たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!" -2ページ目

たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!"

主にオペラの感想等を亡備録として書き連ねていこうかなと思ってます。
その時感じたことをそのまま書くようにしてますので、文筆がおかしいことは多々ありますが、良ければご覧下さい。

今日はとても私好みなリサイタルへ足を運んで耳を喜ばせて参りました。

足を運んだ先はすみだトリフォニーホール、耳を喜ばせてくれたのはメゾ・ソプラノの石田 滉さん。

そう、今日は待ちに待った彼女のリサイタルだったんですね。

タイトルは「うたうように えがくように」vol.3オールロッシーニプログラム。ね。大好物なわけよ。ロッシーニだけで作られたプログラムよ。なんてことでしょう。喜び〜。嬉しみ〜。背負投げ〜(今更IKKOさんやめなさい)


チラシはこんな感じ。



ところで、この「うたうように えがくように」ということはどういうことなのでしょう。チラシの裏に答えがありました。

そういうことか。人生のテーマ。座右の銘。そういうものをリサイタルのタイトルとして掲げているんだなと言うことが分かりました。ということは、このコンサートはとても力の入った彼女のライフワークとも言えるコンサートシリーズとなっていくのでしょう。


藤原歌劇団のインタビュー記事にもこの「うたうように えがくように」についての話が出てきます。

石田 滉 - キャラクターとしても、声としてもぴったりのステファノ役で藤原歌劇団公演デビューを飾る|JOF 公益財団法人日本オペラ振興会 https://share.google/J6A6lvK9eEQUWRxoJ


実際今回の内容を見ても力入りまくりでした。

終演後にロビーにて彼女に思わず「ガチですやん」と伝えてしまいましたよ(笑)

そんな気になるプログラムはこちら。


《プログラム》

・オペラ『ランスへの旅』より“美しい光に包まれて”

・別れ

・昔風のアリエッタ

・ボレロ

・『老いの過ち』第5巻より “ああ、愛しのグリーンピース!”(ピアノソロ)

・ヴェネツィアの競艇

Ⅰ. 競艇前のアンゾレータ

Ⅱ. 競艇中のアンゾレータ

Ⅲ. 競艇後のアンゾレータ

・オペラ『オテッロ』より“柳の歌〜祈り”

・オペラ『湖上の美人』より“胸の思いは満ち溢れ”

・オペラ『エルミオーネ』より序曲(ピアノソロ)

・オペラ『エルミオーネ』より“彼女が勝利するなんて!…”


パンフレットの画像も一応。


ね、やばない?なんなんこれ。ロッシーニ好きとしては盆と正月が来た感じというのか。祭りですよ。気分的に。うたうように、えがくように、ろっしーに、ですわ(間違っちゃねぇけどよ)。では、曲ごとの感想行ってみよう。いってみようやってみよう(やったやったやったでーきーたー…て誰が覚えとんねんNHKの子供番組)


1部の1曲目。

オペラ『ランスへの旅』より“美しい光に包まれて”ですが、まず、いきなりこれからやんの!?という驚きでした。まぁ確かに実際のオペラだとコルテーゼ夫人はいきなりこれからのスタートだけどもね、優しめの歌曲からスタートとかじゃないんだって。もうこの段階で本気やん?ほんキララやん?本キリンやん?(それビールや)。とまぁ軽くボケておきましてですね…あ、この後もこんなんが続くからな。嫌な奴もう見るのやめとけよ?(何で偉そうなんだよ)

歌い始めの音からカチッとハマっててさすがでしたが、そこから全体的にアジリタのパーティが開催されていく中で1音も落とすこと無くゆったりしながらも忙しいこの曲を明るく太陽のような輝きの元歌ってくれました。良く転がるなぁ。そして嬉しかったのは、前半だけじゃなくて、後半も演奏してくれたこと。さすがですよね。コルテーゼ夫人はこの後半がなくっちゃ。『ランスへの旅』を聴くときはここ絶対聴くもん。テンション上がるのよとにかく。階段を駆け上がっわたり駆け下がったり忙しいのが金の百合亭を経営する多忙なコルテーゼ夫人っぽくて良いし、合唱こそ今回は無かったけど、合唱との絡みも面白いし、やっぱここのシーンは凄く見どころ聴きどころが高いとこだと思ってるので、やってくれたところにセンスを感じますよ。ロッシーニ好きなんだなという思いとともに。


2曲目。

「別れ」ですが、こちらは『音楽の夜会』の中の1曲。別れの歌ではありますが、非常に優しく前向きな?情景を思い出しながら歌うような様は非常に良かった。コルテーゼ夫人から歌曲に変わって、表現がある役を演じるというものから、その情景を自分のフィルターを通して聴かせるみたいな感じがしました。


3曲目、4曲目、5曲目。

順番に、「ボレロ」、「昔風のアリエッタ」、「アラゴネーゼ」は『黙って嘆こう=Mi lagnerò tacendo』というメタスタージオのテキストに音楽を付けたものだそうですが、ロッシーニはこのテキストだけで沢山の曲を書いたそうです。「ボレロ」は激しくも、ロッシーニらしい遊び心のある旋律が楽しい。表情いっぱいに表現してくれました。この曲は本来は楽譜の販売がないということでしたが、ペーザロでの修行の結果手に入れられたそうで、今回聴けたそうです。わーい!!

「昔風のアリエッタ」は、しっとりと暗めな曲調で歌詞が同じなのにがらっと変わった印象。

「アラゴネーゼ」は超絶技巧的な部分を含めて完璧に演奏されていました。そして、めちゃめちゃロッシーニっぽい。顔と体全体で表現する石田 滉さんを観ながらうまいなぁと感心。音符の最後に左手で音を切るというのかな。ある種のクセだと思うんだけど、その素振りにより休符を視覚的にも感じることが出来て、聴いてるこちらも同じ様な呼吸になっていくので、どんどん集中して聴けました。

で、ここでなんでやねんって感じではあるけど、すげーなと思うロッシーニです。同じ歌詞で明るくも暗くも表現できる音楽を作ってるわけですよ。ロッシーニの音楽の魅力ってそういうとこにあったりしますよね。場所や状況を限定して作曲してないんだなと思え。演奏次第でその音楽の方が歌詞に意味を付与していくというか。それによって歌詞だけ読むとその音楽はどうなのと思うものでも違和感無くなるという。

石田 滉さんの歌曲演奏を聴きながら改めて感じました。


6曲目。

『老いの過ち』第5巻より “ああ、愛しのグリーンピース!”(ピアノソロ)。

こちらは、最近リサイタル行くと結構聴くことがあるのですが、この曲ってこんなタイトルだったんだ(笑)「ロマンティックなひき肉」を思い出した。これは知ってたけど、今回のピアノ曲がそれ系だとは知らずでした。聴く度に耳に残る旋律。大人しく静かなんだけど、すごく主張してくる感じがとても良かった。うん、グリンピースってことかねそれが。


7曲目。

『ヴェネツィアの競艇』より

Ⅰ. 競艇前のアンゾレータ

Ⅱ. 競艇中のアンゾレータ

Ⅲ. 競艇後のアンゾレータ

の3曲。

これらも素晴らしかったなぁ!!どれも目の前に競艇が見えましたよわたくしは。頑張れと応援する1曲目、ハラハラしながら競艇を見守る2、よくやったねキスよという3。ほんっとに、どれも良かった。ピアノとの呼応もぴったりで、とても聴き甲斐がありました。ちょー楽しめた!!一挙手一投足思い出せそうなくらい全身でメンソレータム…じゃなかった。アンゾレータを演じてらしたのでほんとにめちゃくちゃ楽しめた。降りてたね。アンゾレータが。


