たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!" -3ページ目

たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!"

主にオペラの感想等を亡備録として書き連ねていこうかなと思ってます。
その時感じたことをそのまま書くようにしてますので、文筆がおかしいことは多々ありますが、良ければご覧下さい。

今日は最高なリサイタルに出会えました。終演時に終わってからすぐに立とうという気も起きず、でも出なきゃなと思い立ち上がったは良いけど、足がガクガクしてふらつきました。それくらい感動というか興奮して高揚しました。ほんとにほんとに最高でした。ほんとに美味しい物を食べると、「うまっ」とか「おいしい」という言葉しか出なくなるものですが、まさにそんな感じ。最高でした。隆盛は西郷でした。


今回の公演は、浜離宮朝日ホールで開催された「浜離宮ベルカント・シリーズ」の第2弾。

第1弾はこちらです。

(表)


(裏)

こちら先日NHKFMで再放送されたばかりの公演ですが、選曲がなかなか攻めていたのに高水準な内容で、世界の脇園彩さんと小堀さんだったから可能だった公演でした。ちなみに少なくとも本日はまだラジルラジルの聞き逃しで聴けました。


今回はこんな感じ。

(表)
(裏)

どうですか!!この曲目のライナップ!

『セヴィリアの理髪師』と『チェネレントラ』をガッツリやりました。

かなり内容濃くないですか?

もう抜き出しのガラコンですよね。

ロッシーニ扱って、このメンバーでの演奏で、曲目充実してて、朝日ホールでってもうそりゃあなた絶対行くやつなわけですよ。これが発表された瞬間に絶対行くと決めてこの日を待ちました。そういう方も多かったのではないでしょうか。


席はかぶりつきは無理でしたが後輩達の分含め、2列目のセンターやや上手側の通路から3席を確保したので、久々にかなり前で観賞しました。東京プロムジカがあった頃は最前列でかぶりつくの習慣だったなぁ。あの頃が懐かしい。在原さーん。


内容ですが、一応もう一度ここで申し上げておきます。最高でした。忘れてませんよねみなさん。最高でした。大事なことなので3回言っておこうかな。最高でした。しつこいか。チラシでも内容分かりますが会場でもらったパンフレットでも掲載しておきます。

リサイタルは、池内さんの「私は街の何でも屋」からスタート。ピアノの前奏が始まってから、下手側の扉をずっと見てましたが、そろそろ出てこないとタイミング的に限界だと思うラインを超えたら、後方より「ラララレーラ」と聴こえてくるじゃありませんか。そう、会場からの登場だったんです。気合が入りまくったからなのか歌詞がいきなり飛びましたが、人によっては何の違和感も感じないんじゃないかというくらいの感じで普通にやり抜けてそのまま最後までいきました。このあともいくつかあったけど、池内さん歌詞飛んでも動じずにそれっぽくやれるところがやっぱプロだよなと思った。これすごく必要なことだと思う。素人とか腕ない人だとやっぱ明らかにおかしくなっちゃうからね。アリアでは終始明るく溌剌とした声で実にフィガロらしいフィガロを聴かせてくれたのですが、ほんといい声ですなぁ。初めて聴いたんですよね。こんだけ大人気だけど初体験。癖のない明るく瑞々しい、ただただいい声でした。声の層が厚くしっかりと詰まってるけど、重くなくて上の方で鳴るのでベルカントにぴったり。そら引っ張りだこだよね。ロッシーニも素晴らしかったけど、ベッリーニなんかも良さそうだなと思った。あとはヴェルディなんかもガンガンやってくんだろうなぁ。イタリア語も上手い。今月レナートやるんだった。いきてえええええ。

また、今回ステージ上だけでなく会場をところ狭しと動き回り演技をしてくれました。おかげでリサイタルというかセミステージ形式のような仕上がりに。そして、フィガロのアリアからお金の2重唱まではレチタティーヴォで繋いでいたのもあって、全部聴き終えたらオペラ2本観たような気になりました。お得感満載。

2曲目は小堀さんで「私の名前を知りたいのなら」でした。この最初を聴いた瞬間に、今日調子バリ良いぞと確信。何度この曲聴いたことかという感じではありますが、もうね、ホントいいわ。惹き込まれる。小堀さんって否が応でも会場のお客さんを惹き付けてしまう声と表現力を兼ね備えているんよ。なので、みんな固唾をのんで聴いてしまう。会場と一体となる小堀勇介。そらあんた無敵やで。お客さんと呼吸が合っちゃうんだもの。あと、この曲ってセヴィリア聴こうとした時に結構な確率で飛ばしちゃうんだけど、小堀さんのは絶対飛ばしたくならない。やっぱり同じ曲でも生かすも殺すも歌手次第だなと思いますよね。

前半3曲目は、小堀&池内さんで「金を見れば知恵が湧く」、いわゆる「お金の2重唱」でした。長い2重唱なのですが、2人が芸達者だったので飽きることなく楽しめました。つい先日、小堀さんは加耒徹さんともこの曲やってましたが、相手が変わるとちょっと印象変わりますね。面白い。池内さんが後半の早口のとこをサラッとやっててかっこよかった。

お次は、山下さんの「今の歌声は」でした。完璧。マジで言うわ。完璧。ヴァリエーションもしっかりと付けてそれがハマってて、センスも良くて、永遠と聴いていたかった。表情豊かで、それが表現と結びついてるので観てても飽きない。これは推すしかないって。マコモ湯厳しいって。マジでやばい。実演にも触れてるから前から凄いと思ってたけど、今回推すぞという気持ちが強固なものとなったよね。もうそれはそれは群雄割拠の時代ですが、こんなに素晴らしい歌唱を聴かせてくれるメゾはそうはいない。アジリタ入る前に何の準備もせずに、そのままスッと入っていくのがすごい。喉がずっとカッパーって開いてるみたい。最高音に上がりきった音がこうなんというか、デヴィーアの様というか。きれいにまとまってスッといい響きで出てるんですよねぇ。気持ちいよねぇ。決して叫ばない。細かいパッケージも粒が立ってる。Bravaとか1回くらいしか言わないんだけど、多分3回くらい言ってますね。もうラブです。これはもうラブです。ブーン、チクッ、痛っ、やだ膨れてきた〜。これはアブです(何の関係もねぇじゃねぇか)

