所長先生が抱え込んだら終わり
みなさん、こんにちは。
想定外の顧客増、あるいは退職者の発生。
どちらの場合も、
「この先、誰に担当を任せよう」と
所長先生はいつも
悩まれているのではないでしょうか。
気心知れたベテラン職員が
受け皿になってくれるうちは良いのですが、
そこも手一杯になってしまえば、
残りはスキルに不安のある若手か、
それともご自身かという
選択肢を迫られることになります。
その際、大多数の先生は、
「ひとまず自分でやるしかないか...」
というお考えになりがちです。
しかし、その「ひとまず」は、
大抵の場合ひとまずにはなりません。
そうでなくともいつも忙しい先生の仕事に、
担当としての日常業務が
一件、また一件と
積み上がってしまうことになるのですから、
たちまち周囲を見回すだけの
心の余裕はなくなるはずです。
マネジメントが疎かになることで、
やがてお客様先でのトラブルや
苦情の存在に気が付く機会は減り、
解約や退職者の発生を
加速させることにもなりかねません。
大事なのは、
所長先生がすべてを抱え込む前に、
たとえ一部の業務であっても、
職員の誰かに担当を割り振っておくことなのです。
経験の浅い若手でもいい、
パート職員の方でも勿論いい。
ほんの一部の入力作業だけでもOK。
とにかくやってはいけないのが、
「所長先生の丸抱え」だと私は思います。
どなたかに頼むことさえできれば、
時間が空く、あるいはスキルアップすれば
一部が全部に変わる可能性も広がります。
その反対に、丸抱えすれば、
その可能性を自ら狭めてしまうと、
所長先生は常に覚悟しておかなければなりません。
丸抱えするリスクを平気で冒してしまう
税理士先生にの多くは、
分業化に手をつけていない事務所です。
「一人で全部やったほうが何かと効率がいいから...」
というのが理由だとは思いますが、
その分先生自らが、
いざとなればそのリスクを
日常的に引き受けざるをえなくなるのです。
これだけは絶対に避けなければなりません。
あまり得策とも言い切れませんが、
そんな事態に備えて
担当を割り振る優先順位を、
あらかじめ決めている事務所もあるほどです。
私はそれができなければ、
会計事務所はいつまで経っても組織化されていかない、
つまりは拡大発展していかないと考えています。
辛い状況下で、ひと任せにすると思ってしまうと、
気が引ける部分も当然あるかもしれませんが、
所長先生がマネジメントを疎かにしてしまえば、
事務所経営全体が
ガタつくことにもなりかねません。
「抱え込めば済む」という考えに
先生が依存しないためにも、
普段からひとに任せられる
体制づくりを意識して
実践していく必要があるのではないでしょうか。
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「外注化・自動化」の選択肢なき事務所運営
みなさん、こんにちは。
関東地方にある、
某医業特化型事務所からの相談。
これまでは、
地元で会計事務所の経験者をパート採用し、
記帳代行などで活躍してもらってきたものの、
このところ仕事の忙しさからか、
退職者が相次ぎ、採用活動も不調。
顧客の紹介元である取引先からは、
「このままでは困る」と、
プレッシャーをかけられつつも、
新規の契約をストップせざるをえない状況。
しかも、つい最近、
自計化の契約でこれまで続けてきた、
とある病院のクライアントから、
「経理部門のメイン担当者が、
突然退職してしまった。
このところ退職者が相次ぎ、
この先も採用の見通しが立たないことから、
今後は記帳代行の契約でお願いしたい」
と依頼された様子。
聞くと、月1500仕訳ほど。
すでに数カ月滞ってしまっているとのこと。
そうでなくとも、退職者の穴埋めに、
税理士資格者でさえ
日々記帳代行業務に追われている職場環境で、
報酬をいただけるかどうかはともかく
これ以上の業務負荷の増大は
耐えられないというのが所長先生の見解。
マンパワーのある事務所であればともかく、
一人たりとも余剰人材など抱えていれらない
税理士業界全体の実情を考えれば、
どこもこういった、
待ったなしの問題に
突然遭遇する可能性は極めて高く、
他人事とは思えません。
私たちからは、
在宅スタッフの活用をベースとした
外注化による業務処理の方法を
ご提案いたしましたが、
結果的には、
いま担当している方が、
現在抱えている業務を所内メンバーに振り分けつつ
自ら担当するというところに落ち着きました。
その後の状況はお聞きしていませんが、
限られたキャパシティのなかで、
やりくりだけで何とかしようとするのも
当然ながら限界があります。
ひょっとしたら、
また新たなトラブルが
所内で発生する原因が
一つ増えただけなのかもしれません。
考えてみると、
例えば飲食業の世界であれば、
