農業全書 023 糞(こゑ) 3 | noninomのブログ

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農業全書 023
 
稲刈りの8割ほどを近所の方にお願いして収穫している途中、
稗(ヒエ)が多い事と倒伏(稲が倒れる事)も酷くて
コンバインが詰まり、手作業で内部に詰まったワラなどを
引っこ抜いているところです。
内部のドラム状の「こぎ胴」は足踏み脱穀機と
ほぼ同じ構造でした。
その網とこぎ胴の間に湿ったワラが詰まっています。
エンジンをかけて無理やり回すとVベルトが滑って煙が上がっていました絶望
地域で最初の稲刈りだったのでここで800万円のコンバインを
壊すわけにはいきません。
9月頭まだまだ暑い中で変な汗をかきながらの作業でした驚き
 

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間違い等あればコメントで教えてください🙇

 

「農業全書巻の一

農事總(総)論 

糞(こゑ) 第六」

(肥え、肥料のこと)

 

P72~75

 

又上糞といふは、胡麻や蕪菁(カブラ、カブの事)の油糟(カス)、木綿ざねの油粕、又は干鰯、鯨の煎槽、同骨の油槽、 人糞等の色々力の及び貯へ、或は粉にし、或は水糞と入れ合はせてくさらかしをき、それぞれの土地と作り物によりて用ゆべし。
黒土赤土の類には油糟を専らにすべし。
砂地は鰯よし。
濕氣(シッケ)埴(ネバ)り心なるには木綿さねの油糟よし。
上糞の分は田畠にかぎらず何れの物に用ひてもよくきくなり。
されども土の性によりて少しづゝの用捨は有るべし。
了簡(ケン)指引して用ゆべし。
それ黒土はらゝぎて重く肥へたるは信(マコト)に美土なり。
然れども間に餘り肥へ過ぎてみのり少なき事あり。
是は河の砂などを入れてさはやかにすべし。

