医学部合格を目指してから約3年。
土日のほとんどを受験勉強に費やしてきた。
平日も仕事後は勉強という日々だった。
家庭のことには無関心と思われても仕方がなかった。
実家に帰る機会も減り、両親にも不必要に気を遣わせてしまっていたと思う。
旧友との連絡も減り、久しく顔を合わせていない。

それでも、合格を勝ち取るまで、皆本当に温かく見守っていてくれた。
不合格が続いたとき、皆の励ましがなければ再挑戦の決意はできなかったかもしれない。
家族、友人、大学院時代からお世話になっていた先生、そして、予備校のスタッフの方々。
すべての人に感謝したい。

人に支えられているということをこれほどまでに実感したことはなかった。
これから先、医師という職業に就いてからも、この「人を大切にする」という思いを胸に精進していきたい。
面接試験において、研究についてのプレゼンを要求する大学もある。
私が受験した中では、神戸と千葉がそうだった。
神戸では、10分以内で最近の研究についてプレゼンをし、発表内容についての質疑応答が10分間ほど続いた。
質問の9割がscientificであり、その他は、併願状況と臨床か基礎研究のどちらの道に進むかについての質問を受けた。
ここでは、如何に良いプレゼンをし、論理的なdiscussionをすることができるのか否かということが問われていたと思う。
では、良いプレゼントは何だろうか?
答えは人それぞれだろうが、幸い私は仕事柄プレゼンする機会が多く、プレゼンについて考えることを度々してきたため、自分なりの答えを持っている。
① 掲載する情報量は必要最小限に抑え、重要なポイントを明確化すること。
② キーワードは繰り返す。表現を変えながら繰り返すのもアリ。
③ 重要なところは「重要」と言う。
④ スライドは美しく。
⑤ 聴衆の目を見て、ハキハキと語りかけるように発表する。
これらのポイントを実現するために、プレゼンの準備にはそれなりの時間をかけた。
神戸の対策では、2-3週間、みっちりと練習した。
スライドを何度も見直し、修正を繰り返した。
練習は嘘をつかない。
繰り返せば、ハキハキと語りかけるように発表できるようになるものである。
練習では、携帯用録音機を使用して、録音したものを通勤途中に聞くようにした。
これによって、細かい改善点が見えてくるし、原稿の記憶もスムーズにいく。
客観的に自分の発表を耳にすることで、改善すべき点が自然と浮かび上がってくる。
おすすめの方法である。

しかし、いくら良いプレゼンをしたところで、scientificなdiscussionをできなければ評価は低いだろう。
特に、神戸がそうだと感じた。
自分の研究内容について深く理解し、周辺知識も吸収しておく必要がある。
想定される質問に対して事前に答えを用意しておく。
それが論理の成立するものであるかを何度も熟考しておく。
現時点で明らかでないことであれば、まだよくわかっていないということを述べ、無理に答えようとはしないこと。
私の場合、日々の業務での経験と大学院時代に研究に精一杯取り組んできたこと、そして、自分の研究にとても強い興味を持てたことが研究プレゼンでの満足のいく結果につながったと思う。

使用したおすすめ参考書はこれ!
・ スティーブジョブズ 驚異のプレゼン     カーマイン・ガロ
医学部学士編入試験において最重要科目とされているのは「生命科学」だ。
英語の偏差値上位層の合格率以上に生命科学の偏差値上位層の方が合格率が高い。
英語の偏差値が55前後であっても、生命科学の偏差値が60以上あれば合格圏内に入ることができるとも言われているのではないだろうか。
しかし、実際に合格を経験してから思ったのは、聞いていた以上に英語の重要度は高いのではないかということ。
高い英語力がなければ筆記試験を通過できない大学は複数ある。
私が受験した中では、神戸、千葉、富山あたりがよく当てはまる。
もちろん、それら大学(特に神戸と千葉)については生命科学の知識も必要ではあるが、高い英語力がなければ門前払いである。
問題がすべて英語であるし、神戸や富山については要約問題も出題された。
他の大学については、生命科学、物理・化学などの科目があるために英語の重要度は下がるかもしれないが、合格するためには高い英語力を要することに変わりはない。
浜松では、英作文の出題もあり、難しいと感じた受験者も多かったのではないだろうか。
しかし、合格を勝ち取るためは、そういった問題で点数を稼ぐことが非常に効果的である。
何よりも筆記試験でぶっちぎりの点数をとることが合格への近道であり、そのためには他の受験者が難しいと感じる問題に正解することが最も効果的だからである。
私は、浜松の英語で他の受験者との差を付けられたと考えている。
英作文にも対応できた。
一方、富山については、おそらく配点の高いであろう要約問題でつまずき、筆記試験通過を逃した。
神戸では、富山の反省を活かして要約問題に正しく解答できたことが合格に大きく貢献したと思う。
千葉についても、英語ができれば筆記試験の合格率は非常に高くなる。

