かったね。時々メゾで声色で誤魔化す人がいるけど、全くそういうことはなくて、美しい声で悲しむ奥様を熱演。

マティルド役のオルガ・ペレチャッコは、アリアでの繊細な表現や、アジリタの技術、佇まいや所作の美しさなどさすがだなと思う所がたくさんあったのですが、ちょっと全体的に声が弱いかなって思ったのと、このマティルドという役自体があんまり好きじゃないというとこもあったりして…という感じ。


そしてそして、毎度素晴らしい合唱に多い拍手をです。このオペラは合唱がずっと出てるのでそこがダメだとかなりテンション下がっちゃうと思うんですけど、新国立劇場合唱団のおかげでテンション上がりまくり。合唱のおかげで今作品の質が底上げされまくっていたと思います。


そんなわけで、とても楽しませていただきました。日程的に無理してでも行って正解でした。4時間半全く長いと感じずに観賞出来たことは、ロッシーニの音楽もそうですが、演者の皆様の魅せる力に依るものかと思います。ありがとうございました。今日はこんなもんで失礼します。


最後はどうでもいい個人的な思ひ出。

朝起きて寝坊したと思ったらバスの時間勘違いしてて早くバス停着いちゃって、たけども乗った高速バスが結構遅延したおかげで、東京に13時過ぎに着いたおかげで猛ダッシュで新宿へ。南口出てから競歩。でもでも、絶対間に合わない時間帯入っちゃったので途中でタクシー拾ったのが開演18分前。そこからセブンでチケット発券して、会場に着いたのが開演10分前。ギリギリでした。いつも1時間前行動なのでこんなことないのでマジで焦りました。


















ようやく時間が出来たので、日生劇場の『連隊の娘』の感想を今更したためております。
帰りのバスも乗って座った瞬間から降りるまで全部寝たのでとても感想どこじゃなかった。なんなら八重洲南口でバス待ちながら立って寝てたしね。そらそうやわ。当日も4連勤の夜勤明けでその日に1時間、前日に無睡眠みたいなそのうち死ぬんじゃねぇかというような状況という最悪なコンディションだったからね。だから前日日勤しか出来ないよって言ってたのに何で夜勤やねん。そんなわけで、いくら『連隊の娘』好きでも寝ちゃうんじゃないかという心配してましたが、しっかり最後まで聴いてられました。いえい。 

 今回の演出は粟國淳さん。マジで舞台ポップでした(笑)トイ・ストーリーみたいな感じ。おもちゃの世界として『連隊の娘』が描かれていました。トイ・ストーリーで言うとアンディがグリーンアーミーメン達の中に女の子のフィギュアを入れて遊んでたけど、元々バービー的な着せ替え人形のシリーズの人形だったので、そっちの世界の母が元に戻そうとするも…みたいな、この物語の裏には子供の一人遊びがあるのかしらなんて感じで見てました。
舞台にはおっきなかわいいクマちゃんが居たり、上手には積み木の家、下手には本、バックはスイスの山が描かれたジグソーパズルだったりとまさに子供の遊び場。登場人物も非常に個性的で、特に合唱の軍人が、スター・ウォーズのトルーパーみたいに十把一絡げな扱いでない、個性あふれる色々な戦士たちで視覚的にも非常に楽しませてくれました。個人的にはとても好きな設定と舞台装置でした。わちゃわちゃしてたね。


