認知症を知ろう3 | NobunagAのブログ

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■認知症を知ろう3■

前回は認知症の症状というのは
必ず起きると言われる中核症状と
その人の性格や環境によって
生じる行動・心理症状の
2種類があると説明しました。

今回は中核症状の続きです。



・中核症状…見当識障害

「見当識」いきなり難しい言葉ですね。

教科書通りに説明すると
ときどきこういう奇妙な専門用語が
出てきてしまうのが、
みんなが興味をなくす要因です…。

もちろん僕らも普段介護をしていて
「あの方の見当識が…」なんてやりとりは
しません。

「見当がつかない」

という言葉は皆さんも
使うことがあると思いますが、
要はそういう意味だと思ってください。


認知症になると、
現在の年月や時刻、
自分がどこにいるかなど
基本的なことがわからなくなります。

それを見当識障害といいます。

記憶障害と並んで、
比較的早い段階からあらわれる
症状でもあります。

時間がわからなくなってしまえば、
予定に合わせて準備をするとか、
待ち合わせを守ることができなくなります。

さらに日付や季節もわからなくなれば、
季節感のない服を着たり、
自分の年がわからない、
というようになってきます。

ちなみに自分の年がわからない、
という方は非常に大勢います。

下手すると認知症の方は
7割くらいの方がそうかもしれません。


「年を取ってると思うけど…
いくつか忘れちゃった~」

という方もいますし、

「年はけっこう取ってるよ」

「おいくつですか?」

「えーと…46歳だよ、確か」

とかw

他にも完全に子供の時代に
戻ってしまっていて
僕のことをいつも

「オジチャン」

と呼んでる方もいました。

比較的多いのは
自分が40~50代だと
思っている方ですかね…。

ちょうど子供たちが
手を離れ始めて
少しラクになった時期なのでしょうか。
あるいは仕事のノウハウが
わかってきて、
充実していた時期が、
その頃なのでしょうか。

自分にとって良き時代であった
ときの年齢に戻っている方が
多いように思います。



また、場所の認識が障害されてくると
いつも通っていた道もわからなくなって
徘徊の原因になったり、
トイレの場所がわからずに
歩きまわるというような症状に
つながってきます。

さらに大きく進行すると、
知人の顔がわからない、
という状態になります。

もちろん家族のことも
わからなくなってしまう方も
大勢います。

自分の息子さんのことを
旦那さんだと思いこんでいる人も
たくさんいました。

それなどはまだ良いほうで、
本当に何もかも完全に
忘れてしまっている人もいます。
そうなると家族が来ても
何の反応も示しません。


介護疲れというか、
介護者がストレスを
感じる原因のひとつに、

「何をやってあげても、
他人のような顔をされる」

ということがあると思いますが、
そういう場合には、
おそらくその方はだいぶ
見当識障害が進んでいるのでは
ないかと思われます。

本人、あるいは介護している家族の
努力が足りないとか、
誠意が足りないとか、
愛が足りないとか、
そういうことではありません。

病気の症状なのです。



中核症状…理解・判断力の障害

認知症になるとものを考えたり、
判断することにも障害が
出てきます。

そのため物事を考えるスピードは
とても遅くなってきます。

言いかえるならば認知症が軽度の頃は、
そうは言っても時間をかければ
考えることはできるということです。

お年寄りは全般的に
動作が遅いという
イメージがあると思いますが、
人間というのは考えてから動くので
考えるスピードが遅ければ、
動作も遅くなるのは当然でもあります。