さぁ次は、山下&池内さんで「それじゃ私なのね!」の2重唱でした。あーもうこれも同様にすんばらしかったです。この2重唱前もしっかりとレチタティーヴォがあったのでもう嬉しくて嬉しくて。しかも取ってつけたようなものではなくて、全曲上演のオペラを切り抜いたような実にしっかりとしたもの。ロジーナがフィガロへ食い気味に自分の名前の頭文字を言っちゃうとこ大好きでした(笑)それだけで山下さんのロジーナ像が良くわかる。歌の部分では山下さんのアジリタが超絶気持ちいい。すべてが輝いていて、ロジーナの喜びとかを音楽からダイレクトに感じることができました。重唱の最後の方はヴァリエーションも素敵で、最後のところでこれでもかと音楽のシャワーを浴びせてくる感じが凄すぎて笑ってしまった。池内さんは比較的真面目に演じられていましたが、やりすぎないことでロジーナを少し目立たせるような感じがありました。声がほんとノーブルで素敵だよなぁ。アジリタはヌッチの様な感じで個人的にはとてもラブ。ラブと言えば、ロジーナの書いた手紙の内容ですが、「リンドーロ ラブ」と書いてあったのは爆笑でしたね(笑)しかも毛筆でかなり丁寧にハネとかハライとかを意識して書いてあったのでより面白かったし、それを丁寧に巻いてる池内さんにも爆笑(笑)(笑)
ロジーナの手紙が巻物だったんですよ。え?カッパか?カンピョウか?…そっちの巻物じゃねぇよ!

次は、2幕の「思いがけないこの衝撃に」の3重唱。嵐の音楽が終わりかけるあたりからピアノが弾き始めてレチタティーヴォからの重唱と、まぁこういう流れでした。ここのレチタティーヴォですが、ロジーナがガチギレしててかなり怒ってるのも多いけど、山下さんはそこまで怒りを露わにはしてませんでしたが、怒ってる理由が良くわからないというアルマヴィーヴァ伯爵とフィガロの会話はとても面白くて笑ってしまいました。特にフィガロ(笑)ちなみに小堀&池内さんは会場からの登場。この3重唱ってフィガロは最高音が出てくるのもあって密かに大変で、しかも奥の方でよろしくやってる2人に脱出を早くしないとやばいっすよと言い続けるのに色々な表現を入れないと面白くならないということでフィガロの力量が試されると思っていますが、ここは俺のおいしいところだぜと言わんばかりに面白おかしくやってくれたのが良かった。あまりやり過ぎると下手な人だと音楽全体が壊れるんですけど、そんなことはなく楽しめました。

前半最後は小堀さんの「もう逆らうのはやめろ」です。いわゆる、アルマヴィーヴァ伯爵の2幕最後の大アリアというやつです。初演のガルシア以降難しくて歌える人がおらず、眠ってしまった曲。そのため、『セヴィリアの理髪師』は、副題に『アルマヴィーヴァ伯爵』というのが付いてるのに、フィガロの方が目立つので主役として見なされてきたという歴史があります。しかーし、そんなのは過去の話。ロッシーニルネサンス以降これが歌えないとロッシーニ歌いとしてはどうなんでしょうという曲になってしまっているんですね。歌唱法の進歩というものは実に凄いなと感じるわけです。ちなみに欧州ではこれ歌う歌わないで契約金が変わるとか変わらないとか。

で、小堀さん今回ロッシーニ歌手として素晴らしいよねってことにはなりましたね(笑)
素晴らしかったわ〜。こぼちゃん最高や!!
久々に小堀さんでこのアリアを聴いたけど、めっさ良かった。小堀ワールドが炸裂なんだよね。耽美的な。
とりあえず、賞賛すべきはまずは最後のアクートですよね。バチコーン、キーンと決まったあの突き刺さるような感じ。マジで凄かった。やりやがったな!!って感じ。それからアジリタの数々が速くて正確。チョー気持ちいいどうも北島康介です。そして唯一無二の小堀勇介のフィルターを通した大アリアは技巧的な部分だけでない音楽全体のの美しさも感じさせる。私は合唱部分を共に声こそ出さないけど歌ってましたよ。テンション上がって(笑)

で、この曲まで聴いて思ったのは、これまではキャラクターのイメージに小堀さんが寄せるみたいな感じがあったとおもうんですが―もちろんそれはそれで当然でいい悪いじゃないけど―実演もたくさんやってきた結果、キャラクターの方が小堀さんに寄ってきたというのかな。うまくいえないけど、咀嚼しまくった結果、アルマヴィーヴァ伯爵(とラミーロも含めて)と小堀さんが=を目指さなくても、小堀さんがもはやアルマヴィーヴァでありラミーロであるので寄せなくても良いみたいな。ほんとにうまくいえないけどそんな感じ。勝手にもうなっちゃってるという。歌舞伎の守破離でいうと離というか。そういう境地に来ている感じがしましたね。とても分かりにくくてすみません。

そんなわけでようやく後半。
まずは、山下さんによる「むかしむかしある王様が」でした。アンジェリーナが暖炉のそばで歌う小アリアみたいなもので、前後半と2回歌いました。ともすれば暗くなりそうな曲ですが、山下さんは希望をどこか胸の奥底に秘めているような感じで歌っていました。

お次は、山下&小堀さんで「何かわからぬ甘美なものが」の2重唱。これはさ、これはさ、文句無しのまた出ますよ。また出ちゃいます。最高。2人の声が溶け合っちゃうのよね。相性いいわぁ。山下さんのアンジェリーナは常に声は明るいってのがほんとに良い。高い音もふわっと出すし大好き。小堀さんはそれこそ前回の脇園さんとも歌っていましたが、今回の方が良かったように思います。第一声でお客さんの全ての耳を小堀せんに向けさせるあの感じはほんと凄い。なんならお客さんも凄いね。今日はマナー悪い人誰も居なかったように思う。ガチ勢ばかりだったんじゃないかね。内容が内容だけに。で、前半のそれこそ甘美さからの後半の気持ちが盛り上がって音楽がズンズンと前に前に向かっていく所は気持ち持っていかれました。腸が歌うたびに段々エレベーターの様に上に上に登っていく感じ。そのまま飛んじゃいそうな。惹き込まれましたねぇ。

