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一杯の誘惑

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一杯の誘惑
ヴッルテンベルガーピルス ドイツ。

苦みと香り。

飲むパンとも言うべきボリューム。

美味い。

謡曲『籠太鼓』所感

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謡曲『籠太鼓』の作中、関清次が何某を斬った理由は述べられていない。
また妻も、夫が逃れた場所まで知っていながら斬った理由は一切触れようとはしない。

そこで何某が斬られた理由として、清次の出世や妻女に対する横恋慕と嫉妬と解釈した。
この解釈は私見である。
何某は清次の妻に言い寄ったか、あるいは犯したと吹聴したのが斬られた原因であろう。
しかし、かのルクレッツアのごとくに、身の証しをたてれば妻は自害しか手はなく、また妻が死ねば夫は松浦に弓を引く事態にもなる。

謡曲には『武家人情物』とも言うべき作品群がある。
『鉢木、横山、盛久』など困難があっても善意の人々によって解決する展開の能である。

『籠太鼓』の面白さは、たった一晩で展開する時間の早さと心理劇である。
劇中に舞を織り込んでいるが、主題は妻と松浦の駆け引きであり、清次の妻と領主松浦の二人の狙いは、逃げた清次を周囲に納得させた上で赦免に持ち込む事だ。
妻の狂女は、事件解決を図りたい松浦にとっては賢婦の謀だったに違いない。

この能『籠太鼓』の背景には、部下が妻を差し出す…横暴な要求の当主がむしろ当たりだった事実がある。

かの織田信長などの各武家法や諸法度にも『他人の妻、部下の妻を求めてはならぬ…と』
厳しく書いてあるらしい。
能『籠太鼓』は一時間足らずの短い能であるが、何か違う曲趣の能と組み合わせる、あるいは娯楽的に企画して見る能としては飽きのない作品だと思う。

能番宣ブログ転じて、能楽三文ショートになりつつある。

文中の貧しい表現は恥ずかしい限りだか、様々な解釈を楽しみながら能を見る…そういう手段を模索中なのである。

籠太鼓…後日。

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秋の日暮れは早い。
あの牢籠騒動も夏の戯れ言であったような…松浦は感慨深く夕暮れを眺めていた。

…あるじ様。
そろそろ…あの一件について我らにも教えて貰いたく…お願い致します…。
主人である松浦を前に配下の二人が畏まっていた。

何故、関清次は何某を斬ったのでしょうか…。
松浦は配下の問いに、しばらく間を置いて答えた。

『何某は関の妻女に横恋慕をしたのであろう…あの妻を差し出せと、な。』

…んっ。
松浦の思わぬ答えに配下が息を呑む。

『お前の妻を差し出さぬなら、松浦党領内から出て行けと…。妻を上司に差し出して武勇のある清次が我慢できる術もあるまい。
何某の目論見は関を追い出したかったのだ…。
清次は儂の子飼いであるが、軽輩からの立身ぢゃ。対する何某は、松浦党一族の親…清次の戦働きなどを妬んだゆえに、横暴な求めを清次に向けたのであろう。
…何某からすれば、関が妻を出せば良し、出て行くも良し…であろうな。

で…斬られた。

清次の妻は見上げた賢婦ぢゃな。裏で夫を逃がし狂女を装いながら儂と取引していたのだ。

へっ、あれは偽?

『そう、偽だ…二世の契り。まさに…な。妻女が潔白を訴えて自害すれば夫も死ぬ。あるいは儂に仇とするであろう。
まっすぐな男ならばこそ…妻女も夫の身代わりになって狂女を演じた…誰も疑わぬ。
儂が、夫が何某を斬った訳を知っているか、と問うた時に見た悲しく絶望的な妻女の瞳は哀れであった…これで話は終わりだ。

松浦が書簡を出した。
『以下、清次の元へ届けよ…清次の禄は取り上げたが、禄は妻女に代えて預けてある。しばらく身を養ったら当地に帰着せよとな…』

さっ、早く届けてやれ…行け。
儂は眠い。あの騒動以来、夜中は耳元で太鼓が聞こえているようだわ…。