とこんな感じで1部が終了。私は今年藝大に入った後輩を誘って聴きに行ったのですが、「すごい!!」とお互い興奮でハイテンション。会場はロッシーニ関係の関係者だらけ。歌手やらピアニストやらもたくさん。そんな中ヌッチ仲間の某音楽プロデューサーと久々にお会いしてまたヌッチでなんて話をして休憩終了。


2部1曲目。

オペラ『オテッロ』より“柳の歌〜祈り”

これはもう有名なやーつですね。ヴェルディの方が有名かもしれませんが、ロッシーニ好きとしてはこちらもとても親近感あるやーつ。前奏のピアノから気持ち持っていかれました。うまい。デズデモナの感情が手にとって分かるよう。思い返しても泣ける。繰り返し部分の細かい音符をさらっと入れてくる辺りも素敵。

滉さんが、途中で「オテロ!?」と上手を振り向いたところなんかリアルで息を呑みました。柳の歌から祈の方に移ると、天使のよう。この曲聴いた中で過去1良かったかもしれない。デズデモナにしか見えなかったもん。どんどん曲が進むにつれてデズデモナ。石田キラズモナです(なんもおもんないやんけ)

それと、ピアノがずっと寄り添って最後を看取るように(まだ全然生きてるけど)共に天国に行くようなそんな寄り添うようなピアノがまた良かった。


2曲目。

オペラ『湖上の美人』より“胸の思いは満ち溢れ”

こちらも、もうこれもね、もうそりゃやばかったというか、うなっちゃったよね。うまい!!マジで。ロッシーニの中というか、メゾの曲でも屈指の名曲だと思うし、ソプラノ含めて多くの人が歌ってきたこちらですが、過去の偉人たちにも負けないくらいの素晴らしさでした。こんなに転がして、こんなに上も出して、若いのにしっかりコントロールされてて、何よりロッシーニ愛というか、歌ってて楽しいという喜びが役と相まってぐわーっと音の波となって押し寄せてきた、そんな感じでしたね。聴いてて燃えて汗ばんでくるし、うまいーって舌を巻いたよ。巻きすぎて若干浮いた(いや、舌コプターみたいになっとんのか)。それと、こちらもピアノが大活躍。オケと合唱が見えたよ。もうね、うまい。ほんとそれだけしか言えねぇや。オケだったもん。ピアノじゃない。テンポも速めで最高でした。


3曲目。

オペラ『エルミオーネ』より序曲(ピアノソロ)

また言いますよ?オケだわ(笑)てか、これこそオケだよ完全に。うますぎ。どんだけの色を見せてくれるのよ。これならピアノ伴奏でもオケと同じ、いや、それ以上の幸福感味わえちゃうよ。林さんのピアノ伴奏版のロッシーニ序曲集とか販売してほしくなったわ。


4曲目。

オペラ『エルミオーネ』より“彼女が勝利するなんて!…”

めちゃくちゃ最高でした。誰が最高かって?おいおい笑わせるんじゃないよ。そらあんたもちろん、石田 キキララさんですよ(サンリオじゃねんだよ。滉さんな)

いや〜白眉ですな今日の。これは。オペラのワンシーンとしてのアリアというか、これだけでモノオペラとして成り立つんじゃないかというくらいの歌唱でした。曲の中でいろんな感情、表情をこれでもかと1人で舞台狭しと表現の中で見せてくれました。アクートにアジリタに技巧的にも素晴らしかったのですが、そこだけに頼らないで、言葉の意味を全身全霊で表現していることが実に素晴らしかった。若々しい今の声の彼女だから出来る表現のようなものも感じ取れて、その刹那的かもしれない歌唱はあまりにも贅沢な時間でした。そして、それと同時にどんどん進化していくだろう彼女から目が離せなくなってしまうなとそんな思いでした。やばい。応援したい人がどんどん増えてしまう(笑)こちらもピアノもほんと最高でしたわ。序曲の旋律が入ってくるとことかめちゃめちゃ欲しい感じだった。


アンコール

オペラ 『セビリアの理髪師』より”今の歌声は“

予想が的中。広島でもロジーナやるし、最後は明るくみたいな感じでやるかもよって幕間に話をしてたらそのままの感じでアンコールがウナボーチェ。

あんなに激しい曲をやって、喉大丈夫かなと思ったけど、なんのその。エルミオーネからのロジーナは全然違うのになんのその。流れるようなアジリタとおきゃんというよりはチャーミングで品のあるロジーナを楽しそうに歌ってくれました。ありがてぇ。お疲れだろうところ。


そんなわけで、とっても素敵なリサイタルに出会えて本当に心が温まりました。夏なんで温まるのは心のみでね。ふふ。

滉さんに林さん、そして関係者の皆様ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。これから夏本番です。夏バテ、熱中症におきをつけください。ありがとうございました!!








でね、ここからはマジでどうでもいいと思う内容ね。終わってから後輩の学生メゾ・ソプラノと「マジで滉さん良かったよな!!」と盛り上がってたら、新宿発の高速バス間に合わなくなって、いつもの流れだと渋谷にいくからそれに間に合わせようと錦糸町から渋谷マークタワーまで高速を使った上でタクシー移動したのよね。そしたら約1万もかかったのよ。で、渋谷でバス待ってたら、なんと、逃したバスが渋谷寄らないことが判明したのね。新幹線もないし困ったと思ってたら最終の夜行があったから、それに乗ることにしたのよ。めちゃめちゃ散財して散々な最後になってしまいました。ちゃんちゃん。


でもね、いいの。

素晴らしいリサイタルに出会えたから。

私は大満足。後輩もあれが聴けたからね。

うむうむ。

さ、もう3:50だ。

7:30には起きて仕事だぞ。

うふふふ〜。

先月から今月に掛けて日本はお祭りのシーズンに入ったみたいです。なんの祭なのかって?そりゃ奥さん決まってるわよ。ロッシーニ祭ですわ。おほほほ。

新国立劇場では、先日『セビリアの理髪師』が熱狂の嵐で惜しまれて閉幕となったばかりで、かく言う私も現地で2回鑑賞してきました。キャストが、ローレンス・ブラウンリー、脇園 彩、ロベルト・デ・カンディア、ジューリオ・マストロトータロ、妻屋 秀和、加納 悦子という面々でマエストロがコッラド・ロヴァーリスでオケが東フィルという超豪華版。海外の有名な歌劇場と比較しても決して劣ることのない布陣での上演でした。

その時の感想にご興味のある方は以下リンクからどうぞ。 👇

 

 

 

 

そういうわけで、こんな豪華なキャストで聴けて最高だったわけですが、今日も今日とてすんばらしい公演に出会えました。場所はミューザ川崎シンフォニーホール。川崎定期演奏会 第100回と銘打った今公演でしたが、内容は前半が、モーツアルト作曲の『交響曲第25番ト短調K.183』。後半がロッシーニ作曲の『スターバト・マーテル』でした。はいきたロッシーニ。まぁだから行ったわけよ(笑)

ソリストは、実に豪華な出演者を集めてきてくれました。ソプラノがハスミック・トロシャン、メゾソプラノがダニエラ・バルッチェローナ、テノールがマキシム・ミロノフ、バスがマルコ・ミミカ。そしてマエストロが、ロッシーニの申し子ミケーレ・マリオッティでオケが東京交響楽団。どうだ明るくなったろう、と明治の船成金ならそうどや顔で言ってきそうなこれまた豪華な面々。ね?祭でしょ?しかも、この演目をこのソリストでしかもマエストロがマリオッティってのが良いよね。ロッシーニのスペシャリストではないけど、豪華さ先行で知名度のある人を呼んできました。とりあえず有名人だし満足だろ?ということが全くなく、ロッシーニの本拠地ペーザロで毎年開催されるロッシーニ・オペラ・フェスティバルで上演されそうな面々なのがほんと最高でした。