3曲目は、小堀&池内さんで「静かに!声をひそめて!」の2重唱。序盤小堀さんが言葉で精彩を欠いたけど、それ以外はそういうことはなくて、むしろノリノリで掛け合いを楽しんでいるかのようで、ロッシーニクレシェンドも相まってテンポ感も心地よく楽しめました。

4曲目は、レチタティーヴォ「あの美しい面影は」でした。これはラミーロのアリアの前のシーン。恐らく物語の都合上ここをあえてプログラムとして入れたのだと思います。腕輪を見つけてもらうんだよって。そこからの5曲目「からなず彼女を見つけ出すと誓う」を小堀さんが歌いました。これは今リサイタルの白眉とでも言いましょうか。最高中の最高中の最高。わかりましたか?最高中の最高中の最高です。完全に喉が覚醒してました。らーりとろーゔぇーろーって言った後にもちろん続くのわかってたけど、Bravo言いたくな、ったもん。ヴァリエーションも含めて、マジで激アツでした。こんなすげーもんやりやがってこんちきしょーです。手も叩きまくって痛くなったし、Bravoも叫んだりして高揚感やばしでした。汗かいてた。ちなみにこちらも合唱部分を心と目で口ずさんでました(笑)
歌い終わりで下手に颯爽と駆け出す時の小堀さんの顔が明らかに、「俺やったったで」っていう嬉しそうな感じが満載でこちらも嬉しくなりました。めっちゃオーラ出てた。喜びの。

次が、「テンポラーレ〜嵐〜」(ピアノ独奏)でした。ここのシーンをピアノで聴いたことなかったのですが、なかなか面白い。ピアノ1台でもオケの表現をするというよりは、ピアノで嵐を表現していたように感じました。ちなみに、今回のピアノ、スタンウェイ初のお披露目だったそうですが、いい音出してました。

さ、今回の公演のプログラム最後は、山下さんによるアンジェリーナの2幕最後のロンド「哀しみと涙から生まれて」でした。一応らラミーロとダンディーニも有りだったので豪華というか、こういうパターンは初だなと思います。これも白眉です。白眉パート2。なんという優しさでしょう。ロジーナの時とは違う山下さんのもう少し深い表現が胸を打ちます。善良がやっぱ勝利するんだよなってなる。とにかく優しくて声に喜びが満ち溢れてる。そして休符で聴かせてくるのもさすが。最後ののんぴゅめすたからの怒涛のアジリタですが、速さも十分でかつ正確。声をよくコントロールされてます。コントロールというと強制性が出ちゃうか。んーなんというか、そうじゃなくて、とても自然で流れるようにアジリタをやってるんですよね。でも粒はそれぞれしっかり立ってるんですよ。素晴らしい新米で炊いたお米みたいな。中身もギッシリ詰まっててキラッキラしてる。単純に声が良すぎよ。こんなチェネレントラ絶対聴きに行きたいもん。
全曲やってくれ!!誰か!!!!
なんかそういう権力ある人!!!!!!(笑)
今日のメンバーで頼む!!!!!!!!!!
なんか私も協力するから。お茶汲みとか。焼きそばパン買ってくるとか(いらねぇよそんな協力)

なななんと、アンコールもございました。
何だと思います?
僕もずっと何やるのかな、やんないのかなと、考えてて分からなかったのですが、やってくれました。それは、『セヴィリアの理髪師』の2幕フィナーレでした!!!感動!!!!自分の団体でも前回の本公演でこれやったのでピアノでガチプロの方々がやってるのを聴いてテンション上がりまくり。
やっぱさ、こっちのセヴィリアもさ、今日のメンバーで全曲やろうよ。絶対お客さん来るし。
ね、たのむって。
ほら、その、権力ある人頼む(笑)
とりあえず、焼きそばパンなら買っ(権力ある人ほぼほぼ焼きそばパンいらねーんだわ)

と、まぁこんなわけで長々と書きましたが、また言いますよ?今日出まくってる単語よ。ね?わかるよね?さ、みんなも続けて言ってみてね。せーの、最高音〜!!ということで最高なリサイタルでした。もうこれ以上のものに出会えるのかしらって感じ。
あと、このベルカントシリーズは次回もお願いします。ほんとに。よろしくお願いします!!
朝日ホールさん。焼きそばパンなら(もうやめとけ)

やっぱ、ロッシーニは良いね。
ロッシーニ愛が溢れちゃうわ。
ほんとに最後、Viva Rossini!!って最後に叫ぼうかと思ったけど、ただの悪目立ちデブって感じで白い目で見られそうなのでやめておきました。
今日の白眉ならぬ白眼になっちゃいましたなんてね。やかましいわ。

エスカレーター前

スタンウェイ、本日お披露目

サインとかいつも貰わないけど貰っちゃった。凄すぎたし、お土産も渡したかったし。

今日お披露目のスタンウェイ。


今日は久々の3Kコンサートに行ってきました。

前日仕事で残業して帰宅したのが日を跨いでいたのと、その前の日は疲れ果てて家に帰るのもダルいという状況の中24時間会社にいた事も重なり、いくら小堀さんでも、いくらなっちゃんでも、いくらちゃんたらちゃんでも(いや違う)、いくら加耒ちゃんでも(ちゃんやめろ)、聴いてて眠くなっちゃうんじゃないかという恐れがありましたが、全てのシーンにおいて寝ること無くしっかりと拝聴させていただきましたっっ!!!!!


今回の私のお席はこのへん。最後尾の真ん中ブロックの1番上手側。リサイタルとか声楽のコンサートは前方のかぶりつきが好きなのですが、熱狂的なファン層がたくさんいらっしゃいそうな雰囲気だったので、わたくしは目立たない一番後ろで観賞。目立たないように隠遁者のごとく。ふふふふ。



チラシはこんな感じでした。
表↓


裏↓

本日の曲目はこちら。

前半は色々な歌曲で構成されたプログラム。
まずは小堀さんがロッシーニの「踊り」で登場。フィガロの「何でも屋」みたいな感じで早口でまくし立てまくる感じがオープニングと相まって良かった。つかみはオッケーってやつですね。そのあとは180度変わってしっとりとしたベッリーニの「追憶」で客席を唸らせました。おいおい小堀よ、色んな君を見せてくれるじゃないかと。この曲はミロノフの録音を思い出します。また、彼が日本でやったリサイタルでも歌っていて、これぞベルカントや!!うまいなぁと感心したのを覚えていますが、小堀さんはミロノフよりも技巧的な部分というよりは、感情的な部分で踏み込んで歌詞をより深くまで落として表現していたように感じました。なのでハッとして…ではなく、グッときました。

