「必勝パターン」を作るのは所長先生の役目
みなさん、こんにちは。
つい先日、私どものサービスに
新規ご契約いただきました税理士C先生の事務所に
初めてお邪魔しました。
40代の比較的若い税理士先生ながら、
地元ではNo.1クラスの規模を誇る伸び盛りの事務所です。
全国的にみて、
私の知っている地元No.1クラスの会計事務所といえば、
所長先生の年齢はおおよそ60~70代。
もし30、40代の所長であれば
2代目3代目というケースが大半です。
しかしC先生は、ゼロからスタートして15年あまり。
都市の規模を考えると
異例のスピード成長のようにも思われます。
お客様に対応できる受け皿さえ準備できれば、
これまでよりさらにスピードアップして
顧客拡大も可能だといいます。
ただ、地元で安定的に人材を確保するのが難しい
さらに職員数が増えるたびに
増床や引っ越しを繰り返すのは
無駄なのではないかと考えたC先生は、
私どもが提供する
「在宅スタッフ活用」の仕組みづくりに興味を持たれ
いよいよサービススタートとなりました。
おそらく新しい取り組みを
一から始めるにあたっては
様々なご苦労がおありだったとは思いますが、
そのようなマイナスの話題には一切触れず、
楽しく前向きにこれからの事務所像についてお話しされる姿に
お客様である経営者様も
みなさん元気をもらっているのではないかと
勝手に想像してしまいました。
私自身、
業務改革に興味を持たれている会計事務所様と
一緒にお仕事をさせていただく関係上、
ベテラン・若手にかかわらず
伸び盛りの税理士先生とお会いする機会が多いのですが、
その成長スピードがすこぶる速い
先生の事務所になればなるほど、
そのサービス体系は実にシンプルに仕上がっています。
要するに、
「あれも、これも、それも」と複雑化していないのです。
正確に言うと、
色々なものには挑戦してはいるものの、
「これだ!」というものにきちんと絞り込み、
無駄をそぎ落としてきた結果なのだと思います。
あるいは、伸び盛りであればあるほど、
採用した人材をいち早く戦力として
現場に投入させなければなりません。
そこに、複雑怪奇なルールを持ち込んでいたら
とても回しきれなくなります。
所内の業務をマニュアル化したり、
業種特化したサービスを展開するその背景には、
最初からそこを目指していたわけではなく、
結果的にそれが一番標準化、効率化につながる。
そうやって
事務所の「必勝パターン」ができていくのです。
例えば、
相撲の決め技は
「四十八手」があると言われていますが、
強い力士になればなるほど、
その成長の過程で得意な決め技は絞り込まれて
「必勝パターン」が磨かれていくのです。
相撲好きな方ならお分かりになると思いますが、
次から次へと多彩な技を繰り出す
角界で話題になる力士もなかにはいますが、
結局は度重なる怪我などに苦しみ、
第一線から早い段階で退くケースも少なくありません。
成長の過程で「あれも、これも、それも」という
意欲自体は必要なのですが、
同時に「必勝パターン」を意識して、
“これならば他に負けない”という分野に
絞り込みをかけることが大切なのです。
ここ最近、開業から5年前後の税理士先生の
ご相談を受けることがありますが、
最初に立ち上げた多種多彩なサービスメニューがあだとなり、
ご自身の首を絞めることになってしまう
先生が多いことに気づきました。
「開業当時は、とにかくお客様のことは
何でも手伝ってあげようと思って
採算度外視でやってきたものの、
いざお客様が増えていくと、
かえって自身が忙しくなるばかりで、
お客様が最低限求めているサービスですら
満足いく対応ができなくなってしまった」
と嘆いておられる先生がいらっしゃいました。
これでは本末転倒なのです。
“右前まわしさえ取れたら
寄り切るのも投げるのも自由自在”
※相撲の例えばかりですみません。
ここでいう
“右前まわしを取る”という分野を
所長先生が意識しているかどうかで
事務所の「必勝パターン」は
自然と生まれてくると思います。
みなさんの事務所では、いかがでしょうか。
「巡回訪問」は誰のため? その2
みなさん、こんにちは。
(前回からの続き)
そもそも巡回訪問は、
会計事務所にとってメリットばかりなのでしょうか。
昔のように、相応の顧問報酬がいただけて、
会計事務所経験者や就職希望者など
いつでも人材が確保できた時代なら、
その是非について考える必要すら
なかったのかもしれません。
ところが、時代の移り変わりとともに、
訪問を前提としたサービスそのものが
足かせになるケースも
想定していかなければならなくなりました。
例えば
■コストに影響
お客様一件あたりの移動時間を1.5時間、
毎月訪問する対象先が15件だとすれば、
一カ月の移動にかける時間は22.5時間。
ひと月で約3日間は移動時間に費やしている計算になります。
あわせて、電車やバス、ガソリン代や駐車場代も
決して馬鹿はなりません。
■人繰りに影響
上記のスタイルをやめて、
月に3日分の時間的余裕が生まれたら、
今よりも一件でも二件でも担当を任せられます。
また、担当者一人での現場業務となれば、
経験者の採用、もし未経験者なら
相応の時間をかけて経験を積ませなければ任せられません。
人材採用が極めて難しくなるなか、
人繰りに影響が出るのは確実だと思います。
■顧客満足度は個人スキル頼みに
事務所とお客様とが一対一の人間関係で
継続していくことを考慮すると、
