まず「ゼロ百思考」から脱却しよう
みなさん、こんにちは。
たしか10年ほど前のことだったと思いますが、
「職員が行ったお客様先の決算は、
仕訳単位まで徹底的に自分の目で見直す。
たとえ一日や二日、
休日がつぶれてしまったとしても
私にとってはそうした方が
はるかに落ち着いて日々暮らしていけます」
そんなことをおっしゃっていた
税理士先生がおられました。
どうやらそこまで慎重になられるのは、
以前在籍していた職員の業務上のミスによって
お客様の解約につながった
苦い過去があったからなのだそうです。
お客様あってのお仕事ですから
「ミスを防ぎたい」
「クレームを減らしたい」
と誰もが考えます。
ただし、所長先生と単純比較して
職員さんの業務スキルが同等
あるいは勝っているという範囲は限られてきます。
“何でこんな簡単なことができないんだ”
というお気持ちもわかりますが、
簡単かどうか、できるかどうかは、
やはり個人差が生じるものです。
『加点』の発想が薄く
『減点』ばかりの評価が先行してしまう職場では、
新しいことにチャレンジすること自体タブー視され、
とにかく「ミスしない」「苦情を受けない」ことに
重きが置かれるため、
前例踏襲主義が強まっていく傾向があります。
現場も小さなミスを隠す習慣がつきます。
未経験者の採用など
極力避けることにもなるでしょう。
日々ピリピリした職場環境に、
フレッシュな若手や新人などの入所も皆無となれば、
組織自体硬直化していくのはほぼ確実です。
やがて職員を増やすこともできない、
お客様を増やすこともできない
事務所になってしまいます。
冒頭にあげた先生の事務所は、
もともと6名ほどの体制が
最終的にご夫婦お二人だけになってしまいました。
それが所長先生が考える
“落ち着いて日々暮らしていける職場環境”
だとすればそれはそれで
正解を導き出したことになるのかもしれません。
しかし、必ずしもみなさんがみなさん
そうだとは限りませんよね。
優秀な人材が採用できない、育たない、
すぐに辞めてしまうという
完璧とは程遠い人員体制のなかで、
意外と強い「ゼロ百思考」が
所長先生にも、職員の方にも多いような気がします。
おそらく「及第点」のラインをどの位置におけばよいのか、
事務所全体の基準が定まっていないことも
影響しているのだと私は思います。
基準というと、何やら難解なものを
思い浮かべてしまうかもしれませんが、
要するに
「一般職員がサービスとして実現可能な60点ライン」
はどこかということです。
これが最初から100点ラインで設定しまえば、
冒頭の先生のようなことになりかねませんが、
実は、これらの要因で
人もお客様も積み上がっていかない事務所が
思いのほか多いのです。
“私は100点以外に妥協したくない"
という先生もいらっしゃると思います。
しかし、組織を大きくしていくのであれば
まずは事務所全体の及第点を60点に設定し、
時間の経過とともに
その基準点を徐々に上げていけばいいのです。
忍耐は必要ですが、
その間は所長先生がその差分を埋めるために、
時間や手間を使うほうが
はるかに発展的だと思うのです。
採用が、教育が、うまくいかないイライラを
解消する第一歩は、
まずは所長先生が
「ゼロ百思考」から脱却することに他なりません。
みなさんの事務所では、いかがでしょうか。
“良い夫婦”でいることも大切
みなさん、こんにちは。
今日は「いい夫婦の日」ですね。
先日お会いした税理士先生は、
この日が結婚記念日なのだそうです。
毎年その日は早めに仕事を切り上げて、
所長先生が奥様のために
サプライズの予定を取っているとか。
その先生とほぼ同年代の私としては、
本当に頭の下がる思いです。
さて、
全国の会計事務所にお邪魔していると、
ご夫婦ともに同じ職場で
働かれていることが良くあります。
お二人とも
税理士資格者ということもありますね。
これは、どの業界でも
