サラリーマンも公務員も、そして作曲家などの誰しもが生み出した経験が一度はある代物が、この世には存在する。
いわゆる『ボツ』である。
課長や部長、プロデューサーやメンバーなどの面々が、ボツの烙印を我が子のような企画書やデモ曲に焼き付ける。
その烙印を押された企画書やデモ達はほとんどのケースにおいて、己のPCの容量を圧迫したのち、PCの故障や買い替えとともに電子の藻屑になるという悲しき生涯をおくるのみである。
そんなボツ作たちであるが、今作のタワーレコード購入特典『デモ曲のデモ集』として3曲が選抜され、曲がりなりにも音源化されるという僥倖を得た。
その3曲とは、『あのこはうちゅう』、『わかものよ』、『ブラックスター』というラインナップである。
どの曲も底抜けに無責任にポップであり、歌詞に至っては無責任そのものである。
まず、『あのこはうちゅう』という曲には『女の涙は見たくねぇ』というフレーズがある。
フィリップマーロウが田舎者であったならこんな感じで口にしているであろうなぁ、というハードボイルドなセリフだ。
しかしながら作中でこれを発言しているのは、30代の私立探偵ではなく小学5年生である。
しかも交換日記の返事を書いているのである。
主人公である小学生が、なぜこんなディープな昭和感を醸し出しているのであろうか。
しかもこのご時世に交換日記である。
このギャップに私は爆笑し、メンバー一同と盛り上がったのちに、この曲はPCに幽閉された。
次に『わかものよ』である。
Aメロでは『いつも前向き 前向き 前向き~』と呪文のように自分に言い聞かせているが、Bメロでついつい本心を現す。
コーラスパートを含めると、Aメロの『前向き』リフレイン7回に対して、Bメロの『悲しい』は12回も登場するので、ほぼほぼこちらが本心であろう。
そんな人間に『フレーフレーわかもの』と言われても、『おっさんも頑張れよ!』と男だらけのエール交換が交わされる不毛な映像しかイメージできない。
不毛だが、とてもシンパシーを抱かせるイメージに私は爆笑し、メンバー一同と盛り上がったのちに、この曲はPCに幽閉された。
と思ったら一瞬ライブで演奏された。
最後は『ブラックスター』である。
イントロはまるで、ディズニー映画の良い場面で流れるBGMのようにロマンチックかつメルヘンである。
だが、平和なのは冒頭からの18秒間のみで、19秒目の歌い出しとともに雲行きが怪しくなる。
その4秒後、彼女がゼクシィを読みだしてからはもう嵐が止まらない。
そして一番この作品で重要なポイントは、この作品の作者に、こんな彼女がいないという点である。
アレンジと歌詞の大荒れっぷり、想像力のたくましさに私は爆笑し、メンバー一同と盛り上がったのちに、この曲はPCに幽閉された。
こうして幽閉されていた3曲であるが、人を笑顔にする力を有しているのは事実である。
ぜひお聴きいただいて、この無責任で罪のない面白さを共有できれば幸いである。