 

私は今回4階席の上の方で聴いたのですが、ミューザ川崎良い音聴かせてくれますな。楽器

の音がはっきりくっきりと聴こえてきます。もちろんそれだけではボコボコなハーモニーになってしまうわけですが、マリオッティの明瞭な指示の元抑制が取れていました。比較的速めなテンポ感で進んで行き、宗教曲だけどどこかオペラっぽさが感じられるような部分もあって、10曲それぞれを飽きることなく聴けました。合唱が入ってくるところはオケも含めて世俗的ではない謐さやまたその逆を感じたりして、固唾を飲んで聴き入りました。なんかゾクゾクしますね。なんだろう、こう作られた音楽ではなくて、有史以前からあった音楽に触れているような感じというか。仏教だったら成仏しそうなというか。普段あまり聴かないのでこれを機に聴いてみよう。

 

ソリストは既述してありますが、以下の面々。

 

ソプラノ:ハスミック・トロシャン

メゾソプラノ:ダニエラ・バルッチェローナ

テノール:マキシム・ミロノフ

バス:マルコ・ミミカ

 

ロッシーニのガラやってほしいわ(笑)

全員素晴らしくて、多分生で聴いたことがなかったのはマルコ・ミミカ。若いころのダルカンジェロを彷彿させる響きの明るい美声のバスでした。4曲目のアリアは圧巻。ロッシーニやるにはぴったりの声。ブッファでも良いけど他のセリアの作品で聴いてみたいなと思いました。

それからだいだいだいだい好きなマキシム・ミロノフは流石の一言。アリアでのアクートがカッチリ決まってたけど、ただ鳴らすのではなくて少し丸みを帯びさせる感じが実に素晴らしい。私はめっさデブーチェですが、彼は常にMessa di voce。優しく柔らかい。ふかふかのお布団のような心地よい声に癒さされました。また日本でリサイタルやってほしいなぁ。

ダニエラ・バルッチェローナは代役でしたが、個人手には「イヤッホー!!」という歓喜。むしろコンサートの格が上がっちゃいましたよね。曲的にもそんなに目立つところがないのですが、3曲目の2重唱、7曲目のカヴァティーナ共にエレガントで品があって素敵でした。

ハスミック・トロシャンは新国のノリーナ以来で聴いたのはこれで2回目。コロラトゥーラ的なイメージだったのですが、中音域もしっかり鳴っていて違和感なく聴けました。やはり8曲目のアリアは素晴らしくて、合唱も相まってボルテージがぐわ~っと上がりました。素晴らしかった。

 

今回、都響コーラスも素晴らしかった。特に女性。アマチュアなんだろうなという感じは正直最初しましたが、尻上がりに熱量も増えていった感じで、めちゃくちゃ良かったです。最後の方はとてもアマチュアという感じはしなかった。

 

なんか、仕事が忙しくてこれ書き始めてから6日後に完成ましたよ。

都響さんそしてそれに関係するみなさまお疲れさまでした。また素敵な音楽聴かせてください。ありがとうございました。


ミューザ川崎シンフォニーホール外観。

エスカレーター前。

お時間。

今日のお席。

カーテンコールは撮影オッケー。








只今6月5日(木)の0時を回ったところでございますが、今書かなかったらもう書きそうにないので無理やりでも書くぞと筆を走らせ始めました。

3日の6時台に車で静岡を出て、14時から新宿は新国立劇場にてオペラを楽しみ、帰宅したのが22時くらい。その日に感想を書こうとしたけどPCの前で座りながら寝てしまい、翌日は朝から仕事。もう昨日になりますが23時頃に帰ってきて、やっとこさよ落ち着いたところ。正直瞼が落ちまくりまクリスティ状態ですが、自分としてもこの気持ちを残したいので頑張るぞ、おーってなことで書いております。ちなみに文章は公開しているので誰でも見れる手前すこーしは読み物を意識して書いていますが、基本的には自分が後で振り返ったりしてニヤニヤするだけの為に書いてますのでそこんとこヨロシク!!

 

地方から遠征するってのもねなかなか大変なんです。こう見えても疲れまんねんです(懐かしすぎるCMや)。はっきり言って情熱がなけりゃとても出来る所業じゃない。体力と気力、それからお金も消費しまくり。でも、やっぱり聴きたくなっちゃうのよね、生で。オペラはやはり生。もうそれ1択。会場のワクワクした雰囲気。やり直しの効かない緊張感や演者がノッてきた時のライブ感。そしてお客さんの反応が良いとどんどん良くなる感じ。「頼む、今日は喉の調子いい日であってくれ!!」と願いながら固唾を飲んで第1声を聴く瞬間。オケのテンポ感が良くて気持ちが高揚。圧巻の舞台装置に華やかな衣装。舞台美術の美しさに唸る...と、いうことで要はもう超楽しいってこと。僕はね、多くの特に若い世代にオペラを聴いてもらいたいなと思っています。何故かと言われれば、楽しいからですよ。それ以外ない。単純な話。僕は高校の部活でオペラを知って、そこからドはまりしたわけですが、こんなに素晴らしいものは他にはないし、であればそれを多くの人にも知ってほしいなという思いが止みません。オペラは麻薬と誰かが言っていたけれど、私はそうなると薬中なんだろうなと思う。

お前のことなんてどうでもいいんだよこの豚野郎って思われそうなので感想へ。

 

私は5月28日(水)の回も聴きに行っていますが、その時も素晴らしい公演だと思いましたが、若干「あれ~?」と思うところは正直ありました。特に思ったのは、ブラウンリーがイメージよりも大人しいのと声がかなりこもり気味だった、妻屋さんがアリアであまり聞こえなかったという感じ。さらにお客さんのリアクションがかなり薄くて、バルトロアリア前にぶち込んできた日本語「イチ、二、サン、シ」(紙の数を数えたところ)までほとんどリアクションが無くて、なんとなくドヨンとした雰囲気が流れていたような気がしています。3日はそういうことは全くなくて、ブラウンリーに関してはイメージ通りで、「これだよなブランリーは!!」と心底思えました。妻屋さんも同様にくっきり明瞭に聴こえてきました。そして、この日はお客さんのリアクションが最高でした。ドッカンドッカンウケる(自分を含めて)。それによって明らかに演者がノリノリになっていき、尻上がりにどんどん良くなりました。相乗効果を目の当たりにした感じ。やっぱり客席からのパワーって大事だよなぁ。文句なしに本当に素晴らしい公演となりました。素晴らしいというか普通に最高でした。こんなに良いセビリアは今後聴くことが出来るのだろうか。ガチで良かった。なんだろう、すべてがハマってましたね。オケ、歌、演出それぞれが。思い出すだけでも胸が高鳴ります。ぐふふ。

 

ブラウンリーは最初のアリア“Ecco ridente in cielo”から全然違う。覇気が違うし、声が若返ったかのように艶々でした。この日は下げずに最後もしっかり上に上げてアクート決めてました。他にも例えば1幕フィナーレの冒頭、酔ったふりをしてバルトロ家に入ってくるところで「えええい」とめっちゃ高い音出してたり、2幕フィナーレで各々が歌っていくところのアルマヴィーヴァ伯爵のパートの最後も同様に上げたのが印象的でした。アジリタも粒ぞろいで明るく綺麗で軽やか。これこれ!!の嵐。2幕の最後の3重唱でも輝かしいアクートを出していましたし、最後の大アリア“Cessa di più resistere”では早めのテンポの中、流れるように無理なく歌いつつも言葉が疎かになっておらず、ヴァリエーションも加わって楽しさ倍増。つまり嬉しさも倍増。百均はダイソー。原田は泰三。そんな感じでもう最高(シャラーーップ)

