「少年ゾンビ高橋。#15」
現在は少女の身体にて活動を維持しているゾンビ少女・赤坂さんだが、彼女にとってその容姿は不便極まりないものだった。
「……サイフさえ持ってないのね、このコ……。子供だから要らなかったのかしら……」
サイフがないのだ、バッグもない、メイク道具もケータイもない。ポケットを探ると褪色した銀紙が丸まっていた。広げるとそれがキャンディの包み紙だったことがわかる。
はぁ、と溜息をつく。
こんな若いのにゾンビになっちゃって気の毒と言えば気の毒かしらね。これから大きくなれば、この寂れた村を出て働いたり、恋をしていたりしたんだろうな、彼女は思う。
……もっとも、その機会、少女の未来を奪ったのは他でもない赤坂さん自身なのであるが。
「それにしても退屈な村ねぇ……いい加減、飽きるんですけどー」
歩けど歩けどひと気はなく、見渡す限り手入れされていない田畑とそれを区切るように畦道が縦横に伸びている。
「お巡りさん……」
その姿は変容していた。 ほんの少し前まで、どこかあか抜けない片田舎の子供でしかなかった高橋くんだったが、自ら発した「肉体の乗り換え」がゾンビとしての本能を目覚めさせるスイッチだったのか、飢えた荒野のケモノのように変貌を遂げていた。
「ちょちょ……高橋くん……」
冗談だろ、そう言おうとするが声にならない、腰から地に落ち、しがみついた指で後ずさる。
……どこかで見た……どこだ……? そうか暇つぶしに借りたホラー映画のなかだ……。
確かあの時は「退屈しのぎのはずが余計に退屈させられた」と愚痴たはずだ。
記憶のなかのゾンビ映画を手繰っていた、脳内で再生されたそれはバケモノがヒトを喰らうシーンだった。
モンスターと化した高橋くんは臨戦態勢の野犬のような低い唸り声をあげて西島巡査を睨んでいた。
その姿は死骸を漁る夜のハイエナのようだった。
……それは映画ではなく、某国営放送のドキュメント番組で見た映像に重なった。
【終わってへんから続くんやで】
前回までの「悪ふざけゾンビのお話」はこちらを
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