農業全書 024 水利 | noninomのブログ

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農業全書 024
 
 
農業研修の時の一幕
海が近い某所で生きた木にウッドデッキが!!!
キラキラ光る海キラキラキラキラキラキラ素晴らしい景色でしたニコニコ
 

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間違い等あればコメントで教えてください🙇

 

「農業全書巻の一

農事總(総)論 

水利  第七」

 

 

P75〜77

 

田に水をそそぎ引く事は、川より溝洫(コウキュウ、溝堀)などとて段々其田の廣き狹(狭)きにしたがひて、其井手溝の大小、或は八尺、或は四尺二尺、それぞれに應じて旱(ヒデリ)に絶えず水を引き、洪水の時は又わきへ落し去るべし。
若し川なき所は塘(ツツミ、土手)を築き、閘(ヒ、ヒノクチ、水門)をふせ、或は筧(カケイ、竹の樋)にてとり、又高き所に汲み上るは桔(ハネツルベ、井戸から水を組む道具)又龍骨車の類にて水をとるべし。
此外色々の巧み手立を盡(尽)し、晝(昼)夜となく苗の枯れざる計あるべし。
稲は大陰の精、水なくては半日の間にも痛む物なれば、旱魃(干ばつ)のあらん事をつねにおもんばかりて、霖雨の中も忘るべからず。
池塘の通塞、しがらみ、堰の破損など旁心(ボウシン、カタガタ、ついでに)を用ひて水を米穀のごとく思ひ、不意の旱にも水の絶えざる計をなすべし。
又池川もなく、ひとへに雨水ばかりを守る平地の田地は、井を掘り、其外用水の巧みを盡して旱の難をのがるべし。
天水ばかりを守りて他の手立もならざる所には旱稲を作るべし。
此のごときの地にしいて水稲を作る事は其苦労空しくするのみならず、損亡する事しげきゆへ、糞養の手入も漸々(ゼンゼン、徐々)に疎かになる物なれば、肥田も後は瘠せてあれすさむものなり。
損徳をよく了簡して旱稲其外畠物の類にて利分のまされる物を作るべし。
世上此あやまりを改め、かねて水がかりのあしき田に年々妄り(ミダリ)に水稲を作る人のために、此旨をのべて得失をさとすものなり。
又畠のわきにも小池を掘り井をかまへて旱のそなへとすべし。 
木綿、藍、其外菜の類にも、極熱の中は畦の溝に折々水をそそぎ引きてうるほすべし。
たとひ枯れ痛まずといへども、亢陽(コウヨウ、日照り)とて久しくうるほひ絶ゆれば、必ず陰氣ぬけ、實りよからぬ物なり。 
時々暫く水をそそぎ引いて陰氣をやしなふべし。
其上糞しを多くしをきても見合はせ、時々水を引かざれば、糞のきくべき時分に其力及びかぬるものなり。
又高田に水をそそぎ、水田に日を當つる事、是農事の肝要なり。 
喩へば人の氣血の如し。
一方不足すればかならず病を生ず。
土地も其如く、燥湿の程らひよからざれば、もし日に痛まざれば必ず水に痛む。
農事にかぎらず、よろづの事よき程らひをはかるは天道也。
陰陽の消長互に其根と成りてかたおちなき理りなれば、一偏にかたよりたるは天の心にあらず。
いかほど糞培を盡しても乾湿のほどらひあしければ、其功空しき事なれば、農夫たる者、先づ水利のかけ引のそなへをよくはかり儲けて、其後種蒔の品をゑらびて作るべし。
穀物の多少則ち此に有りとしるべし。
然れ共水は陰なり。
陽氣の過ぎたるをうるほす助けとはなるべし。
少しにても過すべからず。
かならず災となる物也。
木綿、藍、其外高利を求むる畠物、雨うるほひのなき時分毎日水をそそぎ水糞をかくる事、是を以て渡世(トセイ)にする作人の能くしれる所なり。
委しく記すに及ばず。
 
○意訳○
 

田に水を引きそそぐことは川から溝や水路を通じて段々と田地の大小に応じて井戸や水路を作り、乾燥した時には絶えず水を引き、洪水の時にはその水を排水することが必要です。

川がない場合は土手を築いて塘(ツツミ)を作り水門で水を閉じたり、竹の樋で水を流したり井戸水を汲み上げるための桔槹(ハネツルベ)※や龍骨車※などを使用する必要があります。