そのあとは、加耒さんのロシア物2曲。ラフマニノフの「夜の静けさに」と「黒い瞳」。声に合ってる!!凄く良かったですな。加耒さんって顔からは想像できない声ですよね。昔から思ってるけど。いや、凄く良いんですよ。それが。もっと薄いのかと思ったらめちゃ分厚い感じというか。多分日本でドン・ジョヴァンニやったらこの人が1番良いんじゃないかなと思っているのですが(ちなみに、私が好きなジョヴァンニはトーマス・アレン)、まぁそれは置いておいて、ロシア物ほんとハマりますね。やっぱ声の層が厚いからなのかなぁ。「オネーギン」も合いそうだなと思いました。

さ、それが終わったらなっちゃんのピアノソロ。エネスク作曲 組曲第2番「トッカータ」。いやぁこの曲ほんとにヨッカータ。さ、ということで元気にやっていきたいと思っております。ついてこいよ?(うるせぇよ)
エネスクというのはルーマニアの作曲家だそうで、ルーマニアで流通している紙幣には彼の肖像が印刷されてるそうです。同郷ですと日本ではバルトークが有名だけど、エネスクも素晴らしいので選曲したそうなのですが、めちゃめちゃ良い曲でした。キラキラしてて明るく華やか。更には歌がついていたとしても違和感がなさそうで、キャッチーな旋律も結構あって、口ずさめるピアノ曲って感じ。内容はめちゃくちゃですが歌詞が降りてきました(笑)

前半の最後は日本歌曲。中山晋平作曲、岩河智子編曲の「シャボン玉」では加耒さんが暴走して小堀さんが怒って帰っちゃうみたいな流れが面白かったし、曲の編曲も秀逸。こういうことを音楽で遊ぶというんだなぁなんて思いました。遊ぶと言ってもしっかりした技術があってこそ聴いていて面白く感じることができるわけで、やっぱり腕あるなぁと。
2人の声はパッと聴いた感じでもイメージでも全然違うのに、響きというか波長というか、声質?なのか、重唱になるとピタッと同じように重なり合うのがほんとに気持ちよかったです。2人も歌ってて気持ちいいと言っていましたが聴いてるこちらも北島康介です。ああ、超気持ちいいってことね。加耒さんのファルセット気味な所なんか小堀さんかと思うくらい。このあと出てくる、中山晋平作曲、岩河智子編曲の「鞠と殿様」やアンコールでやった『真珠採り』の「この神殿の奥深く」なんかはそういう感じがとても出ていました。

日本歌曲は他に加耒さんが歌った越谷達之助の「初恋」がとても良かった。バリトンで歌ってるバージョンはあまり聴いたことなかったけど、ジーンときますな。ウルッときちゃいました。なっちゃんのピアノがそれに拍車をかけてきましたよ。歌に寄り添いながらも、内容を更に膨らめるような歌との呼応。良かったわぁ。

後半はオペラ三昧。
まずは、ロッシーニ作曲『セヴィリアの理髪師』から「お金の2重唱」とアルマヴィーヴァ伯爵のアリア「空は微笑み」でした。「お金の2重唱」では、加耒さんが縦横無尽に流れるようにフィガロを歌っていて溌剌としていながらも、実にスマートでエレガントさもある。フィガロ合いますなぁ。歌詞がが飛んでたのは御愛嬌って感じでしたが、早口が完璧で言葉も立っていて聴きやすく、こうなりたいものだと思いながら聴いてました。くー、カックイイ(多分これ何回も言われてんな恐らく)。「何でも屋」も聴きたかったな。小堀さんも相手が加耒さんだからなのか、歌い方に懐かしい感じも出ていてそれが功を奏していたようにも思えました。

次は「空は微笑み」ですが、今日の白眉かな。神がかってました。特に中盤以降それが顕著というか、集中してノッていく様がまじまじと感じ取れました。アジリタが超早い!ヴァリエーションも初めて聴いたやつでセンス良い!しっかりアクートきめてくる!これ聴けただけでも行った甲斐はあるという感じ。自分がBravo言うとなんやねんあいつうるさっみたいな感じで他のお客様のご迷惑になるのではと思ったりして最近ちょっと自重してる自分がいたりするんですけど、言わざるを得ませんでしたね。本人もテンション上がったと思いますよ。あんだけのものを披露出来たんだもの。

次は、なっちゃんのピアノ・ソロで、ショパンの「バラード第1番」。なっちゃんが「2時間くらいのドラマを10分に詰め込んだような非常にドラマティックな曲。曲にバラードという単語を使ったのはショパンが最初」という解説をしてくれましたが、まさにそんな感じ。というか、凄いわ。ピアノ弾けないから余計に思うけど、こんな難易度高い曲をこれでもかと弾いちゃうなっちゃん。尊敬でしかないわ。ゆったりと始まり中盤くらいからこんにちはショパンです的な超絶技巧的もあったりして、これを10分弾き続けるって、なんなん(笑)指と頭はどうなってるんや(笑)いやー、ほんと、最後の最後の和音に至るまでダイナミックに聴かせてくれて拍手でした。

プログラムの最後は『愛の妙薬』ですが、最初は加耒さんのベルコーレのアリア。舞台に登場してすぐに客席に降りて、客席を歩き回りながらお花をプレゼントしていく様は、まさにベルコーレ。イメージに合いすぎる(笑)
それが終わると大好きな2重唱「20スクーディ!?」でした。なんだろ、楽しそうでしたとにかく(笑)仲良しコンビが懐かしさも感じつつ、心底楽しんでるみたいな感じがして最高でした。やっぱ3Kコンサートはこういう感じがあるから良いね。関係性がみえるというか。終始ニタニタしながら聴きました。ウーナクローチェのあたりは噴きました。加耒さんのいきなりの日本語で「ここ」ってやつ。最高(笑)ただ、繰り返しはやってほしかったなーとは思いました。

アンコールは既出してますが、『真珠採り』の2重唱「この神殿の奥深く」でした。まぁこれはさ、想像通りの2人の声にぴったりのやつだし、実際ぴったりでした。ハモリが美しすぎ。曲自体が耽美的というのもあるけれど、2人の声がそこに乗ることで血が通い。なっちゃんのピアノも相まって美の極致へ。元々チラシに載っていたやつ1つもやらないわけにも…ということでやってくれたアンコールでしたが、大正解だったと思います。確か過去の3Kコンサートでも取り扱ってたような。この2人で『真珠採り』やってくれないかな。ねえやってよ(おいやめろ)。