 ソリストではトニオの小堀勇介さんとマリーの熊木夕茉さんが良かったです。
小堀さんは7年前のびわ湖でトニオを全曲やっていたのですが、その時に行けなかったのでようやく聴くことが出来たんです。アリアは前半も後半も聴いたことがありましたが、全曲はお初だったわけです。
アリアは前半の"Ah! Mes amis … Pour mon ame"では、ハイCを9回しっかりとキメて会場湧きまくり。そこからの原田マエストロの「アンコールします」で更におかわりハイC9回という、海外では良くあるパターンですがここ日本でも可能なのねというサプライズ。怒号のようなブラボーの嵐でした。声に深みを増した小堀さんのハイCはこれまでよりも前で鳴る感じがしてパワフルなトニオという感じがしました。マッチョな戦士で腹筋割れまくりの格好をしていたし、ハイCのとこで無限の彼方へさあ行くぞばりに確か…右手だと思いましたが、上に突き上げてたのでよりパワフルな感じがマシマシでした。
後半のアリア"Pour me rapprocher de Marie"では、前半のフェス的なノリとは打って変わって、しっとりと切々と歌う姿に心打たれました。実は小堀さんの歌うアリアはこちらの方が好きなんですよね。昔から言ってますが、小堀さんが歌い出すと会場がスッと静かに固唾をのんで聴くモードに入るんです。この時もまさにそんな感じで、会場の空気感が一気に変わりました。そういう歌手はなかなかいない。また本人もそういう空気づくりが上手い。いくでーって。でもそれに嫌味がない。自然とそういう気持ちにさせる。なぜそう思わせられてしまうのか、それにはやはり心があるからだろう。真心こめて歌う。それがあるからなんだと思う。だから聴いていて目頭が熱くなる。素晴らしいです。急にブッファからロマン派がこんにちは状態です。トニオに重みが増す。敵軍に入るくらい覚悟決めて彼女と結婚しようとする男だものね。その思いというか人間性はこの曲に全部出てるなと感じますよね。小堀勇介がこれからもベルカントの第一線でグイグイと日本のベルカント界を引っ張っていってほしいですね。


 マリー役の熊木夕茉さんは初めましてでしたが、シュルピスとの2重唱くらいから最後までどんどん良くなっていって、マリーの子供っぽさや恋する女性、そして母の想いを感じて己を諦めることの出来る大人の女性をそれぞれ歌い描いていたように思います。アリアの"Il faut partir !"はとても有名な曲だからかとても歌い込まれていて、一つ一つの言葉がマリーの苦悩を表現していたように思いますし、"Par le rang et par l’opulence"からのフィナーレでの"Salut à la France !"の流れはあまりにも素晴らしくて拍手喝采でした。これからも熊木さんから目が離せないなと思いました。頑張ってほしいですね。


この公演、すこぶる楽しい公演で、舞台美術、装置、ソリストとバランス良く粟國淳の描きたい世界観を表現していたように思います。変に考える要素がなくて、楽しめるエンターテイメント性の高いプロダクションという感じ。こういう練られた世界観というか、オリジナリティのある舞台が日本でしかも2回だけの上演の為に作られたというのは大変豪華だなと思います。もっとやればいいのにって思いましたね。演者もこなれてきてどんどん良くなるし。


それと、好き嫌いもあるのですが、今回全編フランス語で台詞を話していましたが、少しばかり日本語でも良かったのかなという気もしています。私は聴きまくってるので全然フランス語で良いんですけど、客席的には日本語の方が盛り上がりはあったのかなという気がしました。オペラとしてはフランス語でカッツリやれることが正解の道なんでしょうけど、今回のような舞台なら日本語でもありだったなという気がしました。フランス語が良くなかったとかじゃなくて、日本にしてみるとマイナーな方だと思うので、その方がお客さん受容しやすいから反応がもっとあったかなと。


最後に、今回のBisについて。

指揮者が「アンコールします」と言って半ば強引に"Pour mon ame"からのアンコールを始めましたが、それはどうなんだろう。なんなら私コンマ5秒待ってくれたらBis言ってたんですよ。ありがと小堀さーん言うて。ほんとに息吸ってたんで。いや、ただね、別にそれが言いたかったのに言わせてくれなかったのが嫌〜とかそういうことではなくて、ほんとにすみません、うがった見方しちゃうと「俺が日本でBisやったったわ」という指揮者の思いが見えてしまったというかね。そんなことはないんだとは思うけど、なんかそんな風に見えちゃったのよ。それはちょっと引くやん?指揮者主導だとしても、振り向いて耳に手を当てるとか、お客さんにアンコール聴きたいかいっ!?みたいなフリがあっても良かったのかなと思いました。そこだけとってもモヤっとしました。もう一度言いますが、私がBis言いたかったとかじゃないんでね(笑)演奏が良かっただけになんともモヤモヤ。


そんな戯言を言い残しまして感想を終えます。
実はこの本文書いてて一度全部ブログ消えたのでもうヤダってなりましたが頑張って記録のためにも再起しました。もっともっとベルカントオペラが上演されていきますようにと祈りながら。ありがとう日生劇場。









今日は先日素晴らしい公演を聴かせてくれた、新国立劇場公演のベッリーニ作曲『夢遊病の女』の千秋楽に行って参りました。今日だけ開演時間が13時で1時間早かったんですよ。で、X(旧ツイッター…これいつまで要るんや)でフォロワーさんにそれを教えられて、焦りましたよね(笑)14時に間に合うように行こうとしてたので、ほんとに教えてくれて感謝でした。ちなみにチケット持ってる後輩も14時開演だと思ってたということで、危なかったです。思い込みって怖いですな。


