すでに昨年末で実質的な任期を終えていた東響第3代音楽監督ジョナサン・ノットだが、3月末で12年目のシーズンも名実共に終了ということで、パーヴォ&N響の時と同様、その任期を改めて振り返ってみたい。
とりあえず、この12シーズンで聴いたノット&東響の演奏を全て書き出してみる。
★2014年
4/20 第619回定期演奏会(マーラー9番)
6/14 第621回定期演奏会(ザ・グレイト)
12/7 ミューザ開館10周年記念(マーラー8番)
12/13 第626回定期演奏会(ブルックナー3番)
★2015年
3/14 第628回定期演奏会(パルジファル抜粋)
7/11 オペラシティシリーズ第87回(ドビュッシー映像)
7/16 第632回定期演奏会(ベートーヴェン5番)
9/12 第633回定期演奏会(マーラー3番)
9/13 川崎定期演奏会第52回(マーラー3番)
11/22 第635回定期演奏会(100台メトロノーム)
11/23 名曲全集第112回(100台メトロノーム)
11/28 オペラシティシリーズ第89回(ドヴォルザーク8番)
★2016年
4/24 第639回定期演奏会(ドイツレクイエム)
7/16 第642回定期演奏会(ブルックナー8番)
7/23 サマーミューザ(ベートーヴェン6番)
10/8 名曲全集第121回(ブラームス1番)
10/9 オペラシティシリーズ第94回(ブラームス1番)
10/15 第645回定期演奏会(ショスタコーヴィチ10番)
12/3 第647回定期演奏会(シューマン2番)
★2017年
5/13 オペラシティシリーズ第97回(ベートーヴェン8番)
5/20 第650回定期演奏会(ブルックナー5番)
7/15 第652回定期演奏会(マーラー2番)
10/15 オペラシティシリーズ第100回(モーツァルト39番)
10/21 第654回定期演奏会(ボレロ)
12/2 第656回定期演奏会(ベートーヴェン3番)
12/10 特別演奏会(ドン・ジョバンニ)
★2018年
4/14 第659回定期演奏会(ブルックナー9番)
7/14 第662回定期演奏会(ゲロンティアスの夢)
11/3 第665回定期演奏会(ラフマニノフ2番)
12/9 特別演奏会(フィガロの結婚)
12/15 第666回定期演奏会(英雄の生涯)
★2019年
5/18 オペラシティシリーズ第109回(ベートーヴェン7番)
7/20 第672回定期演奏会(死と浄化)
7/21 川崎定期演奏会第70回(死と浄化)
7/27 サマーミューザ(ベートーヴェン1番)
10/6 ミューザ開館15周年記念(グレの歌)
11/16 第675回定期演奏会(マーラー7番)
11/23 オペラシティシリーズ第112回(モーツァルト41番)
12/28 特別演奏会(ベートーヴェン9番)
12/29 特別演奏会(ベートーヴェン9番)
★2020年(※映像ノット)
7/18 オペラシティシリーズ第116回(ドヴォルザーク8番)※
7/25 第682回定期演奏会(ベートーヴェン3番)※
12/28 特別演奏会(ベートーヴェン9番)
★2021年
5/22 特別演奏会(マーラー4番)
5/27 特別演奏会(マーラー1番)
7/18 川崎定期演奏会第81回(シベリウス5番)
10/16 第694回定期演奏会(ブルックナー4番)
12/4 第696回定期演奏会(ルトスワフスキ オケコン)
12/11 モーツァルト・マチネ第47回(ハイドン協奏交響曲)
12/28 特別演奏会(ベートーヴェン9番)
★2022年
5/21 第699回定期演奏会(ベルシャザールの饗宴)
7/16 第701回定期演奏会(マーラー5番)
10/15 第704回定期演奏会(ショスタコーヴィチ4番)
10/23 第705回定期演奏会(ブルックナー2番)
11/18 特別演奏会(サロメ)
11/26 第706回定期演奏会(ベートーヴェン2番)
