籠太鼓…後日。
秋の日暮れは早い。
あの牢籠騒動も夏の戯れ言であったような…松浦は感慨深く夕暮れを眺めていた。
…あるじ様。
そろそろ…あの一件について我らにも教えて貰いたく…お願い致します…。
主人である松浦を前に配下の二人が畏まっていた。
何故、関清次は何某を斬ったのでしょうか…。
松浦は配下の問いに、しばらく間を置いて答えた。
『何某は関の妻女に横恋慕をしたのであろう…あの妻を差し出せと、な。』
…んっ。
松浦の思わぬ答えに配下が息を呑む。
『お前の妻を差し出さぬなら、松浦党領内から出て行けと…。妻を上司に差し出して武勇のある清次が我慢できる術もあるまい。
何某の目論見は関を追い出したかったのだ…。
清次は儂の子飼いであるが、軽輩からの立身ぢゃ。対する何某は、松浦党一族の親…清次の戦働きなどを妬んだゆえに、横暴な求めを清次に向けたのであろう。
…何某からすれば、関が妻を出せば良し、出て行くも良し…であろうな。
で…斬られた。
清次の妻は見上げた賢婦ぢゃな。裏で夫を逃がし狂女を装いながら儂と取引していたのだ。
へっ、あれは偽?
『そう、偽だ…二世の契り。まさに…な。妻女が潔白を訴えて自害すれば夫も死ぬ。あるいは儂に仇とするであろう。
まっすぐな男ならばこそ…妻女も夫の身代わりになって狂女を演じた…誰も疑わぬ。
儂が、夫が何某を斬った訳を知っているか、と問うた時に見た悲しく絶望的な妻女の瞳は哀れであった…これで話は終わりだ。
松浦が書簡を出した。
『以下、清次の元へ届けよ…清次の禄は取り上げたが、禄は妻女に代えて預けてある。しばらく身を養ったら当地に帰着せよとな…』
さっ、早く届けてやれ…行け。
儂は眠い。あの騒動以来、夜中は耳元で太鼓が聞こえているようだわ…。
