今日はとても私好みなリサイタルへ足を運んで耳を喜ばせて参りました。
足を運んだ先はすみだトリフォニーホール、耳を喜ばせてくれたのはメゾ・ソプラノの石田 滉さん。
そう、今日は待ちに待った彼女のリサイタルだったんですね。
タイトルは「うたうように えがくように」vol.3オールロッシーニプログラム。ね。大好物なわけよ。ロッシーニだけで作られたプログラムよ。なんてことでしょう。喜び〜。嬉しみ〜。背負投げ〜(今更IKKOさんやめなさい)
チラシはこんな感じ。

ところで、この「うたうように えがくように」ということはどういうことなのでしょう。チラシの裏に答えがありました。
そういうことか。人生のテーマ。座右の銘。そういうものをリサイタルのタイトルとして掲げているんだなと言うことが分かりました。ということは、このコンサートはとても力の入った彼女のライフワークとも言えるコンサートシリーズとなっていくのでしょう。
藤原歌劇団のインタビュー記事にもこの「うたうように えがくように」についての話が出てきます。
実際今回の内容を見ても力入りまくりでした。
終演後にロビーにて彼女に思わず「ガチですやん」と伝えてしまいましたよ(笑)
そんな気になるプログラムはこちら。
《プログラム》
・オペラ『ランスへの旅』より“美しい光に包まれて”
・別れ
・昔風のアリエッタ
・ボレロ
・『老いの過ち』第5巻より “ああ、愛しのグリーンピース!”(ピアノソロ)
・ヴェネツィアの競艇
Ⅰ. 競艇前のアンゾレータ
Ⅱ. 競艇中のアンゾレータ
Ⅲ. 競艇後のアンゾレータ
・オペラ『オテッロ』より“柳の歌〜祈り”
・オペラ『湖上の美人』より“胸の思いは満ち溢れ”
・オペラ『エルミオーネ』より序曲(ピアノソロ)
・オペラ『エルミオーネ』より“彼女が勝利するなんて!…”
パンフレットの画像も一応。
1部の1曲目。
オペラ『ランスへの旅』より“美しい光に包まれて”ですが、まず、いきなりこれからやんの!?という驚きでした。まぁ確かに実際のオペラだとコルテーゼ夫人はいきなりこれからのスタートだけどもね、優しめの歌曲からスタートとかじゃないんだって。もうこの段階で本気やん?ほんキララやん?本キリンやん?(それビールや)。とまぁ軽くボケておきましてですね…あ、この後もこんなんが続くからな。嫌な奴もう見るのやめとけよ?(何で偉そうなんだよ)
歌い始めの音からカチッとハマっててさすがでしたが、そこから全体的にアジリタのパーティが開催されていく中で1音も落とすこと無くゆったりしながらも忙しいこの曲を明るく太陽のような輝きの元歌ってくれました。良く転がるなぁ。そして嬉しかったのは、前半だけじゃなくて、後半も演奏してくれたこと。さすがですよね。コルテーゼ夫人はこの後半がなくっちゃ。『ランスへの旅』を聴くときはここ絶対聴くもん。テンション上がるのよとにかく。階段を駆け上がっわたり駆け下がったり忙しいのが金の百合亭を経営する多忙なコルテーゼ夫人っぽくて良いし、合唱こそ今回は無かったけど、合唱との絡みも面白いし、やっぱここのシーンは凄く見どころ聴きどころが高いとこだと思ってるので、やってくれたところにセンスを感じますよ。ロッシーニ好きなんだなという思いとともに。
2曲目。
「別れ」ですが、こちらは『音楽の夜会』の中の1曲。別れの歌ではありますが、非常に優しく前向きな?情景を思い出しながら歌うような様は非常に良かった。コルテーゼ夫人から歌曲に変わって、表現がある役を演じるというものから、その情景を自分のフィルターを通して聴かせるみたいな感じがしました。
3曲目、4曲目、5曲目。
順番に、「ボレロ」、「昔風のアリエッタ」、「アラゴネーゼ」は『黙って嘆こう=Mi lagnerò tacendo』というメタスタージオのテキストに音楽を付けたものだそうですが、ロッシーニはこのテキストだけで沢山の曲を書いたそうです。「ボレロ」は激しくも、ロッシーニらしい遊び心のある旋律が楽しい。表情いっぱいに表現してくれました。この曲は本来は楽譜の販売がないということでしたが、ペーザロでの修行の結果手に入れられたそうで、今回聴けたそうです。わーい!!