このように、医学部学士編入試験における英語の重要性は高い。
言い換えれば、英語力を高めることで合格にかなり近づける大学も複数あり、また、筆記試験でぶっちぎりの成績を得るには高い英語力が必須だということである。
では、どのよに英語力を高めれば良いのか?
私の経験の範囲内でその質問に答えてみたい。

まずは、単語力。
この重要性を改めて記述する必要はないだろう。
単語力を伸ばすためには、学習者自身にとって最適の暗記法を早く見つけ出すということが大切だ。
私にとって最も効果的だった方法を紹介する。
①問題集、過去問、模試など、解いたすべての長文問題について、知らなかった単語をExcelに書き出して、英単語と日本語訳とを併記した一覧表を作成し、毎日、その一覧表を眺めることを繰り返した。
②①の一覧表の英単語と日本語訳を声に出し、携帯用録音機で録音し、通勤途中(主に朝)にそれを聞いた。
なぜか自分の声だとよく記憶された。

続いて、読解力。
これには、和訳力、要約力も含まれるとする。
KALSの医学英語を受講したことで、医学部学士編入試験で求められる英語レベルを把握できた。
また、初めて要約問題解答のポイントをここで学ぶことができた。
各パラグラフの最初または最後の一文が重要だということ。
受験2年目、Z会の医学部受験用の英語を受講し、和訳力を高めた。
実際に添削を受けることで確実に力をつけられた。
受験3年目、英単語力の向上に再度専念した。
4月くらいまでは、TOEFL&TOEICの点数を伸ばすことを最重要課題とし、単語力の向上が必須だったことと、やはり単語力が読解力を高めるために最重要だと考えていたからである。
実は、このTOEFL&TOEIC対策への取り組みが英語力向上を加速させた。
両試験とも高得点取得には高い単語力と読解力(速読力)を要する。
そのため、両試験での毎回の成績が自分の到達レベル(単語力&速読力)を把握するために役立った。
ちなみに、TOEFL80点、TOEIC900点を目標にしていた。
最終的に、TOEFL61点→77点(reading, writingでの得点が大きくup)、TOEIC650点→840点まで成績は上がった。
また、通勤途中でTOEIC対策として特急シリーズの問題集に取り組んだ。
速読力をupさせ、単語力の向上にもつながった。
なにより、短い通勤時間で効果を得られたのは非常に良かった。
模試では、安定して偏差値60以上を取り、良いときには67くらいのときもあった。
受験直前には、各校過去問を3年分は解いた。
時間を計っての取り組みが大切。

最後に、英作文。
TOEFLのwriting対策、Z会、そして会社での業務経験が役立った。
特別な勉強をしたことはなく、仕事柄英語に触れる機会が多いということが活きた。

使用したお役立ち参考書&問題集は以下の通り。
・ KALSテキスト
・ KALS模試
・ web TOEFL
・ TOEIC対策問題集(特急シリーズ)
・ 各校過去問
・ Z会

受験勉強で精一杯なのにそんなの読んでられるか!っていうのを承知で書きます。
以下の図書は、医師を目指す目的(志望動機)をはっきりさせるためや将来を考えるために少なからず役立ったものばかりです。
私と同じ、社会人受験者向けのものが多いかもしれませんが(そうでもないか)。

