ガムガムパンチ
『ガムガムパンチ』
手塚作品群の中では、四コママンガに近い簡潔な筋立てです。
私は大好きな作品なので紹介します。
子供たちが…風船を膨らませると、欲しいと望む物が何でも作れる不思議なガム風船、これで夢をかなえようとする子供の世界、異質な空間と日常を結んでゆく描写には童話的な子供の夢があります。
後に『バブル』という悪夢に投げ込まれる我々ですが、全ての妄想がガム風船だった…そんな時代を作者が想定していたような…『マンガは風刺である』と、手塚治は随筆にも述べています。
公害や戦争など子供には全く責任のない大人の招いた結果に対して、子供達が巻き込まれてしまう…そういう社会矛盾をガム風船で懲らしめてゆく子供たちが主人公であるマンガでした。。
ブログ前述の『七色いんこ』や『ガムガムパンチ』を、久しぶりに手塚作品を読みながら、いつまでも理想を持つことは大切なんだ…と、ふと思ったもので…。
七色いんこ
数名の若者たちが集まっている部屋。
青年1『おいっ、俺たちも劇団作ろうぜ!』
青年2『俺は参考書買ってきた…』
全員が読み出した『ガラスの仮面』…。
この様なショートコントを以前にテレビで見た事がある。
同様に演劇を扱った劇画が手塚マンガにもある。
それが今回、手にした『七色いんこ』。
『七色いんこ』は、古典劇から近現代作品に至るまでの演劇原作より、劇画テーマや主題を選んで描いている。
最終的には、何故かサスペンス的な終わり方で多少の不満も残るが、演劇を軸にした作品としては取り上げ方も面白い。
そんな中、思わず私が(ふ~ん…!)と感じた台詞があった。
七色いんこ『…役者がいろんな役をやるのはうまい演技をするのが目的じゃない、その役の人間の性格や心理を深く研究するためさ…』…『医者が患者の容態や病状を見て判断するのとまったく同じだ…』
以上『七色インコ』より。
なかなかに、示唆的で面白い言葉だと思う。
能の手法しか知らない私から見ると、師匠から学んだ型を通じて解釈した役は基本的に経験してきたが、自ら解釈を経て成立した型は未体験なのだな…と感じたからだ。
おそらく素人が解釈して能の型を作ることはないし、また師匠を通じてよりの解釈以外に舞台で成立するのか…?
という事もある。
しかし、師匠から学ぶだけでは成立不可能な世界も、また能であるはずだ…と思うのだ。
そこで『様々な役を演じる』という事を消化してゆく意味とは何か、と考えると(ふ~ん)なのであった。
今夜の一冊
今夜の一冊。
表章著
『能楽研究講義録』
笠間書院刊
私は表章教授にゼミ指導等を受けた経験はなく、あくまで表教授の横顔を眺めていた拙い学生の一人であった。
この本は、表教授が長年に積み重ねた功績を自ら語った講義録であり、その多数の著作論文群を簡潔に補足を加えている。
能楽研究をゼミ論とした学生や研究者ならば、勉強の中で幾度も敷衍した論文群が並んでいるはずだ。
この本を読むと、次第に表教授の独特の張りのある声が脳裏に甦ってくるのだが、そういう楽しみ方…堕落した生活の中で、真摯に学ぶ事を放棄した私には得難い本でもある。
心なしか、表教授の講義やゼミ授業に参加している気持ちになってくる。
しかし、この本の内容について語るには、あまりに私は浅学に過ぎる。
一言触れるならば、表教授の能楽研究の背景には、関わった多くの人々の能楽への強い意志と使命感が、教授の手によって結実して見事に昇華されていると思う。
私は、そこに戦後の日本社会を担った人々の良心を感じるのだ。
それは『自分が信じる道に誠意を尽くす』という最も困難で険しい道のりなのだろう。