「税理士先生→一般職員」「ベテラン職員→経験の浅い職員」
といった担当変更があった際にトラブルが発生しやすくなります。
これらは結果として、
ベテランばかりに負荷がかかる一方
新人はいつまでたっても育たない悪循環を起こします。
職場の平均年齢は上がる一方で、若者は定着しないという
典型的な構造を作り上げてしまうのです。
もちろん、巡回訪問だけがこれらの
原因というわけではありませんが、
「帳簿作成」の分業化が業界で定着しつつあるなかで、
「顧客対応」についても、
すべてを一人でこなす従来の業務フローが、
人材難の昨今、かえって効率を悪くしている、
サービス品質を低下させることもあると
認識しておく必要があるのではないでしょうか。
だからといって、
税理士先生と職員さんといったように
複数でお客様回りをしていたら、
採算を合わせることは
より困難になるのは間違いありません。
そこで、お客様にご来所いただく、
あるいはWeb会議システム等を使って
どこからでもアクセスできる
日常的なコミュニケーション手段を確立する。
こういったシフトが
これからの会計事務所の生産性を維持する、
サービス品質を維持するための
大事な選択肢となると私は思うのです。
当然のことながら、
これまでずっと訪問を前提として
サービス提供してきたお客様に
来所やWeb会議へのシフトをお願いすることは容易ではありません。
時間も手間もかけなければ難しいでしょう。
それでも、すぐに準備に入ったほうが良いと私は思います。
あるいは、新規のご契約であれば、
こういった話をすることに無理は生じません。
長い目でみれば、ここから始めても
変革に向けた大きな一歩となります。
そういう意味では、
現在のコロナ禍をビジネスモデル変更の
チャンスととらえらえて行動しているかどうかで、
今後の事務所運営には
時間とともに差がひらいていくのではないかと
私は考えています。
訪問の頻度を、
報酬体系に反映するのも一つの手法です。
「そんなの、ただの理想論だろう!」という先生は、
まず一件、検証してみてはいかがでしょうか。
「巡回訪問」は誰のため?
みなさん、こんにちは。
“毎月必ずお客様先に訪問して
雑談でも愚痴聞きでもいいから
とにかくお客様とコミュニケーションをとること”
私はこれまでに
数えきれないほどの税理士先生から、
会計事務所のサービスの在り方について
このように教わってきました。
「刻々と変わる
お客様の現場を確認することに意味がある」
「社長とフェイストゥフェイスで
会話を交わすことに意味がある」
「お客様に仕事をしている姿を
見せることにこそ意味がある」
お客様先に顔を出すことこそ、
会計事務所にとって王道スタイルということです。
たとえ
その場でお客様の質問に即答できず
結局持ち帰り対応になったとしても、
訪問日に社長が不在にしていて、
経理担当者の方としかお話しができなかったとしても、
当初は自計化だったはずなのに、
結局は事務所側の人間が現場で帳簿入力しないと
月次業務が終わらなかったとしても、
期限までに事務所に郵送してくださいと
お願いした資料が届かず、
お客様先に取りにうかがうことが常態化していても、
訪問することこそが価値、
訪問しなければこれまで通りの顧問料は
いただけないと疑う余地もなかったのです。
ところが、
いつ終わるのかわからないコロナ禍で、
人命にかかわるウィルスに直面し
お客様を危険に晒さない、
従業員を危険に晒さないという大前提に立てば、
決して会計事務所のサービススタイルは、
定期的な「巡回訪問」がなければ
成り立たないともいえないのではないでしょうか。
顧客訪問に意味がないと
言っているわけではありません。
しかし事実、全国的に会計事務所における、
月次巡回の顧客数は確実に減り続けています。
とくにこの数か月、
80名以上の税理士先生から
これらに類似する
ご相談を受けてとくに実感しています。
きっかけが新型コロナということは
間違いありませんが、
たとえそれらが終息方向に向かったとしても
誰でも当たり前に、
インターネットを使えば
ボタン一つで地球の裏側の人と
コミュニケーションが取れるように今、
顧客訪問の位置づけを、
「絶対的→必要に応じて」
に切り替えるべき時期に来ているのだと私は思います。
それも、
事務所のタイミングではなく、
お客様のタイミングに合わせた
コミュニケーションを
とれるかどうかが価値になるのではないでしょうか。
あるベテランの税理士先生が、
こんなことをおっしゃっていました。
「これまで私は、
ずっとお客様先に毎月担当者を通わせることが
会計事務所としての義務だと叩き込まれてきました。
しかし、緊急事態宣言下で
お客様先に行くことができず困惑していたところ、
お客様の方から
“別に毎月来なくても大丈夫ですよ”
とおっしゃっていただいた。
数か月その状況が続いた結果、
業務が滞ったかといえばそういうわけでもない。
むしろWeb会議ツールなど、
便利な方法も使いこなせるようになってきた。
“はたして、顧客訪問は絶対行わなければいけないものか、
疑問を持つようになってきた”」
そうです。そうなのです。
ずっと“お客様のために...”と
思い込んでいた常識が、
このコロナ禍で変化しているのです。
いや、正確には、
コロナよりもずっと前に、
お客様から見た顧客訪問の位置づけは変わっており、
“会計事務所のために...”という要素が
いつの間にか比重を増してきていたのです。
(次回更新へ続く)