実はあんまり縁起の良い話じゃないので黙ってたんですが、大晦日からしばらくのあいだ、不思議な現象が起こってたんです。



年末だけど大掃除もお節料理もやらないわが家。せめて帰国してから3週間も放置し続けていたホノルルマラソン用のスーツケースくらいは片付けなきゃと、紅白つけながらせっせと中身を出して片付けていました。

ふぅ、ようやく終わった。時計を見ると日付がかわるちょっと前。するとどこからかかすかなアラーム音が聞こえてきます。

あれ?アラームなんてセットしたかしら。わたしたち夫婦のスマホは手元にあるし。スマホの時計は23:59をさしている。

あ、そうか。今夜は大晦日。お隣さんが初詣に行くのにアラームかけたんだ。

大晦日は風が冷たくとびきり寒い日でした。そんな最中に出かける気もなく、わたしたちはぬくぬくと朝を迎えました。

翌日の元旦。東京のお正月はとても静かでお気に入り。しかし年に一度の束の間の静謐な時間を、またもやアラーム音がかき消したのです。

時間は昨夜と同じ23:59。
お隣さん、アラーム切り忘れたんだな。


そしてさらに翌日。またしても23:59のアラームが聞こえてきました。そこで初めて泰三くんに話してみました。今日で3日連続お隣のアラームが鳴ってるの。

え?ほんと?

なんと泰三くんには聞こえてなかったんです。わたしはあんまり音に敏感なほうではないので、これにはビックリ。まあたしかに小さな音ではあるんだけど。

「俺に聞こえなくて野引さんにだけ聞こえるってことはモスキート音みたいなものかな」とか言ってあんまり不思議に思ってないみたい。おいこら40代夫婦にモスキート音もクソもねーよ。


さらに翌日、やっぱり聞こえてきました。アラーム音が鳴ったと同時に「ほら泰三くん!聞こえるでしょ!?」と言っても「え?そう?」と聞こえてないようす。ちょっとちょっとちょっと嘘でしょ!?あんまり考えたくないんだけど、実はこの頃からちょっと怖くなってきてたんです。


アラームは必ず23:59に
ピピピピ ピピピピ ピピピピ ピピピピ ピピピピ
と5回くり返す。

もし目覚ましとして使っているなら目が覚めるまでもう少し長めに設定するだろうし、日によってアラームを止めるタイミングはランダムになるはず。規則的に毎日5回しか鳴らないのはおかしいんじゃないか。しかもわたしにしか聞こえてないなんて。


また翌日。23:59。
ほら、鳴ってるよ。聞こえるでしょ。
「…ん?……あ、遠くからうっすら聞こえてるね」


はーよかった。わたしにだけ聞こえてるんじゃなくてよかった。

気持ちが軽くなり、それ以降も毎日きまって同じ時刻にアラームが鳴るのも気にならなくなりました。


1月7日。お正月気分もすっかり抜けた頃のこと。


その日は午前中から仕事で朝から支度をし、いそいそと玄関を出ました。同じタイミングでお隣のドアが開き、中から男性が出てきます。カップルが住んでいるとは泰三くんに聞いていたけれど、女性のほうはたまにお見かけするも、男性は初めてお目にかかりました。

ご挨拶をし、1階までエレベーターをご一緒します。

それから数日。もうすっかり馴染んでしまった23:59のアラームを聞きながら言いました。


「そうだ、この前お隣の男性に初めてお会いしたよ」
「刺青あったでしょ」
「えっ、そうなの?さすがにコート着てたからそれは分かんなかったよ。ぜんぜんワイルドな雰囲気の人じゃ無かったけどなあ」
「けっこうワイルドでしょ」
「いや、好青年と好中年の間柄くらいだよ」


彼氏が変わったんだ!


そうかそうか、彼氏が変わって、生活時間が変わって、それで23:59にアラームを鳴らすようになったのか。なるほど、そりゃ納得の仮説だわ。怖がって損したな。


やはりその夜も23:59に同じようにアラームは鳴りました。ところが、変わったことがあったんです。音が、あからさまに大きくなったんです。どうしてだろう。


彼氏が変わっただのなんだのと詮索したのが気に入らなかったのだろうか。いやまさか、いくらなんでも会話が聞こえるほど薄い壁じゃないよね。

「音、大きくなってるね」ちょっとちょっと泰三くん、そうだとしても言葉にしないでよ怖いじゃない。


やっぱりいつもと同じで5回でとまった。心臓はまだドキドキしてる。


翌日の夜。
気にしないでいようと思っても気になってしまう。今夜はさらに大きな音だったらどうしよう。毎日少しずつ幽霊が近づいてくる怖い話とかあるけど、今夜は音だけじゃなくて怖いものまで見えちゃったらどうしよう。ああもうすぐ23:59だ。泰三くんのそばにいようかな。


ピピピピ 


きた。大きい。


「なんか、この部屋で鳴ってるみたいだね」


聞きたくなかった。実は昨日からそう思ってるけど、そんなの信じたくない。


でも怯えてるだけなんて嫌だ!
おもむろに立ち上がり、勇気を出して音のするほうへ歩いてみた。そこにはチェストがあって、その先は壁。えっ、怖い。壁の中から聞こえてるみたいだけど、そんなことってある?


ちょっと考えをまとめるために平静をよそおって、チェストの上に散らばっているホノルルマラソンの荷物をかき集めてみた。落ち着け、落ち着けわたし。昨日のお昼にスーツケース用の小分けバッグから出したばかりのものたち。泰三くんの完走メダルやサングラス、ランニングウォッチにランニングポーチ…



えっと、さっきからランニングウォッチがピピピピうるさいんですけど。




とまった。5回でとまった。


えっ、てことはなにかい?お隣さんとか幽霊とか関係なくて、ランニングウォッチが発生源ってこと??


泰三くんに無言でランニングウォッチを見せたら大笑いして「消すの忘れとったー(笑)」ですってオマエあとで正座な。


日本時間で23:59に鳴るってことは、ハワイでは朝の4:59。


ホノルルマラソンのスタート直前じゃねえか。


いいか泰三よく聞け。

スタートラインで腕時計に指をかけるのはトップを争う音速の貴公子たちがやること。秒単位でシビアな勝負の世界だからね。


一方スタートラインの数百メートル後方に位置するわれわれ鈍足チームがスタートと同時にタイムを計ったとて、スタートラインにたどり着くのに20分かかるわけよ。


やい、そこの鈍足の奇行種!


あ、奇行種ってのは規則性のある巨人の動きに反して予測不能の動きをするタイプの巨人を奇行種っていうんだけどシャラップぅぅう!!!!

進撃の巨人の話はどうでもいいの。いやよくない。よくないけど今はどうでもいいの。


だいたい変なところで心配性が発症して、なんかあったら困るからって5時ちょうどのスタート時間じゃなく1分前のよじごじゅうきゅうふんにアラームセットするとかせーこーいーんーだーよ!


雑に日焼け止め塗られて憤慨してる写真さらすぞゴルァ!!!

ちょっとだけ開胸手術のあとホッチキスで縫合された跡が見えますね。


結局ね、ホノルルマラソンから1カ月の間ずーーーーーーっと4:59にアラームが鳴り続けてたんだよ。

大晦日になってやっとスーツケースから取り出したことで発覚した怪奇現象もどき。もー!すごく怖かったんだからーーー!!!


ちなみに1枚目の写真はホノルルマラソン走りながら撮った景色だよ。とある芸能人のコンドミニアムなんですって。いいご身分ですね。



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