また二つ以上のことが重なると、
理解できないという傾向があります。

シンプルでないと伝わらない、
ということです。


わかりやすい例をあげてみます。

新人のスタッフさんが
僕らのホームで働き始めたとします。

新人というのは
マニュアル通りの接遇をしようとします。

介護の講座に行っても、
利用者さんに対してはお客様を
扱うようなつもりで
丁寧にしっかり説明しなさい、
と習います。

介護福祉士の国家試験の実技でも
そういう部分をしっかりチェックされます。

それに加えて新人は
先輩の目も気になるわけですから、
非常に丁寧な言葉使いで
時間をかけてしっかり
利用者さんに話しかけるんですね。

しかし残念ながら
認知症にはこれが通じにくいんです。

「○○さん、今日は○○で、
○○ですから、
これから○○に行って
○○をしませんか?」

ものすごく丁寧に長々と説明したのに

「何言ってるかさっぱりワカラン!」

なんて怒られてたりしますw


ベテランのスタッフが
ややぶっきらぼうというか、
ごく簡単に

「○○さん、○○に行きましょうよ」

と言ったら

「はいよ~、連れてって~」

とにこにこ返事をしたりします。


これはもう認知症のグループホーム
特有の声かけで、
本当はあまり良くないんでしょうけど、
そうでないと通じにくいんですよ。

丁寧なスタッフが
決して間違ってるのではないのです。

ただし丁寧でもシンプルに、
相手の障害に合わせて
配慮をしながらしゃべることが
認知症専門の現場では
求められるわけです。


もうひとつ例をあげると
あるご家族さんが、
こんな話をしてくださいました。

「うちのおばあちゃんは
とにかくすぐ忘れるんだよね。
だから寝る前に
明日するべき5つのことを
よくよく言い聞かせるようにしたんだ。
5つも言い聞かせれば、
ふたつくらいは…
最低でもひとつくらいは覚えてるだろうと」

しかし結果は…

「せっかく5つも言い聞かせたのに
ひとつも覚えてなかったw」

そうなんです。

5つも言ったらむしろ逆効果なのです。

まだひとつのことを
よく言い聞かせるほうがマシかも
しれません。

覚えるべきことの数が
増えれば増えるほど
混乱してわからなくなってしまうのです。

たくさん教えたら、
ひとつは覚えている、
というのは無理です。
たくさん教えれば教えるほど、
覚えにくくなります。


他にも理解・判断力に障害が出ると、
その場に合わせた行動が
できなくなってきます。

お葬式なのに不自然な行動をしたり、
夫が入院したら妻がおかしくなったり、
普段の日常とは違う出来事に対して
適応することが困難になります。


目に見えないことや物に対しても
理解が難しくなります。

倹約が大切と言いながら
ローンで高価な物を買ってしまうとか
高齢者がサギに引っ掛かりやすいのは
これが理由のひとつです。

年を取ってカネ使いが極端に
荒くなったという方は、
認知症の可能性があります。


目に見えない仕組みが
理解しにくい方に対しては
せっかくのバリアフリーも
良し悪しだったりします。

たとえばうちのホームでは、
トイレに入ると自動的に電気がついて
人がいなくなれば勝手に消えます。

すごく便利なんですよ。

でもこれが認知症の方には
わからないのです。

そりゃそうですよね、
彼らが若い頃はそんな便利な
仕組みはなかったんだから。

何もしてないのに
電気がついたり消えたりするなんて
魔法とか妖怪のしわざの類ですよねw

だから電気のスイッチを探して、
非常用のコールを押してしまったり
困ってスタッフを呼ぶという原因になります。

洗面所もそうです。
うちのホームの水道は
手をかざすと自動で水が出て
手を引っ込めたら水が止まるタイプ。

僕らにとっては便利ですが、
認知症の高齢者には
その仕組みがわかりませんので、
どうやったら止まるかわからず
下手すると何時間も
水道でジャージャーやってる、
というようなことになってしまいます。

昔ながらの蛇口のほうが、
たとえ不便でも認知症の方には
わかりやすいのです。


キッチンまわりも同じことで、
お年寄りに火を使わせると危ない、
という理屈もわかるのですが
火が見えるからこそ、
気をつけようと思える部分もあります。

IHクッカーは火が見えないので、
逆に危険だったりもするのです。



と、このように理解・判断力とは
実にさまざまなことに
大きな影響を及ぼします。

そのために周りがうまく
サポートしてあげることが
重要になります。



つづく~