宮部みゆき 『居合わせた男』
イラスト/杉田比呂美
デザイン/大久保明子
解説/北上次郎
出版社/文春文庫
■本文より■
平日の昼下がり、中央本線を走る特急あずさ二十号のグリーン車は空いていた。
…
「噂話ひとつだって、情報ですもの。こっちが取ろうと思わなきゃ取れないし、取りたい形でしか入ってきませんね」
…
今なら、久美子も賭けをお預けにしてくれるかもしれない。
そこはかとなく漂う昭和感が、なんとも楽しい。奥付を見ると1992年発刊とある。平成4年。ほぅ。人生の2/3は平成であったのに、いまいち「平成っぽい」が私には分からない。なんなら「大正っぽい」の方がイメージが湧くくらいだ。さて。 身近にいたらそれなりに仲良く付き合っていくのだろうなという人たちが登場する。その「まぁまぁ」の切り取り方や、オカルトにも現実にも振り切らないバランスが面白い。