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20140901失くした1000冊を取り戻す

ドライブ・マイ・カー
 (2021年/日本)


監督濱口竜介

原作村上春樹

脚本濱口竜介 大江崇允

撮影四宮秀俊 


出演/西島秀俊 三浦透子

   霧島れいか パク・ユリム 岡田将生 


■映画.comより■

舞台俳優で演出家の家福悠介は、脚本家の妻・音と幸せに暮らしていた。しかし、妻はある秘密を残したまま他界してしまう。2年後、喪失感を抱えながら生きていた彼は、演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島へ向かう。そこで出会った寡黙な専属ドライバーのみさきと過ごす中で、家福はそれまで目を背けていたあることに気づかされていく。


村上春樹が好きなので、村上春樹「原作」とある映画は気に入らないに違いないと思いつつどうにも気になって観てしまい、ほらやっぱり気に入らなかったと勝手にがっかりする。

今回は三浦透子を観たくてと言い訳しつつ観てみたけれど。

『薬指の標本』を期待してしまうのだ。


ドライブ・マイ・カー インターナショナル版


Swallow スワロウ』 

(2019年/アメリカ フランス


監督 脚本カーロ・ミラベラ=デイビス

撮影/ケイトリン・アリスメンディ

美術/エリン・マッギル
音楽/
ネイサン・ハルパーン


出演/
ヘイリー・ベネット

   オースティン・ストウェル

   エリザベス・マーベル

   デビッド・ラッシュ

   デニス・オヘア 

 
■映画.comより■

ニューヨーク郊外の邸宅で、誰もがうらやむような暮らしを手に入れたハンター。しかし彼女を取り巻く日常は孤独で息苦しいものだった。そんな中妊娠が発覚し、夫と義父母は歓喜の声をあげるが、孤独はこれまで以上に深くなっていった。ある日、ふと衝動にかられたハンターは、ガラス玉を口に入れて飲み込んでしまう。そこでハンターが痛みとともに感じたのは、得も言われぬ充足感と快楽だった。


分からなくないから、しんどい。出生の事情については、ちょっと過剰かなと私は感じたけれど。

切迫していながら恍惚としてみせる、彼女の空気。正常に異常を被せてくるような色の構成。異常に正常を合わせてくるような音楽の組合。個人の「非日常」が、多数の「日常」に埋め込まれていくエンドロール。

決して「好き」とは言わないけれど。この監督の、他の作品も気になるな。 


SWALLOW/スワロウ(字幕版)


あん

 (2015年/日本 フランス ドイツ


監督 脚本河瀬直美

原作ドリアン助川

撮影穐山茂樹

主題歌/秦基博 『水彩の月』


出演/樹木希林 永瀬正敏 内田伽羅 

   市原悦子 仲野太賀 浅田美代子 


■映画.comより■

どら焼き屋の雇われ店長として日々を過ごしていた千太郎。ある日、店で働くことを懇願する老女、徳江が現れ、彼女が作る粒あんの美味しさが評判を呼んで店は繁盛していく。しかし、徳江がかつてハンセン病を患っていたという噂が流れたことで客足が遠のいてしまい千太郎は、徳江と心を通わせていた近所の中学生ワカナとともに、徳江の足跡をたどる。ワカナ役には樹木の孫娘である内田伽羅が扮した。


時折カメラマンの存在が「見え」てしまうことに戸惑う。不要な引っ掛かり。
が、それ以上に樹木希林に引き込まれていく。演技とも思えない「徳江さん」が、陽だまりのように、静かに温かく光を放つ。
永瀬正敏の口元の表情や、市原悦子「私も働いてみたかったなぁ…」という呟き、仲野太賀の、ワカナを連れた千太郎に向ける眼差が、印象に残る。


あん


朝が来る (2020年/日本)


監督河瀬直美

原作辻村深月

脚本河瀬直美 高橋泉

撮影月永雄太 榊原直記


出演/永作博美 井浦新 蒔田彩珠

   浅田美代子


■映画.comより■

栗原清和と佐都子の夫婦は特別養子縁組により男の子を迎え入れる。6年後、産みの母親「片倉ひかり」を名乗る女性から「子どもを返してほしいんです。それが駄目ならお金をください」という電話が突然かかってくる。当時14歳で出産したひかりは、子どもへの手紙を佐都子に託す、心やさしい少女だった。しかし、訪ねて来たその若い女からは、6年前のひかりの面影をまったく感じることができず……。