そんなわけで、素晴らしいコンサートになったので行ってよかったですー!!
会場の人はみんな3人が好きな人達だらけでしょうから、終始温かい雰囲気があって、客席の反応も良かったし、優しい時間が流れていました。それも良かったね。
結局演者と客との見えないやり取りって公演の満足度にめちゃめちゃ関わってくるもんね。
次はいつやってくれるのかなぁ。
終演後になっちゃんとか会う予定が、バスの時間気にして手土産だけ係の人に渡して会場を去ったけど、バスタ新宿にて50分くらい待つことになってしまい、全然さっきあの場にいれたやん…みたいになってしまったというオチがありました。去る直前、ロビーに演者の皆様が出てきたのは見えたけど、人がたくさんいたし、そこにグイグイいくのはちょっと流儀に反するので帰りましたが、結果論的には悔しいぜ!
ま、でも、すんばらしい音楽を聴けたので全然良し!!来月は浜離宮朝日ホールでまたまた小堀さんがある!!楽しみ〜!!!!!

杉並公会堂入り口


 昨日は焼津中央高等学校合唱部50周年記念コンサートが焼津市文化会館で開催されました。来て下さった方、行きたかったけど行けなかったと応援してくださった方、お手伝いして下さった方、関わった全ての方に感謝申し上げます。

 

 今回私はなかなか稽古に出れず10月くらいから本格的に参加したような感じでご迷惑をおかけしたことも多かった中で、松永先生、みさ子さんとご指導下さったお二人は諦めずに叱咤激励して下さりなんとか舞台に立つことが出来ました。また、相手役の基子、ピアニストの祈も諦めずに稽古に付き合ってくれて、そして支えてくれたことも同じ様に感謝しかありません。素晴らしい後輩達です(先輩しっかりしなさいよ)。 


 合唱がメインのコンサートでしたが、重唱もいくつかプログラムに入っておりまして、私は『魔笛』の「パパパの2重唱」をやらせていただきました。ほんとに忙しい毎日で、ソリスト希望のアンケート取った時にソリスト希望は出してなかったんだけど、気付いたら決まってました(笑)稽古では、「最初のパが違う」で1時間とやったり、「パで何を伝えたいんだ」「相手のことを愛して寄り添え」など全然表現もダメダメで、稽古を振り返ると常に心がボッキボキに折れていて、自分の曲が来る度に何度逃げ出したくなったことかと思い出します(笑) 

 そして、動かないと歌えないタイプな私は、最初演技なしという話になり、基本前見て歌うということに慣れず色んな要素がごちゃごちゃになり混乱してました。 


 しかし、本番はあまり考えないようにして、先生の言っていた「今日は高校の頃に戻って変に色々考えないでやってください」という事をそのまま受けてありのままでやりました。結果的には、お客様からはかなり大きな拍手とBravoなんかも飛んできて、あぁやって良かったなと思いました。

また、式台の上の先生を直視はしないけど、視野にはいれつつ、隣のパパゲーナとの呼応を合わせて歌う感じが、懐かしすぎて、無性に高校の頃の感じが喚起してきました。それはマジで最高でした。すっごく楽しかった!!!!!

舞台袖に引っ込んでからちょっと泣いたよね私。楽屋の廊下で先生と会った時に「お前なんだよすげーいいじゃねぇか。やっぱ、お前、本番はやるなぁ、なあー?これからは本番だけ呼ぶか。稽古だとイライラするから(笑)」という好己節炸裂なお褒めの言葉も頂戴したのと、誰かに、先生が式台から降りて移動してる時に、「あいつ稽古と全然違うじゃねーか」と言っていたよ。それは褒めてるってこだよ。と言われ嬉しかったです。そして、高校の頃、よくよく本番後の打ち上げで言っていた「本番じゃなくて稽古で今日のをやれよ」という言葉を思い出して、変わらねぇな俺なんて思ったりしてました。


 本番は合唱の音圧も凄くて、これぞ中央合唱部だという感じ。歌いながら「みんな気合すげーな」って思ってどんどんテンション上がっていきました。幕間の歴代パンフレットを観ながら、「俺よくこんだけ集めたな」というのと「こうして先輩たちそして後輩たちが繋いできてくれた中に自分はいるんだな」と思ったら、またそこでウルッときてしまいました。感動するよあれは。焼津中央合唱部が好きな私は。 


 それと、お手伝いしてくれていた方から聞いたのですが、今回お客様が1241席入ったとのことで、オケピとカメラ席分の席を差し引くとほぼ満席だということでした。最近はかなり空席が目立つので、自分達の高校の頃はこんな感じだったなぁと懐かしくもちょっと切なくなりました。 


 メモ的に自分のことばかりを書き連ねましたが最後に。50周年はとても素晴らしいことで誇れることでもありますが、ここからの合唱部にも目を向けなければなりません。私が感動したようなことを次の世代また次の世代が感じることができるように、現役を応援することがほんとに大切です。コンサートを聴いてくれた現役生が長文で感想を送ってくれました。感動しました。圧倒されて、感動しっぱなしで泣いていたと。自分たちも頑張らなきゃと思ったということです。なんと美しいことかと思います。音楽でOGOB達が高校生の心に何かしらの影響を与えたわけです。現在の学校運営の中で合唱部のオペラ公演はかなり肩身の狭い状況だそうです。何ができるのかわかりませんが、僕たちは少なくとも会場の席が満席になってしまうくらい人を呼ぶとかそういうことくらいはお手伝いできます。これを読んだOGOBは各々が頑張って現役生に還元してあげてほしいところです。俺らの頃は良かったよなで終わっちゃダメ。これは使命です!!(笑)まぁそれは言い過ぎでしょあが、自分たちが一生懸命やったあの場所がこれからも続いていけるように、1年の8760時間の内約3時間を現役の為に使ってあげましょう!!ということで、あまりまとまりのないことを書きましたが、50周年おめでとう、そして次の51年目もよろしくということで。




録画しておいたNHKニューイヤーオペラコンサートを観ての感想をXでつぶやいていたもののコピーを羅列。


1/3

カルメンのフィナーレ前の合唱で始まったんだ!!


