生気がなかったな。
更新は、今は深夜だ。丑三つ時も近い。先週の土曜日、撮影に参加した能で、上演の前振りに講座が設けられていた。
能は『朝長』、講師は民俗学赤坂憲雄教授。講座の中で、『今日のお客様の中に、幽霊を見た人はいますか?』という質問が赤坂教授からあった。
ためらいがちに手を挙げかけた人が散見…だが、教授の意図は別のところにあったようだ。
さて…幽霊は私も二度見た経験がある。
二度というのは、確かに見たと言える場合の事だ。もしかして、他にも見ている場合もあるが自覚がない。
可視化されていなければ、幽霊とは認識されてない。しかし、可視化された霊魂など物理学的にあり得ないのだ…ゆえに、幽霊を見るとは『生者と死者による和解みたいなもの…』に導かれてゆく、らしい。
最初に見た幽霊は、私が二十歳過ぎの頃。しかも、午前中の日も上がっている時刻。実家の座敷で朝寝をしていたら、出た。
突然、金縛りになり目を開けると…紫色の着物を着た若い女性が私の枕元に立っている。不思議に怖くはない。彼女は私の右側に移動しながら、スゥーーーと私の腕の上に消えた。
幽霊にしては、私と関連性が無さすぎる。
どうせ見るならば、現実に会いたい人が良い…そう思っていると、突然に大都市の雑踏に遭遇したりする。
いや、幽霊ではないのだけれどね。
サヨウナラ
今日も、再び都内。急ぎ歩きで表参道の坂を行く。
ほとんど、あの界隈に関して興味はないし、立ち寄る先と言えば新潟県の物産を扱う店舗のみ。
そこで、実家への手土産に日本酒やら名産の旨いものを買うくらいだ。
ただ、あの坂を下る時だけ…少し、気分的に松田優作を召喚して歩く。『探偵物語のラストシーンだよ…』
そんな一日の夕方前。この街で、私は少しだけ面白い出来事に遭遇した。ついに…というべきか。
いかにも私らしい人との出会い方だと思う。そうやって、妄想はひとつの現実となり残るのだ。
そして、もしかすると、明日あたり私は死んでいるかも知れない。
別に自殺とか、事故の予感もないが。
人生は、ある日に突然終わったりするものだ。こういう言い回しをすると、『あぁ…やっぱりムシが知らせたんだな…』とつまらぬネタにされるだろう。
生命を引き寄せるのも、死を招き寄せるのも、それは私の心次第にあるようだ。
一期の運
あやうく遅刻寸前になった。
正しくは開場前なのだが、機材用意時間が必要なので開場30分前には入りたい。そして開演に備えるわけだ。
それが、どうにも電車の遅延などで足を奪われた。ようやく最寄り駅に着けば、駅ホーム階段から大通りまで、休日を楽しむ人々が列をなしていた。
その間を、人との隙間を探しながら機材背負って、目的地まで小走りに急ぐ。
綺麗に飾ったカップルや若い女性に溢れた街並み。華やかな大都会のウィンドーが鮮やかに輝いている。その前を、汗をにじませてながら、無粋に私はひたすら走る。人に埋め尽くされた並木道が遥かに続く。いや…果てしなく永遠に続いているように見える。
あと七分、あと五分…走れ、走れ、走れ、ここで遅れたら今日一日が無駄になる。いや、今年一年が夢と消えるかも知れない。
つまらぬ事に一生の大事を賭けてみる。
今日、もし間に合わなかったら、この仕事を辞める。
運よく、間に合ったら明日も来よう。
そんな一日が、もうすぐ終わる。