12/28 特別演奏会(ベートーヴェン9番)
★2023年
5/14 特別演奏会(エレクトラ)
5/20 第710回定期演奏会(マーラー6番)
7/16 第712回定期演奏会(ブラームス2番)
7/22 サマーミューザ(チャイコフスキー3&4番)
10/15 第715回定期演奏会(グラゴル・ミサ)
10/21 オペラシティシリーズ第135回(ブルックナー1番)
11/11 第716回定期演奏会(ベートーヴェン6番)
11/17 オペラシティシリーズ第136回(皇帝)
★2024年
5/12 第720回定期演奏会(大地の歌)
7/20 第722回定期演奏会(ブルックナー7番)
7/27 サマーミューザ(チャイコフスキー2&6番)
11/9 第726回定期演奏会(デュリュフレ レクイエム)
11/10 名曲全集第201回(デュリュフレ レクイエム)
12/7 第727回定期演奏会(ベートーヴェン5番)
★2025年
4/5 第729回定期演奏会(ブルックナー8番)
7/21 第732回定期演奏会(戦争レクイエム)
9/20 オペラシティシリーズ第147回(モーツァルト41番)
9/27 第734回定期演奏会(マタイ受難曲)
11/15 特別演奏会(子どもと魔法)
11/22 第736回定期演奏会(マーラー9番)
11/23 名曲全集第212回(マーラー9番)
12/29 特別演奏会(ベートーヴェン9番)
数えてみると、全部で79公演。このうち同一プロの「おかわり」は6回12公演、「第九」は5年で6公演、コロナ禍中に「映像ノット」で2公演聴いている。同一プロを1公演とカウントするなら、このコンビによる全公演中7~8割は聴いたのではないか。パーヴォ&N響が実質4年半で31公演だったから、その記録を大幅に更新し、同一コンビによる演奏会の鑑賞記録としては、個人的に不滅の数字だろう。
この中から絞りに絞ったマイベストを挙げるなら以下の通り。
■マーラー&ブルックナー「未完の遺作」(2018/4/14)
100台のメトロノームに始まるプログラムや、「ボレロ」へと至る変奏曲プログラムなども強く印象に残るが、1回の聴き応えという点ではやはりマーラーやブルックナーの交響曲が多くなる。どれも満足度が高かったコンサート・オペラからは「エレクトラ」にとどめを刺す。ここには挙げなかったが、バルトーク「弦チェレ」、イザベル・ファウストとのベトコン、実演を聴けずニコ響で視聴したブラームス3番なども忘れがたい。
そしてこの中からさらにベストオブベストを選ぶなら、就任2年目に聴いたベートーヴェン5番と、ラストイヤーに聴いたモーツァルト41番である。前者はノット=ベートーヴェン最強説を決定付けた演奏だったし、後者のモーツァルトも、思えばノットが任期を大幅に延長するきっかけとなったのがモーツァルト・マチネなのだった。マーラーやブルックナーも素晴らしかったけれど、私見ではこのコンビの究極は古典派だと思う。
もちろん、任期中の全てに満足した訳ではない。マーラー2番、ブルックナー5番などではソロ・カーテンコールで疎外感を感じたし、シベリウス5番なんかもピンと来なかった。「映像ノット」はスリリングな試みではあったが、本質的には邪道だと思う。ショスタコ4番の演奏中に奏者が倒れ、止まらない演奏に不安を感じたこともある。コンマス水谷さんやオーボエ荒木さんなど主要メンバーの交代によるアンサンブルへの影響も心配だった。でも最終的には、一番の高みに到達したのではなかろうか。
思い出すことはまだまだあるけれど、とても書き切れるものではないし、もうこれまでに十分すぎるほど書いてしまったという気もする。指揮者として働き盛りの50代のかなりの時間を東響のために過ごしてくれたノット監督には感謝しかない。それをリアルタイムで、聴き手として心身共に充実している時期に体験できたのは、間違いなく人生の大きな宝物でした。