・ 神様のカルテ1, 2, 3         夏川 草介
・ 研修医ニーナの731日           石原 新菜
・ KALS合格体験記              河合塾KALS
・ スティーブ・ジョブス 驚異のプレゼン   カーマイン・ガロ
・ 20歳のときに知っておきたっかこと     ティナ・シーリグ
・ 超訳 ニーチェの言葉           フリードリヒ・ニーチェ
・ サラリーマンは、二度会社を辞める     楠木 新
・ 人は仕事で磨かれる            丹羽 宇一郎
・ 負けてたまるか!若者のための仕事論    丹羽 宇一郎
・ 思考の整理学               外山 滋比古
・ web上の医学部学士編入に関わる体験記                
今年、最終合格を勝ち取るまでに経験した面接試験は3回あった(うち1回は社内のpostingで)。
その中で確信したことがある。
面接で最も重要なことは、
「志望動機を端的に明確に、そして具体的に伝えること」
という結論に至った。
面接官に志望動機を理解してもらえなければ面接で合格点を勝ち取ることはまずない。
反対に、志望動機さえきちんと述べることができればなんとかなる。

私が合格した大学の一つについては、募集要項の中に、強固な目的意識を持った人材を求めているということが記載されていた。
言い換えれば、志望動機がしっかりとした納得のいくものである人材だというふうに読み取れる。

そんなの当たり前のことだろ、って思う人が多いだろう。
私もそうだった。
しかし、改めてここで明記したのには理由がある。
志望動機をきちんと伝えることは、非常に難しいことだからである。
きちんと、というのは、他人を納得させられるということである。
自分だけが納得できる志望動機なんて何のアピールにもならない。
全ての人とは言わない。
ただし、志望する大学の全ての面接官を首肯させられなければならない。

志望する大学の、っていうのには意味がある。
私が面接試験を複数経験する中でつかんだもう一つのことが、
受験大学ごとに求められている人材が明らかに異なるということ。
これも当たり前だと思うかもしれないが、いくつもの面接試験を経て、不合格と合格を複数経験して初めて、確かにそうなんだとわかった。
大学によっては、面接試験の点数は合否にはほとんど影響しない。
大学によっては、圧迫感のある質問を繰り返して、それに対して冷静かつ論理的に対応できるような人材を評価する。
またある大学は、受験者の研究経験、論理的思考力、目的意識などを重視する。
このように求められる人材が異なるわけだから、各志望大学に合わせて対策することが必要になる。
KALSをお勧めする理由の一つは、各大学の過去の面接試験での質問内容が閲覧できることにある。
私にとって、これが非常に役立った。

少し脱線したが、改めて明記しておきたいのは、すべての大学に共通していることは、志望動機が重要であるということ。
では、志望動機を鍛えるためにはどうしたらいいのか?
正直、私は受験3年目になるまで仕上げることができなかった。
一方で、長い時間を要したからこそわかったとこもある。
まず、必要なことは、なぜ医師になりたいのか、なぜ医師になる必要があるのか、医師になってから何をするのか、どういう医師になりたいのか、
についてとことん考えること。
そして、すべての質問に対して具体的事例を提示できること。
その事例が他人を首肯かせられるものであるかを考える。
つまり、論理的であるかを考える。
これができれば志望動機をまとめる材料が揃う。
まとめる際の留意点は、回りくどい表現は省いて、端的かつ明確にすること。
文章化して何度も読み返す。
一言でスパッと述べられる志望動機なら完璧。
一言は難しくても、30秒以内で述べられるようにはする。

私の場合、1年目、2年目の受験時も自身の志望動機はしっかりしいていると思っていたが、3年目に入ったところで、再度見直し、まだまだ不十分だということに気づいた。
加えて、面接を複数回経験したことが、志望動機を確立させるために大いに活きた。
また、本番でなめらかに話せるようになったのも数をこなしていたからだ。

最後に、別の項で受験校の幅を広げることについて触れたが、ここでそのメリットを付け加えておきたい。
上記のように、大学ごとに求める人材というのは異なる。
そのため、受験者と大学との間に相性というものが少なからず存在し、合否に関係するというのが私の見解である。
したがって、複数校受験することで、相性の良い大学と出会うことが合格への近道になる。
ここには、募集要項を把握するだけでは対応できない部分がある。
だから実際に複数校受験するしかない。
受験者によっては、そんなのは関係ない、学力がすべてだと答える。
一方で、編入試験では運の良し悪しが関わってくる、と言う受験者も少なくない。
私は、どちらも正解だと思う。
つまり、どちらのタイプの大学も存在するということである。
学力のみで評価する大学も、学力+志望動機(目的意識)=相性を評価する大学もある。
ただし、私は「運」というのを「面接試験での評価」と読み替えていはいるが。