ほんとめちゃめちゃ良かった。28日も決して悪かったけではないけど、なんとなく守りにいっていた感じがしたんだけど、今回それは全くなかったのでロッシーニを存分に楽しめるような歌唱が存分に聴けたので良かったです。この日はそういえば天気が悪くて雨だったから湿度も高くてそれが喉に影響して功を奏していたとかもあるのかな。どうなんだろまた、コメディ感満載の立ち回りが最高で爆笑しまくりの捧腹絶倒でした。2幕でバルトロに「もっと大きい声で言え!」と言われた後の「イル・コンテ・アルマヴィーヴァ、イルコンテエエエエエエエエエエエ」と伸ばしておいてからの日本語で「スミマセン」が場面的にも合致してて超絶オモローでした。ちなみにそのあとのバルトロのこれまた日本簿での「ダイジョーブ?」は欲しがりすぎでしたね(笑)そこはブラウンリーだけの方が良かった(笑いに厳しい)。

あとは、アロンゾのオネエ感は声も含めてめちゃめちゃそれっぽかったし、やはり特に2幕以降の彼はアメリカ人特有の芸達者ぶりとでも言うのでしょうか。それが遺憾なく発揮されていて、実にうまい。ロジーナの2幕アリア直後の”Bella  voce,Bravissima”のとこでの拍手をしまくる感じはやっぱりエディ・マーフィなんだよな。前回より長めに拍手してました(笑)長いといえば、1幕のお金の2重唱の中間部でフィガロと別れかけた部分での謎のアクート伸ばし。前回より音符増えていたような。そんなこんなでブラウンリーへの期待感はしっかりと満たされて還元されました。やはり彼はこうでなくっちゃ。

 

デ・カンディアも前回より良かったです。まず、何でも屋のアリアでは序盤の“Fortunatissimo per verita! Bravo!”は前回下げてましたが今回上に上げてました。声的には前回も素晴らしかったので、そこまで違いは感じませんでしたが、ノリというかお客さんのリアクションがとても良かったので、ブラウンリーも同様ですが、持ち前のサービス精神が爆発という感じで、どのシーンもこれでもかと演じてくれて楽しめました。また、それにより声もより明るく響いていたようにも感じました。流れるように、喋るように語るレチタティーヴォは誰にも敵わないレベル。さすがイタリア人だなという思い。それから「H」を入れないんですよね。「それじゃ私ね、私を騙したりしない」の2重唱ではたくさん転がるところがあるわけですが、一切「H」を入れてこないし、速度も落ちないあたりが凄すぎ。僕は無理です(笑)1幕の「お金の2重唱」での早口とか極上でしたよ。まぁまぁテンポ早めなのに一切噛まない。凄いマジで。また、マニアックですが、1幕のフィナーレで、石像のように動かなくなったバルトロを見て言う“Guaruda, Don Bartolo”の言い回しがとても好きでした。ほんとこの人好きだわ~。ロッシーニ歌いのバリトンで一番好き。技術的にも安定していてしっかりしてるけど、声に温かみがあるので雰囲気的にも良い感じなんですよね。

 

脇園さんに関しては前回も非常に良かったので特筆して違いがどうこうみたいなことはありませんが、今回も素晴らしい歌唱でした。“Una voce poco fa”も“Contro un cor che accende amore”も完璧な歌唱。後者では今回も夜女のアリアが一節飛び出しました(笑)いや~素晴らしいの一言。逆言えば素晴らしいしか言えない。脇園さんはもう完全にロジーナと一体化していて、技術も伴っているのでそりゃ最高ですよね。しかもあの演出のロジーナのイメージに所作とか含めてぴったりなんですよね。脇園彩がロジーナなのか、ロジーナが脇園彩なのか。そうそう、「それじゃ私ね?」の2重唱は終盤ロジーナめちゃ転がるんですけど、超絶自然に流れるように歌っているのを聴いて感動しました。凄過ぎて笑ってしまったくらい。笑ったといえば、2幕冒頭の“Pace e gioia”の2重唱での後半、ロジーナが部屋で踊ったりシャドーボクシングしたりするのが音楽とマッチしていてわかってるんだけど今回も笑ってしまいました(笑)

演出的な部分では新しい発見もありました。嵐の音楽の時に3階から恐らく雨風が降り注ぐ中、窓も閉めずずっと外を見ているロジーナが描かれていたんですね。悲しみと怒りが入り混じったオーラが3階からゴォォォォと舞台に降り注がれていました。怖かった。実際そのあと梯子を使ってやってきた伯爵に力強く“Vendetta”と言い放つ姿を見て、そして聴いたのですが、それを考えると、ロジーナの感情がメタファ的に嵐として表現されているようにも感じました。ちなみに、嵐の音楽の直前、回り舞台が時計回りで回転していく時にロジーナが見えなくなる直前くらいで思わず泣く演技をしていたのが、人間性を良く表していて良かった。脇園さんはもうレジェンドですわ。終演後お会いした時も、楽譜にサインしてもらおうかななんて思って楽譜を出してアリアのとこに書いてもらおうかと思ってそれを言ったら、「それじゃ楽譜見えなくなっちゃう」と言って、真剣にどこに書こうか

悩んでくださったのですが、心遣いの鬼やな。しかもめっちゃ自然なんですよね。良くできた方ですよほんと。素敵よね。DIVAだけど尊大な様子をこれぽっちも見せない。好きやわぁ。

 

マストロトータロは前回もマジで良かったんですけど、今回はさらにエンジン全開という感じでより良かったように感じました。勢いが凄かった。やっぱ千秋楽だから気合も入るし、守りに入らなくていいってのもみなさんあるんでしょうね。どことなく。アリアの高速早口は今回もばっちり。流れるように歌いつつも言葉は明瞭で、粒だっていて品があると。このアリア過去1早いテンポで聴けたような気がしてますが完璧だった。こういうバリトンはなかなか日本にいなんですよね。イタリアのブッフォバッソ(バリトン)の系譜という感じ。またすぐに日本に来てほしいなぁ。ラブです。

 

妻屋さんは、既述しましたが28日よりも言葉が明瞭で声の張りが良くて響いていたと思います。28日は上に屋根がある感じの席だったのも含め、聞こえが悪かったのは自分の座席の関係もあるかもしれませんが、良くなっていたと思います。アリアもめちゃ良かった。美声なんですよね。かっこいいというか。キャラ的にはギャグなのに声はかっこいいという。そして1幕フィナーレで横1列になった時にに密かにめちゃ目立ってました。あそこで主張してくるあたり素晴らしい。なかなかできないと思う。声が消えちゃうもん普通。また、2幕の”Buona sera”の5重唱では表情たっぷりに声でバジリオの面白さを表現していて聴いていているこちらもニンマリ。舞台に初めて登場して“Buon giorno”というところから、何度かそれを言っているのですが、なかなかいい味出しててキャラが立って良いななんて。

 

加納さんは前回同様といったところ。

オケも同様。

今ね、もう5時になるところなんだ。でね、仕事行くから7時半には起きなきゃなんだ。うん、だからもう端折っちゃおうって魂胆とかそういうことじゃないからね。うふふ。

 

そんなわけで、まっじで良い公演でした。この演出は結構な回数見てますけど、全体的なバランスとか、逆に個々人の実力とか、オケの軽妙さであるとか、お客さんの熱狂ぶりとか、総合的に見ても今回特に5月3日が僕が体験した中では一番良かったように思います。これだけの公演を日本の新国でやれることの素晴らしさ。感謝しかないです。ありがとう新国立劇場。そして東フィルのみなさま。そしてソリスト、関係者、ロッシーニ。みんなに感謝です。

それではこのへんで。最後にいつものご挨拶。

ラリルレ、ロッシーーーニ!!