磽(ヤセ)土は信に悪し。

然れども糞を用ひて手入をよくし、培ふ時は、苗さかへて實りよし。

土の性、美悪色々替り有りといへども、其術を盡(尽)し其土地によく合へるこやしを用ゆれば、必ずしるしなしといふ事なし。

是を田家に糞藥(薬)といふなり。

實に其こやしを用ゆるの法、醫術によく似たり。

土地に虚實冷熱あり。

糞に補瀉温涼(ホシャオンリョウ)あり。

土の性よはくやせたるには鰯、油糟、人糞など土地を補ふ物を用ゆべし。 
又地の實してつよく、肥へ過ぎて却て實りのなきには、河溝などの砂泥をよく干しをきてくだきて入るべし。
又白沙を入れても土氣のつよ過ぎたる滞をさるべし。
又濕氣、底冷氣のあるには灰や焼糞の類を入れて温むべし。
又南向終日日當の所など、又うるほひなく土乾きて陽氣がちなる所には、水糞を用ひて陰氣を
助くべし。
又糞壤(壌)を貯へ置く事も藥種をおさめ置くがごとし。
風雨濕氣にあたらず日向の所に糞屋を作り、のきをひきくして内を掘り、瓦を敷き、或は石をたゝみ灰糞の類を入れ、其一方には桶をいけ、水糞をためをき、各々用にまかせてつかふべし。喩へば良醫(医)の萬の物を捨てず、集めたくはへをきて、それぞれの用に随(シタガ)ひ病を治するごとく、老農も又泥土ちりあくた萬の糞を集めをき、それぞれの地味に随ひて是を用ひるに残す糞なし。
都べて農民の糞灰を大切にする事、精米(シラゲ)と同じく思ひ入りて耕作をつとむべし。
如此して富を得ずと云ふ事なし。
財穀の多少、則ち此糞を蓄ゆる手立に有りとしるべし。
又古語にも上農夫は糞を惜む事黄金をおしむがごとしともいへり。
又油糟、鰯などの糞を貯へ置きて、色々の雑糞に合せ和して用ゆれば、其しるしおほき物なり。
尤上糞ばかりを用ゆれば、其しるしつよく、利を得る事速かなりといへども、所により作り物により都遠き所にて雑菜雑穀など其價下直なる物、又は田畠其作人の分量より多くて手にあまりてあらごなししたるに、大切なるかね糞の高直なるを用ひては、却って造作まけして利潤なきゆへ、色々才覺を以て雑糞を多く蓄へをき、上糞を少しづゝ合せて用ゆべし。 
是則ち醫者の人参や甘草などの良藥を少し加へて他の藥性を引立つると替る事なし。
又糞も藥剤と同じ心得にて、一色ばかりはきかぬ物なり。
色々取合せよく熟して用ゆる事、是肝要なり。
糞にかぎりて新しきはよくきかず、 ねさせてさらかし、熟する加減をよく覺えて熟したる時用ゆれば、其しるし多し。
但あまり程久しく熟し過ぎて陽氣のぬけたるは却つて又きゝ少しとしるべし。
又田畠に糞を入るゝ事、喩へば和(アエモノ)をあゆるがごとし。
それぞれのあへしほとよく思ひあはざれば味ひ調はぬものなり。 
こやしも其ごとく、土と糞とよく交りむらなく思ひ合は
ざれば、きゝ少く或は蟲氣などの病を生ずる事も、こやしのかげんあしくむらまじり、又は地ごしらへのあしきより出来ること多し。
然るゆへに土地は深き程が利潤は多けれども、糞の少き所にて底のにが土を深く起し耕す事は、和物の其物は多くしてあへしほの少きと同じ心なり。
此等の理りをよくわきまへ、糞のさしひき彼の良の藥を用ゆる機轉をよく合點(点)して農業をつとめたらんは、目前に利潤を得ん事疑ひなかるべし。
前に云ふごとく醫者の藥種を吟味し、大切にしておさめをき、それぞれの用を待ちてつかふごとく、農民は懇に心を用ひて糞しをさへ多くあつめ置き、種物により、土地により、時分を考へ宜きに随ひて用ひなば、作り物の取り實におゐては偏に我倉の内の物を取るがごとくに少しもうたがひ有るべからず。
是誠に土民鄙賤のわざの中にも分けいやしき事なれば、此理りを委(クワシ)くしらぬ方よりみては、極めていやしめかるしむべけれども、五穀の實りなき磽悪の土地を忽(ニワカ)に變(変)じて則ち肥良の地となし、少くうへて多く収め取る事目前なり。
然れば天地化育の功を手の下に助け、百穀を世に充たしめ、萬民の生養を厚くする事、農業の内にても取分け此糞壤を調ずるを以て肝要とすべし。
されば心あらん農夫は此理りを深く思ひ、此に心を留め眼を付けて慎んでよく其事をつとめざらんや (是則ち目前に天地の化をたすけて世をゆたかにする手立なれば、聖人の御心にかなひたるわざなり。 
心あらん人誰か是をたつとびざらん)。
 
○意訳○
 
質の良い「上糞」と言うのは、胡麻やカブの油粕、木綿の油粕、(この場合の「木綿(ユフ)」は楮(コウゾ、和紙の原料)の事か?)

 

又は干鰯(イワシ)、鯨を煎じた粕、同骨の油粕、 人糞等手に入るものを蓄え、或は粉にし、或は水糞と入れ合はせ腐らせておき、それぞれの土地と作物に合わせて使うべし。
黒土赤土の類には油粕を専ら使うべし。
砂地には鰯よい。
湿気、粘りのある土には木綿の油粕がよい。
上糞の分は田畑に限らず色々に用いてもよく効く。
しかし土との相性によって多少の用捨(取捨)は有る。
よく考え答えを導き用いるべし。
バラバラになる黒土、重く肥えているものはとても良い美土なり。
だがあまりにも肥え過ぎても実り少ない事がある。
この場合河の砂などを入れて爽やかにするべし。
 

痩せた土はとても悪い。

しかし肥料を入れて手入れし培えば、作物の苗は栄えて実りよい。

土の性質、良し悪し色々変化もあるが、これらの手を尽して土地によく合う肥料を用いれば、必ず効果無しという事はない。

これを「田家に糞藥(薬)」と言う

実にその肥料を用いる法は医術によく似ている。

(現代でいうと医療より漢方のイメージに近い)

土地に様々な状態があり

肥料にはその状態を補ったり削ったり、温めたり冷ましたりある

土の性が弱く痩せている所は鰯、油粕、人糞など土地を補う物を用いるべし。 
充実して強く、肥え過ぎて実りの少ない所は、河溝などの砂泥をよく干しをきてくだきて入るべし。
白砂を入れても土氣の強すぎを和らげるられる。
湿気、底冷えする土地には灰や焼糞の類を入れて温めるべし(陽氣を助ける)。
南向きで終日日の当たる所など、潤いなく土乾いて陽氣がちな所には、水糞を用ひて陰氣を助けるべし。
 