なかなかそれはおもろい。

山下裕賀さんのカルメン素晴らしい!!

字幕はなぜこのフォントにしたのかしら。

てか、セギディーリャから最後までをやるの良いね!!
アリアだけをやってもそんなにおもんないもんね。

ぼいけさぺーての方じゃないだけ良いかなんて思いつつ。山際きみ佳さんのケルビーノかっこいい。

ケルビーノは確かに良いと思うけど、テンション上がらんのだよ。上手いけど、他の曲で山際さん聴きたかった。

大西宇宙さんのもう飛ぶまいぞはとても楽しかったけど、もったいない!!!!まぁ有名だけどさー。
4幕アリアにしてほしかったー。ただ、普通に歌う感じでもなく、装飾入れてたりして満足度は高かった。最後の処理も好きだった。そこはさすがの大西さん。

今回直前のセッコからやるのはとても良いと思う。

池内響さんめちゃくちゃ良い声や!!
ドン・ジョヴァンニっぽい。
石橋栄実さんは安定の素晴らしさ。

やったー!!
ドンナ・アンナは森麻季さんだ!!!
竹内直紀さんがオッターヴィオでいるのがまた良いね。沼尻さんのびわ湖の流れで抜擢なのかな。て、え、歌わないよね。あれ。やっぱそうだよね。とするとガチで豪華すぎるんだけど。

森麻季さん完璧やん。
もうちょいオケためてくれてても良かった。

フィデリオのこんなとこやるんだ!!
おもろいチョイス!!
ただ、ピツァロ何で須藤さんなん。

妻屋さんのロッコはありがたい限り。

沼尻さんフィデリオのオケ素晴らしい。ゾクゾクするぜ。

あ、そうか、2重唱の流れか!!
素敵チョイスやわぁ。フィナーレまで⋯は無理か。さすがに長いもんな。

田崎さんのフィデリオは合ってるね。福井さんは安定の福井さん。悪い意味でなく。

きたー!!!
大分カットだけどフィナーレやってくれた!!!!!

びわ湖感✨

今回舞台の感じも好きよ。

すごっ!!!!!!!!
伊藤さんと妻屋さんによるこのシーン!!!!?

伊藤さんと妻屋さん凄かった!!
ここをニューイヤーでやるってのがまた良い😊

運命の力のラタプランのとことか驚きやわー。

山下牧子さんすごいわー。
オケ攻めたなぁ(笑)

大村博美さん安定のまれでつぃおーね!!

シモンのここやるとかマジ最高やん!!!!!!
上江さん声いいなぁー!!!
何と、聴きやすいイタリア語。
今回ニューイヤーええやん、チョイスが素晴らしい。

上江さん絶好調やん。

フィエスコ伊藤さん。最後どう言ってくれるのか。めちゃ楽しみ。おろーる。

え?ないの???
まじかよ!!!!!!
最後までやってくれれれれれれ😭

宮里さんのピンカートンは誠実さ出ちゃってるけど、声はガチで良いよね。砂川さんの蝶々さんの一途な感じも素敵。

シェニエか!!
いいな!!!

ということで楽しめました〜。
ありがとぅ、NHKニューイヤーオペラコンサート✨

1/4
「にーに抱っこ!!」ってわーわー言ってる甥っ子も出掛けたのでゆっくりもう一度NHKのニューイヤーオペラコンサートを観ている(笑)

全体通してやっぱり選曲と構成が良いなぁ。今年は少しでもそのオペラのアリアなり重唱なりの状況や雰囲気も伝えようとしているよね。フィデリオとかシェニエとかアナウンサーが映像込みでしっかり説明しているのもとても良い。それやっても一般人わかんないっしょ?感がなくてめちゃ良いです。

とりあえずこの曲散りばめときゃ合格点は取れるんじゃね?みたいな感じが全くなくて、オペラが好きな人達がこんなにオペラは面白いんだよって画面を通じて言ってきてるような気がしてる。感動してきたわ。