ばいばーい!!!(初めて聞いたわ。なんやねんそれは)










今日は待ちに待った、新国立劇場の『セビリアの理髪師』に行ってまいりました。

初日がとても好評だったようで、期待感十分で現地入りしました。


今回の、いや、今回も演出はヨーゼフ・E・ケップリンガー。3階建てのバルトロ家の中でところ狭しと登場人物達が動き回るあの演出です。こちらは2005年の初演、2006年の再演、2012年の再々演、2016年の再々々演、2020年の再々々々演を経ての再々々々々演の2025年。どうだ。漢字の羅列で脳がゲシュタルト的崩壊を起こしているだろう(なんのこっちゃ!)


ちなみに今回のチラシはこんな感じでした。

表面

裏面

見てよこのソリストの面々。

やばない?

チラシ見てるだけでごはん大盛り何杯かいけそう。

ロッシーニが好きな人なら触手が嫌でも動くやつです。

しかも、マエストロがコッラッド・ロヴァーリスということで、絶対オケも良いと確信していました。演奏するのは東フィルということで、2019年の『ドン・バスクワーレ』もこのコンビでめちゃくちや良かったんですよ。あの時のような颯爽とした軽妙で軽く溌剌としたエネルギーみたいなものが聴けるのではないかと期待しかありませんでした。


今回の席はここ


一応アンダー39でS席のお席。あと数カ月で40になっちゃうんで、もうこれも使えなくなるのかと思うとかなびい。てか40かぁ。なんだろうこの重み(笑)晴れて身も心も重くなります的な。そんなことは良いとして、今日は学生がめちゃめちゃいました。ただ連れてこられた感じでもなく、開始前とか幕間の様子を何となく見ていたのですが、みんな楽しんでオペラを観ていたようでした。良いことやなぁ。東京の子達だろうけど、いいなぁ。こういう機会があるだけでも全然違うよなぁ。


今回はまず、マエストロの感想から。

ベルカンティッシモ!!やっぱり思った通りの感じ。

颯爽としていて小気味よい。また、オケを鳴らしすぎないから歌がよく聴こえる。

そして全体的に速い!!もしかすると過去生で聴いた『セビリアの理髪師』で1番速いんじゃないかな。歌手の皆様がロッシーニのスペシャリストだから対応出来るんだろうなと思うと同時に、その凄さを感じました。ジャンジャンガシャガシャなっちゃいそうな所も抑制が取れていて、軽妙さが常に聴いてとれる音楽はまさにロッシーニという感じでした。特にブッファにはそういう要素が不可欠ですよね。ソリストが良くてもマエストロがダメだと公演自体は結構微妙になっちゃうから(その逆は良くなる可能性もある)、今回本当素晴らしい選択です新国立劇場さん!!


さ、ソリストはどうだったでしょう。

まずは、ロジーナ役の我らが脇園彩さん。良かった。良くないわけないじゃん。良かったさ!!

良かった?いや、素晴らしかった!!!!

Bravissimaからの、米良美一…じゃなくて、Meravigliosaでした(張り詰めたー弓のー…てメラだけじゃねえか)

彼女の歌うロジーナは何度か聴いていて、その何れも素晴らしくて感動しましたが、今回は更に磨きがかかってより表現の魅力に溢れていました。前半は恋する女子感って感じでずっとキラキラしてたし、後半の裏切られたことを知った時のロジーナはブッファの怒りではないくらいの表現で怒りを顕にしていてゾクッとしました。一挙手一投足ロジーナになってました。声は多少重くなったかなという印象は受けましたが、その代わり歌い慣れているのもあるのでしょう、これまで技巧的な部分は集中して狙って歌っていたような感じがありましたが、そういう素振りが全く無く、無理なくスッとその部分に入っていて、しかも流れるような歌唱。おおこれは凄いと思いました。角が取れて丸くなった感じ。完全に一体化している。「今の歌声は」「稽古のアリア」の両方共それを感じました。どっちだったかな。「今の歌声は」かな。前に聴いた時より少し違うヴァリエーションが入ってたような。どこって言えないけど。日々進化してんだなぁと。ステージマナーも素晴らしかったです。プロンプターにもしっかり感謝してました。これからも脇園彩というオペラ歌手を推していこうと思えましたね。うむうむ。


次は、フィガロ役のロベルト・デ・カンディア。最高。それだけです。大好き。ずっとフィガロ歌い続けてほしい。確か最近どこかでバルトロやってた気がするけど、フィガロでお願いしますという感じ。「私は街の何でも屋」の余裕な安定感。Bravoでラこそ出さなかったけど、声めちゃめちゃ若々しくて、艷やか。こういう感じのロッシーニのバリトンが本当に好き。しかもやっぱりイタリア人なのでレチタティーヴォが良い。ホンモノだなと思う。なんならレチタティーヴォと同じ感じで歌ってるのも凄い。喋るように歌っていくスタイル。こういう方がいてくれるからロッシーニが楽しいって思えるようになるんだよなと心底思いましたね。ちなみに、初めてロベルトを知ったのはDECCAから出てるバルトリが参加してる『イタリアのトルコ人』の詩人でした。あの録音と全然変わらないんだよなぁ。凄いマジで。「お金の二重唱」や「それじゃ私ね」の二重唱は普通に文句無しに良かったし、「ボーナ・セーラ」での機転の利いた立ち回りの自然さなんかも観ていて納得したし、1幕フィナーレでは、「バルトロ先生を見てくださいよ」って言ってる所の歌い方なんかスッキリしてて良かったし、オケもそのあたりからのテンポアップ感が得も言えない高揚感に繋がり楽しめました。フィナーレかなり早口ですが、しっかりと聴こえてきてズレも無かったと思うので、さすがだなと思いました。とにかく好きなんで、千秋楽にもわたくしセビリア行くから「何でも屋」BISしたろかな(笑)無理かー(笑)


お次は、アルマヴィーヴァ伯爵役のローレンス・ブラウンリーですが、彼にしてはなんだろうなぁ、うーん、声ではパッとしなかった感じ。それは悪かったとかじゃなくて、もっと何かくるものがあるんじゃないかなと無い物ねだりをずっとしてしまった気がしています。普通に良かったのに、まだなんかやってくれそうみたいの謎の期待をしてしまったというか。他のキャストがみんなロッシーニのスペシャリストで全体的な上演の質が上がっていたからそう感じてしまったのかもしれません。あと、シカゴ・リリック・オペラで彼がアルマヴィーヴァ伯爵歌ってる音源があって、それを聴いてから会場に行ったので、耳がブラウンリーに慣れすぎていたことがマイナスに作用したかもしれません。だからと言って悪かったわけではほんとにないのでそこは勘違いしないでくださいませ。ロッシーニ歌いの歌手の安定したロッシーニが聴けた感じなのでとても良かったです。お金の二重唱で「おっといけないお前さんと会うにはどこに行けば?」と聞く前のところを謎に伸ばしまくっていたところは僕は密かに笑ってましたが、アメリカ繋がりでロックウェル・ブレイクの『成り行き泥棒』かなんて思ったりしましたね。また、同重唱の後半の音楽は特に最高でした。オケと2人がガッツリ合って、流れるように最後までもっていったのは圧巻でした。あとは、2幕のアロンソに化けてやってきてからのコミカルさなんかはサービス精神の塊という感じで面白かったです。バルトロにキスしてから「オエーー」ってえずいていたところは爆笑しました。また、ロジーナの歌う稽古のアリアの後に拍手しまくっていたところは、エディー・マーフィーを彷彿しました。デトロイトから来たアクセル・フォーリーみたいだった。もっというと、『ビバリーヒルズ・コップ3』って感じ(分かる人のみ分かってくだされ)。最後の大アリアはブラウンリーが歌うと難しそうに聴こえないというか、安定して普通に聴けてしまった。それはそれで凄いことです。大丈夫かな?歌えるかな?喉続くかな?とか一切思わさせず、梅酒くらいさらりと歌ってくれました。やっぱ稀代のロッシーニテノールだなと感じた次第です。


