2024/5/19(日)
山形県酒田市 庄内能楽館
能〈翁〉
シテ翁/宝生和英
三番叟/中村修一
千歳/和久荘太郎
面箱/飯田 豪
笛/藤田貴寛
小鼓頭取/大倉源次郎
脇鼓/飯冨孔明、大倉伶士郎
大鼓/亀井洋佑
地頭/武田孝史
地謡/水上 優、亀井雄二、田崎 甫
後見/小倉健太郎、辰巳大二郎
狂言後見/高野和憲、深田博浩
庄内能楽館に行くのは2018年以来。
その時の観能記。↓
庄内能楽館45周年記念に宝生和英宗家による翁。
そう言えば、東北で翁を観るのは初めてになる。
第一部は小鼓方大倉流家元で人間国宝の大倉源次郎師による解説。単なる解説ではない日本文化についての講義みたいなもの。
神社の6月と12月に藁で作った茅の輪くぐりという行事があるのだけれども、その茅の輪を土の上に置いたのが相撲の土俵になったと言う話は初めて聞いた。まだまだ知らない事が多いな。
故坂本龍一氏が晩年に翁に興味を示していた事、小鼓の胴に刈田蒔絵(田んぼの稲の切り株を蒔絵に。)があり、徳川家康が尾張徳川初代義直にプレゼントしたもので、農民を象徴する稲の切り株を図案にした家康の深い意味を知る事が出来た。ラストに翁と関寺小町の対比。翁は老人の男性、関寺小町は老人の女性。共に祝言の能。まるで雅楽の番舞みたいな関係性を示唆して終了。
あっという間に45分。
休憩後に第二部として翁。
火打ち石の鳴る音がやけに多い。そういう型なのかはわからない。
庄内能楽館は常の能楽堂より天井が低めで、大小座と鏡板の奥行きも狭い。大小の後ろに地謡が座るのが常の翁だけど、地謡が座れるスペースが無いので橋掛かりに地謡は座る。このパターンの翁は初見。
翁は祭祀。それを改めて実感。千歳の和久荘太郎師の重厚でキレのある舞。宝生和英宗家の、(とうとうたらり〜)が神道の祭祀の警蹕(けいひつ、低い声であ〜と伸ばしていく所作)なみの重心の低く伸びのある謡。やはり翁は太夫が勤めるとしっくり来る。
ひとつ残念な事。天地人の舞に入ったとき、見所正面最前列から、激しいスマホからの音楽音が鳴り響く。怒りを通り越して笑ってしまった。ただ、見所でいろいろ起こり得る事を想定しているので集中力を切らさないように勤めたせいか何とか継続出来た。
翁が去り、三番叟へ。中村修一師が終始キレッキレ。揉の段のジャンプ、鈴の段のボレロみたいにビートとグルーヴを上げていく様を観て、ライブハウスで自分がヘドバンしている錯覚に陥ってしまった。実際に頭を揺らせないで脳内、体内ヘドバンしていたけど。ビートの細かさがよくわかる。地謡も橋掛かりから、地頭の武田孝史率いる厚みのある地謡。囃子の厚みは呪術なみのトランス状態。
翁や三番叟は、室町時代当時はもっと自由に肌で感じていたのではないかなと思えたりする。見所もトランス状態になっていたのでなないかな。