庄内 夜遊の調べ | この辺りの見所の者

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山形県酒田市にある庄内能楽館に行って来ました。
今年で40周年を迎え、公益財団法人に移行してから5周年を迎えたとのこと。
酒田駅から路線バスで10分弱。

酒田港に近いところにありました。

↑5/10日の地元紙、庄内日報より。
それによると、庄内能楽館は定員150人。

自分が見た感じでは、正面と脇正面に桟敷席があり、その後ろが椅子席。広さ的には東京の杉並能楽堂や神奈川鎌倉能舞台くらいかな。
ほぼ満員のお客さんで、庄内能楽館 理事長の池田 宏氏の挨拶。今までも宝生会や万作の会の協力で仕舞教室や狂言ワークショップが行われてきましたが、今年は年間に2〜3回の、能楽公演をしたいとのこと。今回の番組が素謡、舞囃子、仕舞による翁付五番立という、マニアックな企画で実現までいろいろあったとのこと。
庄内能楽館のスタッフと宝生会の方々に感謝したい。

続いて、解説は庄内能楽館の仕舞教室の講師の一人でもある辰巳 大二郎師。番組前半の〈翁〉〈高砂〉〈箙〉について。

▽素謡〈翁〉
シテ 小倉健太郎
千歳 辰巳 大二郎
地謡 高橋 憲正、藪 克徳、川瀬 隆士
(以上 シテ方宝生流)

小倉健太郎師を観るのは、何年か前の五雲会での〈三輪〉以来。その前は庄内にも所縁のある故 三川 泉師の〈三山〉のツレで観た記憶があります。小倉健太郎師の翁の素謡を聴くと、三川 泉師の謡を思い出していました。見所の雰囲気も良くて、凛とした静寂な空間になっていました。

▽舞囃子〈高砂〉
シテ 當山 淳司(シテ方宝生流)
笛  藤田 貴寛(笛方 一噌流)
小鼓  飯冨 孔明(小鼓方 大倉流)
大鼓  亀井 広忠(大鼓方 葛野流 十五世家元)
太鼓  小寺 真佐人(太鼓方  観世流)
地謡   高橋 憲正、藪 克徳、辰巳 大二郎

東北で亀井広忠師の大鼓を聴ける喜び。数少ない観能になった今でも広忠師の大鼓を聴く機会は多い。
シテの當山 淳司師はたぶん、シテで観るのは久しぶり。東京青雲会以来かな。
当時の線の細さは無くなっていました。しっかりとした重厚な高砂。翁の後の高砂なので常の高砂よりは位が高い。囃子も然り。

▽仕舞〈箙〉
シテ川瀬 隆士
地謡  小倉健太郎、藪 克徳、辰巳 大二郎

たぶん、川瀬隆士師は初見。内に矯めるというよりは外に放射するキビキビした舞。能で観てみたくなります。

箙終了後に、囃子方の方々による簡単な解説。その後に、辰巳大二郎師による、後の花筐と山姥の解説。

▽舞囃子〈葛城〉
シテ  高橋 憲正
囃子(高砂と同じ)
地謡  小倉健太郎、當山 淳司、辰巳 大二郎

高橋憲正師もシテとしては久しぶりになる。太く息を強く押し出すような謡。解説直後だったこともあり、見所は最初はざわざわしていましたが、大和舞に入ってからは見所を藝で支配。なかなかのものでした。

▽仕舞〈花筐 クルイ〉
シテ   藪 克徳
地謡   當山 淳司、辰巳大二郎、川瀬 隆士

藪 克徳師は、同じ宝生流能役者の小林晋也師の勉強会や金沢能楽会の公演で拝見している。個人的に好きな能役者の一人。身体の密度が独特で品のある水墨画の墨のような密度感。謡を聴くと故 近藤 乾之助師の謡を思い出した。謡が進化していました。内に矯める求心的な藝で見所を惹きつけます。

▽舞囃子〈山姥〉
シテ  小倉 健太郎
囃子(高砂ら葛城と同じ)
地謡  高橋 憲正、當山 淳司、辰巳 大二郎

山姥は妖精。柔らかな放射が感じられる藝。やはり今回の出演者の中では1日の長がある。囃子も濃厚な緩急つけたテンポ。地謡も検討。

地方で、このような番組が観れるのは嬉しい。雰囲気のいい能舞台なので、能楽公演を行える機会が増えることを願うばかり。
堪能させていただきました。