ノット&新日フィル 代打ノットのマーラー7番 | 今夜、ホールの片隅で

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東京在住クラシックファンのコンサート備忘録です。

🔳フェスタサマーミューザ 新日本フィルハーモニー交響楽団(8/2ミューザ川崎シンフォニーホール)

 

[指揮]ジョナサン・ノット

 

マーラー/交響曲第7番 ホ短調「夜の歌」

 

本来なら井上道義氏のラスト・サマーミューザとなるはずだったが、直前になって病気療養のため降板することに。そのまま配布されたリーフレットにある井上氏のメッセージによれば、12/30の読響との引退前最後の演奏会でマーラー7番をやる予定だったが、思い直してサマーミューザにスライドしたらしい。しかし無念の降板で、氏の言う「究極の解釈」は永遠に封印されてしまったことになる。

 

で、代役に指名されたのがジョナサン・ノット。これには驚いたが、なるほど「払い戻し無し」を納得させる人選ではある。図らずもノット&新日フィルという普段ならあり得ないコンビが実現することに。その期待感もあってか、平日昼にもかかわらず(人のことは言えないが…)大入り札止めの大盛況で、開演前の男子トイレの行列がとんでもない長さに。

 

ノットが振るマーラー7番は、2019年11月の東響定期で聴いている。第1楽章の序盤は、その時を思い出させるテンポの遅さで、基本的な解釈は変わっていないようだ。ノットのタクトはいつもよりオープンな指揮ぶりに見えるし、良くも悪くもサウンドにクセが無い新日フィルの対応力もさすが。多少のキズはあるにせよ、第1楽章や第3楽章の終盤など「これは」と思わせる瞬間が何度かあった。

 

しかしそれがなかなか持続しない。音楽は流れているのだが、局面ごとの精度にバラつきがあり、全体としてはどうも焦点を欠く印象。第4・5楽章は正直「長いな」と感じてしまった。それでも終演後は大いに沸いたが、多分に急遽の代役出演に対する労いの意があったのでは。代打として打線をつなぐ役割はきっちり果たしたと思うけれど、それ以上のミラクルな何かまでは起こらなかった…というのが個人的な感想。