この正月休みにふと思い立って、大好きな映画の1つ「過去へ旅した女」(原題:The Two Worlds of Jennie Logan)を観直してみた。1979年のアメリカ映画で、劇場公開ではなくテレビ放送用に製作されたものらしい。日本では1983年にNHKで放送されたようだが、私が観たのはその数年後にテレビ東京の昼間の時間帯に放送されたもの。一度観てすっかり気に入ってしまい、再放送の機会を狙ってビデオに録画し、ブルーレイに焼き直して永久保存版にしている。なお英語版は商品化されたが、日本語吹き替え版はニコニコ動画で視聴可能(※以下ネタバレ注意)。
物語は、ニューヨーク郊外の古い屋敷を夫婦が不動産屋の案内で内見している場面から始まる。夫(マイケル)の浮気が原因でぎくしゃくした夫婦関係を、田舎への引っ越しでやり直そうとしている。その屋敷の屋根裏部屋で古いドレスを発見した妻(ジェニー)が、それを身につけたところから不思議な現象が起こり始める。80年前の同じ町、同じ屋敷へタイムスリップしたような幻覚を見るのだ。しかし町の歴史博物館などで調べるうちに、それは幻覚ではなく、実際にあった過去そのものであることが分かってくる。その過去の世界で、ジェニーは屋敷に住む画家の男(デヴィッド)と出会い、惹かれ合うようになる。
ドレスを媒介として、現在と過去の2つの世界を行き来するようになったジェニー。マイケルではなくデヴィッドと共に生きることを決意したジェニーは、伝聞では決闘沙汰の末に殺されたとされるデヴィッドの運命をどうにかして変えようとする。そして迎えた決闘当日(新世紀=20世紀を迎える祝賀パーティーの夜)、ぎりぎりで事件の真相を掴んだジェニーは、阻止しようとするマイケルの手を逃れ、永遠に過去の世界へと旅立ってしまう。現在の世界でジェニーの葬儀を終えたマイケルは、因縁の屋敷を引き払うことに。その作業の最中、発見された数枚の絵には、過去のジェニーが幸せに暮らした「証拠」が刻印されていた…。
ミステリーやホラーテイストも交えた、ロマンチック時間SFの隠れた傑作。当時はまだタイムリープという言葉も一般的ではなかった。ジェニーと言えば、このジャンルの代表作とも言うべきロバート・ネイサンの小説「ジェニーの肖像」を思い出さずにはいられないが、この命名は意図したものだろうか(ちなみに映画の原作はデヴィッド・ウィリアムズの「セカンド・サイト」という小説)。そういえば「ジェニーの肖像」にも画家が登場し、描かれる絵が重要な役割を果たすことになるが、画布というメディアは、時をかけるロマンスと相性が良いのかもしれない。
ストーリーもさることながら、一度聴いたら忘れられない音楽が最高にエモい。様々な形にアレンジされ劇中で何度も流れるこのテーマ曲こそが、ノスタルジックで切ないこの映画の主役と言っても過言ではない。改めてクレジットを確認すると、音楽を担当したのはグレン・パクストン。監督・脚本はフランク・デ・フェリッタ。彼らのフィルモグラフィを検索してみると、今作も含めメジャーな話題作は見当たらない。ジェニー役の主演リンゼイ・ワグナーこそ知名度はあるようだが、どちらかと言えば地味なスタッフの確かな仕事が奇跡的に結実した、何度観ても(聴いても)色褪せない、私にとっては珠玉のファンタジー。