さらに、先に述べたが、面接を繰り返す過程で、自分を鍛えていくことができる。
これも受験校の幅を広げることの大きなメリットだ。






口述試験に挑めるのは15名だった。
一次試験の受験者数は150名前後だったのではないか。

午前と午後に分かれての面接。
午前組は7名で、狭い控え室で待機。
受験番号順に一人ずつ面接を受けた。
一人当たり20分間の面接で、そのうち10分間を研究発表に使った。
最も辛かったのは控え室での待機の時間だった。
緊張は極限にまで達していたが、息抜きのために外に出ることすら許されなかった。

座席が段々に並ぶ講義室での面接だった。
8名ほどの面接官がいた(記憶が定かではない)。
研究発表は、入念な練習を重ねたおかげで無難に終えられた。
しかし、その後の約10分間が予想外の展開になった。
研究に対する質問攻めであった。
概念的なことから、核心を突く鋭い質問まで。
途中、会社での業務内容に関する質問はあったが、
「あなたは、非常に基礎的な研究をされてきたようですが、将来は、そのような基礎研究を続けていくつもりですか?それとも臨床を続けていくつもりですか?」
というのが唯一の発表に無関係な質問であった。
「どちらも続けていくつもりです。」
「なぜ?」
「創薬に携わる中で、創薬マインドを持った医師・医学研究者、あるいは、臨床のことを良く理解した研究者が必要だと思いました。だったら、自身がそうなって、将来、TMに貢献していこうと決意したからです。つまり、臨床をやりながら研究することに大きな価値があると考えています。」

手応えはいまひとつで、不完全燃焼だった。
もっと上手く志望動機を述べられたのではないか。
あの質問にたいする回答は間違っていたのではないか。
しばらくの間(合格発表まで)こんな思いが続いた。

結果は合格だった。
ここでの口述試験で重要なことは、自身の研究内容を明確に、かつ、その魅力をしっかりと伝えること。
そして、質問に対して論理的に、かつ、端的に答えることだったと思う。
そのためには、研究に一生懸命であり、自分の考えを、あるいは、研究内容をわかりやすく説明できるプレゼンを訓練しておくことが必要である。

将来に対して何も役に立たないと思えることも含めて、
自分が関わっていることに精一杯の努力をしておくことが、非常に重要だと認識した。
いまやっていることがいつ役に立つかなんてわからない。
しかし、精一杯の力で取り組んできたことはいつか、どこかで役に立つと思う。
過去に物理/化学に精一杯であったことが医学部への道を開けてくれた。
大学院時代、寝る間も惜しんで研究に精一杯であったことが、就職、そして今回の試験においてキーとなって自身の強みになってくれていた。

常に精一杯であるということを今後も継続していきたい。

朝一の新幹線で浜松へ。

筆記試験を通過したものの最終合格までの倍率は8倍。
欠席者がちらほらいたので実質倍率は6倍程度だったかな。

受験番号とは無関係で、いつ呼ばれるわからないという緊張感があった。
大部屋の控え室から3部屋に分かれての面接試験だった。

3名の面接官。
真ん中の面接官が進行役。
最初の質問は・・・、
面接官:「年収はいくら?1000万くらい?」
私:「そんなにないです。」
面接官:「○○○くらい?」
私:「それくらいですね。」
面接官:「意外に少ないですね。」
面接官:「どうして医学部に入ろうと思ったの?」
私:「創薬研究に携わる中で、創薬を支えているのは医学研究だと感じました。同時に、そのような創薬と臨床をつなぐような医学研究が十分に行われていないと思い、自身が医師となって貢献していきたいと思ったからです。」
面接官:「そういうのは誰しも思うことだよね。具体的にどういうときにそう思うの?」
私:「例えば、新規の標的分子を探すときに、我々は結局のところ、医学研究からの論文情報に頼るというのがほとんどです。そういうときに思います。」
面接官:「研究をするなら別に臨床に携わる必要はないですよね?臨床に近いところで研究していればいいんじゃないですか?」
私:「いえ、そうは思いません。それは、臨床に実際に携わらないということですよね。私は、実際に臨床に携わらないとわからないことがあると思いますので。」
面接官:「将来は大学で研究を続けたいということですよね。でも、大学は人を雇うお金がないんですよ。どうしたら良いと思いますか?」
私:「例えば、これまでの共同研究とは違った形になると思いますが、もっと製薬企業側と日常的に議論する場を持つようにして、そこで、臨床側から有益な情報を提供するという方法があると思います。企業側にとって有用な情報ですよということを示せれば企業はお金を出すと思いますよ。」
面接官:「有難うございます。参考にさせて頂きます。いざというときは○○さんに伝えればいいですね、笑」
面接官:「今のご時世では、製薬企業の研究者にはなりたくてもなれないですよね。企業では研究費も十分にあって好きな研究ができますよね。それなのに、今の環境を捨ててまで、泥臭い医療の現場に来ようと思ったのはなぜですか?」
私:「私もそう思っていました。でも、実際には、研究費が十分にあるわけでも、好きな研究ができるわけでもないということが分かったからです。」
面接官:「それだったら、アメリカに行った方が良いよね?」
私:「自分の興味のある研究がアメリカにあるならそうかもしれませんが、私は、幸いにも日本で自分の興味のある研究が行われていますのでアメリカに行くことは考えていません。」