そして、バルトロ役のジューリオ・マストロトータロですが、私今回お初でしたがめちゃめちゃ良かったです。「博士と呼ぶこのわしは」のアリアは過去1速いテンポのものを聴いたようや気がしてますが、細かい音符もマシンガンのように連射していて、粒もそろっていて綺麗。細かい音符凄く良い。伸びやかに歌うところはとてもエレガントで実に品がある。ロッシーニのブッファやってくれてありがとうってな感じ。更にロッシーニのブッファって所作が結構大事だったりするんだけど、こうあってほしいという所作をしてくれて、イタリア人感が半端ない。やっぱなんかあるんすよ。イタリア感みたいなものが。活字化できないけども。特に前半は会場の雰囲気が硬くて、あまりリアクションがなかったのですが、彼が登場してきてから少しずつリアクションが生まれてきました。分かりやすいとこだと、アリア前、ロジーナに紙の枚数を言うところで「イチ、ニ、サン、シ、ゴ」って日本語になったところとか。後半の小アリアの後にフィガロに抱きついた所もかなりウケてました。ちなみに今回は電話鳴った所で「もしもーし」はなくて、「マンマ…マンマ」っていうマザコン感を出していました(笑)その前にドイツ語も言ってたような。めちゃめちゃワールドワイドに活躍するバルトロ(笑)そんなわけで、ゼッダの『アルジェのイタリア女』でハリーをやってた頃から聴きたかった彼をバルトロでこうして聴けて、しかも素晴らしかってので、注目し続けて良かったなと思いました。また他の役でもこの役でも聴いてみたいです。


バジリオ役が妻屋秀和さんは今日はいつもの妻屋さんよりはなんだろう。少しばかり声が届いてこなかった。私の席のせいかもしれないのでもっと良い席で聴きたかった!!でも妻屋さん何であんなに転がるんだろう。場面によってはハイバリかなと思うくらい転がるけど、しょつこう熱だと分かったらめちゃ下に下げるし(笑)日本を代表するバスですね。ほんと。

ベルタ役の加納悦子さんはアリアが良かったです。個人的にはベルタはソプラノにやってほしいけど、しっかり歌える人が配置されてるのでそれはそれこれはこれで。


終演後は久しぶりに出待ちを敢行。みなさん神対応で嬉しすぎでした。ミーハーぶりが炸裂。変なマニアみたいないつもいる人が少なかったので、サラサラっとサインやお写真が撮れました。お前も変なマニアだろと言われたら何も言えません…。そうです、わたすが変なマニアさんです。変なマニアさんだから変なマニアさん…(ここらでやめとくか)


そんなわけで関係する全ての方々お疲れ様でした。

また千秋楽も行きます。


















すんごかった!!

 

ほんとすんごかったわカマレナ!!!

 

ガチで良かった!!!!

 

もう凄すぎて、カマレナに心鷲掴みされた。

 

終わった後フラフラした。

 

なんだろね、琴線に触れたとか言うけどそんなもんじゃなくて、琴線をがぶりとカマレタ、そんな感じ。

 

うおおおおおおおすげえええええええ…みたいな。

 

 

 

遡ることだいぶ前。

 

忘れもしないチケット発売日。

 

なんとこの日は浜離宮朝日ホールでやったベルカントシリーズ第2弾のチケット発売日でもあったんですね。

 

なので、後輩とスタンバって、スマホ並べて、チケット販売開始と同時にうりゃうりゃうりゃーっと連打ですよ。お前は北斗の拳か高橋名人かというね。

 

そして浜離宮は惜しくも最前列が取れなかったけどこちらのカマレナは最前列を確保。しかもほぼセンター。で、オケ付きなので恐らくほんとのど真ん中はマエストロが

 

来るだろうと予想して抑えた所がビンゴ。カマレナの真ん前でした。いえーい。

 

オペラは後ろの方の席を取るけど、リサイタルは近くがいいんだよね。これは趣味の話

 

ちなみにこんな感じ。右隣は私の連れが座りました。

 

 

プログラムの曲はどれも大好物なものばかり。

コロ助ならコロッケ、ドラえもんならどら焼き、私にはこれみたいなそれくらい好きなものばかり。

パンフレットがこちら。

 

 

ちょっと写真が見えづらいですが、まぁわかりますよね。ご容赦ください。

 

1曲目は、エロルド:歌劇《ザンパ》より序曲でした。つまりオーケストラの演奏で幕が開いたわけです。今回マエストロが園田隆一郎さんで、オーケストラが東京フィルハーモニー交響楽団という私としてはとてもウェルカムな素敵な組み合わせ。

でね、まぉこの曲がが素晴らしいのなんの。園田さんこの序曲今後も定期的に振ってほしい。だってね、結構ロッシーニだもん(笑)わたしゃね、一瞬戸惑いましたよ。エロルドって世を忍ぶロッシーニの仮の姿?とか思ったり。パンフレットにも「全体にロッシーニの影響が聴きとれる」と記されていて、やっぱそうだよなって。まぁただロッシーニだったらもうちょい流れるような感じには作りそうな感じはあるけれど。

で、やっぱそんなわけでロッシーニと言えば、園田隆一郎なわけで。うまーく東フィルを喜びで満たし、ワクワク感や軽快な統一感でもってまとめてくれていたなという印象でした。この曲好きになりました。

 

さぁいよいよハビエル・カマレナの登場です。

 

まずお洒落さんでした。

藍色と黒のタキシードに蝶ネクタイ。

蝶ネクタイの見える部分が布でなく…何ていうんだろう、硬そうな素材で出来てて、いくら動いても常に首元に動かずに鎮座してました。よくあれで歌えるなと思った。

更に曲を歌い出して分かったのは、指輪に緑の多分エメラルドがドドンとはめ込まれていてそれがとても自然な美しさと品、そしてエレガントさを演出してました。

ちなみに、いつもカツラを好んでいろんな物を着けていたイメージでしたが今回はノーカツラでした。ノーハヤシヤでもノーサンユウテイでもなく(歌さんタスケテ)

 

2曲目は、グノー:歌劇《ロミオとジュリエット》より「あぁ、太陽よ昇れ」でした。いきなりやられました~!!なんという優しく温かみのある声!!一気に虜になり申した。そして直観的に「これぞ本物」という声の凄み。色々聴いてるとその演奏者の格みたいなものが声の中に見えてきますが、間違いないんです、これは格が違うぞと。もう好きになる以外の道がない。そういう意味では僕はヌッチを思い出してしまうのですが、聴いていて声で自分の中の喜びが満ちていくのが分かる。素晴らしかった。そしてオケとの呼応もまた素晴らしい。さすが東フィルっていう思いもある。もいい音出してた。キラキラと静かな輝きが彼と呼応していた。結果間違いなくあの時彼はロメオだった。そう希望に満ちたロメオだった。