今日の公演は9日に増して素晴らしいものとなりました。実にレベルの高い公演。


まず、エルヴィーノ役のアントニーノ・シラグーザがのっけから素晴らしくてそのまま最後までずっと素晴らしかった。前回はちょっとお疲れ気味かなと思いましたが今回はそんなこともなく100%解放といった具合で、シラグーザここに有りというような歌唱にうなりました。

出てきてすぐ歌う"Perdona, o mia diletta...Prendi: L'anel ti dono"では、非常に甘い声と雰囲気、そしてイタリア語の響きがいちいち美しい。"Son geloso del zefiro errante"の方の2重唱も同様で、なんという甘美な時間。しかもマエストロのベニーニがかなりゆったりめでしっかりと聴かせる。常人の歌い手では歌いきれそうもないテンポ感。腕?いや、喉か。技術も声もあるから崩れちゃうこともなく2人の呼吸もピッタリと合うし、安心して聴いていられる。"Non più nozze" や"Ah! Perchè non posso odiarti"の劇的な表現も上手いし、アクートも綺麗に決めてくる。"Tutto è sciolto…" でのこの世の終わりのような悲しそうな入り方も最高でした。シラグーザ、まだまだベルカントのトップを走り続けています。


アミーナ役のクラウディア・ムスキオも前回よりも良くて、シラグーザもそうだった(と思う)のですが、歌いこなれてきて、ヴァリエーションがほんの少し難しいものになったような。彼女は世界の最前線のベルカントオペラの楽しみをしっかりと打ち出しつつ、惜しみなくそれを聴衆に出し切ってくれたのが本当に好印象。要はヴァリエーションをさぼることなく、役に落とし込んでそれを表現していました。

"Sovra il sen la man mi posa" のコロラトゥーラ部分はベニーニがわけわからん速さで歌わせていたけどそれにしっかりと応える技術力。良く転がる声。素晴らしかったし、テンション上がりまくりでしたよ。この曲の合唱はこれまた最高で、残響感もまた良い。ほんと素敵。『夢遊病の女』の合唱ほんと良いよね。全体的に主張してきてそれがベニーニによって欲しい形で表現されて津波のように迫ってくる。最後のアリアでは"Ah! Non Credea Mirarti"でのピアニッシモの極上の美しさ、そしてそれを跳ね除けるような"Ah! Non Giunge"での超絶技巧的な歌唱、そしてヴァリエーションの豊富さ。更には合唱も入ってきて最高潮の盛り上がり。どこも素晴らしくてやはり彼女がソリストではMVPだなと感じずにはいられませんでした。


合唱は前回同様に今日も素晴らしくて終始燃えてました(笑)2幕冒頭の合唱は立ち上がりたいくらい燃えました。新国の合唱団の方々一人一人にハグしてありがとうと言いたいよ(ただの迷惑行為や)。ガチで最高。オケもこれまた文句なし。文句なしどころか、文句なんかあるわけない。これぞベルカントという感じでイタリアの風しか吹いてなかった。ベニーニの意図をよく汲んでいるんだろうなと思いましたね。あとどこだったかなぁ。ちょっと忘れちゃったけど弦楽器のピッチカートがズンズン胸に響いてきたとこがあってめちゃめちゃ熱かった。


ソリストだと、妻屋秀和さんは期待通りで安定感抜群。伯爵ってこんなかんじだったんだろうなと思える歌唱と所作。流石です。伊藤晴さんは2曲目のアリアが前回も良かったのですが更に良かったです。第一声目からノリノリというか、喉がパッカーン開いてる感じで、ひっじょーにベルカンティッシモでした。渡辺正親さんはイメージだともう少し重めな物をやるのかと思ってましたが、声自体は公証人らしく、脇をしっかり固めてました。


そんなわけで、新国立劇場のおかけで『夢遊病の女』が更に好きになりました。ありがとう新国。また、この作品はよく知ってるつもりだったのですが、新たに愛妙と連隊の娘とノルマを足したような雰囲気ありますよね。ちょこっと。うん、まぁそれならそれで好きになるわ。全部大好物だもの(笑)


