一期の運
あやうく遅刻寸前になった。
正しくは開場前なのだが、機材用意時間が必要なので開場30分前には入りたい。そして開演に備えるわけだ。
それが、どうにも電車の遅延などで足を奪われた。ようやく最寄り駅に着けば、駅ホーム階段から大通りまで、休日を楽しむ人々が列をなしていた。
その間を、人との隙間を探しながら機材背負って、目的地まで小走りに急ぐ。
綺麗に飾ったカップルや若い女性に溢れた街並み。華やかな大都会のウィンドーが鮮やかに輝いている。その前を、汗をにじませてながら、無粋に私はひたすら走る。人に埋め尽くされた並木道が遥かに続く。いや…果てしなく永遠に続いているように見える。
あと七分、あと五分…走れ、走れ、走れ、ここで遅れたら今日一日が無駄になる。いや、今年一年が夢と消えるかも知れない。
つまらぬ事に一生の大事を賭けてみる。
今日、もし間に合わなかったら、この仕事を辞める。
運よく、間に合ったら明日も来よう。
そんな一日が、もうすぐ終わる。