 

3曲目は、ドニゼッティ:歌劇《ラ・ファヴォリート》より「王の愛妾?・・・あれほど清らかな天使」でした。ファヴォリータではなく、ファヴォリート、つまりフランス語版。こちらは出だしで「あれ?」という感じがしました。もしかしてそんなに絶好調じゃないのかと。でもね、やっぱプロだよ。やっぱダメだったかってならなかった。並の歌手じゃもう明らかに想像の範囲内でこのリサイタル終わりかって思ってしまうところだけど、全然それがない。中声域で喉に違和感があってもアクートは驚異的な鳴りで会場を魅了。ほんと凄かった。鳴る鳴る。「そこからいけんの?」って思ってもいけるどころじゃなくて、もうその何歩も前を突き進んでいくと言いますか。驚きでしかないわけねこちらは。そして彼の声はなんとも温かみがあってね、フランス語のものもうん、合うなぁと思った。イタリア寄りだけど、技巧的でなく血の通った生きた人間を歌の中で表現している。例えばベルカントの王様フローレスなんかと比べても、そういう部分においてはカマレナの方に分があるのではないだろうか。ただ、個人的にはこの曲はイタリア語版が好き(笑)

 

4曲目は、ロッシーニ:歌劇《セヴィリアの理髪師》より序曲。今回、席が舞台の目の前で、過去にオーケストラをあんなに近くで聴くことはあまりなかったので新鮮でした。弦1本にしてみても、弾いた時の音の広がりや響く位置なんかの聴こえ方が違い、それぞれの楽器の出す音の輪郭がはっきりと感じることができました。いい意味で完全に混じりあう前のダイレクトな音を聴けてとても良かったです。オペラを聴く場合歌も含めてある程度まとまったものとして聴く為に基本後方の席に座ることが多いのですが、前でオケを聴くのも悪くないですね。東フィルさんの楽団員さんそれぞれが上手いから良かったのかもしれませんが、いずれにしても僕としては新鮮でした。セヴィリアに関してはそういう意味で非常に楽しかった。この序曲は死ぬほど聴いてるのですが、オケ全体としてではなく、各々の楽団員さんが単体のソリストのように聴くことができました。。演奏自体はロッシーニクレッシェンドを細かく丁寧に演奏されていたので高揚感に浸れてテンションも上がりましたが、最後の方の畳みかけていくあたりがほんのすこーし嚙み合ってない感じもしました。

 

さあ、5曲目です。曲目は、ロッシーニ:歌劇《チェネレントラ》より「必ず彼女を見つけ出す」でした。ロッシーニ大好きで、当然この作品は大大大好きなので、カマレナでラミーロのアリアが聴けるなんて夢のようという気持ちでおりましたし、METの映像も観たことがあったので、めちゃめちゃハードル上がっている状態で聴くことになりました。その結果ですが、そのハードルはカルガモ…ではなく軽々と超えて、「世界のカマレナここに在り」と言わんばかりのすんばらしい歌唱を聴かせてくれました。一言で言うと、「まじすげぇ」とか「やべぇ」って感じ。語彙力失いますわ、あんなん聴かせられたら。曲終わり拍手しながら放心状態でした。「もうなんなんだこの人は~!人なのか神なのかなんなんだ~!!すげええええええええ」って手が腫れるほど拍手しました。歌う前にため息を軽くついて会場が笑って自分も笑うみたいなことがありましたが、恐らくそれは「ふぅ、みんなが期待してるだろう曲がやってきました。でもねこれとっても大変なんですよ」みたいなことかと思いますが、始まってみたらいやいやさっきのフリですやん兄さんみたいな感じですよ。出る出る。声でまくり。いや~ほんとにすごかったなぁ。とにかくアクートが鳴りまくる。で、音色はキラキラと煌びやかでどこまでも伸ばせそう。ゴムゴムのカマレナ状態。いや、カマレナがゴムゴムか。どうでもいいか。

 

やはり本調子ではないからなのか、歌う直前に自信を鼓舞するかのように体を上から下に振り下ろすような素振りがあり、そこから目つきが変わり歌い始めました。

 

序盤の“Si, ritrovarla io giuro, Amor...”のAmorのところでめちゃくちゃニコッと嬉しそうな顔をして(それがそのまま声になっていて)一気にもってかれました。そこからぐわーっとアジリタ+アクート攻め。凄すぎ。中盤の陶酔的な甘いメロディはオケも実に素晴らしかったですが、カマレナの心底ドルチェな表現と相まってうっとり。オペラ界のスピードワゴン。あまーい、です。で、後半にいくわけですが、ここからはお祭り。マリオのスター状態。要は無敵でした。「もう上出ないっしょ」って一瞬でも思った自分をぶん殴りたいと思います。繰り返しは当然のごとくヴァリエーションを入れて、細かい音符がたくさん増えていて楽しかったですし、並の歌手なら相当疲れてくるなと思ってしまうところが、むしろどんどんキラキラと輝いていきました。その歌唱は何の無理もなく若々しい王子の希望に満ちた表現が全身からあふれ出ていました。歌に心を乗せてくる。合唱の部分で床に前足でリズムを取ってこれまた自分を鼓舞するような仕草が僕にはとても好印象。全身全霊で歌って表現しているんですよね。ロッシーニへなのか会場のお客さんへなのか、オケになのか、マエストロに名なのか、多分全てかな、全方向へのリスペクト感がすごいんです。全然手を抜かない。ほんとに全身全霊という言葉がぴったり。感動です。

 

前半最後の6曲目は、ドニゼッティ:歌劇《連隊の娘》より「ああ!友よ!なんと楽しい日!」でした。 ハイC連続9回というのがチラシこれ見よがしに書いてありましたが、まぁ、わざわざそれを前面に出す必要なくね?とは思いましたよね。あと、ついでにチラシにカマレナのことをキングオブハイCって書いてあったけど、それも何なんってなりました。なんか日本って好きよねそういうの。「~様」とか「~王子」とか。そういう類だと思うけど、ちょっと引いちゃう。しかもキングオブハイCってパヴァロッティのパクリみたいになってるしさ。まぁそんなことは誰も気にしないと思うのでこのへんで終いにしますが、この曲も最高でした。

会場の反応では一番沸いたのではないかな。オペラの舞台ではもう歌わないそうですが、今も歌っていておかしくないくらい素晴らしい歌唱でした。綺麗に出ますよそれこそハイCが。ハイC。ランランランーンランランランーン(…クララが立ったじゃねーんだよ)。この曲でも思いましたが、マジで全身全霊なんですよ。マリーのことを考えたら嬉しくって嬉しくってしょうがないっていうのが観ても聴いてもわかるんですね。全然技巧的でない。あったかいのよ。ドニゼッティも喜んでると思う。この曲はクラウスなのかパヴァロッティなのかフローレスなのか。まぁ、フローレス以降でしょうか。たくさんの歌手が歌うようになったと思いますが、歌い手もお客さんもハイCのみに集中しすぎていて、そこのみが一定の評価基準になる傾向にあるような感じがしていますが、カマレナが歌うのを聴いて、決してそうではないんだと再確認出来たような気がしています。オペラの中の1部を切り取って、その部分のトニオの感情を喚起させて臨んでいる。だからこそ初めから終わりまでの心情の変化を余すことなく表現できている。ハイCが何故そこに出るのか、またそこに出るためにそこまでにどういうストーリーを描くのか。そういう部分がしっかりと表現されいて、こちらも高揚感が生まれる。素晴らしい。ほんとに素晴らしい。

 