あまり手応えなく終わった。
最初の質問があり得ない質問だっただけに、感じの悪い面接だった。
何を問われているのかよくわからなかったけれど、質問に対して負けじと、論理的に答えることができれば問題ないと思った。

結果は、合格だった◎
前の項で触れたが、編入試の最大のメリットは複数の大学を受験できることにあると思う。
そのメリットを最大限に活かすためにも、時間的、金銭的、体力的余裕のある人や、物理や化学の基礎がある受験生には物理/化学/数学にも積極的に取り組むことをお勧めする。
個人的には、そんなこととは無関係にお勧めしたいのだが。
まあ、その理由はここでは触れないことにする。

私の場合、物理/化学/数学を学習することで、例えば、浜松や滋賀、そして新潟といった大学への挑戦権が得られた。
知名度の高い大学であってもそのような科目の知識を必要とせずに合格できる大学はある(千葉、神戸、金沢 etc.)。
しかし、編入試で合格の確率をあげるための効果的な方法はより多くの大学を受験することである。
また、受験日前半校(浜松、TMDU、滋賀、富山)で合格を勝ち取っておけば、安心感と後半校への挑戦に向けた良い集中力を得られる。
私自身がまさにそうだった。
浜松での合格を勝ち取ったことで、受験後半へのモチベーションを維持でき、本命の一つであった神戸に合格できた。
浜松に合格できたのは、紛れもなく、物理/化学をしっかりと学習しておいたからだった。
浜松&神戸に合格できたのは本当に良かったけれど、そうでなければ物理/化学の必要性はますます高まっていた。
新潟でも必要だったし、北海道でも物理の出題が予想された(実際にそうであった)。
受験は長丁場になればなるほどしんどい。
不合格ばかりが続けばなおさらしんどい。
本命の大学に落ちればもう立ち直る気力も失われかねない。
そういったリスクを少しでも和らげるという意味でも受験校の幅を広げることは効果的だ。
そのためにも、物理/化学/数学への取り組みをお勧めしたい。

それと、物理/化学/数学とはいっても、それぞれの科目について、学習範囲をどこまで広げるかによって受験校の幅も変わってくる。
私の場合、TMDUを標的とした学習にしたことで、浜松、新潟には完璧に対応できると思っていた。
滋賀については、少し学習範囲を広げれば対応できる状態だった。
大阪を受けるにはまた別の分野の学習をそれ相応に強化する必要があった。
つまり、すべての分野を学習しなくても、数校の受験校を増やすことは可能なのである。
問題のレベルからしても同レベルの大学は複数ある。

したがって、合格の可能性を少しでも広げるという目的のために、物理/化学/数学への取り組みをお勧めする。


一般入試と編入試における最大の違いは受験校選択における違いであり、それが編入試における最大のメリットだと思う。
一般入試に比べて筆記試験の科目数が少ないということもあるが、それ以上に編入試では複数の大学を受験できるということが大きなメリットである。
しかし、このメリットも自分自身とよく向き合って、将来、どういう医師になりたいのかについて十分に考察しなければ生かせない。
実際、私自身がそうであった。