セントラルキッチン方式で、
調理や人材調達の工数を省いたり、
自動調理についても、
導入が進められてきています。
“自前でスタッフを確保すべき仕事”
“自動化や外注しシフトしても対応可能な仕事”
それぞれの境界線を明確にし、
業務効率化を図ることで、
近い将来発生するであろう
人手不足やスキル不足への
対策を打っているのです。
会計事務所においても、
そろそろそれらを意識した体制作りに
踏み込んでいくべきではないかと、
私は思います。
すべての業務を
事務所内だけで完結することが、
理想ではありますが、
そこにこだわり過ぎれば、
かえって事務所のパフォーマンス全体が
低下してしまうことにもなりかねません。
会計事務所を対象とした、
自動会計処理の手法や外注サービスのレベルは、
時間の経過ともに
飛躍的に向上してきています。
それらを上手に活用し、
本来やるべき業務に力を集中することで、
冒頭に挙げた事務所のような例は、
少なくすることも
できるのではないでしょうか。
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『高単価』と『期待値』との関係
みなさん、こんにちは。
先日、近所に昨年末オープンした
評判のラーメン店に行きました。
某地区では有名なラーメン店が、
私の地元に出店してきたそうです。
車で通りかかると、
いつも駐車場はいっぱい。
道路にも車が並ぶほどの盛況ぶりでした。
しかしその日はたまたまなのか、
駐車場もお店もガラガラ。
不思議に思いつつも、
お店に入ってみると、
ラーメンはトッピングなしの
標準的なものでも1,200円。
都内一等地ならともかく、
随分と強気な価格設定だなと驚きました。
近隣にもラーメン店はたくさんありますが、
1,000円超えどころか、
せいぜい800円台が相場。
「きっと、驚かせてくれる味なのだろう」
と期待して待っていました。
しかし、味は極めて普通。
接客は新店ということもあるのか、
従業員教育が不十分な点が目立ちました。
一緒に同じものを食べた妻も無言。
おそらく私と同意見だったのでしょう。
調べてみると、
開店から1カ月ほどの間に初来店した
お客様からの口コミによる酷評が、
このような状況をつくりだしてしまったのだろうと
後から気が付かされました。
私自身は酷評という、
大げさな感覚こそありませんでしたが、
おそらく次はないかもしれません。
私もその一人かもしれませんが、
商品でもサービスでも
相場の1.5倍の価格設定で提供されていれば、
一般消費者としては、
「いつもより
何か特別なことがあるのかな...」
と期待してしまうものです。
期待の対象は、
人によって様々かもしれません。
味、ボリューム、厳選した素材、お店の雰囲気、
有名店というブランドかもしれません。
いずれにしても、
何か秀でた(いつもとは違う)部分を
お客様が感じ取らない限り、
「高い」「不満」
という価格差以上のネガティブ感情を
掻き立ててしまう可能性を捨てきれません。
SNSが発達している現代は、
そのネガティブ感情があっという間に、
世間に広がってしまうところが恐ろしい点です。
一杯で400円の違いを
しっかりと打ち出さなければ、
あっという間にラーメン店の存続自体が
脅かされるということです。
このところ、
「人員不足の影響もあって、
顧客拡大の件数にも限界がある。
できれば、単価アップで何とかしたい」
というご相談が増えています。
そのお気持ちはよくわかりますが、
単価をアップするということは、
お客様からみたサービスの価値も
当然アップしていなければなりません。
ごくごく当たり前のことですが、
月額3万円の顧問料を、
4万円、5万円と引き上げてゆくためには、
お客様の納得感なしには成り立ちません。
「既存のお客様が難しいなら、
新規契約から引き揚げればいいじゃないか」
という意見もありますが、
既存のお客様に3万円で、
行ってきたサービスを変えずに、
新規契約のお客様が5万円払い続けてくれるほど、
経営者の感覚は鈍くありません。
それでは、いつもと違う
価値を付加したサービスを新設したとして、
所内においてどれだけのスタッフが
それに対応できるでしょうか。
とくにマンパワーに乏しい事務所の場合、
せっかく上げた単価が災いして、
所長先生だけが、
ひたすらお客様に振り回されるという、
一番想定したくない事態に陥ってしまう例を、
私はこれまでに何度となく見てきました。
単価を上げる意識はとても大事。
しかし、所長先生や主力職員が、
振り回される要因になってしまう単価アップでは
元も子もないのです。
食べ物の恨みは恐ろしいといいますが、
期待して払った報酬以下の、
サービスを提供される恨みも同じく恐ろしいのです。
思い付きではなく、
しっかりと練り込んだ価格戦略を
おすすめします。