「昔風のアリエッタ」は、しっとりと暗めな曲調で歌詞が同じなのにがらっと変わった印象。
「アラゴネーゼ」は超絶技巧的な部分を含めて完璧に演奏されていました。そして、めちゃめちゃロッシーニっぽい。顔と体全体で表現する石田 滉さんを観ながらうまいなぁと感心。音符の最後に左手で音を切るというのかな。ある種のクセだと思うんだけど、その素振りにより休符を視覚的にも感じることが出来て、聴いてるこちらも同じ様な呼吸になっていくので、どんどん集中して聴けました。
で、ここでなんでやねんって感じではあるけど、すげーなと思うロッシーニです。同じ歌詞で明るくも暗くも表現できる音楽を作ってるわけですよ。ロッシーニの音楽の魅力ってそういうとこにあったりしますよね。場所や状況を限定して作曲してないんだなと思え。演奏次第でその音楽の方が歌詞に意味を付与していくというか。それによって歌詞だけ読むとその音楽はどうなのと思うものでも違和感無くなるという。
石田 滉さんの歌曲演奏を聴きながら改めて感じました。
6曲目。
『老いの過ち』第5巻より “ああ、愛しのグリーンピース!”(ピアノソロ)。
こちらは、最近リサイタル行くと結構聴くことがあるのですが、この曲ってこんなタイトルだったんだ(笑)「ロマンティックなひき肉」を思い出した。これは知ってたけど、今回のピアノ曲がそれ系だとは知らずでした。聴く度に耳に残る旋律。大人しく静かなんだけど、すごく主張してくる感じがとても良かった。うん、グリンピースってことかねそれが。
7曲目。
『ヴェネツィアの競艇』より
Ⅰ. 競艇前のアンゾレータ
Ⅱ. 競艇中のアンゾレータ
Ⅲ. 競艇後のアンゾレータ
の3曲。
これらも素晴らしかったなぁ!!どれも目の前に競艇が見えましたよわたくしは。頑張れと応援する1曲目、ハラハラしながら競艇を見守る2、よくやったねキスよという3。ほんっとに、どれも良かった。ピアノとの呼応もぴったりで、とても聴き甲斐がありました。ちょー楽しめた!!一挙手一投足思い出せそうなくらい全身でメンソレータム…じゃなかった。アンゾレータを演じてらしたのでほんとにめちゃくちゃ楽しめた。降りてたね。アンゾレータが。
とこんな感じで1部が終了。私は今年藝大に入った後輩を誘って聴きに行ったのですが、「すごい!!」とお互い興奮でハイテンション。会場はロッシーニ関係の関係者だらけ。歌手やらピアニストやらもたくさん。そんな中ヌッチ仲間の某音楽プロデューサーと久々にお会いしてまたヌッチでなんて話をして休憩終了。
2部1曲目。
オペラ『オテッロ』より“柳の歌〜祈り”
これはもう有名なやーつですね。ヴェルディの方が有名かもしれませんが、ロッシーニ好きとしてはこちらもとても親近感あるやーつ。前奏のピアノから気持ち持っていかれました。うまい。デズデモナの感情が手にとって分かるよう。思い返しても泣ける。繰り返し部分の細かい音符をさらっと入れてくる辺りも素敵。
滉さんが、途中で「オテロ!?」と上手を振り向いたところなんかリアルで息を呑みました。柳の歌から祈の方に移ると、天使のよう。この曲聴いた中で過去1良かったかもしれない。デズデモナにしか見えなかったもん。どんどん曲が進むにつれてデズデモナ。石田キラズモナです(なんもおもんないやんけ)
それと、ピアノがずっと寄り添って最後を看取るように(まだ全然生きてるけど)共に天国に行くようなそんな寄り添うようなピアノがまた良かった。
2曲目。
オペラ『湖上の美人』より“胸の思いは満ち溢れ”
