2024.4.28 藤原歌劇団 ロッシーニ『チェネレントラ』 | たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!"

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主にオペラの感想等を亡備録として書き連ねていこうかなと思ってます。
その時感じたことをそのまま書くようにしてますので、文筆がおかしいことは多々ありますが、良ければご覧下さい。

今日はテアトロ・ジーリオ・ショウワまで、私の大好物のオペラを聴きに行ってきました。

まぁこの時点で「お前の言うことだからどうせロッシーニだろ」とか、「お前はロッシーニのカリカチュアにどんどん似てきてんだよコノヤロウ」とか、「シンプルに太り過ぎなんだよ」とかそういう声が飛んできそうですが(最後のただの悪口)、そうです。あたすが聴きに行ったのは寸分の違いもなくロッシーニのオペラです。演目はこれまた大好きな『チェネレントラ』。英語で言うと『シンデレラ』、フランス語だと『サンドリオン』というあれでごわす。


今回のプログラムは2018年4月28日、29日の藤原歌劇団公演が初演となったフランチェスコ・ベッロット演出の再演。ちなみに同年5月12日の第58回大阪国際フェスティバルでも上演された演出です。筆者は4月28日の公演と大阪で実演に触れています。


2018年藤原歌劇団公演のチラシ


2018年大阪国際フェスティバルのチラシ

今年は藤原歌劇団は90周年だそうで、この『チェネレントラ』はその記念公演だそうです。


2024年(今回)のチラシ(表)


2024年(今回)のチラシ(裏)


誰をお目当てに行ったのかは言わずもがな。小堀勇介さんです。小堀さんでロッシーニはマストで行きますと、まぁこういうことになるわけですが、今回も素晴らしかったです!!

小堀さんのラミーロは何度も聴いているのですが、毎回何かしらの変化があります。今日は初めて聴くバリエーションがありました。小堀勇介薬籠中物のラミーロでしょうが、あぐらをかくことなく、真剣に役と向き合い、声の変化に合わせて進化し続ける彼の素晴らしさ。うむ、応援のしがいがあるぜ。

最初の2重唱でお客さんの心を鷲掴み。会場を小堀ワールドに変えちゃうんですよね。声出す前の前奏から、期待感が増々になっていくので、期待感のロッシーニクレッシェンドからの、「とぅっとえでぜーると、あみーち、ねっすんりすぽんでぃ」で、はいきたー、となるわけで。ちなみに、ねっすんりすぽんでぃの歌い方が個人的にはとても好き(しっかりアルファベットを使いなさい)。小堀さんが歌うとみんなその声を逃さず全部聴くぞって空気感になって、会場の集中力がガーン増すんですよ。これは前からそうで、そこがめちゃ強みだと思うんですよね。お客さん一人一人に小堀勇介から触手が伸びていって、思考から何から一体になっていく様な感覚。

アリアは2018年と同様にしっかりとハイDを出してくれました。それも嬉しいのですが、個人的には最初のハイCの鳴りが凄すぎて鳥肌たちました。最後もしっかりアクートきめて舞台から見えなくなるまで伸ばしてましたね。最高だぜ。そしてこれは何度もブログで言ってますが、小堀さんはしっとりと歌い上げるとこもうまいのよ。『連隊の娘』だったら「ああ、友よ」の方(も良いけど)「マリーのそばに」が素晴らしいみたいな。ラミーロも中盤のしっとりと歌うとことても良かった。明らかに小堀さんがオケの音を引っ張ってきてたもんね。


その次に良かったのはドン・マニィフィコ役の押川浩士さん。2018年の時はダンディーニを歌われていて、それも良かったのですが、今回のマニィフィコもそれを超えるくらい良かったです。 ロッシーニのキャラクターの中でも好きな役では上位にくるこの役。3曲もアリアがありますが、1度聴いたら何となく口ずさみたくなるような楽しい曲ばかり。押川さんそのどれも高水準で歌ってくれました。声を張ると全然違うのですが、そうでないところはどことなくコルベッリっぽかったりするなぁなんて思いながら聴いていました。声ももちろんですが、ロッシーニが好きなんだろうなという思いが溢れてました。所作が完全にブッフォ歌いのそれ。イタリアからブッフォ歌い連れてきたのかなと思ってしまいましたよ。その昔、それこそこれも藤原歌劇団だったと思いますが、オーチャードホールでブルーノ・デ・シモーネが同役をやった時に感じた、「これぞイタリアのブッフォの所作」みたいな感じを思い出しました。演技派です。お客さんも後半につれてどんどん反応良くなっていきましたが、個人的には1幕フィナーレでマニィフィコが登場した時の「け、こ、き…」のとこめちゃ面白かったです。そんなにウケてはなかったのが悔しい。すげーうまかったのよ。切り替えが。やっぱそういうとこからもどこがポイントなのかを熟知してらっしゃるなと思っちゃいますね。演出家はいるにせよですが。あとダンディーニとの2重唱も面白かったね!


そういえば、これは今に始まったことじゃないのでしょうがないけど、演者ではなく字幕でリアクションしちゃう聴衆たちの存在。難しい問題ですが笑うポイントがずれたりするんですよね。気になる。


最後はクロリンダ役の楠野麻衣さん。マジで良かった。楠野さんとはかなりお久しぶりでした。いつぶりだろう。『ランスへの旅』以来かな。しっかり声を聴いたのはかなり前。夜の女王を沢山歌われていた時代。そこから進化しまくっていた!!2018年に光岡さんのクロリンダを聴いてしまったので、この役はあれ以上のものはもうないと勝手に思っていたのですが、今回しっかりと自分のものにして舞台乗せてきたなという感じで、特にアリア(ロッシーニの作曲ではない)がガチで絶品!!思わずBravaを叫びました。歌っているとずっと妙技の嵐。難しいヴァリエーションをこれでもかときらびやかに転がしながら歌う姿に興奮しました。そもそも声が役にぴったりで、細かい芝居も゙色々やられていたので、クロリンダとして没入して観れました。


オケはモーツァルトのようなまとまり感はあって音的にも悪くはなかったのですが、いかんせん真面目過ぎていたかなという印象。その昔のライブではないアバドのかんじというのか。そしてゆったりめのテンポ感だったので、もっと疾走感みたいなものがあったら良かったなと思いました。ロッシーニはやっぱそういうとこで活力を見出していかないと面白みに欠ける。ソリストが早く行きたそうなとこもゆっくりめに振るので「うっ」と我慢するようなシーンもありました。あとは、序曲が分かりやすいですが、もっと休符とか厳し目にしっかり切ることでお客さんに「いっくぞおおお」みたいな振りがあると良いなと思いました。あとはボリューム感とかスケール感に余裕とブッフォならではの遊びがあると良かったなと思います。ロッシーニクレッシェンドもっともっとこだわれたかなぁって思います。

なんだろね、全然ダメーとかじゃなくて、惜しいって思っちゃった。


最後にひとつ苦言を呈するとすると、小堀さんです。サイン入りブロマイド売り切れてたんだけど。どう落とし前つけてくれんねん!(うるせぇよ。呈する相手がちげーよ)

ガチ苦言というか、残念なことがそういや1つあった。飴舐める為の袋の開封音と入口で配られたビニールの擦れる音がめちゃめちゃうるさかった。人生賭けてやってる演者に失礼過ぎる!!

少しも出すなとは言わないけど、限度があるのよ。かなりずっとうるさかった。


そんなわけで、眠すぎるのでここまで。

久々のオペラ楽しめました。ありがとう藤原歌劇団。ありがとうチェネレントラ。ありがとうロッシーニ!!