産毛のきらめくのが見える程の、中学時代のひかりのアップ。終盤、振り返るように見せたこのシーンが、「なかったことにしないで」の何もかもを内包しているようで、美しくて、一番好きだ。なぁ、イイコの「お父ちゃん」よ。 そして最後の増し増しに、私はドン引き。本編の素っぽさを全て台無しにされた気分。子どもの「お母ちゃん」、この一言だけで良かったと思うのだ。 3人のお母さん、良かったんだけどな。


朝が来る


IT イット THE END  “それ”が見えたら、終わり。 (2019年/アメリカ


監督アンディ・ムスキエティ

原作/スティーブン・キング

脚本/ゲイリー・ドーベルマン

撮影/チェコ・バレス

美術/ポール・デナム・オースタベリー

音楽/ベンジャミン・ウォルフィッシュ


出演/ビル・スカルスガルド

   ジェームズ・マカボイ

   ジェシカ・チャステイン

   ビル・ヘイダー

   イザイア・ムスタファ

   ジェイ・ライアン

   ジェームズ・ランソン

   アンディ・ビーン   


映画.comより■

「IT」の続編にして完結編。前作から27年後を舞台に大人になった「ルーザーズ・クラブ」の面々が、再び「それ」と対峙するさまを描く。小さな田舎町で再び連続児童失踪事件が起こり、「COME HOME COME HOME」という、「それ」からの不穏なメッセージが届く。幼少時代に「それ」の恐怖から生き延びたルーザーズ・クラブの仲間たちは、27年前に誓った約束を果たすため、町に戻ることを決意するが


うーん…。

白塗り途中のペニーワイズが一番怖かったかな。あの眼球と唇の演技。

そうそう、それから! べバリーが、昔住んでいた家で思い出の品を探している時の、遠い背後を横切る老婆の姿よ。怖い怖過ぎる。

それ以外は私には、ただアトラクションのようで。話の辻褄が合っているのかさえ分からない。


キャラクター (2021年/日本)


監督永井聡 

脚本長崎尚志 川原杏奈 永井聡

撮影近藤哲也

美術/杉本亮

主題歌/ACAね×Rin音×Yaffle 『Character』


出演/菅田将暉 Fukase

   高畑充希 中村獅童 小栗旬 


■映画.comより■

漫画家として売れることを夢見て、アシスタント生活を送る山城圭吾。ある日、一家殺人事件とその犯人を目撃してしまった山城は、警察の取り調べに「犯人の顔は見ていない」と嘘をつき、自分だけが知っている犯人をキャラクターにサスペンス漫画「34」を描き始める。漫画は大ヒットし、山城は一躍売れっ子漫画家の道を歩んでいく。そんな中、「34」で描かれた物語を模した事件が次々と発生する。


あえての隙と思いきや、伏線でも何でもない。意味有り気に置かれたものが、最後まで拾われない。幾度もイラッとするのはきっと、思っていたより面白そう、だったから。Fukase含め役者も良かった。それが後半、期待していたものが悉く放置され、ガッカリする。コミュニティについてももう少し描いて欲しかったし、辺見との関係の説明は雑過ぎる。エンドロールの最後の最後に置いた、あざとい仕事は好きだけど。


キャラクター


そこのみにて光輝く

 (2014年/日本)


監督呉美保

原作佐藤泰志

脚本高田亮

撮影近藤龍人


出演/綾野剛 池脇千鶴 菅田将暉

   高橋和也 火野正平 


■映画.comより■

芥川賞候補に幾度も名を連ねながら受賞がかなわず、41歳で自ら命を絶った佐藤泰志の唯一の長編小説を映画化。仕事を辞めブラブラと過ごしていた達夫は、粗暴だが人懐こい青年拓児とパチンコ屋で知り合う。ついて来るよう案内された先には、取り残されたように存在するバラックで、寝たきりの父、その世話に追われる母、水商売で一家を支える千夏がいた。その場所で、ひとり光輝く千夏に達夫は


池脇千鶴が良かった。存在に説得力があって。
でもなんだろうな、相性の問題だと思う、私はこの作品に惹かれない。その美しさにも惹かれない。例えば『私の男』のような、鬱々としたなか何かに圧倒される瞬間や、ぐっと引き込まれる瞬間、或いはもう一度観たいと思うようなシーンが、無かった。