こちらも、もうこれもね、もうそりゃやばかったというか、うなっちゃったよね。うまい!!マジで。ロッシーニの中というか、メゾの曲でも屈指の名曲だと思うし、ソプラノ含めて多くの人が歌ってきたこちらですが、過去の偉人たちにも負けないくらいの素晴らしさでした。こんなに転がして、こんなに上も出して、若いのにしっかりコントロールされてて、何よりロッシーニ愛というか、歌ってて楽しいという喜びが役と相まってぐわーっと音の波となって押し寄せてきた、そんな感じでしたね。聴いてて燃えて汗ばんでくるし、うまいーって舌を巻いたよ。巻きすぎて若干浮いた(いや、舌コプターみたいになっとんのか)。それと、こちらもピアノが大活躍。オケと合唱が見えたよ。もうね、うまい。ほんとそれだけしか言えねぇや。オケだったもん。ピアノじゃない。テンポも速めで最高でした。
3曲目。
オペラ『エルミオーネ』より序曲(ピアノソロ)
また言いますよ?オケだわ(笑)てか、これこそオケだよ完全に。うますぎ。どんだけの色を見せてくれるのよ。これならピアノ伴奏でもオケと同じ、いや、それ以上の幸福感味わえちゃうよ。林さんのピアノ伴奏版のロッシーニ序曲集とか販売してほしくなったわ。
4曲目。
オペラ『エルミオーネ』より“彼女が勝利するなんて!…”
めちゃくちゃ最高でした。誰が最高かって?おいおい笑わせるんじゃないよ。そらあんたもちろん、石田 キキララさんですよ(サンリオじゃねんだよ。滉さんな)
いや〜白眉ですな今日の。これは。オペラのワンシーンとしてのアリアというか、これだけでモノオペラとして成り立つんじゃないかというくらいの歌唱でした。曲の中でいろんな感情、表情をこれでもかと1人で舞台狭しと表現の中で見せてくれました。アクートにアジリタに技巧的にも素晴らしかったのですが、そこだけに頼らないで、言葉の意味を全身全霊で表現していることが実に素晴らしかった。若々しい今の声の彼女だから出来る表現のようなものも感じ取れて、その刹那的かもしれない歌唱はあまりにも贅沢な時間でした。そして、それと同時にどんどん進化していくだろう彼女から目が離せなくなってしまうなとそんな思いでした。やばい。応援したい人がどんどん増えてしまう(笑)こちらもピアノもほんと最高でしたわ。序曲の旋律が入ってくるとことかめちゃめちゃ欲しい感じだった。
アンコール
オペラ 『セビリアの理髪師』より”今の歌声は“
予想が的中。広島でもロジーナやるし、最後は明るくみたいな感じでやるかもよって幕間に話をしてたらそのままの感じでアンコールがウナボーチェ。
あんなに激しい曲をやって、喉大丈夫かなと思ったけど、なんのその。エルミオーネからのロジーナは全然違うのになんのその。流れるようなアジリタとおきゃんというよりはチャーミングで品のあるロジーナを楽しそうに歌ってくれました。ありがてぇ。お疲れだろうところ。
そんなわけで、とっても素敵なリサイタルに出会えて本当に心が温まりました。夏なんで温まるのは心のみでね。ふふ。
滉さんに林さん、そして関係者の皆様ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。これから夏本番です。夏バテ、熱中症におきをつけください。ありがとうございました!!




でね、ここからはマジでどうでもいいと思う内容ね。終わってから後輩の学生メゾ・ソプラノと「マジで滉さん良かったよな!!」と盛り上がってたら、新宿発の高速バス間に合わなくなって、いつもの流れだと渋谷にいくからそれに間に合わせようと錦糸町から渋谷マークタワーまで高速を使った上でタクシー移動したのよね。そしたら約1万もかかったのよ。で、渋谷でバス待ってたら、なんと、逃したバスが渋谷寄らないことが判明したのね。新幹線もないし困ったと思ってたら最終の夜行があったから、それに乗ることにしたのよ。めちゃめちゃ散財して散々な最後になってしまいました。ちゃんちゃん。
でもね、いいの。
素晴らしいリサイタルに出会えたから。
私は大満足。後輩もあれが聴けたからね。
うむうむ。
さ、もう3:50だ。
7:30には起きて仕事だぞ。
うふふふ〜。