13時開演だったし、出待ちもサクッと終わったので16:30くらいにはオペラシティをあとに。いいねー。早く終わるってのも。地方から来てる人間にはありがたいかぎり。


あ、そうだ。出待ちと言えば。

9日も出待ちをしたのですが、1人の歌手に大量にサインもらってる人いたんですよね。今日はそういう人比較的少なかったかとは思うけど、ほんとにそういう人さ、マジで迷惑。演者さんも大変だし、なんなら警備員さんも大変だし、そんなんはマジでやめましょうって思っちゃいますね。あとさ、なんか良くわからないマニアの中であるルールみたいなやつ?「まずはサインで、そのあと写真」って知らんがな(笑)お前はサリエリか(笑)私もかれこれ20年近く出待ちとかしてきてるけど、1部で勝手に作られてるその謎のルールみたいのほんとなんなん。運営とかがこれこれこうしてくださいねって言ってるなら全然守るし、言われたようにやるけど。ちなみに全然怒ってるわけではないです。単純になんやねんという。


さ、そんなわけで、来シーズンはどんなベルカントオペラが我々を待っているのか。楽しみですなぁ。え?ベルカントオペラやるの決まってるのかって?知りません(笑)圧です。やりますよね?っていう(笑)





今日は、ベッリーニ作曲の『夢遊病の女』を聴く為に新国立劇場へ行ってきました。ベッリーニの作品の中でも特に好きなこの作品ですが、残念ながら聴ける機会は決して多くはないんですよね。なんとなくタイトルが重いから劇場としてもやらないんじゃね?夢遊病だもんな(笑)でも中身は美しい音楽に活き活きとした合唱、耳に残るアリアの数々といった具合に、聴きやすいしノリ易い作品なんだけどね、なんて思ったり。ちなみに、新国立劇場としても初の上演だそうです。なんならベッリーニ自体が初という、少し耳を疑う状況。今回ようやくそれを打破できたことは日本のオペラ界にとっても良いことだと思います。ようやく眠りから覚めたのかしらね。新国も。ベルカントやらな過ぎで言えばもはや夢遊病どころか仮死状態やんという感じでしたけど。ロメジュリかと。いや、仮死というか瀕死?ロドリーゴですか?で、起きたなら起きたで、もう寝るなよってね。北京にお触れ出したろか。そんな気もしております(いちいちうるせぇんだよ)


感想と致しましては…満足だぜっ!!

やっぱベッリーニ良いねー!!音楽が素晴らしいのなんの。そして、そう思われてくれたベニーニの手腕といったら。あぁ素晴らしい。ワクワクを100倍にしてパーティーの主役になろう、どうもドラゴンボールZです。そんな感じでしたね(何となく伝わる人には伝わっちゃうやつだけども)


ベニーニはしっとりと歌わせる所はかなりゆったり目なテンポ。エルヴィーノとアミーナの2重唱やアミーナの最後のアリアなんかはとってもゆったり。そういうところから、劇的なシーンに移るとこれでもかとテンポアップして畳み掛けてくる。それが気持ちをぐわーっと高揚させてくる。舞台にのめり込ませてくる。あぁ楽しい。これぞベルカントオペラ。そんなことを思わせてくる。また彼の理想を形にする為に彼の意図を組んでそれを見事に表現してくる東フィルがまた素晴らしいのなんの。さすがオペラの東フィル。

ほいでほいで、MVPと言っても過言ではないのが合唱です。ベニーニが音楽を畳み掛けてくるとそこに大抵合唱も関わってくるのですが、こんなにも合唱が雄弁に語るのかと思うほどでした。重装歩兵の戦いのような、地鳴りのように心に迫ってくる感じ。線でなく面で。あの合唱があってこその今公演と思うほど素晴らしかったですね。


ソリストもみなさん素晴らしかったですが、まずは夢遊病の女その人、アミーナ役のクラウディア・ムスキオについて。元々はローザ・フェオーラがアミーナにはキャスティングされており、彼女のアミーナが国内で聴けるなんて最高やんけと思っていたら降板。その時はがっかりしたのですが、今となってはそんな思いは微塵もなく、恐らくまだ20代後半くらいの年齢かと思いますが、スター歌手の本邦初公開を体験できたことを嬉しく思っております。