私は、2011年から2013年にかけて受験を続けた。
当初、東京の大学に通いたいとか、医学部に入学して、研究も続けたい。
というような思いが強く、2011年はTMDUのみの受験、2012年はTMDUと千葉の2校の受験で終えた。
研究を続けたいという思い以上に、東京(首都圏)の大学に通いたいという思いの方が強かったように思う。
つまり、どういう医師になりたいのかということについて明確な将来像を描けていなかったのである。
これが、自分自身の可能性を狭め、編入試のメリットも生かせないままにしていたのだと思う。
2013年、明らかに変わったことは、再度、自分自身とよく向き合って、なぜ医師になりたいのか?
どういう医師になりたいのか?についてより明確な答えを持つことができたことである。
改めて、「面接試験」の項で詳細を記載するつもりであるが、その明確な答えというものがとても重要なのだ。

なぜ医師になりたいのか?
→translational medicine(TM)に貢献したい。そのためには、創薬と臨床の両者を熟知した医学研究者が必要であると感じた。臨床を理解するためには医師になるしかない。
どういう医師になりたいのか?
→臨床からのヒント、ニーズを研究に反映させ、TMに貢献したい。
 アレルギーや膠原病を専門とする小児科医として。

という答えに私は到達した。

このとき、必ずしも私の希望を満たす大学はTMDUだけではないと気づいた。
①入学後すぐに研究を始められる、②研究に積極的である、実績がある、③自分の興味のある分野の研究がある、④創薬に関心がある、という条件を満たしている大学が受験すべき大学だと思った。
そうすると、医学部の中でも知名度の高い大学にしぼられた。
必然的に競争もより激しくなると考えられる・・・。
ただし、編入試では、必ずしも知名度の高い大学への合格がより難しいということもなければ、倍率が高くなるということもない。
従って、あきらめずに、自身の希望を優先して受験校を選んだ。
志望順に記載すると以下の通り。

TMDU、大阪
千葉、神戸
北海道
名古屋
金沢
新潟
浜松
富山
滋賀

名古屋の1次試験は、神戸の2次試験と同日のために受験できないことが分かっていた。
ベストシナリオはTMDUに合格して早々と受験を終えることだった。
それが駄目なら、浜松、滋賀、富山の前半校で1つ合格し、その後、千葉、神戸、北海道、金沢から1つでも合格を勝ち取とるというのがベストシナリオだった(大阪はあきらめていた、新潟は前半校の全てに不合格だった場合に受験する予定だった)。
もちろん、研究という観点からして、TMDU、千葉、神戸、北海道、金沢のいづれかに合格するということを最大の目標にした。
こうして、2013年の受験校は大幅に増え、結果的に医学部合格の可能性を高められた。




仕事を続けながら合格を目指す上で意識しておきたいことがある。
当たり前のことだけれども、仕事に対するモチベーションを下げないということ。
受験の方で良くない結果が続いたとしても仕事に影響させてはいけない。
仕事を続ける理由は人それぞれに異なるだろうけれども、続けるならば、将来、医師になったときに活かせる仕事をしておきたいからである。
一般企業での仕事を通じて得たものを医師になってから活かせる。
これが学士編入生の強みの一つであり、大学側が求めていることの一つだと考えているからである。
一般入試で入学した医学生には決してできない経験を一般企業では得られる。
企業での経験は、言ううなれば人間の幅を広げてくれる。
それが多くの人と接する医師には大切なことだと思う。
私の場合、製薬企業の研究職とあって、それぼど幅広い人付き合いのある職場ではない。
でも、例えば、大学での生活と比べれば、はるかに視野が広がった。
大学研究者、企業研究者、そして医師、この三者の関わりについて知ることができたのは企業に入ったからである。
そこに存在する問題点と改善策を考えるきっかけになった。
仕事に対するモチベーションを失ってしまっては、仕事から吸収できることも減ってしまう。
それなら辞めて受験勉強に専念した方がましかもしれない。
仕事でのストレスが受験にも悪影響を及ぼす可能性があるからである。
私にもそんな時期があった。
最悪の状況だった。
思い切って職場の異動を決断した。
周りとの競争だったため、異動を受け入れてもらえるか分からなかったけれど、
幸い採用された。
新たな職場がモチベーションを回復させてくれた。
あとどれだけ企業人でいられるかまだ分からないけれど、
できるだけ多くのことを吸収して、医学の道に進みたい。