糞壌を貯えて置く事も薬を納め置くように。
風雨湿気の当たらない日向の所に糞屋を作り、軒を低くして内を掘り、瓦を敷き、又は石を畳み(石畳)灰糞の類を入れ、其一方には桶を入れて水糞を貯め、各々用途に合わせて使うべし。
(「風通しの良い直射日光の当たらない所」と良く薬の箱の裏に書いているのと同じということですね)
例えば良医があらゆる物を捨てずに、集め蓄えておき、それぞれの用途に従って病を治すように、
老農(ベテラン)も又泥土ちりあくた萬の糞を集めをき、それぞれの土地に従ってこれを使い、残らず肥料を使う。
(この場合も時代的に現代の医者より漢方医のイメージに近いですね)
すべての農民の糞灰(肥料)を大切にする事は(当時貴重だった)白米と同じように大切にして耕作を務めるべし。
「如此して富を得ずと云ふ事なし」
(これをして富を得ずという事なし)
収穫の量は肥料を蓄える手立に有りと知るべし。
又古語にも「上農夫は糞を惜む事黄金を惜しむがごとし」と言われる。
又油粕、鰯などの糞(肥料)を貯え置いて、色々の雑糞に合せ和して用いればその効果は高い。

もちろん上質な糞(肥え)ばかりを用いればその効果は高く利潤を得る事も速いが、所により作り物により都の遠き所にて雑菜雑穀などその価値の低い物、又は田畑の作人の分量より多く手に余って雑な使い方になるようでは、高価な肥料を用いては却って利潤が少ない。

それぞれの最適に合わせて雑糞を多く蓄えておき、上質な糞(肥え)を少しづつ合せて用いるべし。 

これは医者が高麗人参や甘草(カンゾウ)などの良薬を少し加えて他の薬性を引立てるのと同じだ。
肥料も薬剤と同じ心得で、一種類ばかりでは効かない物だ。
色々取合わせよく熟して用いる事、これが肝要なり。
肥えは新しいものは良く効かず、 寝かせておいて熟す加減をよく覚え熟した時に用いればその効果は高い。
(「完熟」ですね)
あまりにも熟し過ぎて陽氣の抜けたものは却って効果は低い。
また田畑に糞を入れる事は、和え物を和えるようだ。
それぞれが程よく調和して美味しくなるものだ。 
肥しもそのように、土と糞とよく交りムラなく馴染んでいなければ効き少く、或は病害虫が来る事も肥料の加減が悪くムラがある事、又は土地自体の状態の悪い事で出来ることが多い。
したがって土地は深い程利潤は多いけれども、肥料の少い所で底の土を深く起し耕す事は、和物のそのものは多くても他のものが少ないく混ぜても意味がないと言うことだ。
これらの理りをよくわきまえて、肥えの差し引き、彼の良の薬を用いる機転をよく理解して農業に努めれば、利潤を得られる事は疑いない。
前に言うように医者の薬種を吟味し、大切に納めて置き、それぞれ用途に応じて使うこと、農民は心を込めて肥やしを多く集めて置き、種物により、土地により、時分を考え宜きに随って用いれば、作物の収量において少しも疑いはないだろう。
是誠に土民鄙賤(ドミンヒセン、質素な)の技の中でも特にいやしき(貧欲な)事なれば、この理りをよく知らない方より見れば、極めて貪欲な事だけれども、五穀の実りのない瘠せた悪い土地を肥良の地へ早く変えて、少く植えて多く収穫する事ができる
然れば天地化育の功を手の下に助け、百穀を世に充たしめ、萬民の生養を厚くする事、農業の内にても取分け此糞壤を調ずるを以て肝要とすべし。
されば心る農夫はこの理りを深く思い、心を留め眼を付けて慎んでよくその事を勤めなさい。
是則ち目前に天地の化を助けて世を豊かにする手立なれば、聖人の御心に叶う技なり。 
心あらん人誰か是をたつとびざらん
(心ある人は驚くだろう?)
 
○感想○
 
肥料の続き、3回目です。
様々な肥料の原料を大切に集めて蓄えておくこと
適切に使うこと
ゴミのようなものを蓄える事が「卑しい」とも取れるが
それが世の為、人の為になる。
 
貝原益軒の影響も強く薬や医療の例え
(現代では「漢方医」の方が近そうですが)が
多く使われていますが
人を助ける事、
「医食同源」などが浮かびましたにっこり
 
 
続き 024⬇️