どこからか、カブトムシのにおい
6月が半分過ぎた。嫌いな月ランキングがあったら、たぶん常に上位に食い込んでくるはずの6月。祝日がない。多くの県で梅雨入り。洗濯物が片付かない。その他もろもろ。ボーナスというわずかな希望も、社会保障をはずれた個人事業主になった今となっては遠い世界の出来事。そんなこんなな理由から、6月はなんとなく踏んばりどきのイメージがあって、とくに何事もなく半分を過ぎたことが分かった今、少しほっとしていたりする。話は変わるけど、週に2~3回は夕食後に歩くことが最近の日課だ。仕事柄、日中ほとんど動かない。健康と体力維持のため、そして歩数を稼ぐため(この件はまた別で書こうと思う。)、今年は『一週間の平均歩数を8,000歩超え』を目標にした。6月を折り返した今、達成できなかった週はないことを考えると、数字で目標を設定することって大事だなぁと思う。とは言え、雨の多いこの時期は結構この目標を達成するのが大変だ。雨の合間を縫って一日に数回に分けて歩きに出かけることも珍しくはない。天気予報や雨雲レーダーとにらめっこしながら、いつどのタイミングで歩けそうかを考え、一日の予定を決めることもしばしば。先日も、夕食後スマホを確認し、今なら行けると思って家を出た。別にウォーキング用の服装があるわけでははい。日中に着ていた服のまま、シューズも普通のコンバース。念のため、傘を持っていざ外へ。少し歩き始めたところで、耳に入ってくる音が晴れの日のそれとは少し違うことに気づく。車のタイヤの音が水気を含んでいたり、木の葉が風にこすれる音に水滴の音が混じっていたり、普段より水かさが増えた川の流れる音に勢いがあったり。なるほど、雨の日や雨上がりのときじゃないと聞けない音があるんだ。と思ったとき、知っている香りが鼻先をかすめた。あ、この匂い知ってる。たぶん湿気を帯びた腐葉土の匂いなんだけど、わたしはこの匂いを、実家の子ども部屋で嗅いだことがある。カブトムシの匂い。夏になると、いとこと一緒に捕まえに行ったなぁ。脱走したクワガタが玄関の靴の中から見つかったこともあった。匂いは鮮明に記憶を呼び覚ます。きっとまだカブトムシたちは、土の中で出番を待っているんだろう。梅雨の夜が感じさせてくれた、夏の予感。なんだか足取りも軽くなる。雨の日の散歩も悪くない、かも。