ここまで、アドラー心理学について長らく解説してきましたが、
いよいよクライマックスに突入します。
今まで読み続けてくださった方には、
感謝感激雨あられの心境です
僕が、ここまでしてアドラー心理学を伝えたかった最大の理由は、
今回のテーマである『共同体感覚』に基づいています。
共同体とは、自分を含めた1つの集団の事です。
それは、家庭や親戚関係、近所と自治体、学校と学級、
部活やサークル、会社と部署、趣味の会や友達グループなどを含み、
さらに大きく見れば、地域や国、そして世界(宇宙)にも及びます。
共同体感覚とは、『自分は集団の一員』、
『自分は共同体の中で生きている』、…という意識の事です。
自然界を見ても解る通り、
あらゆる動物は群れを作る事によって繁栄してますね?
この感覚は、全ての生き物にとって、
けして切り離せない宿命といえます。
つまり、動物にとっても、人間にとっても、
快適で充実した生活を送るために
なくてはならない意識というのが、
この共同体感覚なんです。
僕らが、集団で共存共栄するには、
それぞれが自分以外の他人と上手く関わらねばなりません。
だからこそ、全ての人間にとって『対人関係』や
『人間関係』が大きな課題になる訳です。
人間にとって、最も小さな存在形態は、自分一人の状態を指します。
ここに、もう一人加わる事で対人関係が生まれ、
最も小さな共同体が出来上がります。
さらに、人数が増えるほど共同体は大きくなり、
それに連れて、様々な問題が出てくる訳ですね。
例えば、独り暮らしならば、
何でも好き放題で構わないので、楽チンです
しかし、結婚してパートナーが加わると、一気に難しくなります。
異なる願望や思惑を持つ二人が上手くやっていくには、
互いの努力が必要だからです。
夫婦の他に両親が同居する家族関係はもっと複雑になります。
ここに子供が生まれると輪を掛けて面倒になりますね。
時には家族関係が上手くいかずに修羅場になったり、
最悪の場合、家庭崩壊する可能性もあるでしょう。
家族が散り散りバラバラになるのは切ない事です
家族に干されて独り暮らしする病弱な高齢者や
貧困に喘ぐ母子家庭などを見ると何とも悲しい気分になります。
これでは、「一人の方が楽」といって、
結婚しない男女が増えているのも頷けますね
しかし、です。
人間は一人では生きていけません。
一人暮らしするにしても、
外に出掛ければ、路線バスや運転手さんの世話になったり、
商店や銀行や役所に行けば、
様々な人々の助けを受けなくてはなりません。
また、一人暮らしは孤独です
というか、完全なる孤独を耐えられる人は誰もいないでしょう。
一日中、家に隠って誰とも会話しない状態が何日も続けば、
若い人でも精神がおかしくなり、
生きる意欲を失うに違いありません。
一人暮らしならば、外で他人に触れ合う事が、
貴重な癒しとなります。
また、茶飲み友達や趣味の仲間がいれば、
どれだけ励みになるか分かりませんね。
以上から、僕らは、生活面でも、精神面でも、
他人に関わらないと生きていけない事が解ります。
そう考えると、
家族という存在がどんなに大切か、再認識出来るはずです。
共同体の一員として、周囲と上手くやっていくのは大変ですが、
それを克服すれば、大きな恩恵を得る事が出来ます。
さらに、周囲との対人関係が深まれば深まるほど、
その恩恵は大きくなっていくでしょう
以上から、共同体の大切さについて、
大いに解って頂けたと思います。
だからこそ、
共同体感覚は、僕らにとって欠かせない意識となるのです。
そもそも、共同体感覚は
生まれつき具わっている本能といえます。
それが、多くの人々との触れ合いを重ねる内に、
少しずつ育っていきます。
しかし、この発展具合には個人差があり、
それが、人生の幸福感や充実感にも大きな差を生んでいる訳です。
共同体感覚の強い人は、意識が外に向いています。
彼らは『助け合い』、『支え合い』『チームワーク』、
『団結』、『共存共栄』、『絆』などの価値を知り、
周囲を信頼し、周囲に貢献し、周囲と協力し合う事が出来ます
反面、共同体感覚が乏しい人は、精神が内に向いています。
つまり、自己中で、他人に関心がないという事です。
結果、周囲から嫌われ、厄介者扱いされると共に、
周囲から恩恵を得られず、幸薄い日々を送る羽目になります
現実を見ても、現代社会は
共同体感覚が希薄といわざるを得ません。
僕は、その背後にある大きな問題に気付きました。
次回は、その辺りについて説明したいと思います