アミーナの1幕のカヴァティーナでのコロラトゥーラの妙技。合唱との呼応も気持ちいい。2幕のフィナーレで最後のアリアまでの緊張感。あれだけゆったりと歌いながらも決して緊張感が切れない凄さ。どれも唸りました。また、終始ピニッシモが美しいのよ。それと、なーんか演出のせいなのか、彼女が歌い始めると、ものすごくそれを全面的に感じるというわけではなにせよ、陽というよりは陰を感じる自分がいて、そういうオーラを持ち合わせている(表現できる)所も良いなと感じましたし、歌や所作から本当に夢遊病の人が舞台上に出てきたような印象すら持ちました。彼女の日本デビューに立ち会えて本当に良かった。

 

次にエルヴィーノ役のアントニーノ・シラグーザですが、前半かなりお疲れ気味な様子で精彩を欠いていたなと思いました。シラグーザをあまり聴いたことない人だとそう感じないかもしれませんが―つまり、聴けないレベルではなくて、シラグーザならもっと軽々上も鳴るし本調子じゃなさそうと感じるレベル―何度も聴きまくってる私としては結構大変そうだなという印象でした。しかし、そんな中でも1幕の2重唱は持ち前の甘い声が最大限活かされていてムスキオとの相性もばっちり。「僕はそよ風にも妬けちゃう」みたいなことを怒りながら言う彼に声が素敵過ぎて可愛らしさも感じてしました。ネモリーノみたいやなと。あとは、1幕フィナーレでの"Non piu nozze"からの喚き散らすあたりも良かったし、2幕のアリアではそれまで温存していた(と勝手に私が思っている)喉を惜しみなく使って、アクートもバンバン決めて、観客から大きな拍手を贈られていました。シラグーザはこうでなくっちゃ。ちなみにそれ終わってからのロドルフォが説得する辺りではホッとしたのもあったのか、完全に解放してました。尻上がりに良くなるとはこのことですな。何れにしても60過ぎてあの声を保ってるのは奇跡です。来て歌ってくれてありがとうと言いたいです。


ロドルフォ伯爵の妻屋秀和さんは、1幕開口一番の声がめちゃめちゃ明るくて物凄く良いところで鳴っていて、思わず拍手したくなりました。そこからのアリアがまた良くて、下もめちゃめちゃ鳴っていて感動。妻屋さんまた磨きがかかったのかなと思うくらい素晴らしかったです。あの明るさでしっかり豊かな声のバスって居ないんです。貴重。そして舞台に妻屋さんがいると締まるね。これ結構大事。


リーザ役の伊藤晴さんですが、ある種1番驚いたかもしれません。最近重めな役をやられている印象だったのですが、今回のリーザはめちゃめちゃハマってました。1幕にも2幕にもアリアが用意されているのですが両方ほんとに良くて、特に2幕のアリアは手が痛くなるくらい拍手しました。技術的にも様式的にも違和感なくて、え?であればこういう役もっとやっていったらいいのにぃ!!ってなりました(笑)ベルカントもっとやって欲しいなぁ。ガチで良かった!!


そんなわけで、指揮もオケも合唱もソリストもみんな良かったわけですが、演出だけがなんとも言えなかったですね。まず幕開きのダンサーのシーンが長すぎ。アミーナの心の負の部分なのか、病気への恐れのメタファーなのか、そんな感じかなぁとか思いながら見てましたけど、だとすると一貫性がないなぁと思ったり、1幕の幕開きでアミーナに生えてた木は、成長して、加工されて、最後教会(家?)になっていったんだろうけど、それってとても意味があるんだろうけど理路整然とは読み解けないし、なんだかなぁという感じ。最後はアミーナが飛び降りるという個人的には要らないサプライズ。そういや前にジェシカ・プラットがこの演出でやってるの見たことあるぞなんてその時今更思い出したりして。結局彼女は幸せだったのかどうか。うーむ。悩んだけどあまり分からなかったので、後で恐らくヒントか答えのあるだろうパンフを読んでみようと思います。


さ、そんなわけで、演出だけよくわからん的な感じはありましたが、それ以外はほんと最高でしたので、そんな公演に出会えて良かったです。初めてプロのオペラを観るという会社の後輩が、1幕終わった段階で「めちゃめちゃいい話ですね。凄い楽しんで見入ってました」と言っていて、その子のセンスもすげぇなと思いながら、喜びに胸躍らせて2幕へ突入できました(笑)オペラ連れてって喜んでくれると嬉しい。初が夢遊病はレベル高いかと思ったけど全然大丈夫だったー。うふふ。


さ、千秋楽も楽しみだぜ!!