その他様々な技術を駆使し昼夜問わず苗が枯れないように注意を払うべきです。
稲は強い陰性、多くの水分を求める植物であり、水がないと半日の間でも枯れる可能性があります。
そのため干ばつのことを常に心に留めておき霖雨の降る中でも忘れてはなりません。
池からの通路が枯葉、藻や水草などで詰まったり、堰が壊れたりした場合にはすぐに手を打ち、水を米穀のように貴重なものとして考え突然の干ばつにも水が絶えないように計画しておく。
池や川がなく、雨水だけに頼る平地の田畑では井戸を掘り、他の水利を最大限に活用して干ばつの困難を克服すべきです。
天水だけに頼って他の手段がない場合には、耐旱性のある稲を作るべきです。
このような土地に水田を作ることは苦労が無駄になるだけでなく損失を招く可能性が高く、肥料の施しも徐々に怠けがちになります。肥沃な土地も後々はやせてしまいその状態が悪化します。
損失と利益をよく考慮して、水田以外の作物で利益を得られるものを栽培することが重要です。
世の中でこの誤りを改める事、以前より水がけの難しい場所に毎年無謀にも水田を作る人々のために、この点を述べて利害を考えることが重要です。
畑の周辺にも小さな池を掘り、井戸を掘って干ばつに備えるべきです。 
木綿や藍、他の野菜類についても極端な暑さの中では畝の溝に定期的に水を注ぎ潤すべきです。
枯れていなくても極端な日照りが続き潤いがなくなると陰氣が抜けてしまい収穫物が十分に育たなくなります。
そのため時々しばらく水を注ぎ陰氣を保つようにすべきです。
糞(肥料)をたくさん施しても、それに見合う水を与えなければ糞が効果を発揮する時期に力が及ばなくなります。
また高田に水を引き日を当てること(温める事も)は農業において非常に重要です。 
例えば人の「氣」(精神)「血」(肉体)のように。
一方が不足すれば必ず病に陥る。
土地も同様に、乾燥や湿気の程度が適切でなければ日光にさらされる事または加湿で必ず痛んでしまいます。
良いバランスを保つことは、農業だけでなく、あらゆることにおいて重要です。それはまさに天道に倣うことです。
陰陽のバランスが重要であり、その相互作用がすべてのものの根源です。
安定した成長や調和の実現に欠かせない要素です。天地の法則に背いて偏ることは、天の意志に背くことになります。
肥料の効果を最大限に引き出すには、土地の乾燥、湿気のバランスを整えることが重要です。
農夫はまず水利の準備を十分に行い、その後に適切な品種の作物を選択して作業を進めるべきです。
収穫量の多寡はこの理にありと知るべし。
水は陰性の性質です
陽氣が過ぎることで土地が乾燥して作物に悪影響を及ぼす場合、水を与えることが助けとなります。
陽気が過ぎると土壌が乾燥し作物にとって良くありません。少しでも過ぎてはいけません。
必ず災となるものなり。
木綿や藍などの高収益を目指す畑作物にとって、水やりと水糞(液肥)の供給は非常に重要です。
雨が少ない時期には毎日水を与えることが必要です。
作物栽培において水やりや肥料の適切な管理が作人の生業そのものであることは当然で詳しく説明するまでもない。
 
○感想○
 
農業をする上で水はとても重要ですが、
陰陽と表現される通りバランスが大切で
「良い土壌」の代名詞である
「団粒構造」
これは水捌けがよく水もちが良いという
相反する性質を兼ね備えた大地の事。
「大地の再生」や菌根菌でも言われています。
福岡正信氏が提唱した自然農法の中でも様々な草木の種を団子に丸めてあちこちに投げると、
土壌の条件に合う植物から順に生育して行く…
この方法でアフリカや地中海沿岸などの砂漠でも半年で草に覆われ、緑化に成功しています。
この事からも植物の根と微生物の働きによって作られている団粒構造が水もちの良い土壌を作る事がわかります
 
「陰陽」として表現し理解していた江戸時代の人々はやはり凄いですねにっこり
 
大地の空気と水脈が微生物との共生を促して
ネットワークを作っている話⬇️

 

※龍骨車⬇️

 

 
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根っこと微生物の共生の話「菌根菌」⬇️