てかさ、フィリッポと大審問官のシーン普通やるかね(笑)
カルロとロドリーゴなら、ドン・カルロって言った瞬間に、あぁそこねってことにはなるけどさ。
マジで良いな。こういうとこやるの。しかも妻屋さんが大審問官という。あとマクベスの合唱とかさ。攻めまくりだよね。最高。
第25回藤沢市民オペラの『魔笛』に12月14・15日の2公演行ってきました。両日とも素晴らしく丁寧に作りこまれた素晴らしい公演でした。1973年にモーツアルトの『フィガロの結婚』で産声を上げた藤沢市民オペラは今回でなんと25回目だそうです。さすがは市民オペラの祖。歴史があります。また、50年を超える歴史の中で会館の老朽化も進んでおり、藤沢市民会館は2026年3月31日で休館、その後建て替えとなるようです。近代的な感じではない地方の会館みたいな雰囲気は好きだったけどこればかりは仕方がない。前の席との距離が0で膝が死ぬ感じや一生懸命階段を上る感じは恐らく今後は見られないのかな(笑)既存の会館でのオペラ公演は最後らしいので、見納めることができて良かったなと思っています
観賞の内容に入っていこうと思いますが、今回忙しくて今更ブログを書いているので記憶に新鮮味がないのと、記憶違いしている部分があるかもしれませんがご了承ください。
全体的なことを申しますと大満足。『魔笛』は特に解釈も多くやりたい放題な舞台にさせられることもしばしば。おかげで耳に入ってくる音楽と、目に飛び込んでくる映像が相違して集中できないみたいなことが本当に多いのですが、今回はメルヘン的というのか古典的というのか、そういう保守的な演出に完全に舵を切ったというわけではないけれど、結果的には大分そちらに寄っていたので観易くて、色々な仕掛けも全てがハマっていたと思います。正直極上の演出だと思いました。衣装も素晴らしくて色合いが絶妙にマッチしていて品があり格調高い仕上がりになっていたと思います。品の良さが香りで感じられるような感じ。タミーノとパミーナは白や金、パパゲーノとパパゲーナは緑と黄、夜の女王は青、ザラストロは茶、あとは黒みたいな感じでした。ポネルとエヴァ―ディングの様に統一感があってセンスが良い。これまた品がない衣装をあえて設定していたりするものも多いので、観ながら感謝すらしておりました。おかげで、初めてプロのオペラを観る子とオペラが初という20歳の子達もえらく楽しめたみたいで分かりやすくて良かったですーと大感動。声掛けて良かったですー。
自分の中で演出の解釈のポイントとなった部分をメインに記憶してることを書いていきますと、序曲が始まり幕が開くと、中央に幅広な大きな階段が据えられており、その最上階中央奥に切り株があります。3人の子供たちが出てくるとその周りやその上に乗って飛び跳ねます。その後雨が降ってきて子供達は家に帰ります。恐らく濡れた体を温めるためにお風呂に入ってきたのでしょう。全員パジャマ姿。下手の奥にある大きなベッドに移動して布団をめくると絵本のようなものが。3人はベッドに入り絵本を開きます。眠くなったのか徐々に眠っていく子供達。こうして序曲が終わります。ベッドのすぐ上にある窓からタミーノが大蛇に襲われて部屋に入ってきます。というように『魔笛』の物語が始まるのですが、以後ほとんどはその子供達の部屋の中で物語が進行していきます。下手のベッドの中で次々に入ってくる登場人物を見つめる子供達。タミーノアリア「なんと美しい絵姿」は子供達に向かって歌っていたり、フムフムフムの5重唱では「噓をつかず互いを愛し合うことが大切」と歌う部分になるとセンターから上手側にいた5人のソリスト達は子供達の方に向かって「肝に銘じなさいよ」といわんばかりに歌います。その曲の終盤、3人の童子が登場するシーンではバトンが下りてきて3人分の服が掛かっておりそれらを子供たちが各々が着始めます。そしてタミーノを案内するように下手側の扉から意気揚々と出ていきました。2幕の鎧武者とタミーノ、パミーナの4重唱、つまり火と水の試練の前では、パミーナが舞台裏からタミーノを呼び、意気揚々とタミーノが歌い始める所で、鎧武者が明らかに動揺して本(恐らく教典か法律書の類)を何度も何度もめくっては互いに目を見合わせていました。要はパミーナがタミーノを共に試練に向かうということは想定されていなかったということだと思います。しかし、ザラストロがそれを赦したわけです。そして、ついに2幕のフィナーレではザラストロが着ていた上着を脱いでタミーノにそれを渡します。その後パミーナがザラストロに向かって、彼が大事にしていただろう本(恐らく教典か法律書の類)のあるページを見せます。ザラスロトは好きにしろという様子。喜ぶパミーナ。フィナーレの後半清きものを称える音楽になる所でそのページを破り捨てます。すると階段の上が男性、下が女性という具合で綺麗に列を成していた合唱の位置(これは1幕のフィナーレでもその様な配置になっていた)が男女入り乱れてばらばらになります。非常に活き活きとした合唱。そこで階段の中央奥一番上に生えていた木(恐らく魔笛を作る為に枝を折った樫の木の原木)が切られた、ということでいいと思いますが、木を釣っていたバトンが上に上って見えなくなります。そして序曲で子供たちが遊んでいた切り株が残ります。最後の最後は3人の子供たちが同じように戻ってきて終幕となりました。
つまり、3人の子供たちは何気なく切り株で遊んでいたけど、その切り株にまつわる絵本(恐らく歴史物語)を読んでいるうちに眠ってしまい、夢か現実か、「むかーしむかーしある所に…」という具合に絵本の内容をリアルに追体験をし始めるわけです。登場人物が子供達に語るように歌っていたのはそのためです。そしてついに自分達も物語の一員となります。3人の童子に自分たちを投影したのでしょう。その後は魔笛の世界が絵本に書かれるように進んでいきますが、2幕フィナーレである種の分断の象徴としての木(恐らく樫の木)が無くなり(独裁者の銅像が倒されるようなメタファ)、統治者であるザラストロも引退し、タミーノを中心とする新しい世代による新しい考えによる世界が構築されていくんだというあたりが見えます。ここでうまいなと思ったのは、試練の前の3重唱で「パミーナと会うことが許されている」とは言ったものの、鎧武者が本を何度も読み返しながら「え?これマジ?」みたいに慌てている様から、ザラストロはもう実は社会が新しい段階にきているということを理解し、本来ならば彼の求めている男性優位な社会は難しく、女性と同権で2組が力を合わせて築いていく社会を実現しようとしていたのではないかということが伺えることです。パミーナとタミーノを合わせていいと許可するのはザラストロだろうと予想するからです。しかし、黒い顔をしたモノスタトスには非常に厳しい。そういう差別的な感覚はやはり抜けない。そういうことも鑑みて、引退して次の世代に託すのが一番だと考えたのではないかなと思います。大事にしていた本(恐らく教典か法律書の類)のあるページ、恐らく男女の不平等さが書かれていた部分をパミーナがザラストロの前で破るところはそこだけ見ても意味がわかるような作りでしたね。最後は「こうして木は切られ、現在の平等な世界が作られていったのでした。めでたしめでたし」的な終わり方をしたんだと思います。ちなみに、3人の子供達が生きている時代は、タミーノが新しく光の国を統治してからもっと長い時間が経過しているように思えます。これは感覚的なものですが。ということで、違う視点を設けたけど、内容はスタンダードな『魔笛』を楽しめるし、分かりやすいという最高な演出でした。マジで素晴らしいと思う。