“あるある話”なのかもしれませんが、
経営上の意思決定にまつわる話合いの流れで、
所長先生(例えば旦那様)と事務長(例えば奥様)とが、
それぞれ真逆の意見を提示し、
血縁ではない現場の幹部職員に、
「どう思う?」と問われるシーンは
みなさまの周囲でも
実際に見られる光景ではないでしょうか。
私もこれまでに、
事務所の経営会議に同席させていただいた際に
こういった場面に遭遇することがあります。
私自身は、
その事務所に所属している訳ではありませんので
ある程度フラットな立ち位置から
意見を述べることもできます。
ところが、職員の方にとっては
フランクな人間関係が構築されていれば
問題ないとは思いますが、
そうでない立場の方であれば、
返答に苦慮することも多いのではないでしょうか。
打合せの場で、
それこそ夫婦喧嘩など始まってしまったら
周囲の参加メンバーとしては本当にお手上げです。
ここは『ダンマリ』を決め込むのも、
一つの戦略でしょう。
“経営をめぐる意見の相違”なら
仕方ありませんが、
職場全体が一番困ってしまうのは、
家庭(プライベート)のいざこざから来る
イライラの感情を仕事場に
持ち込んでしまうことではないでしょうか。
健全な事務所経営を
営んでゆくという意味では、
“良い夫婦”でいることも大切
みなさんの職場ではいかがでしょうか。
残念過ぎる結論
みなさん、こんにちは。
「本当に困ったときには、
すぐにおたくにお願いするよ」
みなさんの事務所では、
紹介先の企業経営者様から
そんなことを言われたことがありませんか。
第三者からみれば、
明らかに危険な経営状況に見えるのに、
当人にはその自覚がありません。
そして、
仮に本当に危機的な状況に陥って
しまったとしたら
税理士先生としては、
「何でもっと早く...
困ってから何とかしてくれと言われても」
と思いますよね。
ひょっとしたら
すでに事実上手遅れかもしれません。
先生としては
そこから顧問を引き受けるかどうか
悩まれるところではないでしょうか。
ところが、会計事務所についても
実は同じような経営状況に陥っていることがあります。
先日、ご相談いただいた先が、
まさににそれでした。
昨年秋、ベテラン職員の退職をきっかけに
所長先生に弊社セミナーにご参加いただき
「いざとなったら、
助けてくれそうなサービスが見つかった」
という認識を持っていただいたそうなのですが、
その時はまだ何とかなりそうと
行動には移さなかったと聞きます。
しかし、今年の確定申告期を終えた直後、
所内の主戦力となる人材が、
全員退職届を提出したとのことでした。
いわゆる「退職者ドミノ」が発生したのです。
その事務所からすると
5、6名がかりで行っていた顧客担当業務が、
すべて先生にそのまま回ってくるイメージです。
それからやく半年間、
先生は一日も休みをとらずに、
紹介案件もすべてお断りし、顧客訪問もすべて取り止め、
必死に次々とやってくる
決算を乗り切ってきたそうです。
そして、年末も近づいてきた先日、
やむにやまれず
私たちにお問い合わせいただきました。
ただ、これから先は
月次のお客様対応だけでなく、
年調や個人の確定申告、3月決算法人の申告など
次々に業務負荷の高い仕事がプラスされていきます。
私たちから提供させていただく
業務スキームを導入するにしても、
その過程で、
先生ご自身の時間を割かずに済むかといえば
決してそのようなことはありません。
結論として、
先生は抜本的な改善に向けた対応を
更に先延ばしする決断をされました。
それがその後の事務所経営に
どれだけ深刻な結果を招くのかは、
みなさまのご想像にお任せします。
本当に困ってしまったら、
“誰も何もできない”というのが
答えだと私は思います。
病気と同じで
問題が発生しないように、
つねに予防を心がけるのが理想ですが、
少なくとも
治療方法の選択肢が残っているうちに、
行動することが肝心だと改めて思いました。