「巡回訪問」は誰のため?
みなさん、こんにちは。
“毎月必ずお客様先に訪問して
雑談でも愚痴聞きでもいいから
とにかくお客様とコミュニケーションをとること”
私はこれまでに
数えきれないほどの税理士先生から、
会計事務所のサービスの在り方について
このように教わってきました。
「刻々と変わる
お客様の現場を確認することに意味がある」
「社長とフェイストゥフェイスで
会話を交わすことに意味がある」
「お客様に仕事をしている姿を
見せることにこそ意味がある」
お客様先に顔を出すことこそ、
会計事務所にとって王道スタイルということです。
たとえ
その場でお客様の質問に即答できず
結局持ち帰り対応になったとしても、
訪問日に社長が不在にしていて、
経理担当者の方としかお話しができなかったとしても、
当初は自計化だったはずなのに、
結局は事務所側の人間が現場で帳簿入力しないと
月次業務が終わらなかったとしても、
期限までに事務所に郵送してくださいと
お願いした資料が届かず、
お客様先に取りにうかがうことが常態化していても、
訪問することこそが価値、
訪問しなければこれまで通りの顧問料は
いただけないと疑う余地もなかったのです。
ところが、
いつ終わるのかわからないコロナ禍で、
人命にかかわるウィルスに直面し
お客様を危険に晒さない、
従業員を危険に晒さないという大前提に立てば、
決して会計事務所のサービススタイルは、
定期的な「巡回訪問」がなければ
成り立たないともいえないのではないでしょうか。
顧客訪問に意味がないと
言っているわけではありません。
しかし事実、全国的に会計事務所における、
月次巡回の顧客数は確実に減り続けています。
とくにこの数か月、
80名以上の税理士先生から
これらに類似する
ご相談を受けてとくに実感しています。
きっかけが新型コロナということは
間違いありませんが、
たとえそれらが終息方向に向かったとしても
誰でも当たり前に、
インターネットを使えば
ボタン一つで地球の裏側の人と
コミュニケーションが取れるように今、
顧客訪問の位置づけを、
「絶対的→必要に応じて」
に切り替えるべき時期に来ているのだと私は思います。
それも、
事務所のタイミングではなく、
お客様のタイミングに合わせた
コミュニケーションを
とれるかどうかが価値になるのではないでしょうか。
あるベテランの税理士先生が、
こんなことをおっしゃっていました。
「これまで私は、
ずっとお客様先に毎月担当者を通わせることが
会計事務所としての義務だと叩き込まれてきました。
しかし、緊急事態宣言下で
お客様先に行くことができず困惑していたところ、
お客様の方から
“別に毎月来なくても大丈夫ですよ”
とおっしゃっていただいた。
数か月その状況が続いた結果、
業務が滞ったかといえばそういうわけでもない。
むしろWeb会議ツールなど、
便利な方法も使いこなせるようになってきた。
“はたして、顧客訪問は絶対行わなければいけないものか、
疑問を持つようになってきた”」
そうです。そうなのです。
ずっと“お客様のために...”と
思い込んでいた常識が、
このコロナ禍で変化しているのです。
いや、正確には、
コロナよりもずっと前に、
お客様から見た顧客訪問の位置づけは変わっており、
“会計事務所のために...”という要素が
いつの間にか比重を増してきていたのです。
(次回更新へ続く)