…と勝手に私が解釈してるだけで、全然違うわ!と言われたたら、まぁ、なんていうの?土下座?しかないよね。
ソリストで良かったのは、
14日組は、ザラストロの伊藤貴之さん、夜の女王の小川栞奈さん、パパゲーナの七澤結さん、モノスタトスの谷口耕平さん。
15日組は、タミーノの渡辺康さん、夜の女王の梅津碧さん、パミーナ役の盛田麻央さん、パパゲーノの大西宇宙さん、3人の侍女の山田知加さん、林眞暎さん、山川真奈さん、童子の本間柚李さん、金子和花奈さん、中澤晴子さん。
伊藤さんは、2つ目のアリアの諭しながら歌う様が実に温かみがあって良かったけど、その前に物凄くモノスタトスにカチキレる所の迫真の演技と言っても声による表現というか威嚇というかが凄かった。あんな伊藤さん見たことない。だからこそ彼の人となりを感じることが出来た。あの部分は一言だけ「行け」で済まされることも多いけど、改めてしっかり全部やるのは必要だなと感じましたね。あと、伊藤さんいつもベルカントで素敵。声とっても明るい。
栞奈さんは、1つ目のアリアは繊細に歌い、2つ目のアリアはよりベルカント的に歌ってたのが印象的でした。両方めっちゃベルカントを感じましたが、なんだろ、1曲目の方がそれを感じやすそうなのにむしろ2曲目でそれを強く感じました。ルチア―ナ・セッラの歌う夜の女王みたいでした。テンションとか勢いで持ってく感じじゃなくて技術力でねじ伏せるって感じ。むしろ怖い。その方が。素晴らしくて久々に夜女でBrava出しちゃいました。あ、1曲目も言ってます。そっちは俺くらいしか言ってなかったかも。何でやねん良かったやんけってなったのを記憶してるので。昔ロッシーニのデズデモナやノリ―ナを歌ってた時にこれはベルカントでこの先活躍されるのだなと確信しましたが、やはりそちらでしっかりと成長されたようでうれしい限り。
七澤結さんは、圧倒的な空間の支配力というか、出てきた瞬間に魅了される感じで圧倒されました。例えばパパパの2重唱はかわいらしいパパゲーナのイメージだったのですが、いや、かわいかったんですけど、竜巻のような勢いとキラキラ感で全部もってっちゃったっすよ。釘付けになりまたもん。声もキンキンした感じでなく温かみのある厚みのある声だったので同オペラならパミーナも良さそうです。
谷口耕平さんは、めちゃ丁寧に緻密にモノスタトスを歌われていました。変に歌い崩すこともなく、正攻法で役と一体化していたように思います。壊すのは簡単なんですよね。守るのが大変。そんなわけで安心して聴けましたし、とっても好感が持てました。性格的なテノールも良いけれど、もっとリリックな役柄でも全然勝負出来そう。
渡辺康さんはお久しぶりですという感じでしたが、イメージにぴったり。無理なく上の方が鳴るので高さを感じさせません。やはりロッシーニも歌える渡辺さんですが、タミーノはドイツ語圏のモーツアルトのイメージをしっかりと打ち出していて、特に歌唱部分ではドイツ語の美しさを感じることが出来ました。
梅津碧さんは小川栞奈さんとは全然違う表現の夜の女王でした。2幕のアリアのあとはその日1番の拍手の量だったと思いますが、高音が全く無理なく鳴るし、そこにしっかりと怒りや狂乱的な表現を入れ込んでるので凄い。最後歌い終わりに「どや!!」って感じで舞台後方へ下がっていった時めっちゃかっこよかったし、その勢いがお客さんの火をつけましたよね。Bravaとかじゃなくて、うごごごご~って会場唸ってましたもの。
盛田麻央さんはパミーナ最高にぴったりね。少なくとも自分としては盛田さんくらいのやや軽めな線の太い感じではない方が趣味。聴きたい部分全て美しかった。やはり、2幕の試練前の「タ㋯ーーーノ」の部分は否が応でも聞き耳立てちゃうんだけど(とっても個人的にはスザンナの4幕 La mia voce?的なポイント)、まっじで良かった。アリアも完璧だし、眠くさせない声の魅力と技術力を感じましたね。もっと売れてほしいな。素晴らしいんだもの。
大西宇宙さんは言うことなし(笑)最高のパパゲーノでした。生で見たパパゲーノでは過去1だと思う。単純に声が良い。大西さんの声はイメージ的には男前だけど、パパゲーノではしっかりかわいい。役としっかり一体化してるので、パパゲーノに感情移入してちょっと泣きました。自殺のシーンとかではなく、多分パミーナのアリア前だったかな。本当はとってもお喋りしたいし、優しいパパゲーノのことだからタミーノのことも心配してるだろうし、パミーナのことも心配してるだろうし。無理やりこんな状況に追い込まれてかわいそうって思ってしまいました。こんな風に思うこと過去なかったけど、大西ゲーノがそうさせました。不自然さがなかったからね。パパゲーノとして。そういや途中パンフルートで第9を演奏して「あとで偉い人達に怒られよ」みたいなことをさらっと言って会場大爆笑みたいなのもありました(笑)
3人の侍女の山田知加さん、林眞暎さん、山川真奈さんも素晴らしかったです。1幕冒頭で出てきてからのハモリが美しすぎ。海外の座付きの人達の侍女を聴いてるようでした。ここは1が強くほしいとか、3が印象付けてほしいとか期待した音楽が全部来ました。緩急、縦もしっかりと揃っていてマジで良かった。気持ちよかった。案外侍女って生で聴くと揃ってほしいとこが揃わなくて幸先良くないなみたいのが多いので、めっちゃテンション上がりました。楽譜の後ろに付いてる長いバージョンでも良かった。長く感じないから。ちなみに所作でいうと林さんが実に女性らしくて(死語かもしれませんが)素敵でした。
本間柚李さん、金子和花奈さん、中澤晴子さんは元気いっぱいに所狭しと童子をやっていて頑張れ~と応援したくなりました。本物の子供がやるとやっぱいいね。かわいかった。もっと拍手しなさいよ大人って思ってましたちなみに。
そして、園田隆一郎マエストロのご尽力あっての今回の『魔笛』でしたね。オケは全然ダレる所がなくて、ずっと前へ前へという推進していく音楽を作られていたのでよっこいしょとボーっとする瞬間もなくずっと楽しめました。特に序曲は素晴らしかったなぁ。合唱の人達もすごく楽しそうに演じられていて、良い環境でやれてるんだろうなぁなんて。毎回アマチュアの方々とは思えないなと感心してます。園田さんのお人柄と藤沢への強い思いがあるからこんなに素晴らしい『魔笛』を聴くことが出来たのだと思います。でなければ歌からも楽器からもあんなに角のない音楽は聴こえてこないと思います。次は何ですかね。ロッシーニですね。アルミーダですか。それともエルミオーネ?いずれにしても行くのでまたやってくださいね。藤沢市民オペラ。わが母校焼津中央高等学校合唱部のオペラ公演も今年50周年で、1月には記念コンサートも行われますが、伝統を背負ってずっとやっていくというのは努力だけではどうにもならないことも多いです。しかし、運営側に「好き」「やりたい」という気持ちが強ければ絶たれることはないと思っています。これからも素晴らしい伝統を持つ藤沢市民オペラが永遠に続きますようにとお祈り申し上げます。ありがとうございました。