子供の音楽教育とは

 

先日レッスンをしている際、お母様から離れず、歌う声は時々微かに聴こえる程度の8歳の女の子がいました。

お母様としては「お金を出してわざわざ来ているのだからしっかりと歌って上手になってほしい」と思うのではないでしょうか。

歌うことすらままならない様子を目の当たりにしたら、『音楽は向いていないんだな』と感じてしまうと思いますが、『この子に音楽は向いていないんだな』と判断するのは少し早いです。

特に、ご自宅などで音楽に興味を持っている様子があったのであれば、何度かレッスンを受けてみることをお勧めします。

 

未就学児〜小学校低学年のお子様は、音楽がある空間にいることが、音楽教育になります。

生の楽器の音を聴く♪

体を楽器にした先生の歌を聴く♪

お子様ご自身で楽器に触れてみる♪

ピアノに合わせてちょっとだけ歌ってみる♪…など。

その場にいることこそが、お子様の感覚器官を刺激する立派な音楽教育なのです。

その時間は“インプット”の時間で、ご自宅で何気ない瞬間に“アウトプット”していたりすることがよくあります。


私は音楽教室の本部業務を行う前に、0歳児〜2歳児のリトミック講師としてもレッスンしていました。

その際、クラシックや童謡だけでなく、ジャズやロックなど様々なジャンルの音楽、また日本語や英語だけでなくアフリカ音楽やアジアの音楽など様々な言語の音楽を使ってレッスンを行っていました。

 

お母様方からは「世界中の音楽を体験できるっていいですね!」というお声も多く、レッスンで使った音源をご自宅で流したりすると、0歳児・1歳児のお子様でもそれぞれ好きな音楽がある、という報告を受けていました。


レッスンの内容を最初から一緒にできるお子様はごく稀ですが、ほとんどのお子様が3ヶ月もすると反応してくれたり、音楽を使った“遊び”や“動き”が一緒にできるようになりました。

 

また、ヴォーカル的なことでいうと、まだ言葉も話さないお子様でも、日本語以外の言語の歌を聴き、再現しようとすることで舌を使います。

外国語の子音はを使って発語するのですが、日本語にはない子音を発語することで言葉の発達を促すことができます。

お子様の中には、人見知りで先生に慣れるまで時間がかかり、その場では無反応というお子様もいらっしゃいますが、ご自宅に帰ってお子様がその日のレッスンで行っていたことを再現しているようなことがあれば、是非レッスン開始を再検討していただきたいと思います。

 

もし、「音楽は始めたいけど何の楽器がいいかかわからない」「選んだ楽器がしっくりきていない」という場合は、様々な楽器のレッスンを受けられる教室もあるので、そのような教室がお勧めです。



また、音楽教育は、上手に演奏することだけが目的であはありません。

 

私のレッスンでは歌詞に“海”という言葉が出てきたら、いくつかの画像を見てもらい、想像力を働かせて自分のイメージする“海”を探してもらいます。

すると多くのお子様が連想して、旅行など“海”にまつわるお話をしてくれます。

 

そのようにしてはっきりとしたイメージを持ってからうたう歌は、最初にうたった歌と全く別なものになることはおわかりいただけると思います。

 

また、レッスンではたくさんの質問をしています。

 

「あなたはどう感じたの?」

「これって何かな?」

「どういうことかな?」

「こういう歌い方とこういう歌い方、どっちで歌いたい?」…など。

 

このように質問をして答えてもらうやり取りですが、ほとんどのお子様は最初は答えるまで時間がかかります。

しかし、3ヶ月くらいするとすぐに答えらえるようになり、半年後には自身の

想像の世界を繰り広げてくれるお子様も少なくありません。

まさに子供の想像力は無限です!

 

自分の言葉で「私はこう思う!」「私はこうしたい!」ということが伝えられるようになると、幼稚園や学校でも自分を表現することができるようになっていきます。

 

レッスンに通っていた4歳の男の子がいたのですが、最初はお兄ちゃんの後にくっついて、自分から「コレがしたい!」と主張するお子さんではありませんでした。

しかし、レッスンを1年くらい続けてからはやりたいことを主張できるようになり、幼稚園の音楽発表会では自分がやりたい楽器に立候補して、本番は堂々と演奏したとお母様よりご報告いただきました。

 

子供の音楽教育とは、まずは“その場に身を置くこと”が何より大事、そして上手に演奏することだけが目的なのではなく、音楽を通してお子様お一人お一人の成長を促すものだと思います。