そこのみにて光輝く


PLAN 75 (2022年/日本 フランス

 フィリピン カタール

 

監督 脚本/早川千絵

撮影/浦田秀穂

美術/塩川節子


出演/倍賞千恵子

   磯村勇斗 たかお鷹 河合優実 


■公式サイトより■

是枝裕和監督が総合監修を務めたオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」の一編として発表した短編「PLAN75」を長編化。少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度「プラン75」が国会で可決・施行され、当初は様々な議論を呼んだものの、超高齢化社会の問題解決策として世間に受け入れられた。夫と死別し、ひとり静かに暮らす78歳の角谷ミチは


なんと美しい始まりだろうか。美しいからこその不穏さ危うさ。汚れたガラス越しの柔らかな光。不吉に伸びる黒い枝先。倍賞千恵子の在りよう。

実際にあった幾つかの事件を想起させもする。

市井の人々の「ささやかな」善良さが、揺らぎが呼吸が、私を後ろめたく苦しくさせる。


PLAN75



宮部みゆき 『居合わせた男

イラスト/杉田比呂美

デザイン/大久保明子

解説/北上次郎

出版社/文春文庫

 
■本文より■

平日の昼下がり、中央本線を走る特急あずさ二十号のグリーン車は空いていた。

「噂話ひとつだって、情報ですもの。こっちが取ろうと思わなきゃ取れないし、取りたい形でしか入ってきませんね」

今なら、久美子も賭けをお預けにしてくれるかもしれない。


そこはかとなく漂う昭和感が、なんとも楽しい。奥付を見ると1992年発刊とある。平成4年。ほぅ。人生の2/3は平成であったのに、いまいち「平成っぽい」が私には分からない。なんなら「大正っぽい」の方がイメージが湧くくらいだ。さて。 身近にいたらそれなりに仲良く付き合っていくのだろうなという人たちが登場する。その「まぁまぁ」の切り取り方や、オカルトにも現実にも振り切らないバランスが面白い。


とり残されて (文春文庫)


08/04 19:00- セルリアンタワー能楽堂

創作舞『雨ニモマケズ

セルリアンタワー能楽堂 伝統と創造シリーズvol.13

 

原作/宮沢賢治 作品群より

監修/津村禮次郎

演出 振付/森山開次

作曲/渋谷牧人


舞人/津村禮次郎 大前光市 森山開次

歌唱/福井敬

チェロ/多井智紀

箏/澤村祐司

笛/田中義和

和太鼓/高橋勅雄 高橋亮


舞台美術/倉田康治(いけばな草月流)

衣裳/藤崎コウイチ


照明/瀬戸あずさ(balance,inc.DESIGN)

音響/岡直人

舞台監督/酒井健(ニケステージワークス)


■フライヤーより■

言葉一つひとつに触れながら踊ると、彼の心象風景スケッチが、私の見る世界と重なって、まぶたが滲み、体が震える思いがする。そして、私という体が、突然飛び上がり、縮こまり、転がり出すようだ。そして、「どっどど どっどど」と高鳴る胸の鼓動に合わせ肺を思いっきり広げて、大地を駆けたくなる。広大な世界から石ころを拾うように集めた言葉の音と色。賢治と旅をしているようだった。 森山開次


-flow-

S0 暴風と男 ~青い照明と石列車

S1 石の色色

S2 セロ弾きの練習風景~インドの虎狩り

S3 ハット鉄道~午后の授業~お能鉄道(ジャズ)

S4 春と修羅

S5 赤茶鬼と青黒鬼の剣舞

S6 祭囃子 ~この美しい雪が来たのだ

S7 永訣の朝  詩の朗読と 妹としの能舞

S8 目の前の風景

   J.Sバッハ 無伴奏チェロ組曲

   第1番より サラバンドとプレリュード

   そして、~雨の地団駄

S9 雨ニモマケズ

S10  南無

S11  星めぐりの歌~銀河へ

S12  歩


正面2列目中央席! まず登場する能楽師 津村禮次郎の超常的な色気。そして明滅の青の元、異形の者達が…どっどど、どっどど…やって来る。今回ばかりは森山さんだけを追えず。舞台の誰も彼もが、あまりにも強烈に美しい。その視線身体描く直線曲線組合の精緻不在の存様、所作よ佇まいよ存在よ、音は鼓動となる。上品な能楽堂の三方の壁に、演者の影らが同時に蠢き揺らめき、益々妖しくまた愛らしい。