Bisを再三かけましたがそれは叶わず。まぁそうだよね。正直喉きつそうな感じがあったもの。でもだからといってきつそうだからやめとこっていうのを私ごときが判断してもう一度聴きたいほど素晴らしかったのに言わないというのはむしろ大歌手に対して失礼なんじゃないか。そんなことを思って何度かBisかけましたよ私は。

 

そんなわけでようやく休憩に入りました。

会場には様々なオペラ歌手や評論家、研究者、愛好家...と、この公演の注目度の高さを感じました。何故かオペラ歌手の方から「一緒に写真撮ってもらえますか」と言われたのは衝撃でした(笑)わしゃ何者やねん。

 

後半1曲目は、ヴェルディ:歌劇《運命の力》より序曲 (オケのみ)でスタート。めっちゃ良かった!!コンサートにこの序曲があるとまぁ単純にそれだけで期待感はプラスアルファ高まるよね。イタオペ好きとしては。で、園田さんのヴェルディって聴いたことあったかなと振り返ってみたけど多分無いのね。…こんなに良いなんて!!!!!やっぱ特にイタリア物は強いんだなと。血沸き肉躍った。肉躍って何グラムか痩せた。テンション上がって燃えた。燃えてまた何カロリーか消費した。うん、園田さん、クラッシックダイエットってのを事業としてやっていきません?(少し静かにしてようか)

東フィルのヴェルディは毎回何聴いても良いんだけど、これも良かったなぁ。特に弦と金管がね。煽ってくるのよあたいの心を。心臓掴んであっちゃこっちゃ揺さぶってくる。テンポも丁度良かった。早すぎるとあくせくしてもっとしっかり聴きたいってなるし、遅いと燃えないし。園田さんの運力全曲やるなら絶対行くわ~。

 

2曲目は、ヴェルディ:歌劇《第1回十字軍のロンバルディア人》より「彼女の美しい心に」でした。この曲。今回のリサイタルの中で上位に位置するくらい非常に高い完成度だったように感じました。最近はこの作品の改作『イェルサレム』の中で歌われるフランス語版をよく耳にしますが、個人的にはロンバルディアのイタリア語版が好き。最後の“Dove mortal”と“ non va”のアクートがまぁ綺麗で無理が無い。短い曲ですぐ終わってしまうけど、もっと拍手があっても良かったと思っています。

 

3曲目は、ドニゼッティ:歌劇《ランメルモールのルチア》より「わが祖先の墓よ」でした。この曲実はそんなに興味ないんです。いやん怒らないで。ごめんてぇ。ん~なんでかはあまりわからないけど、感覚的なもの。結構長い割にはあまり変化がないというか。でも、カマレナがそれをぶち壊してくれました。何度も言っていますが、ここでも全身全霊。何ならここで一番感じたかもしれない。前奏入ってからカマレナが周りのオケから感じる物を全身を使って体に染み込ませていくように周囲を眺めていました。そして、歌い出しの静けさから、ルチアへの裏切りを苦悩の表情で歌っていく様、最後はそれが爆発して自分は死ぬと言ってアクートを出すわけですが、見事でした。墓も見えたし、目の前に居るのがカマレナではなくてエドガルドに見えました。こんなに良い曲だったんだって思いました。新国でブラウンリーが歌ってた時はどんなだったっけかな。まぁいいや。いずれにせよ、カマレナはただ高音に強いだけでなく、しっかり作品をリスペクトして表現していくタイプだということは良くわかりました。はっきり言ってファンです(笑)

 

4曲目は、マスカーニ:歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》より間奏曲 (オケのみ)でした。僕はこの曲を聴きながらふと見上げたところにあったパイプオルガンをずっお見ながら聴いていました。カヴァレリアと協会は切っても切れない関係だと思いますが、パイプオルガンを見上げる感じが協会を見上げるようでぴったりだったんですよね。その光景と曲のマッチが最高で感動でした。もちろん前提として東フィルの奏でる音楽があってこそなのですが、ます出だしの最初のバイオリンがなんと優しいことか。そしてそこから全体的に弦の響きが美しくて心が洗われていくようでした。ハープも良かった。ファスティングしてるのにこの日は無視して食べたことを懺悔したい気持ちになりましたよ。

 

さ、5曲目は、マスネ:歌劇《ウェルテル》より「春風よ、なぜ目覚めさせるのか」でした。カマレナ見た目は結構なオジ様ではあるんだけど、声が若々しくてつぶらな瞳、それから全身全霊で歌ってくれるので、聴いててオジ様要素がすべて吹っ飛ぶんです。若きウェルテルが悩んで苦悩にやられてるように見えてくる。すごいよなオペラって。それに応えるカマレナ、ほんと凄いわ。感情が先行しすぎて曲が壊れるということもないのがまたすごい。口ポカーンって開けて祈るように聴いていました。すごくてグーの音も出ませんよ。グノーだけに(アイメー)

 

さぁ、6曲目のプログラム最後は、チレーア:歌劇《アルルの女》より「フェデリーコの嘆き」でした。めっさ良かった。もうね、それしかない。良すぎて、今後この曲聴いても今日より凄いのがあるのか分からないくらい良かった。歌い進めていくに連れて、辛すぎてこの人は死んじゃうんじゃないかとさえ思った。迫真迫るとはこのことかという。

“Fatale vision, mi lascia!”の最後のアクートは今日1やばかった。もうそこだけで涙が出そうなくらい揺さぶられた!!!!!!!!!!!!

“Mi fai tanto male! Ahimè!”の最後の処理の感じも最高だし、何の文句もない。というかどんな声帯してんだと思った。悲しみで己を焼き尽くすような激しさが聴いているこちらにもひしひしではなくて、ガンガン伝わってきて辛かった。そして凄かった。

 

このタイミングだったか、アンコールのあとだったか忘れてしまいましたが、お客さんに深々とお辞儀をしていた時、カマレナが何かをモゴモゴ言っていました。あ、もしかしてリサイタルの成功を神に感謝して祈っていたのではないか。もしくは作曲者に感謝の言葉を述べていたのではないか。目の前だから見れたことですが、そういうところも良いなぁって思ってしまった。ステージマナーも素敵で品がある。

 

アンコールはこちらでした。

 

 

アンコール1曲目は、マリア・グレベール作曲「私の愛しい人」でした。ぐれべーるはメキシコの女性の作曲家ということで、カマレナの同郷。この曲は初めて聴いた曲でしたが、スペイン語のミュージカルナンバーのような感じで、キラキラとしていて素敵な曲でした。プログラム最後の曲とは打って変わって恋をしてウキウキしているような曲。高音がどうこうとかそういう曲ではないですが、甘く若々しいカマレナの声にぴったり。

 

アンコール最後の曲は、パブロ・ソロサバル作曲、サルスエラ『港の酒場女』「そんなことはありえない」でした。その昔(今もかしら?)ドミンゴやカレーラスが良く歌っていましたよね。もうこれも拍手喝采です。素晴らしくて言うことなし。最後にスペインものでしっかりと熱唱して終わりました。正直、この曲はもしかしたらというイメージはありました。あとは女心の歌とかね。でも両方スペイン語のもので己のある意味ではアイデンティティを最後に印象付けて終わった感じは良かったんじゃないかなと思います。両方素晴らしい歌唱でしたしね。

 

ということで、ひとつの結論としては、推しが増えたと、こういうことでございます。

すごかったもん。ほんとに。ベルカント物のテノールの極致みたいな人が聴けたわけで。

このリサイタル聴けなかった人はマジで残念だったなと思うので、もし次の機会があったらぜひおすすめします。

また日本に来てほしいな。切に願っております。

そして、園田さんと東フィルさんもお疲れさまでした。おかげでいいリサイタルになりました。